家族の肖像~親子の対話 その46

 

佐々木 眞

 
 

 

タカハシ先生、傘貸してくれたお。
そう、良かったね。どこの先生?
鎌養の。

赤羽線、埼京線になったよ。
へええ、そうなんだあ。

ジュンサイ、美味しかったですよ、お母さん。
そう、良かったね。

今日、比嘉さん、見ます。
見てね。

解消って、なに?
元に戻すことよ。
停電、解消したってよ。
良かったね。

クイズ・タイムショック、好きでしたお。
そうなんだ。

お母さん、ぼくムクゲ好きですよ。
ムクゲ、お庭にありますよ。
咲いてないでしょ?
今はね。

おめおめって、なに?
仕方なく、よ。

お母さん、無条件て、なに?
何も条件をつけないで、よ。

おばあさん、車いすに乗ってるねえ。リハビリしてるの?
そうよ。

モリタ先生、バカたれと言ったんだよ。
いつ?
昔。

お母さん、ぼく「わろてんか」好きですお。
そう。お母さんもよ。

部分って、なに?
全体の反対。
なに?
全体の中の一部だよ。
なに?

さっさと、早くして、でしょ?
そうだね。

ぼく、アサザ好きですお。
そうなんだ。

お母さん、4千円になりましたよ。千円下ろしてね。
分かりました。

ミエコさーーん、お母さん、ぼくジュース1本にしましたよ。
そうしてね。

お父さん、トオルさん、おうちでお仕事してるの?
そうなの? しらないけど。

このへんで、ってなに?
ここらへんで、よ。

お母さん、もろいって、なに?
壊れやすいことよ。

お正月、みんな来るから大丈夫?
大丈夫よ。

縁起でもないって、なんのこと?
良くないことよ。
ちっとも知らなかった。

検出って、なに?
なんかが出てくることだよ。

げんに、って、なに?
実際に、よ。

こまめに、って、なに?
細かく、よ。

お母さん、証明ってなに?
ハッキリさせること。

圧倒的って、なに?
ともかく物凄いことよ。
圧倒的、圧倒的。

お母さん、言いつけるって、なに?
言いつけるはね、言いつけるよ。

なんてチエ先生、注意したの?
さあね。

―石原さとみのテレビ番組をみて
お母さん、ボク、ずっとさとみと遊びましたよ。
そうなの。良かったね。

図書館で本借りてえ、藤沢で定期買ってえ、東急でケーキとお弁当買いますよ。
分かりましたあ。

お母さん、農作業って、なに?
畑でお野菜なんか作ったりすることよ。

お別れ、悲しいですね?
悲しいね。

モロ難しいって、なに?
ほんとに難しいことよ。
誰が言ったの?
ケンちゃんが。「エキサイト・バイク」で。
そんな難しいゲームだったんだ。
そうなんですお。

ご褒美って、なに?
頑張ったお礼よ。

イケダ先生、介護しているの?
そうよ。

一同って、なに?
みんな一緒よ。
一同の同は、おなじ、でしょう?
そうよ。

うるわしいって、なに?
とても素敵なことよ。

オオタヒロシさん、ひげがあったんだよねえ?
あったねえ。

家元って、なに?
お花やお茶の先生よ。
イエモト、イエモト、イエモト。

ドはトに点点でしょ?
そうだよ。

お母さん、切りのいいところでって、なに?
ちょうどいいところで、よ。

お母さん、ぼくはマリオ好きだよ。
お母さんも好き。

お母さん、悔しいってなに?
残念、残念よ。
比嘉さん悔しくて泣いていたよ。
そうなの。

体調不良って、なに?
体調が悪いことよ。

意外に難しいって、なに?
思ったより難しいことよ。

パブリカって、なに?
ピーマンみたいなものよ。

「ごめんなさい」入るときでしょう?
そうだね。

十字架って、なに?
人を張りつけにするものよ。

「竹やさお竹ー」ってなに?
竹買いませんか、よ。

お父さん、「ばか!」「嫌い!」って言いましたよ。
いつ?
昔。
そうか。もう、言わないからね。

病院って、ケガしたときでしょ?
そうだね。

難しいって、難波の難でしょ?
そうだよ。
難波って、大阪でしょ?
そうだよ。良く知ってるね。
ナンバ、ナンバ、ナンバ

プロは専門家のことでしょう?
そうよ。
コウ君は、何のプロ?
ふきのとう舎のキャップのお仕事の。
そうだよね。コウ君偉いぞ!

お父さん、よっぱらっちゃダメでしょう・
ダメだよ。コウ君よっぱらったの?
よっぱらわないよ。

 

 

 

「夢は第二の人生である」或いは「夢は五臓六腑の疲れである」第81回

 

佐々木 眞

 
 

 

2019年12月

 

某大メーカーの疑惑の大幹部が、突然この丘にやって来たので、特ダネ記者の私はとっさにカメラのシャッターを切ろうとしたのだが、液晶画面が真っ黒で、切ろうにも切れなかった。12/1

スラッガーのヒロシさんを擁する私らのチームは、宿敵の松竹ロビンスと対戦したのだが、0対38の大差で敗れてしまった。12/2

最新式の設備が備わったその最新型車両には、車輪に鋭い刃が装備されていたので、線路の両側から飛びついてくる気違い老人どもを薙ぎ倒しながら、血飛沫をあげて前進することができた。12/3

敵に襲撃されて長い間病院に入っているオヤブンの見舞いに行ったら、案の定、敵の親分の暗殺決死隊のメンバーにされちまった。12/3

私が長年にわたって敬慕しつつ仕えていた鶴姫様が、実は無類の色情狂で、私以外の男と見境なく番っていたことを知って、私は大きな衝撃を受けた。12/4

長い間開いたこともなかった押し入れを開けると、見たことも無い藤色の装丁の分厚い書物が並んでいるので、何気なく右手に持った水差しで水をかけたら、妙な物音がした。それで驚いてもっとたくさんの水をかけたら、ドスンという大きな物音がした。12/5

部屋の中に転がり込んできたのは、年齢は不明であるが、紅いおべべを着た背の高い痩せた若い女性である。一番の特徴は、三日月の様な長い長いその顔で、しかも真ん中の鼻の辺りが凹んでいて、とても美人とは言えない。

私と母と妹の前で、べたっと座り込んだその謎の女は、私らの問いかけに、自分は物心がついてからずーとこの押し入れの奥で生活してきたこと、食べ物は夜遅く台所で漁ったことなどを答えたが、自分の正体については口を噤んだ。

じっと彼女の顔を眺めていた私は、その花王石鹸のマークの様な横顔が、母と瓜二つであることに気付いたが、母も妹も私も、そのことについては、何も言わなかった。12/5

我が家の家宝を雪隠に落としてしまったので、便器の下を大捜索していると、庭の中にナミアゲハとミヤマカラスアゲハが舞い込んできた。ナミアゲハは並みだが、ミヤマカラスはカラスアゲハより貴重なので、ケン君がこいつを捕まえようと駆けずり回っているがナミアゲハしか捕まらない。12/6

ふと見ると、美しい2頭の巨大なアフリカ象が、我が家の生垣を踏みつぶしながら侵入してきたので、吃驚仰天した私は、「ケン君、ケン君、象に気を付けなさい。踏み殺されちゃうよ!」と叫ぶのだが、彼はミヤマカラスアゲハに夢中で気がつかないのだ。12/6

私は村でたったひとつの「なんでもありの窓口」で、郵便切手を買ったり、書物を送ったりしていたが、その合間に知人に勧められて投資した株が高騰したので、長い人世で初めて巨万の富を手中に収めることになった。12/8

わいらあ大阪の芸人やけど、東京のテレビ局に行ったら妙な髪形にされてしもうたんで、その仕返しに、大阪にやって来た東京の芸人はんの髪形を懇意にしている髪結いはんに頼んで、滅茶苦茶にしてもらいましたんや。12/9

久しぶりにツウちゃんに会ったので、「君の弟さんは元気ですか?」と訊ねたら、急に眉をひそめて小さい声で「自殺しちゃったの。子供たちはまだ幼いのに」というたので、絶句した。12/10

妻と原宿駅までやって来たのだが、私は自転車だったので、木陰に停めている間に、細君は改札口から入っていったので、焦った私も突入した時に、ブルジョワのざーます夫人とぶつかってしまった。12/11

夫人は、その衝撃で「スイカが運賃を二重引きしてしまった」というて私に文句をいうので、懸命に謝っている間も、電車はどんどん進んで行き、四ツ谷駅で一緒に降りると、駅前で夫人の旦那が、借金取りに「10億円返せ」と迫られていた。

旦那は、「殺生な、10億なんてあるわけないやろ!」と喚き散らしていたが、夫人はいつのまにか傍に置いてあったモザール遺愛のフォルテピアノを指差して、「これなら10億以上の値打ちがあるわ。もってけ泥棒!」と叫んだので、万事めでたく解決黒頭巾。12/11

大洪水に襲われた国道を濁流が覆い、その水面を浮き沈みしながら、朝夷奈峠の中腹に安置されているはずの、丹波道人が寄進した慰霊碑が流されていくのが見えた。12/12

南軍は、水中戦で圧倒的な優位に立っていたのに、どういう訳だか、その利点を生かさず、ボケーとしていたために、北軍の反撃を許して、存亡の淵に立たされてしまった。12/13

こないだの地震の調査をしていたら、またしても物凄い地震に直撃されたので、巨大ナマズのタタリを懼れた私らは、もう一切の調査研究を放棄してしまった。12/14

イケダノブオの部屋の隣は、ナカノ君の狭い3畳間だったが、透明な強化ガラスを挟んだ向こうでは、大勢の子どもたちが、法被姿で勢ぞろいしていて、楽しそうに、歌ったり、踊ったりしていた。12/14

王宮の運転手の私は、王妃から上等の上着をもらったのだが、それを持ち帰ろうとすると警備員に盗人の嫌疑を受けそうなので、いつまで経っても帰宅できないでいる。12/15

「どうですか天の川さん、7月16日に神様と決闘するそうだけど、勝ち目はありそうですか?」と訊ねたが、天の川は返事をしなかった。12/15

月の光で「ロリータ」を読んでいると、見知らぬ女が部屋に入ってきて、私の膝の上に乗っかった。12/16

彼女は色香で落とすエンタメが超得意。「なんというてもと口先三寸で大儲けできますからねえ」というて、部屋の隅にある札束をあごでしゃくったが、あれって本物なのだろうか。12/17

理想の授業とは教師ではなくむしろ学生が主体になって行うべきだという説を試してみようと実地で試験してみたが、てんでうまくいかなかった。何か介在者が必要だと分かって来た。12/18

論争するときには、常の己の味方と宿敵を同伴しながら行うべしというお達しが出たので、Aさんは夫人と情婦を、Bさんは大江健三郎と石原慎太郎を連れて国会や裁判所へ行った。12/18

こんなに楽チンな仕事でいい給料をもらいながら趣味の絵も描けるし、おまけに最愛のロリータちゃんも傍におかせてくれるなんて、最高の会社だなあ、と私は思った。12/19

心中で願ったことがすぐに実現してしまう能力を天から授かった私は、世界一の悪人と日本一の悪人を亡き者にして下さいと祈ったところ、直ちにそれが現実のものとなり、夕刊のトップ記事になったのをみて衝撃を受け、自らの無化を願った。12/19

久し振りに駅に行ってプラットフォームに立って電車を待っていた。ようやく電車がやって来たが、それは「第一乗り」「第二乗り」「空飛ぶ人」の3種に分かれていてどれに乗ったらいいか分からなかったので、家に戻った。12/20

高い山の天辺から深い谷底を覗きこむと、白い百合の花がたくさん咲いていた。12/21

とにかく大家から毎日家賃を払えと催促されるので大変。月末になるとエレベーターにのっかって各フロアを大掃除するのだが、大家は支払いがよくて覚えめでたい店子には、自動掃除機を貸し出してやるのだった。12/22

私は営業の仕事を初めて担当したが、これほど難しいものとは知らなかった。得体のしれないクライアントの担当者とゴルフやテニスや競馬の話になったが、てんでついていけないので、ビジネスどころの話ではなかった。12/23

自由に器を作って構わないとうのでコーヒー茶碗を仕上げてそれなりに満足していたのだが、イケダノブオが作って呉れたやつはさすがにデザイナーらしい見事な味わいがあったので、脱帽した。12/24

昨日大阪支店に出張したのだが、レリアンの広告掲載誌が届いていないと文句を言われたので、それは困ったどうしようと思ったのだが、どうせ夢の中だからなんとかなるだろうとたかを括っているうちに、なんとかなってしまった。12/25

コバヤシ医師の海外でのボランテイア活動が多忙なので、彼はサントリーホールの招待券をその都度安倍蚤糞の大企業&金持ち優遇政策の犠牲になっているルンペンプロレタリアートの子女に譲っていた。12/26

2日間に亘って開催されたホーム運営対抗試合だったが、私らはようやく2日目に見事なチームワークで大勝利を収めたが、「ワンチーム」なる流行語だけは口にしなかった。12/27

私は大火山の大噴火を俯瞰しながら、絵を描いているのだが、燃えたぎる炎ととろけ出る溶岩の彩色がうまく行かないので、ヘリはいらだたしくホバリングを続けている。12/28

核戦争の脅威を避けて地下通路を逃げ回っていたら、東大安田講堂の地下食堂でマエダ氏のご両親と隣り合わせたので、「昔仕事にあぶれていた時代には、息子さんに大変お世話になりました」とお礼を言うことができた。12/29

格安の宇宙旅行に出かけた。学生と同じ部屋をシェアしていたのだが、巨大な名刺が飛んできて、2人の間に突き刺さったので驚いた。12/30

大阪支店から出張してきたオノダさんに、部下のオカダ君がしきりにちょっかいを出すので注意したのだが、なんのこたあない、彼らはすでにお互いに言い交わした仲で、それを知らないのは、私だけだったあ。12/30

私らは洗濯機、掃除機、給湯器、冷暖房機等、あらゆる家庭用機器のニーズに対応する万能型発動機の開発に成功し、既存のメーカーの顔色なからしめた。12/31

 

2020年1月

 

アオイケ夫婦と一緒に中国の田舎の山を登っているのだが、山が乗っているプレートが違うので、アオイケ夫妻は猛烈なスピードで山頂めがけて上昇していったのであった。1/1

イケダノブオは、森ん中のおばあさんのろうけつ染めを映像に収め、「これから私の最後の時をおめにかけましょう」というのであった。1/2

裏ぶれた素人オケに「第9交響曲」演奏の依頼があり、それを済ませて駅構内に入ると、エキコンをやっていたので、思わず私が歌い始めると、隣のオッサンから「お客さん、主旋律を勝手に歌ってもらっては困る」と文句をいわれた。1/3

公凶放送も、民放も、現地中継を放棄した後も、私らミニ地域放送局だけは、その虐殺映像を流し続けた。1/4

往年の大女優でもある有名デザイナーのアシスタントをしている私だが、彼女が超不得意なメンズのフォーマルウエアのデザインで四苦八苦しているのを見るのは、どうにも耐えがたい。1/5

退職軍人のチャーナイ氏に請われてジャングル映画に出ることになった。「正面を向いて立ってください」というので、言われたとおりにしていると、目の前に大蛇がぶら下がってきたので、慌てて逃げ出した。1/6

医務室へ行くと、2人の女子社員が、制服を着たまま布団の中で身悶えしているので、「大丈夫?」と声をかけると、彼らは、ちょっと身動きしてから、姿勢を変えた。1/6

これまで大事にしてきた天然物の魚と本水が、一瞬の不注意から濁水にまみれてパアになってしまったので、私はイケダノブオの誘いで熱海に赴いて、もういちどやり直すことにした。1/7

沖縄の綺麗な海で泳ごうと、遠路遥々飛んできたら、海水浴場は、もっと遠路から遥々飛んできた世界中の観光客で一杯だった。1/8

困ったことに完全AI制のわが社では、夕方の6時になって「さて残業しようか、それとも帰ろうか」と迷っている社員に対しても、さっさとご飯と味噌汁の簡単な夜食を供してしまうのである。1/9

環境問題の死命を制する大問題の投票に、無残に敗れ去ったこの男は、かてて加えて、広大な自宅が、失火で一夜にして燃え尽きてしまったので、絶望して世を去った。1/10

正月に夢を見たが、それは正月に夢を見ているという夢で、夢の中では餅つきが出てきた。1/11

この節は、中央線の快速も各停も、しょっちゅう爆破されるので危険だ。都心へ向かうなら、地下鉄なら比較的安全だというのだが、それだって当てにならない。1/12

わが社の花形デザイナーが、フリーランスになって飛び出すという噂を聞いた私は、それなら、自分がその跡目を襲ってやろう、と密かに決意した。1/12

私はいろんな大学を受ける人たちのために、夜中じゅうライトアップしてあげていたが、それがどんな役に立つのか、考えたことはなかった。1/13

「セイコウしても、セイエキが出ないんだね」と医者がいうたので、「しかり。さながら渓谷の空音の如し」と答えたら、「それはどういう意味ですか」と医者が訊ねたが、私にも分からなかった。1/14

山陰線の夜行で帰省したら、知り合いの女が、「彼女は鮨屋の娘なんやけど、大阪で企画と営業を両方上手にやっとるんやて」と教えてくれた。1/14

報道統制が酷くなってきたので、心ある報道者たちは、密かに裏チャンネルを作って真夜中にゲリラ放送をするようになった。「#内緒内緒のあのねのね」で検索すると、あの公凶放送ですらも物凄い安倍蚤糞の巨悪暴露放送を敢行している。1/15

おらっちは、暮らしに窮した隣家の要請に応えて、隣接地を次々に買収していったので、いつのまにか当地でも指折りの大地主に成り上がっていた。1/16

「決して開けてはならない」と言われた瓶の蓋を開いた途端、やはりアラジンが飛び出してきたので、私は「違う、違う、そうじゃない。お前じゃないんだ」と叫んだが、もう遅かった。1/17

おじいちゃんは、ガラガラの山陰線の上り列車の3等席で、揺本に振った「クハ」、「モハ」といった列車の略称記号を皺だらけの左指で示しながら、幼い私に、金春流の素謡の初歩を教えてくれた。1/18

2階で寝ていると、2人の女が布団に入ったり、出たりするので、寝られないから、「お前たちは誰だ?」と訊ねたら、「元ダンサーです」と答えるので、「じゃあ、今は何なんだ?」と聞いたが答えは無かった。1/19

ヴィヴァルディ大全集のCDの中に、1枚だけ尺八の演奏が紛れ込んでいたが、これが果してヴェルディの曲なのかどうか分からない。もしそうなら、世紀の大発見だ。1/20

会議では「日本からアジアへ、そして世界へ」というような言い方は、かつての帝国主義時代の外国侵略や植民地支配を想起されるので、やめたほうがいいだろうというような発言があったが、他の誰も何も言わなかった。1/20

五輪音楽代表決定戦で、ある選手が投げられてきた幼虫の塊を空振りしたという理由で敗退したが、これは見当違いも甚だしい。音楽と野球はジャンルが全然異なるのだから。1/21

編集部でうろうろしていたら、ある人物を紹介された。「どういうお仕事ですか?」とたずねたら、「表紙専門デザイナーです」という返事だったので、そおゆう職種もあるのかと驚いた。1/22

パスポートも航空券もないのに、空港にぶらりとやって来た私だったが、滑走路の隅っこに停まっている小型機に忍び込んで眠っているうちに、私は海上を飛行していた。1/23

それにしても、飛行機の長旅にもめげず、よくも遥々極東の島国まで歌いにやってくるものだと、オペラ指揮者の私は、西欧の歌姫たちに敬意を抱かざるを得なかった。1/25

私は一晩中不要スーツの補修にあたっていた。朝が来ると、それが廃棄される運命にあると知りつつ。1/26

我が家のfaxは出版社と接続されているので、編集部に出入りするfaxは、同時に我が家のfaxにも入ってくるのである。「それがどうした?」と聞かれても困るが。1/27

玄関に2人の客あり。1人はタナカコーキ、もう1人は近所の奥さん。前者は海外留学の打ち合わせだろうが、後者の用件は、聞いてみないと分からない。1/28

ビルの角で携帯が入ったポシェットを拾ったので、警察に届け、自分の名前を書いていると、その前の欄に私と同じ会社の同僚のヨシダ嬢の名前があったので、偶然とはいえ、少し驚いた。1/28

出張が終わって自宅に帰ろうとしたら、その途中で、なんかのはずみで、大川に鞄が飛び込んでぶくぶく沈んでいく。さあ大変だ。どうしよう。重要書類が、みなずぶ濡れになってしまうではないか。1/29

ぼくらは惑星探検隊。いよいよ新惑星に着陸するのだが、誰が行くのか指令がない。ヒグマが「オレ行きます」と勝手に乗り込もうとするので、「ちょっと待て!」と、おらっちは止めた。1/30

私たち医学部の新入生に対して、癌検査が行われたが、独りだけ該当者がいて、気の毒にも、治療終了まで自宅待機になってしまった。1/31

 

 

 

家族の肖像~親子の対話 その45

 

佐々木 眞

 
 

 

お父さん、後ろの反対は前?
そうだね。

お母さん、役に立つって、なに?
人のお手伝いができるってことよ。

お母さん、息がつまるって、なに?
息ができなくなることよ。コウ君つまったの?
つまりませんよ。

お父さん、高校って3年まででしょう?
そうだね。

ちなみには?
ついでに、だよ。

タケナカさん、いなくなってしまいましたよ。
タケナカさんって誰?
「盤上の向日葵」の。

◯はゼロに似てるね?
そうね。

アオイケさん、南浦和でしょう?
そうだよ。

お母さん、ぼくチャーハン食べてから、セイユー行きますお。
わかりました。

お母さん、ぼくは「転校生」好きですお。
そう。お母さんも。

落語って、なに?
面白いお話をすることよ。

図書館行ってえ、藤沢で定期買ってえ、回数券買ってえ、トウキューでお弁当買ってえ、ケーキ買いますお。
分かりました。

洗濯物、乾いた?
乾きましたよ。

205系は、車両が古くなったんですお。
そうなんだ。

こんど相鉄線、埼京線に乗り入れるよ。
そうなんだ。

出ますか?
出ますよ。

ボク、落花生好きですよ。
そう。
落花生、落花生、落花生。

いとしいって、なに?
かわいいことよ。

ウエダさんが「汚れ取りましたよ」といったお。
そうなんだ。

トダエリカ、大人になってからですよ。
なに?
トダエリカ、大人になってからのお話ですよ。
そうか、「スカーレット」の話ね。

コバヤシカオルとタカハシアツコ、なんで離婚したの?
なんでかなあ? それなんのドラマの話?
「幸せになろうよ」だお。

謝るは感謝の謝だよね?
うん、確かに。

よし、血圧測るぞ!
測ってね。

お父さん、正直にいいますお。
そうだよ、正直にね。

ぼく北海道新幹線、好きだよ。
そうなんだ。

お父さん、メイサ、武子とかでしょ?
それってなんの話?
「八重の桜」ですお。

お母さん、「至金沢八景」ってなに?
この道をずーっと行くと、金沢八景へ行きますよということよ。

お父さん、お巡りさんの英語は?
ポリスだよ。
なに?
ポリス、ポリス、ポリス。

いけねえ、駄目よ、のことでしょ?
そうだね

どこで冠水したの、道路?
千葉だよ。コウ君、冠水なんてよく知ってるね?

「コードブルー」、どんなお仕事する人?
ヘリコプターに乗って、怪我とか病気の人を助けるのよ。

ぼく「ルパン3世」おもしろかったよ。
そうなんだ。

お母さん、知恵って、なに?
よく考えたことよ。

カキモトコウゾウさん、亡くなったの?
そうだよ。

ぼくは、独りで南浦和行きますお。
そう。行ってね。

えーとねえ、カミウラさん、立て替えてくれたんだよ。
そうなの。良かったねえ。

ぼく、ガチャピンですお。
こんにちは、ガチャピンさん。お父さんはムックだよ。
こんにちは、ムックさん。
こんにちはガチャピンさん。

高速、お金払うでしょ?
うん、払うよ。

施は、ほどこしでしょ?
そうだね。

きっと、絶対でしょ?
そうだね。

お母さん、体調悪いって、なに?
身体具合が悪いってことよ。コウ君、体調悪いの?
悪くないですお。

さぞ、って、なに?
きっと、よ。

デザイナーって、なに?
いろんなかたちをつくるひとよ。

商売って、なに?
お店のお仕事よ。

エレベーター、物を運ぶとかでしょう?
そうよ。

お母さん、前進って、なに?
前へ進むことよ。

お父さん、脳腫瘍、おできでしょ?
うん、まあそんなもんだね。

カズエちゃん、お母さん元気?
元気だよ。

南浦和、タクちゃんとリョウちゃん、住んでたよ。
住んでたねえ。

小児療育の看護婦さん、ちょっと怖かったですお。
そうねえ。ちょっと怖かったね。
小児療育の看護婦さん、いなくなりましたお。
そうねえ、新しい人に変わったよね。
変わりましたお。

連佛さん、七瀬だったでしょ?
そうだったね。

びちょびちょって、なに?
水に濡れたときだよ。
びちょびちょ、びちょびちょ、びちょびちょ。

ぼく、バイカモ好きですお。
お母さんもよ。
お父さんも。

転院先て、なに?
移った病院よ。

ぼく、責任持ちますお。
そうなんだ。

お母さん、受け止めるってなあに?
いう通りにしてあげることよ。
連佛さん、受け止めるっていったよ。
そうなんだ。

お母さん、意外にって、なに?
思っていたことと違って、よ。

ぼく、おばあちゃん好きですお。好きなんですよ。
そう。お母さんもよ。

お母さん、ぼく小田急。小田急ゴゴゴ、ゴオー。

お父さん、減るの反対、増えるでしょう?
そうだよ。

お父さん、臨海線、東京にあるでしょ?
うん、あるよ。

もともとって、なに?
最初から、よ。

お父さん、シカにエサやると?
なに?
シカにエサやると、よろこぶよねえ?
うん、よろこぶだろうね。

 

 

 

マコとマコト

 

佐々木 眞

 
 

一人は男、一人は女
一字違いの名前だが、その他もろもろが随分違う。

男には姓も名もあるが、女にはなぜか姓がない。

男の名前は普段呼び捨てにされ、偶には「さん」が付くが、女には常に「様」とか「さま」が付く。

男はパンと家族のために額に汗して働いてきたが、女には、その必要はまるでなさそうだ。

男の稼ぎの一部(極ごく一部だが)は、女とその一族の暮らしのために提供されているが、
女からの見返りは全くない。

男はひどい猫背で、外に出ると蝶や地面の石ころなんかを見ているのに、女はピンと背筋を伸ばし、所謂「上から目線」で闊歩している。

この広い世の中で、男に頭を下げる人は誰一人いないが、女の前では、誰もが(あの慇懃無礼な独裁者でさえも)丁重に下げる。

これらの違いはずいぶん大きいのだが、何の因果でこのような差がついたのかについて縷々説明してくれる長屋のご隠居はいなくなり、今では学校の先生に訊ねても、ちゃんと答えてくれないようだ。

しかしながら、男と女の共通点もある。

男も女も現生人類=ホモ・サピエンスの対等な一員であり、万世一系か複雑系かはいざ知らず、どんどこ時代をさかのぼれば、先祖は縄文人か弥生人の山頭火のような風来坊に辿り着くはずである。

さて、ここで問題です。
もし男がパッタリ女に道端で出くわしたとしたら、男は女にどういう態度を取るでしょうか?
次の4つから選んでください。

1) シカトして、黙って通り過ぎる。

2) 恭しく低頭して、上目遣いにチラっと顔を見る。

3)「こんにちはマコさん、僕はマコトです。同じ漢字の名前なので、お見知りおきを! どうぞ宜しく!」
と元気よく挨拶して、さっと右手を差し出す。

4)その他。

 

 

 

人世万事不要不急

 

佐々木 眞

 
 

鎌響「春のコンサート」は不要不急
物見遊山は不要不急
テレビと映画は不要不急
後期高齢者は不要不急
歌舞伎も能も不要不急

アゼルバイジャン終わった
ベルラーシ終わった
ウズベキスタン終わった
エジプト終わった
エリトリアも終わった

冠婚葬祭は不要不急
学校のお勉強は不要不急
会社の仕事は不要不急
「不要不急線」は不要不急*
コロナ特措法も不要不急

赤道ギニア終わった
カザフスタン終わった
ルワンダ終わった
スーダン終わった
ベネズエラも終わった

大相撲春場所は不要不急
高校野球は不要不急
プロ野球やJリーグは不要不急
マラソン大会は不要不急
オリンピックも不要不急

カンボジア終わった
カメルーン終わった
チャド終わった
ビルマ終わった
キューバも終わった

町内会は不要不急
新築住宅は不要不急
国会審議は不要不急
不倫や性交は不要不急
煙草も薬物も不要不急

サウジアラビア終わった
イスラエル終わった
北朝鮮終わった
アラブ首長国終わった
ウガンダ終わった
ジンバブエ終わった

「桜の会」は不要不急
自衛隊中東派遣は不要不急
「検事総長人事」は不要不急
自公維新は不要不急
安倍蚤糞も不要不急

日本終わった
アメリカ終わった
中国終わった
ロシア終わった
英国も終わった

国家権力不要不急
人間存在不要不急
人世万事不要不急
譬え宇宙が終焉しようとも
喰う寝る放るが一番大事

日本が終わり
私もほとんど終わっても
生きていかねば
喰う寝る放るで
生きていかねば

 

*「不要不急線」とは、日中戦争から太平洋戦争に向かう最中の1941年8月30日以降に、政府の命令により線路を撤去された鉄道路線のことである。その目的は勅令第970号による重要路線への資材転用、もしくは勅令第835号による武器生産に必要な金属供出であった。(byウィキペデイア)

 

 

 

春宵三篇

 

佐々木 眞

 
 

人類滅亡まで終末時計残り100秒

 

「人類滅亡まで終末時計残り100秒」の声を聞いて、
こんな詩が出来た。

料理は、できない。
車の運転は、できない。
確定申告は、できない。
停電になると、どうしていいかわからない。
テニスは、できない。
仕事は、できない。
暗算は、できない。
外国語は、しゃべれない。
封は切れずに、指を切る。
缶詰は、開けられない。
スマホは、使えない。
古稀を過ぎ、ウインドウズが10になっても、捉音が打てない。
「ウっ」「グっ」「げっゲゲッ」「ぐっぐわッッ」

人類滅亡まで終末時計残り100秒
おらっち、人類滅亡残り3秒辺りまで粘りに粘って、
ゆっくり、ゆっくり、死んでいきたいな。

 

 

電光影裏に春風を斬る

 

一の太刀

少女が「大変、大変、大変よお」と叫んでいるので、
見に行くと、赤坂が、乃木坂と欅坂を、むしゃむしゃ喰うていた。

少年が「大変、大変、大変だお」と叫んでいるので、
見に行くと、赤坂を歩いていたキツネ、クジャク、オオカミ、ハクビシンを、
ヒトが、むしゃむしゃ喰うていた。

おばさんが「大変、大変、大変だよ」と叫んでいるので、
見に行くと、キツネ、クジャク、オオカミ、ハクビシンを喰うたヒトが、ヒトビトをむしゃむ喰うていた。

おじさんが「大変、大変、大変じゃん」と叫んでいるので、
見に行くと、ゴジラとキングコングが、ヒトビトをむしゃむしゃ喰うていたので、驚いた。

 

二の太刀

コウ君が「プールがプールを食べていますよ」というので、
見に行ったら、3月で閉鎖になるはずの栄プールを、
港南台プールが、がぶがぶ呑んでいた。

しばらく眺めていると、
その港南台プールを、
としまえんプールが、がぶがぶ呑んでいた。

ややあって、
ハリー・ポッターが、
としまえんプールを、がぶがぶ呑んでいた。

そんでもって、
クルーズ船ダイヤモンド・プリンセス号が、
ハリー・ポッターを、がぶがぶ呑んでいた。

それでどうなったかというと、
クルーズ船ダイヤモンド・プリンセス号を、
トランプと安倍蚤糞が、がぶがぶ呑んでいたので、また驚いた。

 

 

世の中みんな、障ぐわい者

 

ぐわあい、ぐわあい、障ぐわい者
世の中みんな、障ぐわい者
健常者なんて、一人もいない

目が見えない人 手足がない人、
聞こえていても、しゃべれない人
名前を呼ばれても、微動だにしない、できない人

遺伝子に異常がある人、帯状疱疹で激痛が走る人
腰が痛くて歩けな人、頭の中が水だらけの人
ケガや病気でなくても、加齢で耳が遠くなった人

ガンのステージ4で、吐きながら抗がん剤を飲んでいる人
何の因果か新型コロナウイルスに感染して、死にかけている人
朝から晩まで身動きできずに、ベッドで垂れ流している人

生まれながらに障ぐわいのある人は、たくさんいるのよ
外から見ても、障ぐわいがあるかないか分からない人も、多いのよ
人はみな、歳をとれば、障ぐわい者になるのよ

だから、人はみな障ぐわい者
よしんば五体満足でも、きみがすんごく評価しているトランプはんのように
悪魔に魅入られて、狂気に取り憑かれた人もいるのよ

万が一、きみがまた街頭に躍り出て
障ぐわい者たちを、次々皆殺しにしたならば
地球の上には、誰もいなくなる

残ったのは、きみが一人
立派な純正健常者の、きみが一人
あんたが夢見た、理想の世界だ

ぐわい、ぐわい、障ぐわい者
世の中みんな、障ぐわい者
健常者なんて、一人もいない

 

 

 

「夢は第2の人世である」或いは「夢は五臓六腑の疲れである」 第80回

 

佐々木 眞

 
 

 

最高権力に逆らった罰として、私は荒れ狂うゴリラの入った檻に入れられたまま血に飢えたサメどもがうようよ泳いでいる海の中に放り込まれた。11/1

バッハについての講演会があるというので、指定された会場に定時に到着したのだが、誰一人いなかった。11/2

母国の崩壊の報に接し、恐怖を覚えた私は、これまで書き続けてきた敵国呪詛の過激な日記を焼却して、隣国に亡命した。11/3

「洋服と人世についてスピーチせよ」と命じられたが、ふぁっちょん業界からずいぶん遠ざかっているので、「そんなの無理だぜ」と思いながら、懸命にショップ探訪しているわたし。11/3

こないだ女の処へ忍んで行った時に、衿足にしてくれた接吻の快感が忘れられないので、昨夜また「してくれえ」と頼んだが、「え、もう賞味期限が切れたの」と笑うばかりで、冷たくあしらわれた。11/4

現政権の政策に対して反対し続けてきたボクだったが、金策に困じ果てて某大使から50万円借りてしまったために、友人たちからは裏切り者と指弾され、大使からは返済を求められて、ついに万事休してしまった。11/5

するとそれに見かねたヨリシゲが、ボクに100万円相当のぶんぶく茶釜を譲ってくれたので、これでなんとかしようと、地元に「なんでも鑑定団」がやってくるのを待っている次第だ。11/5

ジャーネー事務所の管理体制の強烈な締め付けに逆らって、私は個人的クーデタを企図していたのだが、私の担当マネージャーの女子が、それによって蒙るであろう致命的な被害と虐待を思うと、なかなかそれを決行できないでいた。11/6

皆が役場に集まると、村長が52枚のトランプを並べて、「皆の衆、お好きなカードを選びなはれ。取ったその数字が、今年の年貢の数じゃ」と言うたが、誰一人手を出さなんだ。11/7

私は夜中の12時半に出発する京急バスを待っていたが、流れ者に交じって諸国一見の放浪の旅に出てしまえば、可愛い女房子供はどうなるのだろう?という一抹の不安が、胸中から消え去ることはなかった。11/8

大きな蝶が飛んでいたので、ジャンプ一番捕まえたが、ふと上空を見上げると、アパートの窓から、2つの首つり死体が風にぶらぶうらと揺られており、そのひとつは、なんと私だった。11/9

妻に近寄って下手な冗談をいう男がいたので、私はいきなり殴り倒し、起き上がってくるところに膝蹴りをして、やっつけたつもりでいたが、そいつは、明らかに私よりも強そうなので、これからどのように決着をつけようかと戸惑っていた。11/9

大学のゼミにおける私のテーマは、何もしないで戸外をぶらぶら歩きする「東京散歩」という脱力系なのかなぜか人気があって、毎年大勢の学生が希望するので、うれしい悲鳴を上げている。11/10

大きな沼に不気味な生き物が棲んでいるというので、20名の部下を潜水させ、沼に垂らした20本の糸を一手に握りしめているのだが、いきなり水中に部下もろとも吸い込まれてしまう危険があるので、おさおさ警戒を怠らないようにしているのだ。11/11

散髪屋で髪を切ってもらい、頭を洗ってもらい、髭を剃ってもらったところで、財布を持っていないことに気づいて、えらく焦っているわたし。11/11

大晦日なのに新作CMの制作打ち合わせが入ったので、取り合えず会社を飛び出してTYOのキムラ氏の事務所へ急いだが、町は「ええじゃないか、ええじゃないか」の阿呆莫迦踊りの群衆に満ち溢れていて、一歩も進めない。11/12

私らは大望を胸に懐いて決起したものの、丹波地方を治める波多野氏の強力な武装兵に阻まれて、京への道を突破することができないでいた。11/13

敵は我が軍勢を一撃の元にほふったが、なぜか私の小隊だけは殲滅しないので、部下の青くん、赤くんを偵察に出したら、私らを鮎の友釣りの見せ鮎にして、友軍を引きずり出す餌に使おうとしていると分かった。11/13

工場で時間ぎりぎりまで働いていた私は、社食で食べ放題のスイカが殆ど残っていないので頭にきて、「お前たちはろくろく働かないのに俺の大好物のスイカを全部喰うてしまった。絶対に許さないぞ!」と見栄をきったが、誰も聞いてはいなかった。11/14

利害を異にする3社が、共同で立ち上げる新規ブランドのネーミング会議がもたれたが、3名の代理人が、他社の案を1対2で否決して潰しまくったので、結局何も決められずに散会したのよ。11/15

数か月の籠城虚しく、遂に明日は落城と決まった日も、城の牢番の私は、そこに新たに幽閉される人々のための大掃除を、せっせとやっていた。11/16

おらっちはルンペンなんだけど、この展示会場でゴロゴロしていると、たまにデザイナーに呼ばれて、「流れ者風のモデルになってくれ」と頼まれることがあるので、ゴロゴロしてるのさ。11/17

南海を疾走する私のヨットの帆には、実際に航海中に艇内に飛び込んできた飛び魚を貼付することによって表示された、巨大な飛び魚の絵が描かれていた。11/18

PCで袋と打つと袋が出てくる仕組みだが、レジに客が殺到してくるので、袋が出てくるのを待ちきれない連中が、自分で勝手に乱打しはじめた。袋、袋、袋。11/19

見た目そっくりの可愛らしい双子の男の子が、笑いながら私の顔を覗き込んでいるので、目を覚ますと、そこは今年の2月に亡くなったいうタツミ君の家だった。11/20

ギルガメッシュハイム語の原稿は、あまりにも膨大すぎて、私が家にあるプリンターとダンボール2箱分のB5用紙で印刷しても、まだまだ残っていた。11/21

クレーンに乗って愛の唄を歌う、という私の短歌に感動したというて、その2人はクレーンの上でセックスしたりして、どうにもこうにも引き離せない2人になってしまった。11/22

昆虫採集などしたこともないその貴賓が、「絶滅する前に我が国の蝶を収集したい」というので、私は仕方なく私は志賀昆虫店に絹製の補虫網を買いにった。11/23

冬休みで無人の大学に毎日通ってくる学生がいるので、「あんさんなにしてはるんや」と訊ねると、「たくさん単位を落としているので、その穴埋めに自習して、その証拠をこのカセットに録音しておいて、新学期に先生に渡すんです」と答えた。やれやれ。11/24

私はカナガワ氏からパリ駐在員を命じられ、「語学も出来ない老人なのに困ったことだ、どうしよう」と迷っていたのだが、かてて加えてダブル勤務の学校からもEU駐在員に任命されたので、もうこうなったら彼の地で骨を埋めようと、悲壮な決意をした。11/25

私はクライアントの指名により、コオタロウと組んでCMの企画とコピーをいやいや担当したのだが、営業が見積書を持っていくと、私らのギャラのあまりの高さに驚いて、「やはりコオタロウは止めにしてくれ」と頼んできた。11/26

世界一高く、遠くまで飛ばせるロケットの開発を目指していた私だったが、「そんなに闇雲に頑張らなくとも、テキトウなとこまで飛べば、そこからもう一度ジャンプさせるほうが安全だと」といわれて、すっかりやる気をそがれてしまった。11/27

私は大家にメール添付で大量の短歌を送りつけたが、大家からは何の反応もなかった。感じ悪うう。11/28

人物を撮らせたらナンバーワンという噂のカメラマンが当地にやって来たのだが、あいにく人っ子ひとりいないので、一度もシャッターを押すことなく帰ってしまった。11/29

町内の青年が議員に当選したというので、彼の同級生である長男もその祝いの席に仲間たちと一緒に並んでいたのだが、彼の脳髄では選挙も当選もまったく意味がわからないので所在無げに佇んでいるところを、私が手を引いて「さあ家に帰ろう」と言うとコックリ頷いた。11/29

101歳で大往生した中曽根元首相の業績を、マスコミは大ぎょうに称えているが、あにはあらんや国労をぶっ潰して本邦の労働運動の息の根を止めたのがこの人物であった。11/30