広瀬 勉
#photograph #photographer #concrete block wall
お前が走る姿
横向きでしか
見た事ない様な気がするけどな
凄く変な走り方だな
男みたいだよ
そんなの嘘だ
あたしの事よく見てないから
そんな事言えるんだ
あんたに向かって正面から
走ってぶつかってるじゃんか
そしてあたしの事お前なんて
呼び方すんな
男みたいなとか古臭え事
言ってんじゃねえぞ馬鹿
そう言えば
この間職場まで迎えに
行った時
遅くなっちゃって
って言いながら鬼の形相で
前から走って来たの見て
思い出したよ
鬼だと馬鹿野郎
てめえが車ん中で
イライラしてるんじゃねえかと
推測して速度上げてんだ
最初のデートの待ち合わせ
お前遅れて来て
ラガーマンみたいに
前方から走って来て爆笑したよ
冷めるなあなんて
ラガーマンだと
てめえラグビーの事なんか
何も知らないだろ
このガリガリ野郎馬鹿野郎
お前って言うのやめろってんだろが
しいいいんと静寂
アナログ時計の秒針は
電池が切れそうカチカチカチの
間が抜けてしづくが
ぽたりぽたりと落ちるよう
あったなあったな
記憶の地層穿り返して
切なくなって
涙出そうになっちゃったよ
あったなあったなだと
何全部終わった気になってんだ
涙出てるのはこっちだ馬鹿
鼻水もだよ花に水やる時間だよもう
もう大丈夫だからよ
そんなに力走するなよ
何処にも行かないからよ
何処にも行かない競争だな
負けないよお馬鹿さん
今朝も
早く
目覚めて
河口まで
歩いていった
川沿いの桃畑の
桃の木にはピンクの花が咲いていた
菜の花も
まだ咲いている
茎の下のほうは
尖ったさやとなっている
ヘラオオバコかな
ほそい茎の先に白い花穂が風に揺れている
ヒメツルソバとも会った
ピンクの星雲が路傍に群れ咲いている
大病院の下の小道では木のベンチに座った
縦に割られた波の文様の木のベンチだった
このところクルマで黄色の花と擦れ違うことが何度かあった
レンギョウの花だろう
レンギョウの黄色の花と街中で出会った
一瞬だが黄色の花がこの世を貫いていた
#poetry #no poetry,no life
かもめかもめ春濤の青に呼ばれ来よ
末黒野に背中冷たくして泣けり
黒薔薇をくぐりて一つ魔を祓ふ
漂流記春服の裏に書いてある
行く春や描いてない絵の隅にゐる
洲蛤空海の舌と教へられ
白骨になるには骨のない青虫
うぐひすの奥義は知れり系図消す
たまご抱けば獣の腕となる朧
虎杖に並びて立てど吾一人