空 ***

 

無一物野郎の詩、乃至 無詩! Part2 014     manami さんへ

さとう三千魚

 
 

みてた

いつも
みてた

空を見上げてる

サクラの花の
咲くのを

見ている

遠くから
ずっと

見ている
ヒトがいる

 

***memo.

2025年11月22日(土)、
一箱古本市の日に、
静岡市北街道「水曜文庫」で実施した、
“無一物野郎の詩、乃至 無詩!” 第44回、第2期 14個めの即詩です.

タイトル ” 空 ”
好きな花 ” 桜 ”

 

 

 

#poetry #no poetry,no life;

5カ月

 

辻 和人

 
 

よその子がいた
コミヤミヤ・こかずとんと同じ
生後5ヶ月のよその子だ
これからBCGの注射を打つ
待合室に2人いた
おしゃぶりぶりぶり固く目閉じ瞑想の女の子
壁の白に何か探しもの首上向きキョロキョロの男の子
抱っこ紐に揺すられ揺すられ
到着したばかりのコミヤミヤとこかずとんも加わって
揺すられ揺すられ揺すられ揺すられ
4つの抱っこ紐
コミヤミヤとこかずとん、今日は静かだ
元々抱っこ紐大好きのコミヤミヤは気持ち良さそうだし
抱っこ紐がそれ程好きでないこかずとんも足バタバタしない
お、女の子の名前が呼ばれた
診察室に入って
ウギャーウギャッギャッ
ああ、やっぱ泣いたか
注射は痛いってより怖いもんね
待合室に戻って
女の子一度ウェッと泣く
でもおかあさんがおしゃぶり咥えさせると
ぶりぶりぶり
すぐ落ち着いて
目閉じ瞑想
そこへギャーオウッ、ギャーオウッ
続いて診察室に入った男の子の声だ
やっぱり怖いよねえ
針が迫ってくるんだもんねえ
ところが待合室に戻ってきた途端
ついさっきのように
キョーロキョロ
白い壁に上目遣いで探しもの
何か飛んでるのかな
ぼくには見えないものが壁の白にさまよってるのか
さあ、呼ばれました
コミヤミヤとこかずとん
しずかーに診察室に入る
しっかりした顔になってきましたね、と先生
左腕まくって
ピッ
コミヤミヤ一瞬ギャッと泣いたけど
一瞬で観音様の顔に戻る
大好きな抱っこ紐の中へ
続いてこかずとん
苺状血管腫良くなってきたね、と頭髪かき分けてまず一言
左腕まくって
ピッ
ウヒッて顔一瞬したけど
一瞬でおむすび様の顔に戻る
抱っこ紐に入っても足バタバタさせず
待合室に戻ると
女の子も男の子も既に帰っていて
コミヤミヤとこかずとん
2つの抱っこ紐
揺すられ揺すられ
あ、眠っちゃった

生後5カ月のみんな
注射が一大事じゃなくなってきた
ちょっと泣いたら
もうおしまい、大丈夫
ウチの子
よその子
5カ月の人生経験が
みんなを強くさせた
5カ月
短くない
全然短くないんだよ

 

 

 

えんぴつの
持ち手にまきついたマスキングテープ ***

 

無一物野郎の詩、乃至 無詩! Part2 013     ayumi さんへ

さとう三千魚

 
 

美術館の
帰りに

珈琲を飲もうよ

清志郎を
聴こうよ

黄色い花を咲かせてよ

いい匂いを
させてよ

イランイラン

 

***memo.

2025年11月22日(土)、
一箱古本市の日に、
静岡市北街道「水曜文庫」で実施した、
“無一物野郎の詩、乃至 無詩!” 第44回、第2期 13個めの即詩です.

タイトル ” えんぴつの持ち手にまきついたマスキングテープ ”
好きな花 ” イランイラン ”

 

 

 

#poetry #no poetry,no life;

横滑りGlissements

 

工藤冬里

 
 

ギラギラした泰山木の多肉のみどりがうす蒼い空にくっきり
不公正がなくなってほしいと強く願ったり叶ったり
星は相変わらず光っていたり
(あんなものは薄っぺらい幻灯だよ)と思ってみたり
占いをさせる悪霊に疲れ果てたり
国家に横滑りする快楽に呆れ果てたり
ドローシア、ジュークボックスが泣いてるぜ
泥試合、銃器僕のがないって
廃絶のスローガンの横滑り
ミサイルの位置を変えてみたり
プロポリス飲んでみたり
デカポリス踏んでみたり
素粒子から全宇宙までマッポやパンダの白黒アフォーダンス
ハチワレは可愛いけどね

 

 

 

#poetry #rock musician

なわとび ***

 

無一物野郎の詩、乃至 無詩! Part2 012     sakira さんへ

さとう三千魚

 
 

くるくる

まわしたね
ぴょんぴょん

跳ねたね
あなたのまえで

跳んだね

白い花のなかに
みどりの

芯を
伸ばしてる

わたし
いまも

跳ねてるよ

 

***memo.

2025年11月22日(土)、
一箱古本市の日に、
静岡市北街道「水曜文庫」で実施した、
“無一物野郎の詩、乃至 無詩!” 第44回、第2期 12個めの即詩です.

タイトル ” なわとび ”
好きな花 ” 水芭蕉 ”

 

 

 

#poetry #no poetry,no life;

あかし

 

廿楽順治

 
 

こういう女は石で打ち殺せ

あのひとは
身をかがめて
指で地面に何か書いておられた

「ひとりで書くのは
あかしではないだろう」

死んでしまったやつと
いつもふたりで
「おれたちは法のあかしをしている」

奴隷はすぐに
町へと出て行くだろう
だがわたしは子としてここにいるのだ

女と死んだやつはここにいるか
あなたたちは女の下からでてきたか
女に石を投げ続けたやつはいるか

どうして
この話がわからないのか

そう地面に
指で
ふしぎな不等式を書いておられる