michio sato について

つり人です。 休みの日にはひとりで海にボートで浮かんでいます。 魚はたまに釣れますが、 糸を垂らしているのはもっとわけのわからないものを探しているのです。 ほぼ毎日、さとう三千魚の詩と毎月15日にゲストの作品を掲載します。

第35次雪

 

Sanmu CHEN / 陳式森

 
 

等待著我們失去記憶;
尤其在末世熱風吹著殘敗的花骨朵
雨水,打濕了歌唇。
被禁止的曲目與這城同在一個星座
你有他的消息嗎?偏僻的勇氣!
晚香玉的灰燼覆蓋了嘆息,
黎明,失去了輪廓。
一再受傷的少年手捧陰影,
機場大廳烙下不可能的眼神;
收起鮮血的殘片。哦,不可能。
他的消息,這不是全部;
這是第一次瀑布!
受傷的手在撥動六月,
言說他們,劇烈地琴弦,
沉痛的念珠。第35次雪。

 
2024年5月18日九龍城

 

 

 

 

たぎょう

 

道 ケージ

 
 

         たいそう生きた
多々あって
祟りの末
他殺
         大したことはない
         他人の目なぞ
         樽に入らば同じ
でもね
たあたぁって
武士でもあるまい
筍切って何になる
         小さい小さい
         地上はあとわずか
黄昏るな
助けてと
血出して
知恵を出す
魑魅魍魎
         つまらん
         ついに逝く日
         鶴の喉鳴り
チティチティバンバン
チタン、爆裂の退走
畜生どもの
近い、くせえ息の間を
ちんたら蛇行
         体裁ばかり
         典型を拒み
         てんでダメ
ツェツェ病でたるい
次の池袋が他殺に見える
爪を噛み
妻殺しの秘策
         とうとう来た
         鳥辺山の煙
         時を隔て露と消える
対馬を
刀伊が襲う
たのしげな肉食い、犬食いの人
多殺凌辱の女真
突き刺しの
達人だらけ
ツングースに拉致
月は遠い

隆家、出る
つまらん
退屈な眼の病、将棋もさせず
太宰だってさ
大将の提灯は警固所にあり
太鼓叩いて
手づから切る
腸が出る
千代紙で拭く
朕は退屈なり

杖、トントン
天ちゃん、てんてん
頓馬、馬上にて、ちっ、と舌打ち
太陽と月
魂と体
陳腐な対なの
         たまさかの
         茶碗蒸し
         つれあいは
         亭主の死に賭け
         毒を盛る

 

 

 

It ‘ll be a lot of Fun!

 

佐々木 眞

 
 

わが家の時計は、みんな、別々の時間を指している。
そして、一日中いろんな旋律と音色で、時報を打ち鳴らす。

It ‘ll be a lot of Fun!
ワオ、なんて楽しそうなんだ。

でも でも、
2階の古くて大きな柱時計は、昨日の5時15分で止まったきり、びくともしない。

「電池が切れたのなら、新しいのを補充するよ」
というてみたが、やはり動こうとしない。

重ねて「なんで動こうとしないのかね?」と訊ねたら、
緑色の長針が答えた。

「だって、同じ円盤を、来る日も来る日も、一日中ぐるぐる回ってるなんて、阿呆らしくってやってらんないよ? 
なんなら、あんたやってみる?」

That’s not Fun.
こりゃダメだ。

 

 

 

また旅だより 69

 

尾仲浩二

 
 

写真展のために中国へ2週間ほど行っていた。
贅沢な話だが、ご馳走続きでクタクタになってしまった。
昼は四川料理、夜は南京料理、そして徐州、上海、無錫
なるほど、少し痺れたり、恐ろしく辛かったり、それぞれ特色があって旨い。
でも僕にしてみればみんな中華料理、なかなかに油が強い。
食べ過ぎないようにと気をつけていても、10人ほどの円卓に日本人はひとり。
みんなは楽しく会話が弾んでいるけれど、中国語はまったく分からない。
次々と運ばれてくる料理をひたすら食べて、強い中国酒を飲んでいるだけになってしまう。
いや本当に贅沢な愚痴なのはよく分かっている。
でも一度だけ食べたマクドナルドのハンバーガーが嬉しかった。
日本では決して食べないのに。

2024年5月7日 中国、南京にて

 

 

 

 

火星にひとり

 

加藤 閑

 
 

風船に鳥と息入れ次の町

悉くゼロにしたき日白子干

約束の石吐き出して牡丹咲く

新緑に眼射られぬことを家訓とす

嘴を風に曝して抱卵季

消しゴムの滓半分はうごく蟻

火星にひとり麦秋の中にゐる

言の葉を朱夏に染めけむ鳥数多

花ひとりは死なず「返禮」の詩人連れ行く

衣脱げば蛇も階踏み外す