michio sato について

つり人です。 休みの日にはひとりで海にボートで浮かんでいます。 魚はたまに釣れますが、 糸を垂らしているのはもっとわけのわからないものを探しているのです。 ほぼ毎日、さとう三千魚の詩と毎月15日にゲストの作品を掲載します。

朝になるまえに

 

さとう三千魚

 
 

朝になる
まえに

珈琲を淹れている
珈琲の湯気の中に顔を入れてみる

年の初めに
モコは

消えた
白い骨になった

一昨日かな

ケージさんと
ジュンジさんと

飲んだ
ケージさんは絶食しているのだといった

痩せて
透明な眼をしていた

昨日

昼前に
河口まで走った

沖にタンカーが浮かんでいた

河口には
ノラたちがいた

なにも食べなかった
水と珈琲を飲んだ

いつか白い骨になる

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

能登へ

 

工藤冬里

 
 

すぐに横滑りする建造物の中で目配りする
ロケット型の空気を取り出し
清浄機にかける
家の中のテント
(船の中のプール)
各階の住人は同じことを言う
建てた者の卓越について
我々が比較的少数なのは
小泉構文だからだ
思考を遮って
goodボタンを押して欲しい
草色の包み紙
みどりの入ったコンクリートの電柱が見える
七三のようにゲゼルシャフトは遠い
それでも右手を掴もうとして
雲は山の下へ垂れこめていく
水平を取れずに
それぞれが傾いているが
他所からのコメントが
こえを切り取る
最も優れているものと
それに不可欠な三つの要素がある
立体、円環、いろいろなモデルに横滑りしていく
お前は自分が好きか
答えられなければ雲は里へ下りてくる
難しい柱につぎつぎと矢が刺さっていく
ほんもの、と発語しても
ほんものは山の心臓に置き忘れてきた
泉は山の心臓だった
山に住んでいる人はそこから飲む
我々は不整脈の流れから汲む
充電してこなかった愛が切れる
瓦屋根は鱗になって舞う
封じ込めたのは善い動物ではない
拡がっていくのは疫病の原点
野間馬ハイランドは行ったことがないが
馬が居るらしい
居るのかな
手放した手綱のように尾骶骨の上あたりが空洞になる
水平線にはいつも船が浮かび
製紙工場の煙突も見える
海が展けて湾が見える時
こんどは胸が空白になる
あゝあいつに金をやれば良かった
水平線は僅かに凹む
絵など不整脈の職人に任せれば良い
乾いてぼんやり白くなっていくセメントの 
空中写真の中で
すべての人に声を掛ける練習をしているそうだ
駐車場の濃いグレーの車のように愛がない
シルバーの車のように胃が痛い
大久保のトルコアイスのように引き伸ばす
引き伸ばして顎に引っ掛ける
丁寧に引き伸ばして全部隠さなければならない
それには限界がないそうだ
どんだけ伸びるんだ
枝のように斜め
果実の無い樹のように生い茂っている
ネットで囲って解体し、更地にしたい
更地願望を空に突き出す
消去できない写真のように
空中写真のようなアリの絵が浮かんだ
やさしい人になる必要があった
畑の白菜や大根を見ても気付かなかった
間髪入れず
伸ばして、引っ掛ける

https://www.threads.net/@elogedelamour/post/C2YovGGSUYN/?igshid=MzRlODBiNWFlZA==

 

 

 

#poetry #rock musician

 

廿楽順治

 
 

「わたしは数えられたりしない」
のれんをくぐって
男の影はやってきた

みんな
みごとな豚です
重油だらけの空でそだってきた

傘をたたんで
定食を頼もうとする四千人

群れというのは
どうせみんな耳が濡れているのだ

傘のようにたたまれた眠りで
鍋へと飛び込む

「ひとりではないので」
いっせいに同じ夢を食らうほかない
やーい 豚

店の外に
四千人の
子どもがたかっている

 

 

 

「夢は第2の人世である」第104回

 

佐々木 眞

 
 

 

2023年9月

有名な思想誌の偽物が登場して話題になっているが、そこでは本物そっくりの偽物著者が本物の論旨を借りて、正反対の結論を出している。つまり思想なんて筆先三寸でころころ変わるし、変わっても構わないものなんだ。9/1

ある多忙な人物とのインタビューを頼まれたのだが、「4つの質問を4分以内にせよ」という条件がついていたので、そんなアホな、と断ってしまったのだが、うんと簡単な質問なら可能だったと、今頃になって後悔しているずら。9/2 

「です・ます体」でものを書くと、その噺をとりまくもっともらしさが次第に消え失せて、噺の真正さと空恐ろしさが浮き上がって来たので、怖くなって、「である体」に切り替えてしまったのよ。9/3

A子さんはとても素晴らしい人なんだが、突然選挙に出たら、見事当選してしまったので、ほんにんも、おらっちも、吃驚仰天だった。9/4

八百万神が列島に降臨して、1968年をもう1回やり直して、全国民が生き直すことになったらしい。もしかすると、国と民草の運命が、劇的に回天するのではないかと、みな興奮しているようだ。9/5

その住宅会社では、おらっちが画用紙に悪戯書きした童話風、あるいは漫画風のスケッチに基づいた一戸建て住宅が、ジャカスカ現場で採用されていったので、おらっちは時折恐ろしくなったものだ。9/6

道端に栗が落ちていたので、それを拾って進んで行くと、子どものコジュケイに出くわしたが、黙って電柱の陰に消えていった。そのとき、一陣のそよ風が「アリガトウ、サヨウナラ、ゲンキデネ」と囁くのだった。9/7

20代の若さで夭折した、天才キダンを悼む人々の群れ!9/8

ジャニーyouのおらっちは、ウィーン少年合唱団の童たちをアルファベット順に呼び寄せ、毎晩彼らに奉仕させて、おらっちの精液を愛らしい口唇に注ぎ込んでいたが、誰一人知る者はいなかったずら。9/9

某社のホームページの評判が悪いので「なんとか改善してほしい」と頼まれたので、冒頭の気持ち悪いブグウギ人形のダンスシーンを削除したら、それだけで注目率が倍増したのだった。9/10

頼んでいた本がようやく届いたが、とても時間がかかった。日本歴でいうと明治、大正、昭和、平成、令和、緑藻、弁義、下痢と流れ下って、いまは雲古の時代だが、そのかみの明治の初版本を発注したのだから、推して知るべしである。9/11

施設の職員なんて安月給に決まっているのに、長男は時々ヒガさんにファミレスに連れて行ってもらって、大好物のロースカツを御馳走になっているらしい。困ったことだ。9/12

住み込みのバイト学生の私は、「その子を落語が分る人間に育ててくれ」と両親から頼まれていたのだが、私自身あまり落語に詳しくなかったので、落語塾は諦めて、誰でも入れる千駄ヶ谷中学校に入学する結果に終わった。9/13

おらっちはスーパーで「トイレットペーパーを拡販せよ!」と命ぜられたが、なにをどうしたらいいかさっぱりわからずにうろうろしていたら、「君はてんで売り上げを伸ばせなかった」と店長にいわれて、直ちに解雇された。9/14

お隣のAさんたちと一緒に、集団検診を受けたのだが、Aさん一家が、突然モザールのオペラのアリアを歌い出したので、みな吃驚だった。9/15

久し振りに電気屋さんに来てもらったのだが、新しい電化製品が物凄く多機能になっているので驚く。しかも以前は10年だった耐用年数が5年に短縮されたので、思わず「原発とは大違いだね」といってしまった。9/16

「こんちは、イデですがあ」というて、茶色い下駄のような顔つきの男が入って来たので、すぐに誰だか分ったのよ。9/17

久し振りに倫敦へ行ったら、ロイヤルアルバート・ホールで、ハイドンの倫敦交響曲の演奏会をやっていたのだが、誰が指揮しているのかは分からなかった。9/18

あたいは、最初の子どもを堕ろされたので、2番目の子どもは絶対に堕ろさないぞ、とぐあんばって産んだのだが、しばらくして、棄てた。9/19

おらっちが、治安維持法で牢屋に入れられている間、なけなしの私財を保管しておいてくれと頼んだのに、案の定その女は、おらっちがシャバに出て来ると、行方を眩ませていた。9/20

毎年来る年金情報の書類で、障害者手帳の発行日を記入させる項目があるのだが、なんでこんな細かいことを書かせるんだと、頭に血が上るが、それらを書き込んだ書類を、1枚1枚確認する役人の顔を見ると、AI貌であった。9/21

棄てても捨てても、婦人便所の壁に浮き上がる4月の蛇じゃった。そこで、カッウーの建設に協力した人たちは。全員殺されたが、しばらくすると、みな蘇えった。9/22

ともかく戦争中のことなので、そのホテルの大半は軍隊が占拠し、わずかに残った地下2階にわたしらは押し込められ、地表を出歩くことも許されなかった。黒澤監督と小津監督を除いて。9/23

名前からしてウオータービルという建物の中に我が社は入居していたが、雨が降る度にフロアが水浸しになるので、社長のおらっちは、いつも大喜びでピッチピッチチャプチャプランランラあン!と歌いながら、長靴を履いて踊っていた。9/24

原発の建設に協力した連中は、殺されても、殺されても、地獄の釜底から蘇って、原発音頭を歌い、猫じゃ猫じゃを、踊り狂うのだった。9/25

おらっちは、組織の上層部からの特命を受けて、上司Мと共に特殊任務に就いたが、いつものように、大嫌いなМの指示は、いっさい無視して、行動した。9/26

ヘンデルのオラトリオでヘンデルノートの私は、歌詞を忘れたので、テキトーに歌いながら、相手役の女の方Hへ近づき、彼女がきちんと下着をつけてるのか否かを確かめよとしたのだが、舞台が薄暗くて、よお分らんかった。9/27

月明かりで時計をみると、まだ1時12分である。これから朝までちゃんと寝られるか、心配で心配で仕方がないが、うまく寝つけるまで、五言絶句を作り続けようと思った。9/28

夢の女に出会ったので、手を繋いで歩き始めたのだが、ふと思いついて女の手をギュギュと握ってみると、女もギュギュっと握り返したので、なんだかひどく安心したことだった。9/29

巣伊水筒の中で、あんきに泳いでいた2匹のメダカが食べられたのは、次のような、長い長い噺が、あるからだった。9/30

 

2023年10月

東大に東大平和会というレコード鑑賞の組織があったはずだが、今はどうなっているのだろう、と思って本郷へ行ってみたが、その形跡はてんで無かった。10/1

日曜日に、家族そろって町に出かけようと、電車に乗った。買い物なんかしてから、また電車に乗って、帰宅しようとしたのだが、乗った車両が、ホームからはみ出していたので開かず、そのまま、隣の駅まで運んでいかれたのよ。10/2

おらっちは、悪人リストをつくっては、順番に暗殺していった。10/3

久し振りにオグロ選手と出会った。彼と会うときはいつもどこかで御馳走してくれたものだが、今回はそういうことを期待することも、また実際にそういうこともなく別れたのだが、何度も御馳走されたおらっちはたった一度も御馳走し返したこともなかったのを申し訳なく思った。10/4

3、4、5番のナンバーが記された名建築家の設計による木製の椅子を、超ヒレツな男が、こっそり教会の外に持ち出そうとしているので、隠し持ったワルサ―で消してやった。10/5

余の畢生の大詩集が陸続と返品になって狭い我が家に殺到するので、寝るところもなくなってしまったずら。10/6

親分がいつのまにか零落したので、仕方なく150人の食客ともども、今を時めき権勢を誇る第一子分のところに身を寄せているそうだ。10/7

こないだタチウオを呉れたお兄ちゃんが表通りを歩いていたので、「やあこんにちは」と挨拶すると、いくら食べても減らない万能御飯を呉れた。10/8

その天気占い師の予報はとてもよく当たると評判なので、試しに手相を見てもらったら、おらっちがいつどこでどんな風に死んでいくのかを延々と語り始めたので、怖ろしくなって逃げ出した。10/9

この辺りは英米贔屓の地方かと思っていたのだが、ことごとく独逸、それもナチ贔屓の家ばかりなので、驚いているうちに村八分に遭ってしまった。10/10

ナンシーが緑色のコンブ状の異物が漂っている風呂の水をきれいにしてほしいと再三再四頼んでくるのだが、そのコンブが大好きなおらっちは、その都度断っているのだ。10/11

眠っている間に大量の寝汗を出しながら、物凄く怖い夢を見たので、夜中に箪笥の中から取り出した別のパジャマに取り換えたのだが、またしても怖ろしい夢を見そうでこわい。10/12

家族みんなで山間の宿に泊っているのだが、とても寒いのでこたつの中に入っていると、いつしか妹と2匹の犬になってしまって、お互いの頭と頭を突き合わせ、もたれあって体を温めあっている。10/13

夕方2匹で宿を出て、くらくふ谷を下って町の方へ降りて行くと、四つ角に大きな獅子のように獰猛そうな謎の動物が瀊居していて、ウオオオ、ウオオオと威嚇するので、怖ろしくなって宿まで逃げ返ったのよ。10/14

宿に戻って、また炬燵に入って2匹の犬になってお互いの頭と頭を突き合わせ、もたれあっていると、だんだん温かくなって体中が気持ちよくなってきたのよ。10/15

明日3年の死刑囚の刑が執行されるのだが、3人とも短歌の詠み手なので、三者三様の辞世の歌を遺せるよう、獄中歌人指導員のおらっちは朝からてんてこ舞いの忙しさだ。10/16

そのうちの一人は知る人ぞ知る歌人なのだが、いったん確定した挽歌を、2度3度と書きなおし、執行寸前におらっちに口伝えた最終改訂版が全集に収録されることになった。10/17

我が身にフライトあるやも知れず、というフレーズが脳裏に浮かんできたので、大いにもがいていたら、不意に空中に浮かんでしまった。10/18

逝きし春の頭を台座から取り外して、その本体はもとより、汚れたネジや蝶つがいを綺麗な水で丁寧に洗い流すこと。私はその作業を率先して「やりますり!」とと名乗り出たのだが、それが軽い認知症のしるしだとは夢にも思わなかった。10/19

年に1、2回だけ東京に出て芝居か展覧会を見物することがあるのだが、その時昔ながらの上品な良家の奥さんを見て心が動くこともあるが、もう若さも元気もないので日本画の中の登場人物を眺めるようにしてしばらく遠くから眺めているのである。10/20

これは、女性が妊娠しているか否かが分かるダンスだと誰かがいうたが、いくら見詰めてもさっぱり分らんかったずら。10/21

編集長にレイアウトを見せながら色々相談しようと思っていたら、酔っぱらった編集長の傍に問題のあるキャメラマンが同席していたために、ちゃんとした打ち合わせができず、ヤバイことになっちまった。10/22

巴里の街中で私が迷っていると、親切なモノンクルオジサンが、「これで好きな所へ行けるよ」

というて自転車を貸してくれた。シャトレ座での子ども作文教室が終わったので、「ラインの黄金」を見物しようかとも思うのだが、どっちのオペラ座なのか分らないのだ。10/23

私は統一庁から何百万人という大家の治安を維持するように命じられたが、具体的にどうしていいのか分からないので、アオバセセリを捜して野山をほっつき歩いていた。10/24

あたしは関西支社ではいつもチヤホヤしてもらっているので京都支局を拠点に関西ネットアークを構築し、すちゃらか大放送を繰り広げようと秘かに構想を巡らせていたのだが、大阪と神戸支局の大反対で脆くもついえさった。10/25

わが大全集を自由が丘まで持参することになったのだが、あの部厚い5冊をどうやって詰め込んだらいいのか考え続けていると、いつの間にか朝になっていた。10/26

ドコモが1万円で売り出したので、こっちは9千円で対抗することにしたが、どっちもどっちなので盛り上がらないずら。10/27

エレガントな婦人服を覆い切りパンクなイメージで売ったらどうなるだろうと意欲的な宣伝広告キャンペーンを展開してみたのだが、売上はまったく変わらなかったので、阿呆らしいことをしたと反省したのよ。10/28

万事が絶好調で推移しているので顔の助が急に自信過剰になって「やいおめえら、よっくこの顔の助の顔を見ておけ。いまおらっちがオタケビを上げるからな」といって雄叫びを上げた途端に龍になって空の高みに飛び去った。10/29

「クイズの塔」という名ののっぽビルジングが立っていて、例えば3階は人文、4階は地理、5階は人情というふうにカテゴリー別に分類してあるのよ。10/30

 

2023年11月

大恩ある大親分を逃亡させるどころか、おらっち自身が逮捕せざるをえない事態に陥り、おらっち激しく後悔したのだが、後の祭りだった。11/1

EUDころ60を丘の上から犯久で落下させ、イタリア平にケアとうさせたのよ。11/2

イスラエルのミサイルが飛んできてあたいの家を家族丸ごと爆破したが、あたいだけは生き残って瓦礫の山の底から這い出てきたのよ。11/3

「さあ、これがトヨタの最新力作だあ」というて、ハイブリッド車を勧められたが、それが今や世界の最前線にある電気自動車からいかに時代遅れの代物であるかがてんで分っていないようだった。11/4

今夜のコンサートが終了したあと、解散する人の流れが分かったので、明日は各種演奏会のチラシを満載したキオスクを要所要所に配置しようと思った。11/5

世界中の山々を征服したそのアルピニストは、帰国するとタデシナ高原の麓に隠遁し、ついに征服できなかった若い娘と暮らしているそうだ。11/6

なんせ右翼放送局の肝入りでできた映画なので、スクリーンのところどころでその肝を見せつけると、観客衆はそのエグイ醜さと悪臭にのけぞるのだった。11/7

上司がねえ。まっことくだらんことばっかりいいくさるので、ドタマにきたおらっちは、そいつをぶっ殺してしもうたが、あまりいい気持にはなれなんかったずら。11/8

こんにちはイデです!という声がしたので、え、あのイデ君が我が家に顔を出したのかあ、と驚いて階段を駆け下りて玄関口をのぞいてみたのだが、イデ君の影も形も見えなかった。11/9

おらっちっが車に乗せられて警察へ向かう途中、対向車に乗っていた黒犬が窓から窓へ飛び移って、おらっちの顔をペロペロ舐めまくるので参ったずら。11/10

昼飯を息子と一緒に食べようとソバ屋で1時間近く待っていたが、まだ順番が来ない。今思い出したのは、息子はソバなんか好きでもないし、もしかすると出されても食べないかもしれない。最初から豚カツ屋に行けばよかったと激しく悔んでいる。11/11

その人と話していると、その人もこの世ではもう二度と私と会うことはないだろう、と思いながら話していることが分って、なんだか悲しくなってしまった。11/12

アメリカ移民300ドルが終わると、自動的にチンと日付が変わって、音メタ的に大音量の太鼓が鳴る、というさいしんしきシステムだった。11/13

グリュミオーとハスキルがモザールの後期ソナタを演奏するというので、久し振りにサントリーホールにいったら、カザルス、コルトー、フルトヴェングラー、ワルター、クレンペラー、新しいところではグールドやクライバーまで聴衆席に収まりかえっていたので驚いた。11/14

不人気の異次元内閣がとんぷく薬局のお薬手帳でポイントが溜まると全員アロハでハワイ旅行に行けるようにしたので、とんぷく薬局だけは大繁盛だ。11/15

おらっちは「3月6日の武装蜂起は占い師が験が悪いというから、4月1日にしよう」と説いたのだが、仲間たちは「いやそれは4月バカみたいだから断固3・6にする」と言い張って決行したのだが、案の定失敗に終わったのよ。11/16

脳味噌の塩梅が悪いので、いつもの脳外科にいったら早速いつものように開頭して「こいつのせいでアセラル効果が減退したんでしょう。全部切除しときましたから、すぐに良くなるでしょう」と明言したのだが、半年経っても良くならないのはなぜだろう。1/17

山陰本線の綾部駅を降りるとタクシーが停まっていなかったので駅前から西町商店街を通って西本町25番地のてらこ下駄屋に着いたが誰もいなかった。11/18

カーペンターズから招かれて楽隊かと思って加盟したら、これが大工の組合で、壊れた煉瓦塀の体積を計算することが中学時代と同様全く出来ないおのれに気づいて、やっぱし駄目なんだと絶望してカーペンターズを辞めたのよ。11/19

紅楼夢に出てくるような女のような男のような子どものようなチャイナドレスを着た纏足娘を踏んだり蹴ったりしていたぶっていたら、急に吐き気がしてやめざるを得なくなった。11/20

ここは南米のどこかなのだが、大平原に無数の灰色の鳥が歩き回っているのだが、おらっちはその名を知らないし、知りたくもないずら。11/21

横長のテーブルの真ん中に座らされて食事をしている。右には大好きな女の子がいるのだが、左は大嫌いな上司だ。ステーキを喰っている最中にお腹が痛くなってきたのでトイレに行きたいと思うのだが、まっこと難儀なことになったずら。11/21

「コハコナラズ」という言葉が乱発されるのだが、その意味が分らないので迷惑だ。「子は子ならず」だろうか? 「孤は孤ならず」だろうか? それとも「こはこならず!」なのだろうか?11/22

鎌倉に早く帰りつかなければならないので、気ばかり焦る。見知らぬ駅に平戸橋行とかいうバスが停まっていたので、思い切って乗ってみたのだが、運転手も乗客もいないのでどっち方面に行くのかさっぱり分からない。11/23

我が軍営を視察に訪れたパナナン大将は、まっさきに便所の中に入ってその汚らしさに鼻をつまみながら、「トイレをきれにしない軍隊が敵に勝ったためしはない」と大声で訓示を垂れたのでした。11/24

玄関で話声が聞こえるので急いで2階アから降りてみると丸坊図のジョージの後ろ姿がとらっと見えたのでジョ0イ、ジョージと(叫んだが「行ってしまった。残念な「ことをした。11/25

ある夏の日の朝、突然あらゆる交通機関が停まってしまった。
大勢の人が職場へ行こうとしても、電車もバスもタクシーも動いていないのでどうしようもない。その結果、国民の大半が丸一日自宅待機の状態になってしまったが、このことについて当局からの発表は何もなくマスコミも何も伝えない。

人々は疑心暗鬼に駆られながら眠れない夜をすごしたのだが、夜が明け、翌朝になっても事態は何も変わらず、電車もバスもタクシーもまったく動いていない。
ここ首都圏から少し離れた海辺の旅館では、朝から宿泊客たちが大広間に集まって、三々五々ああでもないこうでもない、と口々に自分の意見を述べるのだが、相変わらず確かな情報はどこにもない。
旅籠のおかみの老婆が、勘定場から出てきて、最新の国連情報を披露したが、その中にも今回の事件に触れた発表は何もなかった。
すると、なぜかおらっちの弟の善チャンが出てきて、母の愛子さんから聞いた話を始めたので、何か重大発表かと思ったみんなが耳を澄ませると、案に相違してこんな昔話だった。
今からおおよそ半世紀前の昔、夏場は臨海学校だったその旅籠に連れてきた中津川のおばさんは、まだ幼かった愛子さんに「早寝早起きせんといかんで」と言い含めたそうだ。11/25

あたしは海風の中に塩のにおいを感じた。うず高く積まれた塩浜の丘の上に立つと、空の上に2つの鯱鉾が浮かんでいたが、それがバッハの2丁のヴァイオリンのための協奏曲を演奏しているのだった。11/26

昨日はクロネコヤマトの人に助けてもらったのだが、今朝はそのクロネコの車が別のクロネコの車とバス停の傍で衝突していて、昨日の親切な運転手が車の下敷きになって血塗れで苦しんでいるので、おらっちはなんとか恩返しをしようとケータイを取り出したが救急車の番号が分らないのだ。11/27

リーマンたちはみながみな別人AIを所有していて、午後5時に退社するとそれから後はその別人AIが残業したり、有楽町のガード下でいっぱいやったり、AI同士で新年会や忘年会に出たりするのだった。11/28

昔の映画をみていたら銅山が出てきたので、「あ、銅山だあ!」と叫んだら、「違う、象だ、だ。象山だ」というて佐久間象山が現れた。11/29

昼過ぎにみすぼらしい男の子が迷いこんできたので、仲良く一緒にマツボックリ遊びしたのだが、「キミ、どこから来たの?」と訊ねると「御成から」という。彼の父親がモーリタニアの女性と再婚して3人で死んでいると言うので、家まで送っていくことにした。11/30

頼まれた原稿にどうも現世秩序と権門の禁威に触れる文言があったようで、編集者が気にしているようだが、それらの空気に忖度して早手回しに原文の修正や削除を申し出ようとするおのれの醜さを恥じて、じっと沈黙しているところだ。11/30

 

2023年12月

血塗れの瓦礫だらけのガザの地で土俵入りした熱海富士の右足が夕陽の逆光ですっくと伸びたシルエットが美しかった。12/1

怪しい男が海水浴場で少年のカメラを持ち逃げするのを目撃したケンちゃんは、こんな卑劣な行為をする奴は絶対に許せない! これから裁判長になって牢屋に叩き込むのだ!と息巻きながら、ハンオコを押し続けるのだった。12/2

わが隊の指揮官は、「戦闘が始まっても、すぐには反撃せずに、本部の判断を待ってからにせよ」と命令したが、いざ戦闘が始まると、おらっちを含めた兵士の全員が撃って撃って撃ちまくったのだった。12/3

研究費が枯渇してしまったので、私は図書館の特別顧問兼守勢研究員に就任し、自分の研究に必要な書籍資料はぜんぶ購入してまかなうことにしたのよ。12/4

刑法が改訂されてクガタチで犯人捜しをすることになったので、自民党安倍派には誰もいなくなった。12/5

絶好球が来たので、得たりやおうとバットを振ったのだが、ホームランにはならずセンターを超えるライナーになってしまい2塁までしか行けなかった。やや内角寄りの球だったのでちょと詰まったのだろう。12/6

新人類が新人世、新人世と叫び続けるのでそれはどういう意味なんだろうと考えつづけているうちに朝になったずら。12/7

由良川の河川敷にやってきた都会育ちの純ちゃんが、偶々ヒバリの巣を見つけて、新品の革靴で土を詰め込んで入り口を塞いでしまったので、上空を舞っている親ヒバリが心配で心配でピー、ピー鳴くと、穴の奥から子ヒバリたちも助けて、助けてと懸命に鳴き叫ぶのだった。12/8

2人の少女は赤い三角錐の上に乗って微動だにしなかった。が、しばらくすると三角錐から降りた小さいほうの少女が、大きい方に向かって、「ここは危険になってきたから、しばらくスイスに逃げましょうよ」というのを聞いて、これはまずいことになったな、と思った。なぜなら私は大きい方の少女に恋していたから。12/8

地下にある温泉に入ろうと暗い廊下を歩いていると、いきなり抱きすくめられたので、そいつの横顔を見るとなんとジャニー野郎だったので、振りほどこうとしたが物凄い腕力である。なるほどだからジャニーズの連中はみんなやられてしまったのかと得心できた。12/9

おらっちと彼女との付き合いを深紅のカアテンの陰からいつでもそっと監視しているのが彼女の兄弟であることを、おらっちは知っていた。12/10

掌を海にたとえたりすることがありますか?と聞かれたので、いいえ、でも右手の親指よ人差し指を湾の入り口とみなしたりすることはありましたね、と答えた。12/11

我はあまりにも感情的な、彼奴等に言わせると扇情的な文章を書くというので、あっという間に言論界から干されてしまった。12/12

久し振りに忘年会が開かれるというので企画室の会場に行ったら誰も居ないので、宣伝の会場に回ったら、セイさんとイマナカさんがぐでんぐでんに酔っぱらっているだけで誰もいなかったので、仕方なく家に帰って寝た。12/13

同級生のマリちゃんに会ったら、顔の右半分は火傷をしたのか黒くなっていたが、右半分は雪のような白肌だったし、相変わらず大きな瞳でこっちを見据えたので、覚えずギクリとした。さすがはツウちゃんと並んで仏文のマドンナと言われただけのことはある。12/14

戦場で負傷して担ぎ込まれた病院でレントゲン写真を見せられたホームズとワトソンは、欠落したお互いの骨と骨とを組み合わせると初めて1人前の人体になると気が付き、退院してからは一緒に暮らすようになった。12/15

向こうのあぜ道を風采の上がらない猫背の男が歩いているので、「やあこんにちは!御機嫌いかが?」と訊ねたら、「戦なんかくだらないからやめれ」とぼそりというので、やっぱりミヤザワ選手だったんだと思った。12/16

我ら兵士は敵を「丸太」と呼べと上から命じられ、その丸太を銃剣で突き刺していたのだが、ちょっと勇気のある兵士はわざと体すれすれの地面を突き刺して良心の呵責の試練に遭わないような配慮をしていた。12/17

その洋館に迷い込むと、イケダノブオ夫妻がつくった「ゴーン/おふ」という題名の西洋童話風の幻想的な動画を上映していた。12/18

瀕死状態でくたばりかけていたおらっちを助けてくれたサンタクロースは、おらっちを赤鼻のトナカイの橇に乗せてその酒池肉林の館に連れて行ってくれた。そこでは4人の絶世の美少女がおらっちにつききりで面倒を見てくれたのだが、おらっちはその中の一人だけ2を熱愛したので残りにの3人の憎しみをかったのだった。12/19

男3人と女3人合計6人でサル金持ちの別荘で遊んでいたんだが、いつの間にか2組の男女が居なくなってしまった。春の夜は長いので、残された僕たち2人だけでダブルベッドに横たわって、なんとなくなるようになってしまったずら。12/20

誰かが書いた極秘文書のおおかたは削除したのだが、最後の4項目だけはいくらやってもどうしても消せないので、「崇神天皇の怨念のせいだ」ということになった。12/21

その韓国の寿司名人がつくった寿司は最高にうまかったので、同じ韓国人のおらっちは、「これからは寿司は韓国に限る。北朝鮮は知らないけど」と思わず叫んだのよ。12/22

私は頻尿なので、定期的に泌尿器科で薬をもらって飲んでいるんだが、子規の晩年と同様に食後にどっさり柿を食べるので、いつまでたって頻尿は治らなかった。12/23

3Dデジタルで放送されたsの障子の桟の美しさは比類がないもので、全世界から賞賛の声が寄せられたそうだ。12/24

おらっちが山道を登っていくと道端に2つの毬栗と10個以上の菓子パンが落ちていたので、それらを拾いながら急な坂を上っていると、後ろからやってきておらっちに追いついた女の子が、「これはうちで焼いたパンだから、返してください」という。12/25

バカダ大学ノヒジョーキン講師になって、「現代の音楽論」を担当することになったのだが、現代も音楽も不案内なので、仕方なくNHK-FⅯの「現代の音楽」を録音したやつを学生に聞かせてお茶を濁していたら、各方面からクレームが来たので、困っているところ。12/26

シガハラ印刷のシゲハラ社長に中山競馬では武豊をどっさり買ってくれと頼んだはずだったが、見事に一等賞に輝いてから連絡してみると、忙しくて馬券を買い忘れたというのでガックリだった。12/27

私らは同じ学校の国文、英文、仏文、独文の4人の男女の同級生だったが、毎日のように学食でランチをしていいるうちに、2組のカップルに分かれていったのよ。12/28

敵の火力がいかに優勢でも、わしのピンが1本でもあれば、そいつを使って彼奴らをあっという間に全滅させてしまうので、わしはマーラーの第1番とか「内乱の予感」とか、進撃の巨人」とかいろいろに呼ばれていた。12/29

近くの大学の構内を散歩していたら、部室の中に綺麗なネエンチャンが1人で座っているのを見つけ、色々話をしていたら、なんとなくお互いにモヨウしてきたので、ここで一気に畳みかけようとおっぱじめたのだが、すぐさまおらっちは不能人間だったことを思い知らされる羽目に陥ったずら。12/30

膵臓ガンのステージ4の宣告を受けたおらっちは、日向国の南端の浜辺の村で最期の日を迎えることにした。12/31

2人で協働して敵をやっつけるゲームをしているのだが、肝心のその相方がトロクてなかなか攻めきれず、イライラするのだが、その相方もおらっちをトロイと思っているらしい。12/31

九州の最南端の、村には1軒のホテルしかないという僻地の映画祭に招待されてやってきたおらっちだったが、ホテルでの飲み食いはサインで許されるとしても、帰りの交通費すらないので、映画鑑賞どころではなかったずら。12/31

 

 

 

梅待ち

 

原田淳子

 
 

 

もうみない夢を待つ

かなしみを繙く

言葉は初雪にとけた

音のない泡が生まれて消えて

あれを時というの

正しい襟裳のような花弁
白く、淡く、直立す

天を指す花は
実をつけない

邪悪さとひきかえに
孤独が遺される

咳の震え
骨の疼き
痛みは胴体をめぐる旅人

身体のなかの島々

横たわる身体は黄昏れ、
洞窟は永遠の空を映す

目を閉じて、春

 

 

 

絶望の国の幸福な鯨 ***

 

無一物野郎の詩、乃至 無詩! 62     nao さんへ

さとう三千魚

 
 

闘いが
続いている

地震も
あった

政治は腐ってる

おれは
行くよ

旅に
出るよ

バイクで行くよ

ハマボウの咲く
海辺の

街に
行くよ

 
 

***memo.

2024年1月8日(日)、
浜松「八月の鯨」にて、
「 無一物野郎の詩、乃至 無詩!」として作った63個めの詩です。

タイトル ”絶望の国の幸福な鯨”
好きな花 ”ハマボウ”

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

大好きな貴女と ***

 

無一物野郎の詩、乃至 無詩! 62     kaoru さんへ

さとう三千魚

 
 

行ったね
きみと

行ったね

赤石岳
行ったね

咲いていたね
咲いていたよ

紫色の花
オダマキの花

揺れていた
揺れていたね

登ったね
一緒にね

 
 

***memo.

2024年1月8日(日)、
浜松「八月の鯨」にて、
「 無一物野郎の詩、乃至 無詩!」として作った62個めの詩です。

タイトル ”大好きな貴女と”
好きな花 ”オダマキ”

 

 

 

#poetry #no poetry,no life