海を見に行く

 

さとう三千魚

 
 

昼前に
銀行の

キャッシュコーナーで
現金を下ろした

それから
帰って

いくつか
浜風文庫を更新していた

辻さんの赤ちゃんの詩と
広瀬さんのブロック塀の写真を

公開した

午後に
海を

見に行く
クルマで行く

椅子を
すこし倒して

海を見てた
ポットのコーヒーを飲んだ

西の山がいた
灰色の空がいた

この空に
ドローンはいない

砲弾も
機銃掃射も

ない

ミサイルも飛んでこない

鳩たち
寄ってきた

海は
昨日の雨で濁っていた

波立って
いた

午後の海を見て帰ってきた

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

雨を受ける

 

さとう三千魚

 
 

墓参に
行った

昨日
女と

行った

義母の命日だった
犬のモコの四十九日だった

雨が
降っていた

アスファルトが濡れていた

墓参の後
女と

蕎麦を食べて帰ってきた

庭には
白木蓮の花が咲いた

白い蕾と花は
空にひらいていた

雨を受けていた

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

海と空と雲をスケッチする

 

さとう三千魚

 
 

夕方に

コーヒーをポットに入れて
クルマで

海に出かけた

モコはいない
海がいた

空がいた
雲もいた

カモメがたくさん飛んでいたよ
風が吹いていたよ

クルマのバックドアを押し上げて
その下に

椅子を置いた
コーヒーを飲んだ

それから
0.35mmのシャープペンで

海と空と
雲を

スケッチする

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

10人称 ***

 

無一物野郎の詩、乃至 無詩! 66     mito さんへ

さとう三千魚

 
 

どこに
いるの

どこに
いったの

きみは
人称をなくした

時計まわりに
まわっていた

白い花
まわっていた

落ちていった
まわっていた

 
 

***memo.

2024年2月4日(日)、
静岡「水曜文庫」にて、
「 無一物野郎の詩、乃至 無詩!」として作った66個めの詩です。

タイトル ”10人称”
好きな花 ”時計草”

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

冬の青い空 ***

 

無一物野郎の詩、乃至 無詩! 65     miyuki さんへ

さとう三千魚

 
 

音が
なかった

たいらな

雪原の
うえには

青い空がいた

青いね
青いね

春になったら
梅の花が

咲くよ

青空のしたに
梅の花は咲くよ

 
 

***memo.

2024年2月4日(日)、
静岡「水曜文庫」にて、
「 無一物野郎の詩、乃至 無詩!」として作った65個めの詩です。

タイトル ”冬の青い空”
好きな花 ”梅の花”

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

出会い ***

 

無一物野郎の詩、乃至 無詩! 64     ryou さんへ

さとう三千魚

 
 

はじめて
会えた

きみと
会えた

ぐらり
回転したわ

あなたが
わたしで

わたしがあなた

匂いを嗅ぐ

血を繋ぐ
血が騒ぐ

忘れない
あなたの歌

忘れないよ

 
 

***memo.

2024年2月4日(日)、
静岡「水曜文庫」にて、
「 無一物野郎の詩、乃至 無詩!」として作った64個めの詩です。

タイトル ”出会い”
好きな花 ”金木犀”

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

手紙をポストに入れる

 

さとう三千魚

 
 

昨日

詩を
読んでいた

朝から

詩を
読んでいた

尾形亀之助を読んだ

鈴木志郎康さんと
清水哲男さん
松下育男さんを読んだ

亀之助は

“ガラスのよごれ” *
“二人は淋しい” *

と書いていた

“生きのびることが、” **
“生きのびることが、” **

と志郎康さんは
二度くりかえしていた

“暑いなあ” ***
と哲男さんは言っていた

“「助けてくれ」” ****
と育男さんは夢の中で二度叫んだ

どうなんだろう
わたしは夢の中で二度叫ぶだろうか

彼らは低い土地に佇っていた
詩を書いていた

きのうまで
“以無所得故” が *****

わからなかった

風が
吹いてきた

手紙をポストに入れる

 

* 尾形亀之助 詩集「美しい街」より引用しました
** 鈴木志郎康 詩「赤ちゃん」(浜風文庫掲載)より引用しました
  ・赤ちゃん
https://beachwind-lib.net/?p=21235
*** 清水哲男 詩集「換気扇の下の小さな椅子」より引用しました
**** 松下育男 詩集「コーヒーに砂糖は入れない」より引用しました
***** “以無所得故”は、般若心経の一節

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

朝になるまえに

 

さとう三千魚

 
 

朝になる
まえに

珈琲を淹れている
珈琲の湯気の中に顔を入れてみる

年の初めに
モコは

消えた
白い骨になった

一昨日かな

ケージさんと
ジュンジさんと

飲んだ
ケージさんは絶食しているのだといった

痩せて
透明な眼をしていた

昨日

昼前に
河口まで走った

沖にタンカーが浮かんでいた

河口には
ノラたちがいた

なにも食べなかった
水と珈琲を飲んだ

いつか白い骨になる

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

絶望の国の幸福な鯨 ***

 

無一物野郎の詩、乃至 無詩! 62     nao さんへ

さとう三千魚

 
 

闘いが
続いている

地震も
あった

政治は腐ってる

おれは
行くよ

旅に
出るよ

バイクで行くよ

ハマボウの咲く
海辺の

街に
行くよ

 
 

***memo.

2024年1月8日(日)、
浜松「八月の鯨」にて、
「 無一物野郎の詩、乃至 無詩!」として作った63個めの詩です。

タイトル ”絶望の国の幸福な鯨”
好きな花 ”ハマボウ”

 

 

 

#poetry #no poetry,no life