ズビズバー パパパヤー

音楽の慰め 第32回

 

佐々木 眞

 
 

 

カツオ「ねえねえ、NHKってまた偽ニュース流したんだって?」

のび太「へええ、ほんとかなあ。誰が言ってるの?」

しずかちゃん「トランプさんよ」

くまモン「でもあのひと、偽大統領なんだよ。知らなかった?」

シャイアン「へえー、そうなんだ」

トト子ちゃん「安倍さんも偽総理大臣なのよ」

おそ松「へえー、そうなんだ。知らなかったなあ」

ワカメ「ISって、偽イスラム国のことでしょ?」

サザエさん「そうよ。満洲国も偽満洲国なのよ」

イクラ「バブー」

イヤミ「ところで、あんた、誰?」

チコちゃん「あらま、わたしのことを知らないの。ボーっと生きてんじゃないよ」

ガチャピン&ムック「こいつ、偽チコちゃんさ」

チコちゃん「平成が終わったら、あんたらは死ぬといい。あんたらの死は近いぞ」

伴淳「アジャパー!」

アチャコ「滅茶苦茶でごじゃりまするがな」

黒柳徹子「チコちゃん、あーた、そんなひどいこと言うと、死んでも『徹子の部屋』で追悼してあげないわよ」

左ト伝「ズビズバー、パパパヤー、やめてケーレ、ゲバゲバ」*

 

 

*『老人と子供のポルカ』

作詞作曲/早川博二 歌/左ト伝とひまわりキティーズ

 

 

 

家族の肖像~親子の対話その35

 

佐々木 眞

 
 

 

お母さん、イソウロウってなに?
何もしないでおうちに居続ける人のことよ。

ぼく、光触寺と報国寺好きですお。
そうなの。じゃあ行きましょうか?
いやですお。

ぼく、岡田准一になりました。
こんにちは、岡田准一さん。

お父さん、加藤の藤は、藤沢の藤でしょ?
そうだね。
ぼく、藤沢好きですお。
そうなんだ。

ぼく、ふじさん牧場、好きですお。
そうなの? そういう牧場があるの?
ありますよ。

明日は図書館行ってえ、西友行きますお。
分かりました。

どうぞお入りください、どうぞお入りください。
「どうぞお入りください」って誰に言われたの?
小児療育で。

ササキマサミ先生、なんで小児療育やめたの?
定年で、だよ。

ぼく、イクタナオヤ君、好きですお。
イクタ君、どうしてるんだろうね?
わかりませんお。

ぼくは、線香花火、好きですお。
そうか。今年の夏にやろうか。
やらなくていいですお。

太田胃酸、胃が痛いときでしょう?
そうだよ。耕君、胃が痛いの?
痛くないお。

ぼく、オオヤさん、好きですお。
そう、お母さんも。
オオヤさんが「お仕事がんばってね」と言ったお。
そう。良かったね。

お父さん、比嘉さん、泣いてたよ。
そう。「比嘉さん泣くなよ」と言ってあげなよ。

お母さん、おくれてるみたいって、どういうこと?
おくれてることよ。

お父さん、イグサ、水の中でしょう?
そうだね。

証明ってなに?
どうしたらこうなるかっていうことよ。

お母さん、なんとなくって、なに?
お母さん、なんとなく、耕君好きです。

お母さん、集金ってなに?
お金を集めることよ。

お母さん、われらって、なに?
わたしたち、ってことよ。

ぼく、学校、好きですお。
そうなんだ。どこの学校?
鎌倉の。

お父さん、ホームって、とまるところでしょ?
そうだね。
お父さん、ぼく八百屋さん、好きだお。
そうなんだ。

お母さん、お腹いっぱいって、なに?
お腹いっぱい食べることよ。

お父さん、うろついちゃダメでしょう?
そうねえ、うろついちゃダメだよ。

お母さん、髪の毛をバサっとしてください。
はいはい、分かりましたよ。

お母さん、今日トマトシチュウとサケご飯にしてね。
はい、分かりましたよ。

お父さん、埼京線、終点は大宮でしょ?
そうなの?

お母さん、ぼく、ドクダミ好きですお。
そう。お母さんも。
ド、ク、ダ、ミ、好き!

お母さん、一人ぼっちって、なに?
一人だけのことよ。

お母さん、このさい、ってなに?
お母さんはねえ、このさい耕君にも、元気でいてもらいたいのよ。

お母さん、ややこしいって、なに?
ややこしや、ややこしや、のことよ。

ウオーキング、散歩でしょ?
そうだよ。耕君、ウオーキング行かないの?
行きませんよ。ぼく、お仕事しますよ。
そうなんだ。

お母さん、ぼく、タイムショック、好きでしたお。
そうなんだ。

お父さん、ハスはジュンサイに似ているでしょう?
そうだね。似ているね。

お母さん、ぼく、鬼は外、好きですお。

お母さん、平和ってなに?
とてもなごやかで、しあわせなことよ。

西城秀樹、脳梗塞だったの?
そうだよ。
おばあちゃんといっしょですね。
そうだね。

ぼく、キャプテン翼、好きだよ。
そう。

解除って、なに?
もう大丈夫、ってことよ。

なんで信号機切れたの? 大水出たからでしょ?
そうだよ。

比較的って、なに?
くらべてみると、よ。

お母さん、ガチャピンとムック好きですよ。ぼくポンキッキ好きだったんですお。
そうなの。

お母さん、なごむって、なに?
やさしくなることよ。
感じることでしょう。
そうねえ。

湯治場って、なに?
ゆっくりするところよ。

コウ君、血液型、B型なの?
そうよ。いやO型だったかな?
事故に遭ったときに、間違ったやつを輸血されると、ヤバイんじゃないの。
わああ、止めてください。止めてください。
コウ君、大丈夫、大丈夫。地獄耳だね。

おじいちゃん、おばあちゃん、具合悪かったでしょう?
そうね。

トラブルは、故障でしょう?
まあそうだね。

ぬきは、いらないことでしょう?
ぬき? 耕君ぬき、のぬきか。耕君なしで、ってことだよ。

103系すべてうしなわれた、ってなに?
それって何に書いてあったの?
「鉄道ファン」だお。
そうか、103系の電車が全部無くなったということだよ。

頭に入れとくって、なに?
頭のなかで覚えておくってことだよ。

大雨警報解除って、なに?
雨はもう大丈夫、ってことよ。

 

 

 

「夢は第2の人生である」改め「夢は五臓の疲れである」 第68回

西暦2018年文月蝶人酔生夢死幾百夜

 

佐々木 眞

 
 

 

不思議なことだ。あんなに滅茶苦茶に汚れていた部屋が、私がベッドで眠っている間に、塵一つない整然としたピッカピカの部屋に、生まれ変わっていたのだ。7/1

さるアーチストから連絡が入って、開場寸前の展示会の出品商品を、急遽差し替えることになった。差し替え品には、赤いシールを張り付けることになったのだが、すでに全商品に貼ってあるので、どうしていいか分からず、スタッフは大混乱に陥った。7/2

ラフマニノフの8枚組CDの廉価盤が、タワーとHMⅤの両方から出ているのだが、どちらが安いのかが分からないので、どっちに発注しようかと、迷いに迷う愚かなわたし。7/3

私のライバルの辣腕女プロデューサーは、とても陰険な女性で、上司やスポンサーに、私の悪口をさんざん吹き込んだので、最近はさっぱり仕事もなくなった。このままでは、首を斬られてしまうにちがない。7/4

今夜は満月なので、ドビュッシーが「月の光」を弾いたり、「月光の会」の面々が、月に向って、なにやら叫んでいるようだ。7/5

モザールの「フィガロの結婚」の第4幕の演奏中に、突如R.シュトラウスの「薔薇の騎士」の第3幕が乱入してきたので、オペラハウスは大混乱に陥った。7/6

安倍蚤糞が、国民に薬品の売れ残りの在庫を買い上げるよう、町内会を通じて強制割り当てしてきたので、頭にきた一部の民草は、ついに武装蜂起して蚤糞夫妻を血祭りに上げた。7/7

岩波書店から、子規の3面立体漫画が発売された。1点を中心として3方向に展開される絵巻物なので、3人が同時に読めるが、1人の人が、全部を読み終わるのには、時間がかかる。7/8

その時、俄かに美しい旋律が、私の脳内に湧きおこったので、私はこのメロディを伴奏にしながら、キャメラがヴェネチアの浜辺で遊ぶ幼子の上を、アドリア海に向かって前進していく映像を思い浮かべ、恍惚となった。7/8

確かここら辺に、ワーナー映画の新社屋があるはずだと思って、ビルジングの裏表を歩き廻るのだが、第3次世界大戦後の銀座は、すっかり様子が変わってしまったので、なかなか試写室に辿りつけないでいる。7/8

一度語られた文章は、ただちに一枚の平面と化してしまう。それを、私の手を使ってぢかに修正することは無理なので、器具を用いて、周囲から削ったり、付け加えたりすることしかできない。7/9

ローマでは、(私はまだ行ったことがないのだが)、ホテルのレストランの有名シェフに懇意にしてもらったが、別れしなに「今度来るときは、パイオニアの営業マン抜きで、直接私のところに来なさい」と囁いた。7/9

ここ中国だか、アラビアだかのホテルでは、何を頼んでも、3羽の鶏を持ってくる。赤、青、白の鶏たちは、その3色の組み合わせを巧みに利用して、(私らのリクエストに応えたり応えなかったりしながら)、卵や、オムレツや、スープや、卵焼きなどを、産み落とすのだ。7/10

この魔法のホテルでは、お客が困ったときに備えつけの「アラジンランプ」を押すと、ただちにアラジンが出てきて、いかなるリクエストにも応える、というので、世界中にその名を知られていた。7/11

「どっちにしても、ナミさんは、ミチオについて行ったんですよね」と、その小説を読んだ生徒は、短い感想を述べた。7/12

「大声でしゃべると、それだけで爆発するおそれがある」、というので、わたしらは「ダイジョウブ、ダイジョウブ」とささやきながら、人質の全身に巻かれている爆弾爆発誘導ロープを、ゆっくりゆっくり解いていった。7/13

国民は、国の命令で、おおかたのデータを自発的に抹殺したが、ハメ撮りの生動画だけは残して、ひそかに天井や床下に隠匿した者が多かった。7/14

家族共同で制作した、手作り絵本のダミーを、らんか社のタカハシ社長のところへ持参しようか、それともやめようか、と、悩みながらまんじりともしない間に、夏の熱帯夜は明けていった。7/15

真夜中に物音がするので、階下に降りてみると、ケンの友達のタカギ、オオキ、ヒデポンなど数名が、捨て犬ともども、我が家のタタキに寝転んでいた。7/16

百貨店との取引の改善について、一知半解のうろんな言説を唱えたら、大勢の知人から反論が殺到して、冷汗三斗だった。7/17

韓国へ行った時に、赤い壺をお土産にして「これは、日帝が朝鮮半島を侵略したおりの、血染めの壺だよ」と説明したのだが、誰も喜ばなかった。7/18

私は、その超大物ⅤIPの殺害に失敗した。しかし、その後ある女が、そいつを見事に仕留めたのだが、官憲に逮捕され、裁判の結果、ただちに死刑に処されてしまった。7/19

こないだやっつけたはずの男が、まだ生きていて、部落ではたったひとつしかない、泉の水を飲ませろ、というたので、問答無用と、カノン砲で粉砕してやった。7/20

何とかして、その女の気を惹こうと、いろいろ働きかけたり、欲しいというものは何でも買い与えたが、それがすべて逆効果となり、彼女は、若い男の誘いに乗って、どこか遠いところへ逃げて行った。7/21

胸を張って、「私は、常に自分に嘘のない仕事をしてきたつもりです」と語るサクライ氏の背後の塀のブロックには、彼のこれまでの業績が、具体的かつカラフルに、一枚一枚表示してあった。7/22

わいらあ、すべてをみそなわす、在天の法王様の軍隊によって、ギタギタに粉砕されてしもうたんや。7/23

私が、早撃ち王であることを自覚したのは、たまたま出場した、村の早撃ち大会で、優勝してからのことだった。7/25

東京から大阪に出張したら、予想以上の暑さなので、熱中症になってしまい、白昼の太陽がくわっと照るつける御堂筋を、よろよろ歩いている。このままでは、死んでしまうに違いない、と思いつつ、それでも、よろよろ歩いている。7/26

東京駅からスカ線に乗って、鎌倉まで帰ってきた私は、網棚から荷物を降ろそうとしたのだが、同じような紙袋が、ぎっしり横一列に並んでいるので、どれが私のペーパーバッグなのか、てんで分からない。はてさて、困った困った。7/27

オペラハウスに入ると、座付きの管弦楽団が、マーラーの最後の交響曲を演奏していた。ただ私ひとりのために。7/28

世の中がだんだん不景気になってきたので、わが社では、請求書の金額欄を3行にして、1行目は本体価格、2行目は消費税、3行目はカンパ指定金額を書くことにした。7/29

あれから30年、僕はすっかり腐敗堕落したカメラマンになり下がってしまい、顧客がリクエストしたものを、そのとおりに撮影するだけの、ロボットのような存在になってしまった。7/30

あまりにも暑いので、これはもしかすると熱中症で死んでしまうぞ、と思いながら寝ていたら、誰かがエアコンのスイッチを入れたようで、部屋の片隅から涼風が入り込んできたので、一息つくことができた。7/31