人数分

 

辻 和人

 
 

人数分だ
45個
駅までバスで15分
まず床屋に寄って髪さっぱり
まだまだ暑い9月の半ば
短くなった髪が強い風にぱらぱらっ揺れる
残り少なくなった育休の日々もぱらぱらっ揺れる
あと6日だもんね
休んでいる間穴を埋めてくれた職場のみんなに
ありがとう、ありがとう、したい
やっぱお菓子だ
デパート入って見て回る
半年も休んだからちょっと食べでがあるものを渡したいんだけど
このモナカおいしそうだけど持ちが悪いな
このプチケーキ嵩張るから持ってくの大変だな
時間ばっかりぱらぱらっ過ぎる
その時
おっ、このマドレーヌいいぞ
貝殻の形にふっくら盛り上がってハチミツたっぷり
1個300円
高すぎず安すぎず
15個入りのを3箱で決まり
人数分
45個
45の口に
コミヤミヤの泣き声とこかずとんのあくび
ばらばらっ放り込まれる
泣いたコミヤミヤ抱っこして歩くミヤミヤママの踵と
こかずとんのウンチ片付けるかずとんパパの指も
ばらばらっ放り込まれる
お会計してバス停まで歩く
まだまだ暑い9月に
抱えた紙袋はずっしり重い
ずっしりずっしり
その先に
復帰するぼくに「お帰り」を言ってくれる
45の口があるんだ

 

 

 

ぶどう園

 

廿楽順治

 
 

ぶどう園に来た若いひとを
ころしてしまった

(旅びとだったのだ)

この旅の記憶を頭石として
隅に置いた

「わたしたちの目には不思議に見える」

ほどなくわたしたちも
ころされるだろう

ぶどう園はゆれている

その譬えは
もうぶどうの陰にかえしなさい
旅はおわった

声は
石のように
ふるえておればよい

 

 

 

そこにいた

 
 

さとう三千魚

 

憶えて
ない

ほとんど

憶えて
いない

日曜日だったはずだった
昨日は

海浜公園までクルマで行った
釣り人たちを眺めていた

海を
眺めていた

光ってた

夕方に
女と

餃子の店に行って食べた
ビールを飲んだ

帰って
ソファーで

時代劇をみた

眠って
ソファーで目覚めた

歯を磨いてベッドで眠った
それから

今朝
目覚めた

女と墓参に行った
帰りに郵便局に寄った

帰って
珈琲を飲んだ

食パンを焼いてバターを塗った

午後に
小川の傍をすこし歩いた

小鳥が桜の枝にいた
そこにいた

うぐいす色の
逃げなかった

青空に桜の花芽が膨らんでいた

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

脂肪の塊

 

工藤冬里

 
 

低空飛行の機体が風光明媚な岬(三崎半島辺り)を迂回して空港(羽田辺り)に帰り着こうとするが堪らず着水する
濡れて
冷たくて
いやだなあ
躰の水甕は毀れて
in other words
生まれながらの泥棒はいない
立ち向かえる装備を着けて!
幅の広いベルト、
バックルの大きい、、
要らんかくめいの幟が立って損な娼婦の塊がゴロゴロ
いろんな脂肪がある
牛スジの脂肪があり
サバのドコサヘキサエン酸があり
モオパッサンの脂肪があり
星の脂肪がある
襟裳の岬では飽和脂肪酸を暖炉で燃やしているらしい
其れにしても

 

 

 

#poetry #rock musician