夢は第2の人生である 第59回

西暦2017年神無月蝶人酔生夢死幾百夜

 

佐々木 眞

 
 

 

ともかく無茶無茶苦茶な生活をしてきたから、とりあえず食堂でカレーライスを食べ、食後にコーヒーを飲みながら、しばらくはこのボロボロの体を労わって栄養をつけようと思った。10/1

するとハヤシが、「あそこに座っておられるテラオカさんは、なんとか大学の理事をされているから、君のためによいアドバイスをしてくれるかも知れない。ちょっと挨拶をしといたほうがいいと思うよ」と盛んにけしかけるので困った。10/1

ラッシュが終わって電車がすいてくると、A夫人は「今日のランチは「K7」にしましょう。「K17」や「K27」より安くて美味しいわ」とウインクした。電車にはご主人のA氏も乗っていたが、途中の駅の人込みで、車両から弾きだされてしまったのである。10/2

私はなぜだか「国民の敵」の処分を任されたのだが、1)普通に殺す。2)磔にして殺す。3)生きながら八つ裂きにする。の3つから好きなものを選べと命じられたので、秘かに考えていた無期懲役の選択肢は放棄せざるを得なかった。10/3

私は最新型の生霊・怨霊発見カウンターを持っていたので、室内のあちこちにそれを振る向けると、「源氏物語」あたりで激烈な反応があった。10/4

隣に座っていたマルダラノマリアという渾名の女が突然立ち上がって、こんなことを言いはじめた。「こんなことってよくあるじゃない。その時そう言っておくべきだったのに、その時には何も言えず、随分後になってから後悔するようなことが。」10/5

友人と新宿のファイアットホテルの最上階でコーヒーを飲んでいると、突然見知らぬ外国人の男が、私のスプーンを取って、私の右腕に押しつけてにたりと笑ったので、とても気色が悪かった。10/6

上司から北陸出張を命じられ、富山の営業所へ行くと、「所長のタカヤマです」といって現れたのは、なんとタカヤマコウヘイ君だったので驚いた。わが幼馴染のコウヘイ君が、同じ会社で働いているなんて、ちっとも知らなかったが、彼は奇人変人の私のことを、昔から知っていたという。10/7

功なり名遂げたある画家の作品を見ながら、涙を流している白髪の盲目の老人がいた。聞けば、「眼は見えずとも、絵のたたずまいがくっきりと心眼に浮かんでくる」というのだ。10/8

真夜中に突然スピーカーから素敵な音楽が流れてきて、びっくり仰天したのだが、その後もたびたびそういうことが起こるので、音楽が始まると同時に、テープに録音できるようにセットして、それを新曲として発表したら、驚いたことには大ヒットした。10/9

2年間は、なにやかやとやることがあった大学生活だったが、あとの3年間は、まったく無為に過ごしてしまった。10/10

ファシスト政権が音楽統制を強めるてきたので、私はモザールの「レクイエム」を、もはや防空壕の中で鑑賞するしかなかった。10/11

本社の経営企画室のもひもひ課長が突如営業に戻されたので、みんなびっくり。次のもひもひ課長は誰になるのか? ひところはよりまし課長が嘱望されていたが、こないだ自殺してしまったし。10/12

彼はベランダに横たわり、銃を顔の上に乗せて眼を瞑っていた。おそらく私が自殺するためには、銃が必要ではないか、と思っていたのだろう。が、私はいつまで経っても身動き一つしなかったので、彼は諦めたように銃を取ると、それを自分の顔めがけて発射した。10/13

「先生が好きなんです」といいながら、その子が寄りかかってきた。すると生温かな肉の柔らかな感触が伝わってきたので、思わず私はそれを両腕で受け止めてしまった。10/14

「あたし、これから最後のお人形を作るの」というてワカバヤシ・タミは、ミルク色のどろどろの溶液で満たされた地下室へ降りて行った。彼女がそこに身を沈めると、彼女にそっくりのダッチワイフが製造されるのである。10/15

「あいつは、シェイクスピアになりすましたジョン・ペインだ」とタナカ・ソウジが騒ぎ立てるので、私がその真偽を確かめようと近づくと、いきなり自称シェイクスピアがサーベルを抜こうとしたので、私は一発で殴り倒してやった。10/16

寝ていたら、突然家が壊れ始めた。2階がバリバリと壊れ始めて、私がいる1階に落ちかかるので、まるで生きた心地がしないが、2階には大事なものがあるので、階段を上って部屋を覗くと、瓶の中で人間の顔をしたコアラの親子が走り回っていた。10/17

恐怖政治の最中に長く禁止されていたモザールの「レクイエム」の演奏がようやっと許されたので、私はその演奏を久しぶりに教会で聴くことができた。1018

大通りで事故があったようだ。道端に切断された2本の足のようなものが転がり、その左手には、やはり切断された大きなイカの胴体のようなものがあったので、私は「これはいったい誰のものなのだろう?」と、厭な予感がしてきた。10/19

なぜか突然社長になった私は、すぐに部下のタナカに命じて、「全国の工場のどこかで、今も働いているらしい、私の父親を探し出せ」と命じたのだが、私も結局誰かさんのようにお友達&縁故人事をやらかしてしまうに違いないと思った。10/20

その外国の女は、手にしたものを階段の上に置いたまま、地面に降りたち、そこに開いていた穴に、潜り込んでしまった。10/21

イチローは「お互いこの世を生き延びてきた者らを、尊ぶようにしたいでげすな」などとしょもないことをペラペラ喋り続けるのですが、それを聞かされるダイスケこそいい迷惑で、その青ざめた額からは、冷や汗がたらりたらりと流れ出るのでした。10/22

こちらは災害鎌倉です。台風の影響で国道34号線の滑川交差点から小動交差点までの間は、通行止めになっていますので、ご注意ください。10/23

粛々と学校行事が挙行されている最中に、隣の上司が、「リベンジミサイルの時計スイッチを押せ押せ」と強要するので参ったが、押し問答しているうちに、誰かが別の時計スイッチを押して、ミサイルを発射してしまった。10/24

私が防空壕の中に入ると、即時武装放棄を唱える男と、断固徹底抗戦を主張する男が言い争っていたので、なんとか双方の主張を足して2で割った調停案をつくろうとしたが、どうにも無理なので、諦めてしまった。10/25

寒い、寒いと思っていると、やっぱり背中が丸出しだった。これでは寒いのは当然だ。10/26

私が「今から親友の助太刀をするつもりだ」とオオトモ君に打ち明けると、彼は「私も助太刀しよう」という。そして決闘の現場に来てみると、親友のすけっとは他にも大勢駆けつけていて、なんと1対10の対決になったので、私は敵にちょっと同情した。10/27

この人里離れた海水浴場で午後1時に、と再会の場所と時間を指定しておきながら、その男は姿を見せない。頭にきた私は、ざぶんと海に飛び込んで沖に向かって泳いで行くと、人影らしきものが見えた。仰向けになって漂っている男は、紛れもなくイデだった。10/28

宿敵との決戦を目前に控え、寺社仏閣に必勝祈願をしようと近くの寂蓮寺を訪れると、足を引きずって出てきた住職は、まぎれもなくこの前の合戦で相まみえた敵の武士だった。10/29

10メートル位からの距離で私が連続して投げた石は、それぞれ2人の若者の頭に当たったのだが、彼らは私が投げたと知りながら、血だらけの顔で平然として私に挨拶をした。10/30

一晩寝て眼が覚めたら、昨夜枕元にいたはずのバッタは、巨大な緑色のオウムに変身していた。10/31

 

 

 

家族の肖像~親子の対話その26

 

佐々木 眞

 
 

 

お母さん、あした「こころ」みますお。
みてね。

お母さん、しまったっ、てなに?
失敗したなあ、と思うことよ。

危ういってなに?
危ないことよ。

お母さん、地主ってなに?
土地を持っている人よ。

お母さん、おもにって、だいたいってこと?
まあそうねえ。

お母さん、脳波ってなに?
頭の中の波を調べます。

お母さん、ジュンサイつるつるでしょ?
はい、つるつるですよ。

お母さん、ぼく今年も海行きますお。
そうなの。わかりましたあ。

お父さんお母さんが死んだら、耕君どうしますか?
ぼく、ホームで暮らしますお。

お父さん、要はかなめでしょ?
そうだよ。
ぼく要です。
要君こんにちは。

荒々しいってなに?
乱暴なことよ。

お父さん、テレビ壊れたの?
そう、線が入るようになったんだよ。

お母さん、ことしモリタカさんに会った?
会ったよ。
ぼく、モリタカさん好きですお。

モリタカさん、ネクタイしてた?
してなかったよ。
モリタカさん、笑ってた?
笑ってなかったよ。

モリタカさん、おうちでお仕事してるの?
もうしてないと思います。
ぼく、ぼく、モリタカさん好きですお。

オオツキサッチャン、どこに住んでいるの?
藤沢かな。
ぼく、オオツキサッチャン好きですお。

お母さん、腰痛めると、嫌ですねえ。
お母さん、木を切ったから、腰痛いよ。
腰痛めると、嫌ですねえ。

事故防止って何?
起こらないようにする。

警察って、お巡りさんがいるところでしょ?
そうだね。

お母さん、イベントってなに?
催しよ。

お父さん、孤独ってなに?
そうねえ、とても寂しいこと、かな。

 

 

 

性のむきだし音楽

音楽の慰め 第24回

 

佐々木 眞

 
 

 

この世の中で、セックス、というより、ずばり「性交という行為そのもの」を表現した音楽は、おそらく星の数ほどたくさんあるでしょう。あるはずです。

経験豊富な皆さんと違って、奥手の私が知っているのはたった3つしかありませんが、今宵は恥をしのんで、それらをご紹介しませう。

そのひとつはあまりにも有名なジェーン・バーキンとゲンスブール(ガンスブールと発音すべきだという御仁もいらっしゃいますが)とが、蝶々睦々ちんちんかもかもとからみあう、超悩ましい「je t’aime… moi non plus」(ジュ・テーム・モア・ノンプリュ)という極め付きの1曲です。

 

#1 バーキン盤

 

もういい加減にしろと言うても、きっとこの調子で朝までエクスタシーが続くのでしょうね。若さの勝利というも愚かなり。

なおこの空前絶後の「アヘアヘあえぎ」は、ゲンスブールのそれまでの恋人だったブリジット・バルドーと録音されていたのですが、バルドーは当時の夫を忖度して発売を拒否したためにお蔵入り。その代打で急遽登場したバーキン盤が世界中で大ヒット。
それが原因でゲンスブールはバルドーと別れたんだそうですが、なんとも羨ましいような話ですなあ。

 

#2 参考までにバルドー盤

 

お次のセックス音楽は、リヒアルト・シュトラウスの有名な「薔薇の騎士」の冒頭の音楽です。

物語の舞台はマリア・テレジア治下のウイーン。まだ開けられない深紅のカーテンの向こう、夫の不在の寝室のベッドで絡み合っているのは、妖艶な元帥夫人と青年貴族オクタビアンです。

いきなり指揮棒が一旋すると、管楽器の不協和音が鳴らされます。
高鳴るホルンの一撃は余りにも早すぎるペニスの勃起であり、次なる弦楽器の強奏は、成熟した年増女の「警告と教育的指導」です。

しばらく血沸き肉踊る猛烈な揉み合いが続いたあとで、全木管金管楽器がぐるぐり悲鳴を上げて咆哮するフォルテッシモは、17歳の若者のあまりにも性急で早すぎた射精であり、そこにすかさず分厚く覆いかぶさる弦楽器は、やむを得ず自分のエクスタシーを早めようとする元帥夫人の怒りを込めた焦り、なんですね。

やがてゆるやかに奏される序曲の終わりは、すなわちセックスの終わりとそれなりの性的満足の表明、なのでしょう。

R.シュトラウスの「バラの騎士」はカルロス・クライバー指揮のウイーン国立歌劇場またはバイエルン歌劇場による演奏。同じくカラヤン指揮のウイーン国立歌劇場またはフィルハーモニア管演奏のできれば映像付の録音がおすすめです。

 

#3

 

最後は、旧ソ連を代表する作曲家、ドミートリー・ショスタコーヴィチ(1906-1975)が、わずか26歳の若さで完成させた自由奔放なオペラ「ムツェンスク郡のマクベス夫人」です。

帝政ロシア時代の地方の富裕な商人(50代)の美貌の後妻、カテリーナは、23歳の若さと性欲をもてあましてもんもんと眠れない夜を過ごしていました。

が、その隙をついて忍び込んだイケメンの下男に犯され、よくある話ですが、あのチャタレイ夫人のように初めて性の燃え上がる喜びを感じて、いわゆるひとつの充たされた生活、を満喫するようになります。良かった、良かった。

しかし好事魔多しとはよくいったもので、2人の仲は義父に知られてしまう。
そこで追い詰められたカテリーナは、義父を毒入りキノコで毒殺し、出張から帰ってきた夫も、恋人と共同で殺してしまいます。(レスコフの原作では、もう一人少年も殺害するのですが、オペラではカットされています。)

やがて晴れて結婚した2人でしたが、「天網恢恢疎にして漏らさず」のたとえ通り、悪事が露見した2人は流刑地に送られ、なおも陰惨な悲劇が続くのですが、それはさておき、ここでの問題は、第1幕第3場における荒々しい性行為の音楽。
すべての弦と管と打楽器が荒れ狂う獣のように咆哮し悲鳴を上げるのです。

私はマリス・ヤンソンス指揮ロイヤル・コンセツトヘボウ管による2006年6月、アムステルダムはネーデルランドオペラ公演のライヴDⅤDで視聴しましたが、まさに阿鼻叫喚の激烈な強姦音楽です。(45分~47分あたり)

 

#4

 

どうしてこのように野蛮な、セックスむきだしの原始的な音楽が、当時のソ連で大好評をかち得たのか?
おそらくは人間は、昔も今もどんな社会体制にあっても、生きているからにはその性的快楽を全面的に肯定するほかないじゃないか、という原点を、初めて音楽で本気で描いたからではないでしょうか。

しかし残念ながらこの文字通り革命的なオペラも、当時の独裁者スターリンが見物した直後にソ連共産党の機関紙「プラウダ」で「荒唐無稽!」とこてんぱんにやっつけられ、それから20年後にショスタコーヴィチがその行き過ぎた個所をマイルドに削ぎ落とした改訂版を「カテリーナ・イズマイロヴァ」として世に送るまで、音楽史の暗闇に放置されるほかなかったのでした。

 

 

 

由良川狂詩曲~連載第20回

第7章 由良川漁族大戦争~僕らは若鮎攻撃隊

 

佐々木 眞

 
 

 

翌朝、ケンちゃんは、朝ごはんに山崎パンのトーストに生協のイチゴジャムをてんこ盛りに塗りつけたやつを1枚と、ネスカフェ・ゴールドブレンドの熱いのを2杯おいしくいただくと、おじいちゃん、おばあちゃんに「ごちそうさま」を言って、自転車を軽くひとまたぎ。あっという間に由良川河畔へとやってきました。

川には、一面の朝霧が立ち込めています。そこへ、寺山の反対側にそびえる三根山からまっすぐに立ちあがった5月の朝の太陽が、由良川を一望しながら、慈愛に満ちた光を放ちました。

ところどころうす雲をぽっかり浮かべた大空に、一羽のひばりが、ギザギザの螺旋状の軌道を残して舞い上がり、しばらくお神酒に酔っ払ったような歌を唄っていましたが、すぐに、青空のどこかで自分を見失ってしまったようでした。

素晴らしい朝です。
次第に温度が上がってくるようでした。

ケンちゃんは、由良川漁業協同組合の会員でもあるおじいちゃんから借りた漁網を自転車の後ろから取り出すと、それを井堰の上流15メートルの所に仕掛けました。
由良川の全幅700メートルにわたって、人の眼にも、魚の眼にも、それとほとんど識別不可能な漁網を、おじいちゃんに教わった通りに、端から端までていねいに張り巡らしました。
普通のネットだと破れる恐れがあるので、特別素材を二重にバック・コーティングしてある超ハイテク製品です。

そして、左岸に1本だけ立っている大きな柳の木の根っこのところにポッカリ口をあけている、例の千畳敷の大広間に通じる秘密の入り口の手前のところだけは、わずかながらネットを掛けない隙間をつくっておきました。
つまり、左岸の隅っこのわずか30センチを除いて、由良川は完全に封鎖された、というわけです。

それが終わると、ケンちゃんは、柳の木の下の木陰に腰をおろして、おばあちゃんが特別につくってくれた沢庵入りの特大おにぎりを、おいしそうに平らげました。
そして掌にねばつくご飯を、川の水でごしごし洗っていると、メダカが3匹寄ってきて、ご飯粒をツンツンつつきながら言いました。

「ケンちゃん、ケンちゃん、そろそろ1時だよ。戦闘開始の時間だよ。さっきから若鮎行動隊がスタンバッてるよ」

――よおーし。

気合いを入れながら、ケンちゃんは、寺山を背中にして西郷どんのような格好で、すっくと立ち上がりました。
ケンちゃんは上半身はもちろん裸ですが、半ズボンの腰のところにベルトをつけ、ベルトにはてらこ先祖伝来の少しさびた脇差をはさんでいます。

気合いもろともその短刀を腰からエイヤッと抜きはなって口にくわえ、一瞬川面ににぶい光をきらめかせると、ケンちゃんは、柳の根方から、一気に由良川に踊りこみました。
ケンちゃんは、口に短刀をくわえたまま、由良川の中央最深部めざして、ぐんぐん泳いでゆきます。

まもなく綾部大橋の下にさしかかります。
橋の下には、由良川でいちばん速い魚、すなわち50匹のアユが、全員うすいピンクのたすきを掛けてケンちゃんを待ち受けていました。

みなさま、覚えておられるでしょうか。これこそ、去る4月23日未明、全由良川防衛軍最高司令官に就任したウナギのQ太郎が編成した、海軍特別攻撃隊でした。

昨年の冬、丹後由良の海で越冬し、ふたたび由良川にさかのぼって来たばかりの頼もしいアユたちが、ケンちゃんの日焼けした顔を見ると一斉に胸ヒレを4回、背ビレを3回、尻ヒレを2回、そして尾ヒレを1回振って歓迎しました。
これが由良川の魚たちの正式の挨拶の作法なのです。

知育・体育・徳育の3つのポイントで厳重に審査された、由良川史上最強の若鮎特別攻撃隊は、ケンちゃんを三角形の頂点にして、見事なピラミッド梯団を組みながら、由良川を毎時13ノットで遡行してゆきます。

ドボン、ザボン、ガボン
僕らは若鮎攻撃隊

死地に乗り込む切り込み隊
命知らずの若者さ

ドボン、ザボン、ガボン
僕らは若鮎攻撃隊

邪魔だてする奴はぶっ殺す
ナサケ知らずの若鮎さ

みんなで唄いながら進んでいくと、やがて由良川は急に深くなり、きのうライギョたちが、ホルスタインを喰い荒していた地点にさしかかりました。

ここが「魔のバーミューダ・トライアングル」と呼ばれる怪しい一帯です。
水は濁りに濁り、前方は、ほとんど見通しがつきません。

 
 

次号につづく

 

 

 

家族の肖像~親子の対話その25

 

佐々木 眞

 
 

 

お母さん、海の幸ってなに?
海の中のいいもののことよ。
さっちゃんの幸だよね。
そうよ。

お父さん、笑うと連佛さんは?
「耕さん、アホ笑いしないでね」って言うよ
ぼくアホ笑いしませんお。

お父さん、しっかり食べないと死んじゃうでしょ?
そうだよ。
死んじゃう、死んじゃう、死んじゃう

ニューバージョンてなに?
新しいかたちのことよ。

お母さん、ぼくマーガレット好きですお。
お母さんも好きよ。
マーガレットどこにありますか?
今は無いのよ。今度植えますか?
植えてください。

お母さん、あしたお赤飯にして!
分かりました。

お父さん、まっすぐの英語は?
ストレートだよ。
まっすぐ、まっすぐ。

ドキドキってなに?
ドキドキすることよ。
怖い?
耕君、怖いことあるの?
ないよ、ないよ。

お母さん、きわめる、ってなに?
めいっぱいやり尽くすことよ。

シブいってなに?
ちょっと塩っ辛いことかなあ。
(父)そうじゃないよ、カッコイイことだよ。
シブい、シブい、シブい

お母さん、ぼくこんどインドネシア行きます。
そうなの、行ってくださいね。

お母さん、感じるってなに?
こうだなあ、って思うことよ。
感じる、感じる。

お母さん、ほんま、ってなに?
「ほんとう」のことよ。

お母さん、ナナちゃん入院したの?
うん。
どこの病院?
フジノ町の病院だって。

お母さん、ぼく海行きたいです。
えっ、海?
今年も海行きたいです。
そうなんだあ、分かったよ。

お父さん、しまった、は失敗した、でしょ?
そうだよ。

お母さん、ありふれたは?
よくある、よ。