秋のはじめのねこじゃらし ***

 

無一物野郎の詩、乃至 無詩! 49     maiko 様へ

さとう三千魚

 
 

はな
なのかな

ねこじゃらしは

はななのかな
風に

揺れていた
秋なのか

ねこを
じゃらす

風がとおる

 

 

***memo.

2023年9月2日(土)、川根文化会館 古本市にて、
「 無一物野郎の詩、乃至 無詩!」として作った49個めの詩です。

タイトル ”秋のはじめのねこじゃらし”
好きな花 ”ツバキ(赤)”

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

声を聴く

 

さとう三千魚

 
 

目覚めると
モコは

わたしの顔を見てた
わたしの起きるのを

待って
いたのか

モコを
抱いて

階下に降りる
庭でオシッコをさせる

あたらしい
水をあげる

老いて弱ったモコに
白身魚のお粥作ってあげる

モコ
お粥を黙って食べる

食べて
静かになって

モコは
仏間の座布団に”し”の字になって眠った

窓の外から
虫の

リリリリ
リュリュリュリュリュ

声が
聴こえる

今年の夏は暑くて
ハグロトンボの庭に浮かぶのを見なかった

最後に
電話で話したとき

“元気じゃないですよ!”とあなたは大きな声で笑った
わたしも笑った

あなたが逝って一年になる

 

 

* 2023年8月29日 志郎康さんへ

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

鬼ごっこ *

 

さとう三千魚

 
 

昨日
帰ってきた

西馬音内では
女たちや

男たちが
編笠や頭巾を被り

かがり火に照らされてお囃子で踊るのを見ていた
みどりの稲穂が平らにひろがり風に揺れるのを見ていた

鬼が

鬼たちが
つかまえられない

母に送った薔薇が姉の庭に深紅に咲いていた
桑原正彦の絵が母の部屋の漆喰の壁に掛かっていた

母も
桑原も

いないが
いつか

また
会おう

 
 

* 高橋悠治のCD「サティ・ピアノ曲集 02 諧謔の時代」”スポーツとあそび” より

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

浜辺では

 

さとう三千魚

 
 

一日
部屋にいて

本を開いたり
写真を

サイトに上げたり
してた

夕方には
クルマで

浜辺に行った
珈琲をポットに入れて

ディランを聴いて
行った

“One too many mornings” だった

波がうねってた
飛沫があがってた

そのヒトは最後に母の詩を書いた

そして
九月に逝った

浜辺では激しい雨を受けた
浜辺では激しい雨を受けていた

 

* 2023年8月15日 敗戦の日に

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

公園で

 

さとう三千魚

 
 

七月には

近所の公園の
花たちに

水をやった

サルビア
ジニア
コリウス

どれも地上の花たちだった

毎朝
水をやった

たまに
夕方もやった


おいしいかい

花たちに話しかけた

七月が
終わった

八月に福生の街を女と歩いたことがあった

遠い日
夏草が茂っていた

光ってた

塀の外へ
歩いた

草叢に佇ってた

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

ラストダンスはわたしに ***

 

無一物野郎の詩、乃至 無詩! 48     jyun 様へ

さとう三千魚

 
 

赤や
黄色

白や
ピンク

むらさきいろ

ドレスは
いろいろ

箪笥にある

百日草だった
ダンスホールの花だった

遠いのか
近いのか

遅いのか
早いのか

青いのか
深緑か

わからない

最後に
踊りましょう

わたしと

 

 

***memo.

2023年7月24日(月)、自宅にて、
「 無一物野郎の詩、乃至 無詩!」として作った48個めの詩です。

タイトル ”ラストダンスはわたしに”
好きな花 ”百日草”

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

ベランダ ***

 

無一物野郎の詩、乃至 無詩! 47     yu 様へ

さとう三千魚

 
 

地上だろう

ベランダこそ
地上だろう

乾いている

なにも
置かない

洗濯物が風に揺れていた
いつまでも

風は
吹いた

そのひとは佇つだろう
そのひとはベランダに佇つだろう

佇つ

あじさいだった
青い

 

 

***memo.

2023年7月17日(月)、自宅にて、
「 無一物野郎の詩、乃至 無詩!」として作った47個めの詩です。

タイトル ”ベランダ”
好きな花 ”あじさい(青)”

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

塀の外へ

 

さとう三千魚

 
 

昨日
こだまに乗った

いつも
こだまに乗る

11番A席だった

海側の席に座り
由比と

熱海と
小田原で

海を見る

新宿駅で降りた
中村屋で秋艸道人の書を見る

横浜の新高島駅のBankARTでAyakaのタイ語の絵を見る
URUNOの動くオブジェを見る

塀の外へ

歩いてみる
残るものがあるのか

歩いてみる

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

ミシンとギター ***

 

無一物野郎の詩、乃至 無詩! 46     jyuki 様へ

さとう三千魚

 
 

ジーンズの


空いた穴

ザクザク
ミシンで

縫った

縫い目
尖って

ギター
キィーン 鳴った

薔薇赤い

赤い
赤い

薔薇
咲いた

 

 

***memo.

2023年7月2日(日)、静岡市水曜文での即興詩イベント、
「 無一物野郎の詩、乃至 無詩!」第十五回で作った46個めの花の詩です。

タイトル ”ミシンとギター”
好きな花 ”薔薇の花”

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

いちばん古い記憶 ***

 

無一物野郎の詩、乃至 無詩! 45     kokoro 様へ

さとう三千魚

 
 

わすれてた

たぶん
おぼえて

ない
風が流れてた

れんげ草の
花の

香りがした

とつぜん
なみだ

流れた

 

 

***memo.

2023年7月2日(日)、静岡市水曜文での即興詩イベント、
「 無一物野郎の詩、乃至 無詩!」第十五回で作った45個めの詩です。

タイトル ”いちばん古い記憶”
好きな花 ”れんげ草の花”

 

 

 

#poetry #no poetry,no life