女たらし

  ―女たらしって、なに?
    だらしないひとのことよ。(「ある家族の会話」)

 

佐々木 眞

 
 

わいらあ どうせ だらしないひと
おぬしも さいごは だらしないひと

女たらしが おるように
男たらしも わんさと おるがな

ときにそこいく お客さん 
よってらっしゃい みてらっしゃい

この世で いちばんめか 2番目に大事なこと
ただで 教えて しんぜよう

あんさんに どうしようもなく 好きな人が 出来
その人と やりたいと 思ったら

すかさず それを やることだ
抜く手も みせずに やることだ

パッパラパーと 脱ぎ捨てて
ペロペロペーと 舐め回し

グチュグチュグチューと 口吸うて
ズビズビズバーっと 突き入れて

アレアレアレーと 叫んだら
グルグルグルンと 捏ねまわし

一念発起 無念無想
一心不乱 一気通貫

四の 五の 言わず
二人揃って 成仏するんだ

よってらっしゃい みてらっしゃい
耳をほじって お聞きなさい

お二人さんも よござんすか
あたしは 二度は 申しません

好きで やりたく なったなら
ここを 先途と やることだ

これぞ この世の 置き土産
死に物狂いで やりきる ことよ

 

 

 

大宅世継作詞・夏山繁樹作曲による詩篇交響曲第8番『雄大なる楽天』

 

佐々木 眞

 
 

1「ズビズバー、パパパヤー」~2019年トランプ・ヴァージョン原典版*

 
カツオ「ねえねえ、NHKってまた偽ニュース流したんだって?」

のび太「へええ、ほんとかなあ。誰が言ってるの?」

しずか「トランプさんよ」

くまモン「でもあのひと、偽大統領なんだよ。知らなかった?」

シャイアン「へえー、そうなんだ」

トト子「安倍さんも偽総理大臣なのよ」

おそ松「へえー、そうなんだ。知らなかったなあ」

ワカメ「ISって、偽イスラム国のことでしょ?」

サザエ「そうよ。満洲国も偽満洲国なのよ」

イクラ「バブー」

イヤミ「ところで、あんた、誰?」

チコ「あらま、わたしのことを知らないの。ボーっと生きてんじゃないよ」

ガチャピン&ムック「こいつ、偽チコちゃんさ」

チコ「平成が終わったら、あんたらは死ぬといい。あんたらの死は近いぞ」

伴淳「アジャパー!」

アチャコ「滅茶苦茶でごじゃりまするがな」

黒柳徹子「チコちゃん、あーた、そんなひどいこと言うと、死んでも『徹子の部屋』で追悼してあげないわよ」

左ト伝「ズビズバー、パパパヤー、やめてケーレ、ゲバゲバ」**

 *『佐々木眞詩歌全集』(らんか社)p18
 **『老人と子供のポルカ』     
 https://www.youtube.com/watch?v=LZZk0tP49H8
 作詞作曲/早川博二 歌/左ト伝とひまわりキティーズ

 

2「フェイクニュース」~2022年プーチン・ヴァージョン改訂版***

 
カツオ「ねえねえ、NHK ってまた偽ニュース流したんだって?」

のび太「へええ、ほんとかなあ。誰が言ってるの?」

しずか「プーチンさんよ」

くまモン「でもあのひと、偽大統領なんだよ。知らなかった?」

シャイアン「へえー、そうなんだ」

トト子「キシダさんも偽総理大臣なのよ」

おそ松「へえー、そうなんだ。知らなかったなあ」

ワカメ「I Sって、偽イスラム国のことでしょ?」

サザエ「そうよ。満洲国も偽国家なのよ」

イクラ「バブー」

イヤミ「ところで、あんた、誰?」

チコ「あらま、わたしのことを知らないの。ボーっと生きてんじゃないよ!」

ガチャピン&ムック「こいつ、偽チコちゃんさ」

伴淳「アジャパー!」

アチャコ「滅茶苦茶でごじゃりまするがな」

黒柳徹子「チコちゃん、あーた、そんなひどいこと言うと、死んでも『徹子の部屋』で追悼し てあげないわよ」

中町綾「アセアセ」

 ***『佐々木眞詩歌全集』(らんか社)p126

 

3「それいけ!自由で開かれたインド太平洋」~2023年異次元男ヴァージョン最新版

 
カツオ「ねえねえ、NHKって、また偽天気予報流したんだって?」

のび太「へええ、ほんとかなあ? 誰が言ってるの?」

しずか「コウ君よ。大雨と落雷で電車が停まるというから早引けしたら、快晴になったんだって」

くまモン「でも、もっとひどいのは、この国の首相だよ。『なにゆえに異次元男を罷免しない公私混同の最右翼なるを』という狂歌を詠んだ人がいるそうだけど、その通りだよね」

おそ松「あの人、金庫にお金もないのに、『ミサイル買いたい、ミルクも欲しい』と叫んでる。無節操で、無定見、まるで<怪人ダヨン面相>みたいだよ」

チコ「あの人、偽総理大臣なんだよ。知らなかった?」

チョロ松「ジェ、ジェ、ジェ、そうなんだ」

トト子「<チャットGPT>を濫用しすぎると、大脳前頭葉がいつの間にか<「スマホチャットGPT脳>に変態して、その人間は<世界AI一家日本支部>の子分になってしまうのよ」

カラ松「へええ、そうなんだ。知らんかったずら」

ワカメ「『なにゆえに原発運転を延長するフクイチ再来が必要なのか?』という短歌を詠んだ人もいるそうだけど」

イラク「バブー」

一松「そういえば、『なにゆえに保険証を廃止する廃棄すべきはマイナカード』という歌もあるよ」

サザエ「真面目にちゃんと働いている保険証を用済みにして、欠陥だらけのマイナカードをアメとムチで強要したり、危険な原発を停止するどころか、勝手に長期運転に切り替えたり、こっそり新設計画を練るなんて、とんでもない話はだわ」

マスオ「<入管法>を改悪はしても改善するつもりなどさらさらない異次元内閣。その胸の奥にあるのは、どうあっても<とつ国びと>を<神国>に侵入させたくないという封建的な島国根性なんだね」

波平「彼らは、いったんは超党派で合意したLGBT法案を、党利党略でちゃぶ台返しにしたりするんじゃ」

フナ「『なにゆえにそんなに急いでどこへ行くマイナ原発LGBT』という狂歌もあるそうだけど、まったくあの人たちは、いったいどういう了見で、あたしたちを、どこへ連れて行こうとしてるんだろうね?」

チコ「そりゃ<自由で開かれたインド洋>に決まってるじゃない!」

イヤミ「ところで、あんた誰?」

チコ「あらま、わたしのことを知らないの? ボーっと生きてんじゃないよ!」

ガチャピン&ムック「こいつ、偽チコちゃんさ」

黒柳徹子「偽者でも本物でもいいけれど、アタシが心配なのは、いつの間にか悪者扱いになっている市川猿之助選手。一日も早く『徹子の部屋』にやってきて、謎の一家心中事件の真相を、キチンと自分の口で説明してほしいな」

タラオ&タマ「そうだ、そうだ、そうだニャア」

 

 

 

「夢は第二の人生である」或いは「夢は五臓六腑の疲れである」第102回

 

佐々木 眞

 
 

 

2023年4月

私は全国労働者同盟の議長に祭り上げられていたのだが、春季大会冒頭の挨拶を頼まれたので、マイクの前に立ったが、なにもいうことが無かったので、そのまま控室にもどって鏡を見たらカストロの顔になっていたので超驚いた。4/1

「便箋2枚に認めた」という原文を、「便箋2枚にしたためた」ではなく、「便箋2枚にみとめた」というたので、これは阿呆莫迦女子アか、アホ馬鹿AIのどちらかが発音したのだと分かった。4/2

我々が安気に暮していた生活の基盤、社会の岩盤が、突如ガラガラと音を立てて、崩れ去ってしまった。4/3

おらっちニセ家族の家長に祭り上げられていたんだが、ニセ家子たちを善導するどころか、シメシすらつけられないので、全員の総スカンを食らって、とんずらする羽目になっちまったんよ。4/4

企画室には、多士済々の男女が出入りしていたが、その中で一人の楚々とした美人がいたので、おらっちは彼女の細い首の上にうっすらとはえた、柔らかな羊の毛を、せっせせっせと、摘み取っていたのよ。4/5

夜の青山球場で、かの大谷選手がカっ飛ばした、超特大ホームランの球を捜せ、と厳命されたので、もう1週間近く、関東平野をさすらっている。4/6

普段は、左側が汚れているおっさんが、今日は珍しく、右側が汚れていたので、おっさんは大声でわめき散らしていたが、いばらくすると、その喚き声が、焼き場の煙突から文字になって、湧きでてきた。4/7

カエルが跳びこんだ穴の奥をよく見ると、巨大な蛇の卵が4つ5つ転がっていたので、おらっちは、日本政府の敵基地攻撃の真似をして、突き殺してやったずら。4/8

おらっちが所属している素人劇団は、演出担当の座頭不在で、主役も脇役も、毎回役者が変わるのだが、ある日突然、「アカデミー演劇賞」を受賞したので、超驚いたよ。4/9

ミラノのヴェルディに倣って、ザルツブルク音楽院に、「引退した音楽家のためのモザール養老院」が出来、蒙録した御大カラヤン翁をはじめとする大勢の音楽家が、涎を垂らしながら、徘徊するようになった。4/10

その展覧会は、世界一広い会場で開催されていたので、数多の作品の中で、息子のちっぽけな作品がどこに展示されているのかは、いつまで経巡っても、ついぞ分からなかった。4/11

目の前に「世界のサカモト」が、カラシニコフを両腕で抱えたまま通称「民主のたこつぼ」に向かって突撃していったので、おらっちも立ち上がって、後を追ったのよ。4/12

阿呆莫迦議員たちの、破廉恥な私生活を記録した動画を、当局に提出したので、全身逮捕されて、極刑に処せられた。4/13

ヨシダ組の大幹部のマスダ若頭が、物凄くおっかない血走った眼で、おらっちの胸をこづきながら迫ってくるので、おらっちはどんどん後退して、とうとう吉田組の玄関の外まで追い出されてしまったが、あにはからんや、それは組と切り離そうとする若頭の親心なのだった。4/14

夜中に帰宅したおらっちは、2人の子を寝かせて夜なべしながら妻が待っている我が家にこっそり忍びこもうといている泥棒を見つけたので、手に持った傘を思いっきり背中に突き刺してやったずら。4/15

いつのまにか、また夢の中ではお馴染みの、あの町をさ迷い歩いている。かなり離れたところに、駅があるのだが、そこから汽車に乗っても、目的地に近付くどころか、かえって遠ざかってしまうことを、私は知っている。4/16

電車に乗ろうとしても、今日はここまで、なぜか自転車でやって来てしまったので、乗ることはできない。自転車をそこらにもたせかけて、ぶらぶら歩いていると、ヤクザのようなチンピラが、「やい、こんなとこに自転車なんか勝手に置きやがって」と絡んで来た。見ると、彼の後ろには長い行列が出来ているようなので、焦る、焦る。4/16

町の中には、平安時代に造営されたと思しき三重塔のある御寺や、長い参道を有する神社があって、その参道を歩いているときに、いくつかの出会いと事件が生起したようだが、その内容は、杳として霧の中で霞んでいる。4/16

会社に夜遅く戻ると、北海道の友人が送ってくれた1本の牛乳が、私の机の上に置かれていたので、大切に家に持ち帰ったずら。4/17

またセールスの電話がかかって来たので、すぐに切ろうと思ったのだが、さかんに「ほぼほぼ」と叫ぶので、『「保母」と「ほぼ」という日本語はあっても、「ほぼほぼ」という日本語はない。恐らくボボ・ブラジルあたりからやって来た外来語だろう』と、懇切丁寧に教えてやった。4/18

この美術館では、作家たちが来展を呼び掛ける動画メッセージを上映しているのだが、いずれも最初の呼びかけが、暫くすると、各人各様の芸術的、政治的スローガンの連呼に変わっていくのが、面白いといえば面白かった。4/19

久し振りに五味家を訪れたら、ウサギの大家族が繁殖していて、1階には母親と45人の子供、2階には父親と3人の子供が分かれて住んでいて、階段には、大勢の亀さんたちが、思い思いに寝そべっていた。4/20

北から、巨大ロケットにかんする、技術提携の話がきたのだが、いろいろ考えた末に、断ったずら。4/21

死んだ父が、相変わらずハトムギチャを守って、自己解体の危機に瀕したので、コロナ以後は、「2時間を超える映画は、みな1時間半までにカットせよ」というお達しが出たらしい。4/22

私が詩集の最後の校正をしていたら、どういう訳だか自作の詩ではなく、香港の民主派の新聞『りんご日報』の2021年6月24日の、「雨の中香港の人にお別れする。また会いましょう!」という最後の記事が載っかっている。じつに不思議だ。4/23

その男は、私の壊れたラジオや空気枕など、ありとあらゆる身の周りの品々を、まるで魔法使いのように、あっという間に直してくれた。4/24

清水通りから円神神社に向かう小道は、鬱蒼とした森の中にあって、相当不気味だが、神社で賽銭を投げこむと、地下を流れる河の底に蠢く、大勢の不思議な人たちが、我がちに拾い集めている姿が見えて、一層不気味だ。。4/24

イケダノブオが、26日に「サンフランに行く」というので、つい「じゃあ一緒に行こうか」というてしまったが、別に一緒に行って、一緒になにかをするあてがあるわけでもないので、後で後悔したのよ。4/25

ベルナルト・ベルトリッチ監督から、新作映画の劇伴の作曲を頼まれたのだが、ペンを執って真っ白な楽譜に向かうたびに、坂本選手の「シェルタリング・スカイ」の主題歌が頭ん中で鳴り響くので、涙を呑んで辞退してしまった。4/26

怪しげな茶色いカクテルを、誰かれなく「飲め飲め」と強いている、不届きな野郎がいた。4/27

白いワイシャツ姿の男が、てらこ下駄屋の店先に横付けして、花柄のブラウスを着て、おそらく20代の若さに輝く母の愛子さんに、なにやらぺらぺら話しかけている。危ない!きゃつが犯人なのだ。僕は、その場に全速力で駆け付けようとする。4/28

春の長雨が続き、おらっちは引き算ばかりしているので、くだんの伯爵夫人は「どこにもお出かけできないから、あたし詰まんないわ」と、のたまわるのだった。4/28

私の右隣の女は、タイコを叩きまわっているし、左隣の女は、パチンコ台の前に座って、延々とパチンコを続けている。ところが、突然右隣の女が、左隣の女と喧嘩をおっぱじめたので、私は困ってしまった。4/29

いつのまにやら道路の上に、巨大なゴミが置かれているので、近所の人たちと一緒に調べてみたら、どうも同種同文の東アジアの民草の生活道具の一式らしいが、それがいったいどのようにしてこんなところにまでやって来たのか、については諸説紛紛だった。4/29

4年ごとに開催される映画祭にやってきたわたし。港の突提の先端には、不慮の事故で亡くなったわたしの夫の記念碑が建っているが、映画祭が終われば、誰一人訪れる人もなく、忘れ去られていくのだろう。4/30

 

2023年5月

わしは香川県動民村の出身なんじゃが、不心得者の村長が、わしの弾圧を命じ、物凄い村八分に遭わせたんで、じりじりと山間の僻地の方へと退避せんといかんかったのじゃ。5/1

夕方アパートに帰ってくると、人間の大きさのキューピー人形が、おらっちの布団をかついで階段を下りてきたので、おらっちは覚えず激怒して、不気味なキューピー人形どもを皆殺しにしてやった。5/1

せっかくワーナー映画の製作部に入ったのだが、なんでもきゃんでもオーディションに合格しないと仕事にありつけない。仕方なくサントラ・マーク監督の「汚された不在」の通行人役のオーディションを受けたら合格したので、一生懸命に務めていたら、いきなり主役に抜擢され、ヒロインと媾うことになったのよ。5/2

2人の兄がうまく取り持ってくれたので、ぼくは、やっとこさっとこ彼女とデートすることができたんだが、せっかく会ったというのに、ただのヒトコトも喋ることができへんかった。5/3

朝の5時すぎ。早く寝たのでもう起きだした長男が、疲労困憊してぐっすり寝こんでいる妻の枕を取り去り、ついでうわ掛けの毛布を、最後に敷布団まで力任せに引っ張るので、仕方なく妻は、睡眠不足の赤い目をこすりながら起き上がるしかない。5/4

私は日記に、現在と過去と2種類の話を書いていたのだが、現在も過去も、次ぎ次に過去と大過去にずれていくので、ずれていった分に、新しい現在と過去の新しい話が、次々に必要になるのだった。5/5

何十年ぶりに故郷の町に帰ってきた私は、この町の伝統であるマラソンレースに参加したのだが、案の上びりっけつでゴールインしたのだが、その時旧友の一人から、思いがけない話を聞いた。私の昔の恋人が、ここからそう遠くない隣町の炭海地区の洞穴に、1人で住んでいるというのだ。5/6

とっくの昔に誰かと結婚して、米国のLAに住んでいるはずなのに、「なんでまた?」と訊ねると、なんでもLAで暴漢に襲われて亭主が殺され、自分は重傷を負ったものの生き延びたので、帰国してからはずっとそこに住んでいるというので驚いた。さてどうしたものか?5/7

おらっちは、田舎のバッティングセンターで球拾いをして、生計を立てているのだが、時にはピッチングマシンから時速150キロで飛んできた球を撃ち返して、ホームランにしたりすることもあったが、そんな時にはいくら探しても、球は見つからないのだった。5/8

成瀬監督の私が、白い瓜実顔の新玉美千代を起用した映画「長い道」のラストシーンは、題名通り長い坂道を下って来る美千代のロングから始まり、クロースアップで終わるのだが、彼女の顔があまりにも透明で、余りにも美しいので、なかなかカットを命じることができなかった。5/9

キオスクに貼られているポスターで知ったのだが、私が知らない間に、突然今年のザルツブルク音楽祭への出演が決まったらしい。なんでも私は、メンデルスゾーンとモザール、そしてウェーベルンのピアノ曲を演奏するらしいが、はてさて、どうしたらいいのだろうか?5/10

いきなり暴漢共に襲われたおらっちは、ひとりだけうまく外に逃げ出したのだが、それを知った誰かが、後ろから追いかけて来る。ビルの階段を、下へ下へとどんどん逃げまくるおらっち。5/11

大相撲を引退した元横綱めがけて、右から左、大から小までのすべての党派が、「ぜひとも我が党から選挙に立って欲しい」と要請したのだが、元横綱は、どの党の要請にも応えることなく、吉本興業に入ったのであった。5/12

口元にマイクを突き付けられたのだが、いったい誰に向かって、何を言うたらええのか、てんで分からんかったので、チャットAIを呼び出して、「おめえ、なんか言え」と命じて、代わりに答えてもらったずら。5/13

一度将棋でいう「歩を垂らす」というのをやってみたくて、歩を垂らして1歩進んで、晴れて「ト金」になってみたら、あっというまに、名人戦に買ってしまったよ。5/14

おらっちは、その男が正論をぶつのを聞いているうちに、正論は正論で結構なのだが、その正論を、あまりにも激烈にぶちあげる、その態度がだんだん不愉快になってきて、遂には、その男を憎悪するようになってしまった。5/15

おらっちは怒り狂って、今日こそその無礼な酔いどれ詩人をぶち殺そうと、晒しに巻いた出刃包丁を懐に忍ばせてやって来たのだが、それと知った取り捲き連中が、口々に「和を以て貴しとなせ」と、まるで聖徳太子のような科白を吐くので、とうとう決行できなかったわい。5/16

原宿の会社の1階で、エレベーターに乗ろうか乗るまいかと悩んでいると、部下のヒグマが「どうかしましたか?5階に行きましょうよ」と誘うのだが、やっぱり行きたくないので、地下の食堂でお茶を飲んでいると、お気に入りのカワイコちゃんがやって来て、超ミニをモンローみたく翻してくれた。5/17

僕は、シンプルブルブルジョワジーのタカギ伯爵の海辺の別荘に招かれて、ひと夏を過ごすことになったのだが、1冊の文庫本も持たずにやって来たので、突然原因不明の不安に襲われて、おちおち休暇を楽しむどころの騒ぎではなかった。5/18

とつぜん熊本のトミカワとかいう男が電話してきて、「ウチの娘を傷モノにしやがって、いったい全体、どう始末をつけるつもりだ」と怒鳴るので、「おたくの娘さんには会ったこともありません」と返事したが、てんで納得しない。どうやら大きな誤解があるようだ。5/19

俺たちゲリラ軍は、帝国軍の兵士とほぼ同じ格好で、一緒に行軍することもあったが、彼らが右肩に銃を担いでいるのに対して、俺たちは左肩に担いでいることで、両軍の区別が可能だった。5/20

月中には、コロナ怪獣と最前線で戦っていたのだが、月末になると、到底太刀打ちできなくなってきたので、全員医局に籠城せざるを得なくなってしまったずら。5/21

わいらあ南北朝時代に、主君より好き勝手ができた実権派の武将、高師直その人やったもんで、夜な夜な公家の深窓の美女をかっ攫っては犯し、かっ攫っては犯しの「酒池肉林性活」を、何年も何年もエンジョイできたんやった。最後は殺されたけど。5/22

その社会福祉法人の施設で、私は何十年も働いてきたのだが、その間施設長は何十人も代わり、法人の経営主体さえ何度か変わったが、私と妻、そしてまだ幼い時期の面影を宿している施設利用者の息子の3人だけは、朝から晩までいつも一緒に歳をとって来たのだった。5/23

私は、その前日に青年野球の監督を辞めていたものだから、大チョンボを繰り返す選手たちを、怒鳴ったり、苛めたり、体罰を加えたり、訓導したりすることも出来ず、イライラが募るばかりだった。5/24

夢の中の夢が、暗くて部厚い雲のように覆いかぶさっているので、息苦しくて暑苦しいのは、いつもと違う頻尿材を飲んだからに違いない。ところで、今何時だろう?5/25

デザイナーのイケダノブオがやってきて、「ササキさん昼飯でも喰いませんか?」と誘うので、あれっ、「君は、サンフランシスコでソノダと一緒に仕事をしているはずじゃなかったの?」と訊ねると、「ソノダなんて、知っちゃいないっすよ」と冷たい返事なので、超驚いたずら。5/26

久し振りにマージャンをやったんやけど、おっらち、コウヘイにハネ満を振りこんでしまったい。5/27

歳のせいか、目も耳も頭も鈍くなってきたので、やむを得ず、ドタマに1発、ぴすとるの弾を撃ちこんだら、たちまちスッキリしちまったずら。5/28

故障していたテレビが、突然元通りに直ったことに関係するのかどうか分からないが、急に視力が回復して来て、物干し竿の最先端が、くっっきりと見えるようになったあ。5/29

住所録を作るために、エクセルを使わざるをえなくなったが、今までワードしか使ったことがないので、勝手が分からない。縦列全体に網目を掛けて、字体と級数を統一しようとしたら、なにかの弾みで、何丁目何番地のところが、グチャグチャになってしまったずら。5/30

光速を上回る速度で突き進んで行くと、空間がどんどん凝縮されて、葬式饅頭くらいの大きさで、白熱しているのが、観察できた。5/31

私のボールペンの筆先から、紅蓮の炎と共に、霊感に満ち満ちた御文章が発出されたのだが、その中身たるや、書いた本人すら、赤面せざるを得ないほど、無内容な代物だった。5/31

 

 

 

心から心へ

西暦2023年皐月廿日銕仙会能楽研修所にて
青山実験工房第7回公演「追善・一柳慧」を4時間半立て膝で見聞きして

 

佐々木 眞

 

 

これは昨年10月に急逝された敬愛する作曲家を追悼する催しの、駆け足レポートです。

敬愛する音楽家が、多数登場する異色のコンサートとあれば、万難を排して駆けつけねばなりませんが、期待以上の感動的な音楽会でした。

まずバーバラ・モンク=フェルドマン構成・作曲による世界初演の「松の風吹くとき」では、高橋アキの研ぎ澄まされた感性と熱演が、劇空間と時間の全体を終始完璧にコントロールしていました。

ワキ西村高夫、シテ清水寛二の朗詠と能舞で、小野小町の3つの和歌が朗詠されるなか、高橋アキのピアノが、西洋音楽の主旋律と能の謡、地謡、囃子の劇伴を、同時並行かつ重層的に奏でる和洋折衷の新世界は、まことにエキサイティングでありました。

ただ、小町の世界に「羽衣」を不器用に接ぎ木したような能舞や、突如登場した鳳凰?の模型を、シテからワキへと手渡したりする直截的な演出に対しては、古典的な能の世界に馴染んできた観客は、多少の違和感を覚えたことでしょう。もっとも、それが演出家の狙いかも知れませんが。

トイレに並んでいうちに終わってしまった短い休憩の後で、慌ただしく第2部が始まります。なんせ猛烈に中身の濃い演目が、出番を待って犇めきあっているのです。

まずは前衛音楽の世界の重鎮、高橋悠治御大へのインタビューから。
御年84歳ながら、お洒落でシックな服装が素敵です。

「米国で映画音楽を手掛けると一流に非ず、というのが常識だったのに、わが国では武満、黛、林などの現代音楽家が挙って手掛けるのは不可解だ」と米国では言うておった、というような証言が印象に残りましたが、前日と同じ演題では、思い出噺もしんどいですよね。

次は1994年生まれの超若手作曲家、森円花の「神話 独奏ヴァイオリンのために」を甲斐史子が独奏しました。どんどん良く鳴る法華の太鼓、いつ終わるとも知れないアレグロの、テープの張られないゴールに向かって、莫大な熱量で爆走する巨大な行進に拳を握りしめて、「そうだ、そうだ、どこまでも、どこどこまでも突き進めえ!」と、胸の奥で怒鳴っているうちに、白内障でろくに見えない左目から、突如涙が噴き出してきたのには、いささか驚きました。

私は古典音楽では、かのチェリビダッケ&読響の生演奏に絶叫し、涙したことはありますが、現代音楽で泣いたのは、生まれて初めて。彼女が「一柳賞」を獲ったのも宜なるかな。この若き作曲家と、この物凄いヴァイオリニストの名前を、心の中でがっつり銘記したことでした。

息つく間もなく、今度は御大高橋悠治選手の登場で、一柳慧作曲の「イン・メモリー・オヴ・ジョン・ケージ」が、悠揚迫らぬ風格を保ちながら、演奏される。
終わり近くに御大突然立ち上がってピアノの中を弄ったのち、バアーンと全体重を掛けて「思い出を閉じた」あたりは、いかにも<ケージー=一柳=悠治>の濃密な交わりを象徴しているようで、それはそれは特別な瞬間でした。

甲斐史子のヴァイオリンと高橋アキのピアノで、やはりジョン・ケージの「ノクターン」、続いて石川高の笙、甲斐史子のヴァイオリンと清水寛二の能舞で、一柳慧の「月の変容」が奏された後で、メゾソプラノの波多野睦美が登場し、高橋悠治の伴奏で彼が作曲した「黒い河」が演奏されました。

これは解説によると、アムール川のほとりの日本人収容所で1954年に病死した俳人山本幡男による8つの俳句に基づく作品ですが、俳句の四季の循環を再現するように、舞台に円弧を描いて移動しながら歌う波多野睦美の、故人への深い思い入れが印象に残りました。

次が一柳慧の「限りなき湧水」です。タイトル通りに高橋アキが、ピアノが壊れんばかりに、力奏、力演また力奏。これほど勁い思いで書かれた激烈な音楽を、私は初めて耳にしながら、ビアニストの指と、ピアノの無事を切に祈っておりました。

まだまだコンサートは続きに続いて、またまた世界初演曲が登場! 殺された長男元雅の死を悼んで父世阿弥が書いた追悼文に拠る高橋悠治の「夢跡一紙」です。

これは波多野睦美のメゾと清水寛二の朗読、高橋悠治のピアノで演奏されましたが、ここでは能で鍛えた清水寛二の<声>の力が圧倒的。最近はよく詩人がみだりに朗読するようですが、まずは謡曲で喉を鍛錬してからがよさそうです。

さうして、ようやくやってきたのが今日のマチネーのオオトリ、一柳慧の図形楽譜に拠る「アプローチ」です。(この楽譜は1972年に製作されたそうですから、もしかすると、私がその頃の原宿で、ある日あるとき、ほんの一瞬だけ拝見させて頂いた楽譜の中にあったものかもしれないぞ)。

なんせ音楽の全体像に対する図形と漢字による表示はあっても、オアマジャクシがないのだから、石川高、甲斐史子、清水寛二、高橋アキ、高橋悠治、波多野睦美の全出演者が、思い思いに能舞台に現れ出てきても、誰が何を「アプローチ」するのかは、決まっていない。はずである。

それでも、いちおうのリーダー役は高橋アキ選手が司っているらしく、彼女が大声をあげてドラムを叩いたり、その綿棒でピアノの底面を叩いたり、高橋悠治が死んだ振りをして柱に寄りかかったり、清水寛二がピンポン球を客席に飛ばしたり、いきなり窓を開いて午後4時の陽光を招き入れたり、全員が三々五々やたら動き回ったりする姿を見ていると、既成のコンサートホールの音楽のありようを否定して、なんとか「アナーキーな非音楽的音楽状態」を立ちあげようとした一柳慧選手の心中の意図だけは理会できた、ように思ったことでした。

「でんでん太鼓」に「ガラガラ」で対抗しようとする高橋兄妹のユーモラスな顔と顔を、楽しく見物しているうちに、はしなくも私が思い出したのは、かのチャプリンとキートンが芸人根性でシノギを削った映画「ライムライト」でありました。

あそこでは、ヴァイオリンとピアノを破壊しての激烈な音楽バトルが繰り広げられましたが、もしかすると、一柳選手の図形楽譜の端っこには、そんなハチャメチャ・スラップスティック像が想定されていたのかもしれない。

とまれかくまれ、皆さんお手を拝借。過ぎてしまえば、いずれは演じた人も、見た人も、誰もが忘却してしまうであろう、一期一会の夢のコンサートに万歳三唱!!!

 
 

   その昔“昭和の世阿弥”が出入りした銕仙会で「現音」を聴く 蝶人

 

 

 

家族の肖像~親子の対話 その65

 

佐々木 眞

 
 

 

2023年1月

あけましておめでとう。ぼく、言いましたよ。
コウ君、おめでとう!

ぼくは、お正月、好きですお。ぼく、お雑煮好きですお。
お父さんも。

お母さん、お父さん泣いたの、セイザブロウさん亡くなったからでしょう。
そうよ。

お母さん、ショウガイジって、なに?
障害を持つ子よ。

お母さん、自閉症って、なに?
コウ君みたいな人のことよ。

お父さん、おまわりさんの英語は?
ポリス、じゃなくて、ポリス・オフィサーだよ。
ポリス、ポリス、ポリス

命令って、こうしなさい、ってことでしょう?
まあそうだね。
メイレイ、メイレイ、メイレイ

零は、雨に命令の令ですお。
なるへそ、そうだね。

廃止、なくなること?
そうだよ。

お母さん、オデンに、大根と卵入れてくださいね。
はい、分かりました。

今日は、小正月ですよ。
そうか、コウ君よく知ってるね。
小正月、なに?
小さいお正月、かなあ。

ぼく、2023年好きですお。
そうなんだ。

「♪これっくらいの、お弁当箱に……」、ぼく、歌いましたよ。
歌ったね、コウ君。

お父さん、洗濯物乾いていますよ。
そう?ほんとに乾いた?
乾きましたお。

ぼくはトシヒコ君です。
こんにちは、トシヒコ君!

ぼく「コンピューターおばあちゃん」です。
それなに?
「みんなの歌」だお。
そうかあ。

ぼくはタクちゃんです。
こんにちは、タクちゃん。

お母さん、機会あったら、って?
今度良かったら、よ。

 

2023年2月

お父さん、きょう、イシハラサトミのビデオ、予約して。
分かりましたあ!

お父さん、きのう、イシハラサトミのビデオ、録画してくれた?
しましたよ。(朝5時から何回も電話あり)

お父さん、ぼくイシハラサトミのビデオ見ますよ。いま。
分かりましたあ。

盛りだくさんって、なに?
いっぱいある、ってことよ。

偶に、の英語は?
オケーショナリーかな。
タマニ、タマニ、タマニ

YMCA  GoGoGo!YMCA  GoGoGo! ぼく、いいましたよ!
ゆったね。

つもったら、電車とまっちゃうでしょう?
そうねえ、停まってしまうね。

ぼく、ウエハラミツキ好きになったんですお、フクモトリコの次に。
リコの次にかあ。

フサグは、シンキンコウソクのソクだよね?
なぬ?
塞ぐは、心筋梗塞のソクだよね?
そうか。ああ、そうだね。

お母さん、きょうコンスープとおいものグラタンにして。
分りましたあ。

なんとなくの英語は?
Somehowだよ。

セイザブローさん、シンゾー痛かったでしょう?
痛かったと思うよ。

お父さん、2千円ください。
お母さんにいいなさい。
お母さん、2千円ください。

ぼく令和5年好き。2023年、好きですお。
そうなんだ。

ぼくハレルヤの歌、好きなんですお。ハーレルヤ、ハーレルヤ、ハーレルヤ、ぼく歌いましたお。
歌ったね。

ぼく、パンダ好きですよ、お母さん。
そうなんだ。コウ君、パンダ見たことあるの?
ないお。

お母さん、口内炎が出来ましたよ。
あらまあ、こんな酷いことになって。痛いでしょう。
痛いですお。
可哀想に。お薬飲みましょうね。
ぼく、飲みますお。

えーとねえ、ぼくさいたま市好きですお、お母さん。
そうなんだ。

ウエハラミツキ、可愛いよね、お母さん。
うーーーん、可愛いというよりは……。

ぼくアサオカルリコです。「めんどくさいね」言いましたよ。
浅丘ルリ子がドラマでそういったの?
そうだお。

 

2023年3月

お母さん、大町から六地蔵通って、図書館行ってくださいね!
分かりましたあ。

お父さん、お風呂洗ってください。
分かりましたあ。

お父さん、大好きですお。
コウ君、なにかやったんでしょう?
やってませんよ。やってませんお・

お父さん、きょうトリセツ録画して。
イシハラサトミが出るやつね。分かりましたあ。

お父さん、きのうのトリセツ録画した?
ばっちり録画しましたよ。

お母さん、ミーティング、なに?
話し合いのことよ。

こっちのメダカさん、あなたも仲良く一緒に暮らすのよ。

コウ君、きょうはケンちゃんが来ているから、一緒に晩御飯を食べましょうね。
はい、分かりましたあ。

ぼく、オオヤさんに会ったんですよ。
そう、良かったね。
オオヤさん、ヒロスエリョウコに似ていますよ。
似てるね。

お父さん、洗濯機の修理頼んだ?
頼んだよ。でも部品が無いからいつ来られるか分からないんだって。
お父さん、洗濯機の修理頼んだ?
だからね……

お父さん、大好きですよ。
お父さんも、大好きですよ。

お父さん、洗濯物乾いた?
乾きましたよ。
お父さん、洗濯物乾いた?
乾いたよ。
お父さん、洗濯物乾いた?

ぼく、ヨシダタクロウです。
こんにちは、タクロウさん。

ジゾクコウマクカブロック、麻酔でしょう?
そう、麻酔だね。

お母さん、ぼく埼玉県好きですよ。
そうなの。お母さんもよ。

お母さん、誰と電話しているの?
当ててご覧。
エイコさん?
ブブー。
マリちゃん
ブブ-。

お母さん、ハスの赤ちゃんが出ていますお。
あらほんとだ。小さな芽が出てるのね。コウ君、よく見つけたね。

 

 

 

「即物入魂」の法悦境

豊田市美術館『ねこのほそ道』展で、8枚のぞうきん連作をみて、歌える*

 

佐々木 眞

 
 

 

新幹線の 名古屋駅から 45分
2つ乗り換えて 辿り着いたは 生まれて初めて 訪ねる 豊田市 美術館
人造湖 まで ある 広大な 敷地に 聳える 広い 広い 美術館 じゃった

そこで お目にかかったのは 2匹の ねこ
飼いたくても 飼えず 画家が 泣く 泣く 手放した 可憐な こねこ チャンと
目玉が 爛爛と輝く ペルシア絨毯付きの 立派な ねこの 「しいたけ」君 じゃった

じゃった じゃった ねこ ふんじゃった
大小 2匹 の
ねこ じゃった

『ねこのほそ道』 展 だから
ねこじゃ ねこじゃ の オンパレード か と 思って たら
そうでは なくて ねこ以外 のほうが 多かった

タオル バスマット バスタオル
のれん テーブルクロス 大きいテーブル
8種類も 並んだ ぞうきん 特製 コレクション!

もの じゃった もの じゃった
揃いも 揃って もの じゃった
みんな 見慣れぬ もの ばかり

立派な 絵描きさん なら
油絵 なんかで
ぜったい 描かない もの ばかり

ところが どうでい そんな ガリガリ博士の 無機物を
たとえば 画幅を はみ出す 灰色の ぞうきんなんか を じっと 見てると
驚く なかれ ぞうきん はん が もの を いうでは ないです か

 

第1のぞうきん、かく語りき。

あら、ご主人が、あたしの濡れた体を、ギュッと絞らないので、また奥さんに怒られてる。

 
第2のぞうきん、かく語りき。

ネエ、ネエ、聞いて、聞いて。
あたしんチのご主人ときたら、朝からポカポカ陽気なもんだから、
道路に長々と寝そべっている蛇を見つけて、「ギャッ!」と叫んで、「蛇だ! 蛇だ!」と大騒ぎして、腰を抜かしながら、それでも蛇さんを川に追い落とそうとして、
右足でキックしたら、
見事空振りして、すってんどお。
奥さんに、ケラケラ笑われてたわ。

 
第3のぞうきん、かく語りき。

あの人、白内障で、左の目が見えなくなったからかなあ?
でも白内障で失明してしまった飼い犬のムクの晩年の苦労が、少しはわかってきたらしいよ。
世の中、ケアとかヤングケアラーとか、何でも横文字になったら初めて考えてみるのが大流行みたいだけど、おらっち、昔ながらの「同病相哀れむ」とかの日本語の方がいいな。
台所の片隅に張り付いたままで、それなりに満ち足りた一生を送る、わいらあ「健常ぞうきん」から見たら、世間なんて「2足歩行という名の障害者」、「晴眼者という名の障害者」、「五体満足という名の障害者」でみちみちて、チャンチャラおかしいね。

 
第4のぞうきん、かく語りき。

あのご主人、こないだある指圧の名人から、
「目とは不思議な組織で、大宇宙的な要素がはまり込んだりしています。ちょうど鯉のぼりの鯉の目のように、眼球の中に眼球、さらに眼球、さらに眼球、とイメージしながら、手首を指圧してみてください、重複構造の良い方の層が、悪い方の層と交流しあい、目の改善に役立ってくれる筈です」
と教えられたので、毎日一生懸命に、自分で自分の指圧に励んでいるそうよ。

 
第5のぞうきん、かく語りき。

最近外車では、ボルボが増えて来たようだね。
隣のおにいちゃんも、ボルボを乗り回しているけど、あれはスウェーデン製の頑丈な車なんだ。
むかし、ご主人の親戚のおじさん2人が、夜の京都の比叡山ドライブウェイで、運転を誤って、谷底に転落したけど、怪我ひとつしなかったのは、あの頑丈な車に乗ってたかららしいよ。

第6のぞぞうきん、かく語りき。

谷底で思い出すのは、鎌倉の杉本観音から逗子岩殿寺までの巡礼古道ね。
ここは高台になっていて、昼間なら遥か富士山を見渡すこともできるのよ。
ご主人の奥さんに聞いた話だけど、鎌倉殿の頼朝と政子は、長女大姫の長のわずらいに心を痛め、百鬼疾病退散を祈願して、「100日間毎夜毎晩のお百度参り」を夫婦一緒に敢行したけれど、とうとう治らずに、20歳で亡くなってしまった。
そりゃそうよね、婚約者の木曽義仲の息子、義高を惨殺したのは、他ならぬ頼朝自身。その罰が当たって、落馬して死んじゃったのよ。

 
第7のぞうきん、かく語りき。

きのうの夜、噂のお騒がせ主人が、3年越しの大詩集の最後の最後の校正をしていたら、
どういう風の吹き回しか、自作の巻頭の詩が消え失せて、香港の民主派の新聞『りんご日報』2021年6月24日附の1面トップの、

「雨の中香港の人にお別れする。また会いましょう!」*

という、最期の記事が載っかってたんだって。
まっこと、面妖な話じゃね。

 
第8のぞうきん、かく語りき。

ああ、いい匂い!
奥さんが台所で、夏蜜柑の皮を煮詰めて、ジャムにしてる。
柑橘類の実を食べると、皮を捨てる人が多いけど、ほんと勿体ないわね。
おや、ご主人が「緑のそよ風」*を歌いだした。
下手糞だけど、とてもいい歌ね。
さあ、みんな揃って、歌いましょ!

 

ああ 驚いた 驚いた
ぞうきん には ぞうきん なりの 人世が あった のだ

物 には 言葉 が あった のよ
物 には 命 が 宿ってた のさ

ぞうきん だけ では ありま へん
画家の 描いた もの ども が 次から 次に もの を いう

アベノ マスク プラスチック フィルム
石 防災 シート ブルー シート 画家の 自画像が 描かれた 椅子 まで も
思い 思いに もの を いう

これぞ これ 世にも 不思議な カタリ カタリの 物語り
世 にも 真摯な 展覧会
「即物入魂」 の 法 悦 境

実 相 感 入 真 実 在
山 川 草 木 悉 皆 成 仏
「シン・もの派」 の ワンダー ランド と でも 言うべき か

 
 

*豊田市美術館『ねこのほそ道』展(2023.2.25~5.21)における佐々木健氏の油画連作「ぞうきん」に触発された作品です。

**2021年6月24日テレビ朝日ANNニュースより引用。

***「緑のそよ風」は、作詞清水かつら、作曲草川信による1948年の童謡。

 

 

 

「夢は第二の人生である」或いは「夢は五臓六腑の疲れである」第101回 改訂版

 

佐々木 眞

 
 

 

2023年1月

峰と峰の間の鞍部に、「おとろま」とか「ふくこう」とか、「こんろん」とかいう言葉が蟠っているみたいなので、現地で確かめたいと思うのだが、いつそこへ辿りつけるのかさっぱり分からない。1/1

ホステス役の彼女は、ランチが出来るレストランを必死で探したが、見つけられなかったので、おらっちはさりげなく「確かこの道を左に曲がると、おいしいイタリアンのお店があるはずですよ」と、助け船を出したのよ。1/2

この店では「週刊朝日」しか売っていないというハンデイィキャップを、逆手にとってPRすべし、と何げなくおらっちが提案したら、上司が「俺もそう思う」と乗ってきたために、おらっちは、久し振りに朝日新聞広告部のアルガ氏を訪ねることになった。1/3

急に勉強したい気分になって、我ながら不思議だったがあ、隣の可愛いおねいちゃんの十五夜のノートを、丸ごとコピーしたり、ついでに同棲を始めたりして、すっかり青春してしまったずら。1/4

その国の、出来立ての長大なミサイルの先端部には、なにやら日本語が書かれているようなので、近づいてよーく見ると、「雪んちょ学園」と記されていたので、その訳を聞くと、開発者の母校である小学校の名前だった。1/5

「これなら、あなたにも出来るでしょ」と言われて、おらっちは、深い穴の奥底を覗き込んだが、あまりに暗くて何も見えなかった。1/6

PCをやっていたら、突然ハチャメチャな文章が飛び込んで来たので、仕方なく直していると、またハチャメチャな文章が飛び込んで来たので、「お前は誰だ。おらっちに仕事の依頼ならそう言え。無料じゃないぞ」と怒鳴ったら、引っ込んだ。1/6

さんざん歩き回った挙句に、「ごめんなさい、この近くにランチが出来るレストランを御存じですか?」とその女が尋ねるので、目の前の高層ビルを指さして、この中にいっぱいありますよ」と答えたもんだ。

おらっちは、よくは覚えていないのだが、なんとかきゃんとかして、地球の爆発を止めたので、みんなから「やったね、おめでとう!」と礼を言われたのよ。1/7

ホームレスなフーテン生活をしていたおらっちを頼って、見知らぬホームレスがやってきたので、仕方なく、ホームレスの友達に借りた広いテントに入れてやって、毎晩2人で寝ている。1/8

そのターミナルの地下室には、車両基地があったので、おらっちは、夜毎の美魔女を連れ込んで、朝までマグ割ったのよ。1/9

氏はあろうことか、私がつい先ほどまで彼の美貌の細君と同衾していた臥所まで案内し、意味ありげな目つきで、私を見た。1/10

私は自分の詩集の最終校正を急いでいる最中に、恩師の生誕100周年特別行事の司会を頼まれ、何度も固辞したのだが、どうしてもと強要されたその席で、狭心症の発作が起こって、救急車で病院に運ばれたのだが、運の無いことには、あっけなく命終しちまったよ。1/11

FBのメセンジャーで対話しているんだが、お互いの言葉が、空中衝突しては、地べたに落っこちてしまうので、スムースな意思疎通が、てんでできないのだ。1/12

寝台列車に乗っているはずだのに、実際はバスの後部座席を寝台替わりに眠っていたらしいが、窓から見える景色は、ともかくステキだった。1/12

おらっちは、深町雄二という役者として喰えるようになっても、依然として俳優協会に7つの名前で登録をしていたので、深町雄二主演の映画の通行人で、おらっちの別名の飯田太郎が、出演することもあった。1/13

旧ソ連に併合され、祖国の歴史、文化、言語まで抹殺されそうになってきたので、おらっちの使命は、それらをなんとかして奪還することだと思い決めたのだが、とりあえずどうしていいのか、てんで分からないのだ。1/14

祖国の軍事政権から追放されて、私は長らく隣国で亡命生活を続けていたのだが、そのうち母国の言葉や伝統文化にうとくなってきたために、母国の人々から非難され、誹謗中傷され、とうとう命まで狙われるようになってしまった。1/15

久し振りの巴里。さて今夜はどうしようかと考えていたら、フランス映画社の若くて髪黒々の柴田社長から、「ササキさん、ウチの新しいシャシンの試写会があるんだけど、どうですか?」と誘われたので、喜んで同行することにしたが、いつの間に巴里にフランス映画社が進出していたんだろう。1/16

施設でナ―君がコウを苛めるというので、心配したが、ナ―君は好きな女の子に振られた腹いせに、みんなに当たり散らしていることが分かったので、胸をなで下ろしたのよ。1/17

群衆の中に「理非曲直を明からめよ」と大書したプラカードを掲げた男がいたので、懐かしの赤尾党首かと思って近ずいたのだが、赤尾病院の院長先生だった。1/18

建築業界の大会が、今年は長野県で開催されたが、世界的に有名な建築家が、会場のてっぺんに登って、そこから講演の蘊蓄満載のレジュメをまき散らしたのだが、それを拾い損ねた聴衆が、みな天井に登り始めたので、「建築家は来るな、来るな」と、杜子春のように絶叫したのよ。1/19

大学の授業料を払いに来たのだが、天気がいいので、日光浴をしていたら、向かいの垣根に怒りのチビ太の大好きなタコが、3匹もぶら下っていたので、これ幸いとお土産にしたのよ。1/20

SMSで#イナゲヤ→#六つ子→#イエスキリストと辿ってみたら、「新製品「イエスキリストを焼いたコーヒー」を試してみませんか?」と聞かれたので、妙な名前だな、と思いつつ飲んでみたら、美味かった。1/21

イナゲヤの実際の店で買いものをして、レジに行ったら、「10円のおつりがありますが、これを使って新製品「イエスキリストを焼いたコーヒー」を試してみませんか?」と聞かれたので、即お願いした。1/22

日テレが、フジを潰したり、TBSが、NHKを潰したりしている。1/23

競馬場にやって来たのだが、馬も人もいない。いや、たったひとりだけいたのだが、彼は、自分の靴を一生懸命磨いていた。1/24

その某重大事件をテーマにした映画を見るためには、ややこしい操作が必要なので、そのテレビでは、通常の番組を見ることができなかった。1/25

菊之助は、団十郎が逗子で売っているダイコンガウンが大好きだというておったので、土産に持っていこうと思ったのだが、あまりにダサイので、止めてしまった。1/26

もう終わりの見えた患者だったので、その医師は、延命治療すら放棄してしまったようだ。1/27

僕は、太っちょのドンガバチョと一緒に、春を訪ねて諸国一見の旅に出たのだが、ドンガバチョが、夜な夜なしつこく布団の中に忍びこんでくるのには参ったずら。1/28

大昔に命終したはずのコンドーさんが、満開の桃色のチューリップのようなドレスを纏って、いと華やかに登場したので、みんなびっくり仰天だった。1/29

あっと思った時には、すでにカバンがなかった。恐らく電車の中に置き忘れたのだろう。すぐに駅員にその旨を告げたのだが、「どんなカバンですかあ?」と聞かれた私は、はてさて一体どんな形で、どんな色のカバンかさえ、さっぱり思い出せないのだった。1/30

照明器具のある所が、そのままある街の平面図になり、それがPCのモニターに飛び込んでいくのを見ていた助手のタカハシが、「ササキさん、僕も大阪支店へ連れて行ってくださいよお」と甘えたので、即座に却下した。1/31

 

2023年2月

大学は出たけれど就職難でどこも採用してくれないので、異次元野郎お薦めの満洲国へ行こうかと思ったが、冬は北海道より寒そうなので、ずっと炬燵に潜り込んでいるのよ。2/1

周りを見渡したが、みな見知らぬ若者ばかりなので、がっくり消耗したが、生きていくためには仕方ないので、彼らと付き合っていくことに決めた。2/2

学習地図を見ていたおらっちは、もっと詳しく知りたくて、地図の中に飛び込んだのよ。2/3

大阪へ行くゆくつもりだったのに、キミに見とれているうちに、広大な太平洋の真ん中にやって来てしまったずら。2/4

シマワンちを覗いてみたら、両手にいっぱいゴミを持ったシマワンんが、ふーっと息を吹きかけると、たちまちそのゴミは、百層倍も千層倍にも膨れ上がって、部屋中をう埋め尽くしたのであった。2/5

おちっちは、そのお尋ね者を、大きなブリキ缶の中に隠し入れて、当局の追及をかわしてやったのよ。2/6

その晩、大風が吹いて大火も起こり、私が消防署から借りた小船は、大波で大揺れに揺れて、あやうく転覆しそうになったために、毎晩8時にせよと厳命されている夜の定時通報をすることができなかった。2/7

ようやっと入社したものの、超小型の会社だったので、一人で何役も果たさねばならず、おらっちは企画、営業のほかに広報も兼任していたのだが、毎日のように総会屋や右翼がやって来て金をせびるので、全部社長にふって公園で遊んでいた。2/8

私は、毎朝総務のなんでも修理係にくっついて会社中をほっつき歩き、彼が、どんな故障も完璧に修理してのけるのを、驚嘆のまなこで見詰めて、倦むことがなかった。2/9

その先生は、いつでも先頭の乳牛に跨って、急患の訪問治療に駆け付けていたので、その地域の住民からは、「空飛ぶ医者」と呼ばれて、尊敬されていた。2/10

イタリアの寒村で開催されていた、小さな映画祭の出展作品が、ことごとく駄作凡作の山なので、おらっちを含めた審査委員の全員が、会場を出て、広い野原を駈けっこしたのが一番の思い出でした。2/11

最前線の兵士をテェックすると。何名かが死んだり、傷ついたりしていたので、おらっちは、欠員を補充してから、大隊本部に帰還したのよ。2/12

慣れない商談の途中で、いきなり「これでどうですか?」と3行の数字。早くこいつを頭の中で足し算しなければならないのだが、5千万だか5億だか、50億だか、さっぱり分からないので、焦る、焦る。2/13

恵比寿か六本木の駅前に、またしても真っ赤なランボルギーニが停まっていて、「早く乗って」とナカノ君が急かすので、仕方なく乗り込んだが、いったい、どこへ、何しに行くのか、さっぱり分からない。2/14

ずーと無職だったカド君を訪ねたら、最近は「どーんな難問にも、立ちどころに対応できる、大学受験眼鏡」が爆発的にヒットしたために、億万長者になっていた。2/15

2月23日をキーワードに、その職業紹介男が、非常に知的なトークをするので、「こいつをスカウトしてやろう」と思って近づいたら、「トライ」と書いた看板の下に入っていったので、なんだこれはサクライ桃子の会社じゃないか、と気が付いた。2/16

ルンペンプロレタリアートの若者が、口々におらっちに訴えかけるのだが、何を言うておるのか、さぱり分からない。2/17

1時間単位で、世界の名所の現在を、海でん、山でん、街でん、どこでも体感できる無料のアプリができたので、大好評である。2/18

無伴奏チェロ組曲を、バイオリンで弾くマツダ君と、無伴奏バイオリン組曲を、チェロで弾くカド君は、当然のごとく仲良し子良しだった。2/19

タキノ学園というところで、三ツ矢合戦を行ったところ、105名の生徒が死傷するという悲惨な結果になり、それは世界的に金属が高騰したためだという識者が現れたようだが、私には、その因果関係が、さっぱり分からない。2/20

毎週恒例の定期練習と、年に1度のオペラ公演を、自然に合体出来たので、そのパフォーマンスは、なかなか見事なものだった。2/20

年金収入しかない人が、確定申告したら150万も返って来た。「あなたもやりなさいよ」と薦められるのだが、そんなうまい話が、あるのだろうか?2/21

この国の奥地にある、この地方の住民は、優に都人に立ち向かえるだけの気力と体力を、兼ね備えているように思われた。2/22

経験はばバガンヌにちょとアル狂いのように不かっぱつなベシクふぁあん牧場になって筋スタッフをハめたがオひんLュ0なもんだいだった。2/23

ウクライナとシリア大地震へのカンパ資金を稼いでやろうと、カジノに挑戦したんだが、すっからかんになっちまったずら。2/24

その店のどこかに、「岡本太郎特製ドリンク」と注記されたチョコレートのように茶色い液体が、お猪口に入っていたので、何気なく呑み干したら、さらにその傍に「1杯100万円」と書いてあったので、驚いて逃げ出したのよ。2/25

モスクワの中心街で、突然数棟のビルヂングが倒壊し、住民毎、跡形もなく姿を消してしまった。2/26

小学生の頃から、「世界の人と仲良くしませう」と口うるさく叩きこまれたせいか、外国に行くと朝から晩までニコニコしてばかりしていて、いくたびにぐったり疲れ果てたので、もう二度と海外へ行こうとは思わなくなったずら。2/27

私が、生涯の今までに閲した、すべての風景をレントゲンで透視して見せてくれたが、私には、それが自分の脳内の線虫の仕業だと、よーく分かっていた。2/28

1930年の世界情勢に鑑み、余はウィーンの全店舗のレイアウトを、世紀末様式から新興独逸風に一新し、台頭するナチの意を先見的に迎えようと、図ったのであった。2/28

 

2023年3月

われら巴里写真学校の奇習。それはひさしぶりに会った2人が素っ裸になって、尻と尻を突き合わせて久闊を叙すことだった。3/1

夜遅く会社に戻ると、北海道の友人が送ってくれた牛乳が机の上に置いてあったので、その場では呑まずに大切に家に持ち帰った。3/2

私は下宿先の娘をモノにしようと秘かに狙っていたのに、異人たちは彼女を通訳という名目で攫っていったのよ。3/3

私が生涯の今までに閲したすべての風景をレントゲンで透視して見せてくれたが、私にはそれが自分の脳内の線虫の仕業だとよーく分かっていた。3/4

おらっちこの節は自素意自素意自炊宿泊機能が備わったワーゲン特製ロングトレインに乗って全国各地を気儘に放浪しているのよ。3/5

その半透明の空気袋には日本映画の1時間半分のタマシイが内蔵されているそうだが、おらっちはあんまり信用していなかったずら。3/5

同じ程度に優秀な2人の、どちらを採って、どちらを落とすべきか、迷いに迷っていたら、人事のウチダ君が、「ササキさん、両方とも採用したらどうですか」と軽く言うたので驚いた。3/6

夜中に顔面に異常を感じたので、そっと触ってみると、鱗のようなものが顔全体を覆っているので、びっくりして飛び起きると、おらっちの体全体が、魚のように鱗でびっしり覆われていたのだった。3/6

不思議なことには、その地のそのお寺にやってきて、半時もすると、驕り高ぶって狂乱していた我が心に、静謐と平安が訪れるのだった。3/7

アテナイの専制君主は、犯罪者を拘束しても、時々鉄火面を外してくれたが、ここスパルタでは、24時間鉄火面を被せたままで立たせ、糞便は垂れ流しのままという残酷さだった。3/7

ふと見上げると、私はモスクワ宮殿の大広間の巨大なシャンデリアの下で眠っていて、その時、暗殺を恐れて、ロシア各地の地下壕から地下壕へと逃げ回っているツアーリの孤独を、少しは理解できたと思ったのだった。3/8

「緑の会」の青空教室の日だというのに、おらっちが先生の傍にくっついて離れないのは、今日とうとう、第3次世界大戦が始まったからだった。3/8

いつもは死を洒落のめしているおらっちだったが、近所のおばはんたちが、「あんときゃ、あんたは、ほんまに死ぬとこやったんよ」と詳しく教えてくれたので、ほんまに感謝感謝やった。3/9

のぶいっちゃん、ひとはるちゃんの凸凹兄弟と、ひがな一日、たのしく遊びましたあ。3/10

乾いてパサパサになった私は、総身をしっぽり濡らすために、女と事に及ぼうとしていたのだけれど、ベッドの左上方に据え付けられている監視カメラに気づくと、萎えてしまった。政府は今年からマイナカードと監視カメラを結びつけて、帝国臣民のAI管理に乗り出したのだ。3/11

タマラおばさんとターニャおばさんが、しぶるおらっちをここ豊岡のセーターフェスタに無理矢理引っ張り込んだので、どうでも1着買わないわけにはいかなくなってしまった。3/11

北大阪の駅の近くで、5月2日には巨大なテントを設営しなけりゃならんので、夜を日に継いで懸命に作業している。グレゴール先生から、「この近所に働く女たちのアジールがあるから、一度訪ねてみないか」と誘われたが、そんな暇はてんでなかった。3/12

なにせ昭和10年代だから、がら空きの省線電車に乗りながら、おらっちは、衣料雑貨類の中古品販売を、新しい商売にできないだろうか、と考え込んでいた。3/13

新宿の文化学園に寄ったら、顔見知りの人が何人かいて、「毎週火曜日にちょっと手伝ってくれませんか」とモデルを頼まれたのだが、「やっぱ裸にはなりたくないずら」というて、断ったのよ。3/14

すると2週間後に、またしても文化のムラカワさんから連絡があって、「裸モデルはもういいから、なんとしてもなんかを手伝って欲しい」というので、西部キャンパスに出かけてみると、あだしが原に強風が吹き付けて、ウグイスが鳴くばかりだった。3/14

仏蘭西のオルラガとかいう田舎村で、狂犬を窒息死させるくらい強力な毒薬を一服盛られて、危くいのちをおとすところだった。くわばら、くわばら。3/15

永代トイレ名人賞を受賞したおらっちが、招待されて巴里へ行き、名物のエスカルゴ・トイレの周りをぐるぐる回っていると、ペっペッと血を吐きながら、猛烈な勢いでスケッチしている、画家の佐伯祐王三氏に出くわしたのよ。3/16

団塊丘陵の段々に、だんだん迷い込んでしまったのだが、それをグンと引いて眺めてみると、おらっちは、かの脳味噌の内部を、さ迷い歩いているのだった。3/17

一致団結して難事業を成功させた3人だったが、その後の行きかたはてんでばらばらで、A男は鯨飲を、B男はC女との性交を、そしてC女は、乳児への授乳を望んでいた。3/18

我々は大空の上に大きく広がった1枚の絨毯に乗って、世界の果てから果てまでを放浪し続けていたが、下界を覗くためには、絨毯のいちばん端に寄って、頭を下げる必要があるので危険を伴い、すでに数名の墜落者が出ていた。3/19

久し振りに東京の街を歩いていて、明治座の前を通りかかったら、株主総会をやっていたので、そのままどんどん入っていったら、死んだはずのタツミ君が議長を務めていたので、とても驚いた。3/20

英国から公侯伯子男の爵位を持つ連中が一同に揃ったのだが、テーブルの上に、名札がなかったので、誰が誰だか、さっぱり分からなかった。3/21

私がプランナーを委嘱されている京の亀甲通りをぶらぶら歩いていると、私の左手が、向こうから歩いてきた人物の右手と軽く触れたので、「おや、手と手が触れましたね」と言うて立ち止まると、彼が「手と手が触れ合うも何かの縁」と言うたので、すっかり意気投合してしまったのよ。3/22

60年代製のおんぼろバスなのに、ほぼ垂直に切り立った倶利伽羅峠をらくらくと登っていくのには、乗客全員が吃驚仰天だった。3/23

一緒に歩いていた親友が、信号機の袂でしゃがみこんだので、思わず背負おうと腰を屈めたのだが、「大丈夫、大丈夫」というので止めてしまったが、それから間もなくして彼は死んでしまった。自分はあの時、どうして無理にでも彼を背負って、スチュクスの流れを渡らなかったのだろう。3/24

いつの間にか夜型生活のパターンになってしまったので、今年も大学の選択科目の申し込みが出来ず、余儀なく留年して、徹マン大学への通学が続くことになっちまったずら。3/25

「世界お料理コンテスト」で優勝したおらっちのメインメニューは、蜘蛛の糸料理だった。アコーディオンを演奏しながら、7色の色彩豊かな細い糸から、さまざまな料理が湧いて出る。夜店の綿菓子を参考にしたのである。3/26

国がやっている共通1次試験を受けようと思ったおらっちは、交差点の真ん中に立って、やって来た自動車を次々に停めて、「試験用紙持ってる?」と尋ねたら、みんな協力して貸してくれたのよ。3/27

彼女は度重なる不正を働いている男から、時々金を盗み取っていたが、自分ではそれを天罰と位置付けていたので、彼女の良心はちっとも痛まなかったのである。3/28

真夜中に「おとうさあん!」という呼び声がする。きっと長男の声だと思ったが、もしかすると難聴や空耳のせいかもしれないので、またの呼びかけを、じっと待っているところ。3/29

なんせ警察墓地なので、普通の墓地にもまして、静粛さと清和さが隅々まで行きわたっているようだったが、私は、とある著名人の墓の前に、一片の肉塊が落ちているのに気づいた。3/30

第3次世界大戦が沖縄で始まり、西側の世界各国から精鋭軍隊が集結してくるので、兵士たちは、なんとなく五輪気分で浮かれてしまって、各国があちこちに張った天幕を、お互いに訪問しあったりしているようだ。3/31

 

 

 

泥ホテル

 

佐々木 眞

 
 

冷蔵庫が 壊れてもうたさか
テレビも 壊れた

  ―言 言 言
   言葉が多いぞ シェクスピア

ジパングが 壊れてもうたさか
おらっちも 壊れた

  ―音 音 音
   音符が多いぞ モーツァルト

ようやく ここまで やってきたけど
おらっち すっかり くたびれちまった

  ―きのう 仏の座とハナニラで覆われていた 原っぱが
   今朝は 泥ホテルに 変わっとる
 
泥ホテル
泥 泥 泥の 泥ホテル

朝飯抜きの 木賃ホテルで
怪盗ルパン のように 眠ろう

泥ホテル
泥 泥 泥の 泥ホテル

泥ホテルで 朝まで 眠ろう
泥泥ホテルで 死ぬまで 眠ろう

 

 

 

「夢は第二の人生である」或いは「夢は五臓六腑の疲れである」第101回

 

佐々木 眞

 
 

 

2023年1月

峰と峰の間の鞍部に、「おとろま」とか「ふくこう」とか、「こんろん」とかいう言葉が蟠っているみたいなので、現地で確かめたいと思うのだが、いつそこへ辿りつけるのかさっぱり分からない。1/1

ホステス役の彼女は、ランチが出来るレストランを必死で探したが、見つけられなかったので、おらっちはさりげなく「確かこの道を左に曲がると、おいしいイタリアンのお店があるはずですよ」と、助け船を出したのよ。1/2

この店では「週刊朝日」しか売っていないというハンデイィキャップを、逆手にとってPRすべし、と何げなくおらっちが提案したら、上司が「俺もそう思う」と乗ってきたために、おらっちは、久し振りに朝日新聞広告部のアルガ氏を訪ねることになった。1/3

急に勉強したい気分になって、我ながら不思議だったがあ、隣の可愛いおねいちゃんの十五夜のノートを、丸ごとコピーしたり、ついでに同棲を始めたりして、すっかり青春してしまったずら。1/4

その国の、出来立ての長大なミサイルの先端部には、なにやら日本語が書かれているようなので、近づいてよーく見ると、「雪んちょ学園」と記されていたので、その訳を聞くと、開発者の母校である小学校の名前だった。1/5

「これなら、あなたにも出来るでしょ」と言われて、おらっちは、深い穴の奥底を覗き込んだが、あまりに暗くて何も見えなかった。1/6

PCをやっていたら、突然ハチャメチャな文章が飛び込んで来たので、仕方なく直していると、またハチャメチャな文章が飛び込んで来たので、「お前は誰だ。おらっちに仕事の依頼ならそう言え。無料じゃないぞ」と怒鳴ったら、引っ込んだ。1/6

さんざん歩き回った挙句に、「ごめんなさい、この近くにランチが出来るレストランを御存じですか?」とその女が尋ねるので、目の前の高層ビルを指さして、この中にいっぱいありますよ」と答えたもんだ。

おらっちは、よくは覚えていないのだが、なんとかきゃんとかして、地球の爆発を止めたので、みんなから「やったね、おめでとう!」と礼を言われたのよ。1/7

ホームレスなフーテン生活をしていたおらっちを頼って、見知らぬホームレスがやってきたので、仕方なく、ホームレスの友達に借りた広いテントに入れてやって、毎晩2人で寝ている。1/8

そのターミナルの地下室には、車両基地があったので、おらっちは、夜毎の美魔女を連れ込んで、朝までマグ割ったのよ。1/9

氏はあろうことか、私がつい先ほどまで彼の美貌の細君と同衾していた臥所まで案内し、意味ありげな目つきで、私を見た。1/10

私は自分の詩集の最終校正を急いでいる最中に、恩師の生誕100周年特別行事の司会を頼まれ、何度も固辞したのだが、どうしてもと強要されたその席で、狭心症の発作が起こって、救急車で病院に運ばれたのだが、運の無いことには、あっけなく命終しちまったよ。1/11

FBのメセンジャーで対話しているんだが、お互いの言葉が、空中衝突しては、地べたに落っこちてしまうので、スムースな意思疎通が、てんでできないのだ。1/12

寝台列車に乗っているはずだのに、実際はバスの後部座席を寝台替わりに眠っていたらしいが、窓から見える景色は、ともかくステキだった。1/12

おらっちは、深町雄二という役者として喰えるようになっても、依然として俳優協会に7つの名前で登録をしていたので、深町雄二主演の映画の通行人で、おらっちの別名の飯田太郎が、出演することもあった。1/13

旧ソ連に併合され、祖国の歴史、文化、言語まで抹殺されそうになってきたので、おらっちの使命は、それらをなんとかして奪還することだと思い決めたのだが、とりあえずどうしていいのか、てんで分からないのだ。1/14

祖国の軍事政権から追放されて、私は長らく隣国で亡命生活を続けていたのだが、そのうち母国の言葉や伝統文化にうとくなってきたために、母国の人々から非難され、誹謗中傷され、とうとう命まで狙われるようになってしまった。1/15

久し振りの巴里。さて今夜はどうしようかと考えていたら、フランス映画社の若くて髪黒々の柴田社長から、「ササキさん、ウチの新しいシャシンの試写会があるんだけど、どうですか?」と誘われたので、喜んで同行することにしたが、いつの間に巴里にフランス映画社が進出していたんだろう。1/16

施設でナ―君がコウを苛めるというので、心配したが、ナ―君は好きな女の子に振られた腹いせに、みんなに当たり散らしていることが分かったので、胸をなで下ろしたのよ。1/17

群衆の中に「理非曲直を明からめよ」と大書したプラカードを掲げた男がいたので、懐かしの赤尾党首かと思って近ずいたのだが、赤尾病院の院長先生だった。1/18

建築業界の大会が、今年は長野県で開催されたが、世界的に有名な建築家が、会場のてっぺんに登って、そこから講演の蘊蓄満載のレジュメをまき散らしたのだが、それを拾い損ねた聴衆が、みな天井に登り始めたので、「建築家は来るな、来るな」と、杜子春のように絶叫したのよ。1/19

大学の授業料を払いに来たのだが、天気がいいので、日光浴をしていたら、向かいの垣根に怒りのチビ太の大好きなタコが、3匹もぶら下っていたので、これ幸いとお土産にしたのよ。1/20

SMSで#イナゲヤ→#六つ子→#イエスキリストと辿ってみたら、「新製品「イエスキリストを焼いたコーヒー」を試してみませんか?」と聞かれたので、妙な名前だな、と思いつつ飲んでみたら、美味かった。1/21

イナゲヤの実際の店で買いものをして、レジに行ったら、「10円のおつりがありますが、これを使って新製品「イエスキリストを焼いたコーヒー」を試してみませんか?」と聞かれたので、即お願いした。1/22

日テレが、フジを潰したり、TBSが、NHKを潰したりしている。1/23

競馬場にやって来たのだが、馬も人もいない。いや、たったひとりだけいたのだが、彼は、自分の靴を一生懸命磨いていた。1/24

その某重大事件をテーマにした映画を見るためには、ややこしい操作が必要なので、そのテレビでは、通常の番組を見ることができなかった。1/25

菊之助は、団十郎が逗子で売っているダイコンガウンが大好きだというておったので、土産に持っていこうと思ったのだが、あまりにダサイので、止めてしまった。1/26

もう終わりの見えた患者だったので、その医師は、延命治療すら放棄してしまったようだ。1/27

僕は、太っちょのドンガバチョと一緒に、春を訪ねて諸国一見の旅に出たのだが、ドンガバチョが、夜な夜なしつこく布団の中に忍びこんでくるのには参ったずら。1/28

大昔に命終したはずのコンドーさんが、満開の桃色のチューリップのようなドレスを纏って、いと華やかに登場したので、みんなびっくり仰天だった。1/29

あっと思った時には、すでにカバンがなかった。恐らく電車の中に置き忘れたのだろう。すぐに駅員にその旨を告げたのだが、「どんなカバンですかあ?」と聞かれた私は、はてさて一体どんな形で、どんな色のカバンかさえ、さっぱり思い出せないのだった。1/30

照明器具のある所が、そのままある街の平面図になり、それがPCのモニターに飛び込んでいくのを見ていた助手のタカハシが、「ササキさん、僕も大阪支店へ連れて行ってくださいよお」と甘えたので、即座に却下した。1/31

 

2023年2月

大学は出たけれど就職難でどこも採用してくれないので、異次元野郎お薦めの満洲国へ行こうかと思ったが、冬は北海道より寒そうなので、ずっと炬燵に潜り込んでいるのよ。2/1

周りを見渡したが、みな見知らぬ若者ばかりなので、がっくり消耗したが、生きていくためには仕方ないので、彼らと付き合っていくことに決めた。2/2

学習地図を見ていたおらっちは、もっと詳しく知りたくて、地図の中に飛び込んだのよ。2/3

大阪へ行くゆくつもりだったのに、キミに見とれているうちに、広大な太平洋の真ん中にやって来てしまったずら。2/4

シマワンちを覗いてみたら、両手にいっぱいゴミを持ったシマワンんが、ふーっと息を吹きかけると、たちまちそのゴミは、百層倍も千層倍にも膨れ上がって、部屋中をう埋め尽くしたのであった。2/5

おちっちは、そのお尋ね者を、大きなブリキ缶の中に隠し入れて、当局の追及をかわしてやったのよ。2/6

その晩、大風が吹いて大火も起こり、私が消防署から借りた小船は、大波で大揺れに揺れて、あやうく転覆しそうになったために、毎晩8時にせよと厳命されている夜の定時通報をすることができなかった。2/7

ようやっと入社したものの、超小型の会社だったので、一人で何役も果たさねばならず、おらっちは企画、営業のほかに広報も兼任していたのだが、毎日のように総会屋や右翼がやって来て金をせびるので、全部社長にふって公園で遊んでいた。2/8

私は、毎朝総務のなんでも修理係にくっついて会社中をほっつき歩き、彼が、どんな故障も完璧に修理してのけるのを、驚嘆のまなこで見詰めて、倦むことがなかった。2/9

その先生は、いつでも先頭の乳牛に跨って、急患の訪問治療に駆け付けていたので、その地域の住民からは、「空飛ぶ医者」と呼ばれて、尊敬されていた。2/10

イタリアの寒村で開催されていた、小さな映画祭の出展作品が、ことごとく駄作凡作の山なので、おらっちを含めた審査委員の全員が、会場を出て、広い野原を駈けっこしたのが一番の思い出でした。2/11

最前線の兵士をテェックすると。何名かが死んだり、傷ついたりしていたので、おらっちは、欠員を補充してから、大隊本部に帰還したのよ。2/12

慣れない商談の途中で、いきなり「これでどうですか?」と3行の数字。早くこいつを頭の中で足し算しなければならないのだが、5千万だか5億だか、50億だか、さっぱり分からないので、焦る、焦る。2/13

恵比寿か六本木の駅前に、またしても真っ赤なランボルギーニが停まっていて、「早く乗って」とナカノ君が急かすので、仕方なく乗り込んだが、いったい、どこへ、何しに行くのか、さっぱり分からない。2/14

ずーと無職だったカド君を訪ねたら、最近は「どーんな難問にも、立ちどころに対応できる、大学受験眼鏡」が爆発的にヒットしたために、億万長者になっていた。2/15

2月23日をキーワードに、その職業紹介男が、非常に知的なトークをするので、「こいつをスカウトしてやろう」と思って近づいたら、「トライ」と書いた看板の下に入っていったので、なんだこれはサクライ桃子の会社じゃないか、と気が付いた。2/16

ルンペンプロレタリアートの若者が、口々におらっちに訴えかけるのだが、何を言うておるのか、さぱり分からない。2/17

1時間単位で、世界の名所の現在を、海でん、山でん、街でん、どこでも体感できる無料のアプリができたので、大好評である。2/18

無伴奏チェロ組曲を、バイオリンで弾くマツダ君と、無伴奏バイオリン組曲を、チェロで弾くカド君は、当然のごとく仲良し子良しだった。2/19

タキノ学園というところで、三ツ矢合戦を行ったところ、105名の生徒が死傷するという悲惨な結果になり、それは世界的に金属が高騰したためだという識者が現れたようだが、私には、その因果関係が、さっぱり分からない。2/20

毎週恒例の定期練習と、年に1度のオペラ公演を、自然に合体出来たので、そのパフォーマンスは、なかなか見事なものだった。2/20

年金収入しかない人が、確定申告したら150万も返って来た。「あなたもやりなさいよ」と薦められるのだが、そんなうまい話が、あるのだろうか?2/21

この国の奥地にある、この地方の住民は、優に都人に立ち向かえるだけの気力と体力を、兼ね備えているように思われた。2/22

経験はばバガンヌにちょとアル狂いのように不かっぱつなベシクふぁあん牧場になって筋スタッフをハめたがオひんLュ0なもんだいだった。2/23

ウクライナとシリア大地震へのカンパ資金を稼いでやろうと、カジノに挑戦したんだが、すっからかんになっちまったずら。2/24

その店のどこかに、「岡本太郎特製ドリンク」と注記されたチョコレートのように茶色い液体が、お猪口に入っていたので、何気なく呑み干したら、さらにその傍に「1杯100万円」と書いてあったので、驚いて逃げ出したのよ。2/25

モスクワの中心街で、突然数棟のビルヂングが倒壊し、住民毎、跡形もなく姿を消してしまった。2/26

小学生の頃から、「世界の人と仲良くしませう」と口うるさく叩きこまれたせいか、外国に行くと朝から晩までニコニコしてばかりしていて、いくたびにぐったり疲れ果てたので、もう二度と海外へ行こうとは思わなくなったずら。2/27

私が、生涯の今までに閲した、すべての風景をレントゲンで透視して見せてくれたが、私には、それが自分の脳内の線虫の仕業だと、よーく分かっていた。2/28

1930年の世界情勢に鑑み、余はウィーンの全店舗のレイアウトを、世紀末様式から新興独逸風に一新し、台頭するナチの意を先見的に迎えようと、図ったのであった。2/28

 

 

 

「夢は第二の人生である」或いは「夢は五臓六腑の疲れである」第100回

 

佐々木 眞

 
 

 

2022年10月

みんなでハイキングに行きました。野道をどんどん歩いて行くと、それはやがて山道に代わり、山道をどんどん進んで行くと、大きな滝がありました。滝の下には大きな亀の親子が泳いでいたので、大きな網で右から掬って左に伏せると、そこは大きな屋敷の大広間で、畳の上を親子亀がノコノコ歩いているのでした。10/1

屋敷の奥から主人が出てきて、「おいおい、か弱い動物を苛める奴は、俺が許さん!」と怒りだしたので、みんなびっくり仰天して、元来た道をいっさんに走って、逃げかえったのでした。10/2

偉いサンたちと、さる重要な案件について打ち合わせをしていたその男は、総務課の女性のミスで、なぜか自分にだけお茶が配られなかったので、ドタマに来て、その電通ビルを爆破してしまいました。10/3

シナラという名の煙草売りは、あありにも美貌であったために、出逢う全ての男たちの関心を惹きつけ、とうとう某国の皇太子に見染められて、玉の輿に乗り、大過なく長寿を全うしたので、つい先ごろ、盛大に国葬が執り行われたそうだ。10/4

ド田舎の不毛の地に、30万人もの貧民を強制的に連行して、巨大な集合住宅を建てさせた揚句、彼らを闇に葬ったのは、どこのどいつだ?10/5

久し振りに文化出版局のヒサダさんに会ってから近所の定食屋へ行ったら、「ササキさーーん」と大声で呼ぶ人がいたので、誰かと思ったら広告のムラカワさんだったので、「病気はもう治ったんですか?」と訊ねると、「すっかり元気になってこの通りです」というので安心した。10/6

韻文は散文より強し。私が原文を改定した条文は、非常によく出来ていたのだが、それをコピペする途中で霊感に襲われて、そのエスプリをワードに書き始めたために、オリジナル原稿は永久に失われてしまった。10/7

夜遅く玄関の鈴が鳴ったので、扉を開けると道端に杖をついた僧侶姿のフマ君が、からし色のコートを羽織って立っているので、「こんな時間にそこでなにをしてるんだ?」と訊ねたが、いつまでたっても黙っている。仕方なく500円玉を差し出すと、無言で托鉢袋の中に収めてから、一礼して立ち去った。10/8

先日の大台風で最悪最大の被害を出した、その地方の豪邸の大門の記憶を後世に伝えるべく、大地主の名前をとって「高倉門」と命名された。10/9

7時のニュースのうらなりアナウンサーを、画面越しに磁石で身動きできないように固定していたら、みなさまの公凶放送から、クレームが来たが、知らん顔して、そのままにしてある。10/10

おらっちが、学校の昼休みの時間に、ショスタコの「ワルツ」を大声で歌っていると、近所の小学生が近寄って来て、一緒になって歌ってくれました。10/11

「早くお得な老人ホームにツバをつけとかなくちゃ、後になって、臍を噛むことになるよ」と、ビートルズのリンゴ・スターが囁いた。10/12

死んで初めて、この世と、あの世の間には、境目がないことが、分かった。この世がすでにあの世だったように、あの世も、じつは、この世だったのである。10/13

「これからハーメルンの笛吹きがやって来て、この悪魔列島の人間をぜんぶ滅ぼすので、早く逃げろ!」と、健さんがこっそり教えてくれたので、逃げ出そうと思うのだが、どこへどう逃げたらいいのか、てんで分からないずら。10/14

軍部は、再建された帝国の最終戦争に備えて、富士山の中腹に、巨大な大砲を据え付けて、駿河湾からのミサイル攻撃に、対応することにしたそうだ。10/15

わいらあ、その奇妙な3人組の愛国中学生に対して、レクチャーするように頼まれたので、いろいろ考えた末に、LachとRackについて話すことに決めたんよ。10/16

会社は、私と妻が不当労働行為を働いたと言い懸りをつけて、巨大な弾劾ポスターを作って全国の目抜き通りに張り出したので、私たち夫婦は、この国のどこにも居られなくなっり、暗闇にまぎれて夜逃げしたのよ。10/17

「不安の正体」という映画をみながら、それをPCに録画しようと、いろいろやってみるのだが、これが、全然できないのよ。10/18

45度に腰の曲がったおばあさんが通りかかった。街の悪童が、「おばあちゃん、気分天転換に海老反りブリッジしてみないか」と盛んに呼びかけている。10/19

昼飯を喰おうと思って、この町角に立って、およそ2時間になるが、1台のバスも、電車も、やってこない。もしかすると、この町には、交通機関が無いのかも知れない。10/20

散歩していたら今井さんを見かけた。そういえばこないだ「久し振りにどこかで映画でもみませんか?」とメールを入れたっきり、音信不通になっていたことを思い出して、後を追ったが、今井さんはどうやら、あの割烹付きの木造列車に乗り込んでしまったようなのだ。10/21

払曉の始発電車に乗ろうと4,5人の日本人観光客が駅に向かって歩き始めたので、おらっちも後に続こうとしたのだが、急に尿意を催したのでトイレを探したのだが、そんなものはどこにもない。10/22

あたしが新宿伊勢丹で、オレンジ色のワンピースを買ってから、表通りに出ると、大勢の人が空を見上げている。どうかしたのかと思って、あたしも見上げると、大空の大半が、氷で覆い尽くされ、白い尖った塊が、次々に交差点に落下しているのだった。10/23

まだリーマンやってるおらっちだったが、他の社員も一緒のプロジェクトをやってる。夜になったので、誰かが勝手に出前を頼んでるようだが、後で伝票をおらっちの所に持ってきても、ぜったいに駄目だからな。10/24

このたび我が家がなんたらコンテストに優勝したというので、町内会長が盛大な祝賀会を開催したいと言うので、頼むからやめてくんろ」と頼んだにもかかわらず、それはおらっち欠席のまま公民館で決行され、ちらと覗いてみると会長以下全員が素っ裸で「カッポレ、カッポレ、アマチャデカッポレ」を踊りまくっていた。10/25

ナベさんが、我が社のキモスイと称する精髄を、全世界いに向けてアウトプットしようとするので、おらっちは「阿呆か、んなもん誰も見向きもせえへんで。やめてけつかれ」というたんやが、発射されてしもうたずら。10/26

「ウオリアーズを捜せ」みたいなPCゲームに、どうやら嵌ったらしい。ニンニン君が、ありとあらゆる交通機関に出没するので、おらっちは、モグラ叩きを持って、あちこち駆けずりまわっているのよ。10/27

おらっちがぶらぶら歩いていたら、向こうからやって来たあまり親しくも無い先輩が、「やあササキ君、久し振りだね。あのサテンで美味しいコーヒーでもどう?」と頻りに誘うので、「じゃあちょとだけ」というて入ったが、さして話すことも無い。10/28

しばらくするとその先輩は、「ちょっと思い出したことがあるので外に出て、すぐに帰って来るから、ここでそのまま待っててくれないか」というので、承知したが、いつまで待っても帰ってこない。10/28

30分近く待ったが、先輩はまだ戻ってこないので、金を払ってサテンを出ようとしたが、コーヒー1杯が1850円だと言うので驚いた。仕方なく手持ちの全財産の500円玉を渡して、「残金はもうすぐここに戻って来る男が払うから」というてその場を逃れたが、その後は知らんがな。10/28

文学的なことが苦手で理学的なことが得意だった昭和天皇とは、正反対のおらっちは、「だからこそ理系の大学を受験してみよ」と薦められ、会場にやってきたら、無数の仕出し寿司が並んでいた。10/29

(承前)どれでもよいから、この仕出し寿司を食べれば、その底から試験問題が浮かび出て来るというので、片っぱしからたいらげたが、すぐにお腹がいっぱいになっただけで、底にはなにも現れないので、楊枝をくわえたまま会場を後にしたのよ。10/29

珍しく宣伝課にやって来たオノエ会長が、「会社の業績が悪くて、取締役会が盛り上がらないので、何かいい知恵が無いか?」というので、とりあえず全員裸になってカッポレを踊ることになったようだ。10/30

おらっちは、出張土産に、女子中学生が喜びそうなものを、たくさん買って帰ったのだが、それをお昼の大食堂で配ろうとしたら、校長、教頭以下ダサイ男性教員が、おっかない顔でおらっちを睨みつけるので、えらく消耗したずら。10/30

綾部発の何鹿バスの最後部から振り返ると、バス会社の制服姿の少女が必死の形相でなにか叫びながら、おっかけて来る。ふと最前部の運転席を見ると、無人である。これは大変なことになった、と、おらっちは青ざめた。10/31

 

2022年11月

日本リーグの決戦で、苦杯をなめ絵続けるヤクルトの高津監督の采配振りに業を煮やして、落語の「頭山」の原っぱで野球をしていた草野球チ-ムの監督が、「おらっちが替わりにやるぞ」と申し出たのだが、却下されてしまった。11/1

町内会のファシストどもが、みな胴巻の下に「はらはら爆弾」を巻いているので、「オラオラ,おめえたち命を粗末にするな。早まったことぉするんじゃないぞォ」と警告したにもかかわらず、彼奴等は、次々にダイナマイトに蚊取り線香で点火して、自爆していった。11/2

うんかの如く押し寄せる岡っ引きをせせら笑いながら、怪盗ルビーは、「もしおいらが天下を盗ったら、おめえら全部が仕合せになる世の中にしてやれたんだがな」と、述懐したのよ。11/3

その名を小石川という男がいたが、なにもかもがうまくいかないので、思い切って小安川に変えてみたら、とたんに運が向いてきて、すべてがうまくいくようになったそうだ。11/4

10名の狙撃兵を率いたおらっちが、「ええか、敵の指揮官を狙うんだ」と声を枯らしていたら、突如、大音響とともに巨大爆弾が飛び込んできて、大爆発し、生き残ったのは、のびぶいっちゃんとひとはるちゃんだけだった。11/5

銀座電通の傍のサテンで、アセイさんが、「やっぱワンサカ娘だね。あれから全てが始まったんだね」と回顧しているので、「やっぱ偉かったのは、イマイさんでしたね」と言うと、深く頷いたので、「作詞もイマイさんでしょ?」と訊ねて顔を見ると、アセイさんの影も形も無かった。11/6

目を見開くと、アコーディオンが緑の蛇腹をサッとくねらせたので、パッと目を閉じると、何も見えなくなった。11/7

アソウの別荘と噂されているその隠れ家には、稀代の悪党共が蟠踞していて、一朝有事の際には、直ちに出撃して、どえらい凶事を為すのだった。11/8

神田小川町の交差点で、小学館のナカムラさんと、ぱったり出くわしたので、積もる四方山噺をしたのだが、おらっちは「宝籤は必ずしも当たらない」という噺をしたので、ナカムラさんは、呆れ顔だったな。11/9

おらっちが、いつもの砂洲で魚突きをしていたら、突然、町内会の連中が大勢現れて、大宴会が始まったので、ほうほうのていで、引きあげたのよ。11/10

クサモリカヨという名のインドネシア人が、ジャカルタに家族を残して来日していたが、マスコミに登場して、次第に有名な存在になったので、邦名を「草森嘉代」と名乗り、「あたいは、もうジャカルタには戻らないよ」と放言したそうだ。11/11

私はようやっと故郷に錦を飾ったつもりでいたのだが、当局に対する警戒を解かず、彼らが提供する食料や飲料水にはけっして口をつかなかった。彼らは折りあらば私を逮捕しようとしているのだ。11/12

「長い物には巻かれよ」というスローガンが、時代遅れになったというので、今度は「短いことは、いいことだ」という、昔聞いたことがあるような掛け言葉が一大トレンドになり、なんと半世紀ぶりに、ミニスカートが流行するようになったずら。11/13

戦は我々の村にまで及んできたが、この村に生まれ育ったおらっちは、このあたりの地形は隅々まで把握しているので、有利に戦うことができたのよ。11/14

我が家のすぐ隣に、新社会主義国の住民が引っ越してきたのだが、朝から晩まで働かずに、ゴロゴロごしながら飲み食いしているので、羨ましいような、心配なような、複雑な心境だ。11/15

おらっちは、その男のバーズカ砲で撃ち殺される寸前に、味方がそいつをバーズカ砲で撃ち殺してくれたので、危うく命を救われたのよ。11/16

終戦まぢかで明日講和が結ばれるというその前夜に、20人の味方が密かに虐殺されちまった。11/17

そのソープオペラのあらすじというのは、こうだった。1年生、2年生、3年生の友人たちが、国王の圧政に抗して武装蜂起したが、鉄の軍隊によって、あっという間に殲滅されちまった。11/18

江戸城急襲の下手人たちが公開処刑されるというので、広場に通じる道は、朝から車馬や駕籠や盥に乗った武士や町人たちで、犇めき合っていた。11/19

あと一歩で勝利を逃したチームの敗北の原因が、タカツ監督の大不振リリーフエース。マクガフ起用の大失敗にあることを熟知していたおらっちは、彼が取ろうとしたボールを握って離さず、とうとう9回まで無失点で完投して、貴重な逆転勝利に貢献したのだった。1/20

怖い怖いお化け屋敷から、ようやっと逃げ出してきたが、あれは、比叡山のお化け屋敷より本格的で、どこかバタ臭かった。11/21

セイさんが、フルカワちゃんと、横浜の山下の埠頭から大航海に出るのだが、なぜか胸騒ぎがするというので「そんなら止めなさいよ」と助言したが、その時には、もうバイカル号は桟橋を離れていた。11/22

私は、前世では魚だった。その頃は、あたりの魚たちを絞め殺して得意になていたのだが、人間になってからは、そーゆー事が出来なくなったので、いささか寂しいのである。11/22

専制君主のおらっちは、妙齢の処女をそれぞれ100万と170万で購入したが、何で70万の差をつけたのか、買い入れた2人をどうするつもりなのか、自分でも分かっていなかった。11/23

モザールの「フィガロの結婚」4幕の大詰めになったところで、決めの許しを乞うはずのアルマヴィーラ伯爵が何故か居なくなってしまった。伯爵夫人のロジーナが、怒り狂って泣き喚くので、おらっちは、指揮棒を放り出して、懸命に宥めているところ。11/23

とうとう内戦が始まったので、急いで郷里に帰省すると、割と近い所にいるタクちゃん一家がやってきたので、みんなで、紅白両派の戦いを、茶の間のテレビで見物しました。11/23

静岡県の戦争委員会では、かの村田投手の指導を受けて、成人男子の全員がマサカリで武装し、押し寄せる敵兵を、マサカリ殺法で斬り殺す訓練を施しているそうだ。11/24

東京でも内戦が始まったので、愛人と示し合わせて上野で落ちあって、逃亡しようと思っていたんだが、いざ会ってみると、昨日見た「火口のふたり」の残像に刺激されて、近くの安ホテルにしけこんで、1週間やりにやりまくったのであったあ。11/24

4時45分。久し振りに心臓が痛くなってきたので、「ああこいつは、いつもの狭心症の発作だな、1波、2波を含めて、5分もすれば痛みは無くなるはずだから、ニトロは飲まなくてもいいな。それにこれは夢なんだから」と安心していたら、本当の発作だったので、驚いた。11/25

えらくハイソの家族と、等々力渓谷にハイキングに来ていたんだが、夕方になり、ハイソの家付きのハイソ車と、その専用運転手と顔を合わせるのが厭なので、我が家だけお先に失礼したのよ。11/25

ムトウさんと娘さんが、我が家にやってきたのだが、2人ともそっくりな顔つきで、顔中そばかすだらけなので、驚いた。11/25

アメリカでの暮らしに少し慣れた頃、突然、事件に巻き込まれた。親しくなった隣の部屋の住人、穏健な共和党の支持者だったが、ライフルで武装して、「今からトランプを殺しに行くんだが、一緒に行かないか?」というのである。11/25

キガイユのジムの女、スムケイの女は、カンリュウのあらくれ男どもの下劣な視線を浴びせ掛けられながらも、プライドを捨てず、毅然とした態度で激しく見返していた。11/26

小さな町の小さな文化会館を出ようとしたら、女もついてくる。それからどんどん歩きに歩くと大阪駅に着いたので、彼女をハグしてからチュウしたんやが、あの限りなくやわらかな唇の感傷は、いまだに忘れられない。11/26

ユニクロの下着デレクター、リター・ネルソン氏の知遇を得たので、その担当分野の新しい企画を提案することになり、ホームウェア仕様の下着とか、ポップなイラストを施した下着などのアイデアを考えているのよ。11/27

若き日のおらっちなので、6日間セクスしたのだが、安息日の今日も、7日間連続のセクスをしたのでした。11/28

玩具会社に勤務する私は、人事&管理体制上でさまざまな問題が起こるのは承知のうえで、部下たちを作家主義のクリエーターに養成しようと決意したのであったあ。11/28

一日中敵のミサイル攻撃に堪えるしかない鬱屈した日々の中で、我々の唯一の気晴らしは、敵兵の遺体を犬にたっぷり喰わせてやることだけだった。11/29

道楽息子の私は、昔懐かしいクラシック音楽専門のレコードを開店し、誰一人来ない店で、朝から晩までSPレコードを聴いているうちに、親父から貰った遺産をことごとく失ってしまった。11/30

 

2022年12月

保守的だが、都会的に洗練された英国調の服が、今の世の中で通用するのかしらん、と危ぶんでいたのだが、案に相違して、どんぴしゃりだったずら。12/1

おらっちは、初めて将棋の名人戦に出たのだが、さそうと思って手に取った駒たちが、「あ、それは駄目、駄目。もっといい手があるずら「」と口々に意見をいうので、結局1手もさせずに負けてしまったよ。12/2

火事場泥棒は江戸の名物だが、おらっちは、火事場のどさくさまぎれに金持ち男を漁っている火事場商売女のお七を捜しに、天和の本郷までやって来たのよ。12/3

中学生のおらっちは、ド田舎で東京の美人大学生に取り囲まれて、彼女たちを弄んでいたつもりだったが、あとでよく考えてみると、その正反対だったことが分かった。12/4

核戦争が迫って来たので、この半島の南端部には、セレブの大富豪たちが緊急避難して、核シェルターに籠っていたが、まだ少年のおらっちは、そんなこととは知らずに、毎日美少女と遊び暮らしていたのら。12/5

敗戦前夜に疎開するまで、父が勤務していた材木会社の隣に、後楽園球場があって、時々試合を見物していたというので、半世紀ぶりに上京した父と、巨人戦を見に行ったのだが、大混雑の水道橋駅で、はぐれてしまったのだが、その晩、王は、4連続ホーマーをかっ飛ばしたのだった。12/6

ムトウさんとその娘さんが、我が家にやってきたのだが、2人ともそっくりな顔つきで、顔中そばかすだらけなので、驚いた。12/7

ガリマール版で「海辺の墓地」を読んでいたが、さっぱり面白くないので抛り出して、ポ-ル・ヴァレリー3番地別館に駆け付けて、500フランもする高級娼婦を買ったが、どうあがいても、アレがナニしないので、ファチゲ、ファチゲと叫んで、飛び出したのよ。12/8

おらっち、あんまり海がきれいなので、船から、えいやっと飛びこんだら、あっという間に、潮にどんどん流されて、船は、たちまち見えなくなってしまったずら。12/9

巴里に在る「青少年のための性交研究会」に日参したのは、そのテーマよりも、担当の2人の美人チーチャーに、熱烈に惚れたからだった。12/10

前立腺が、バッチリ肥大していることを、うまく詠いこめたので、おらっちは、国の高級短歌学院への入学が、許されたのよ。12/11

その時、突然わが軍の左側の左隅に、巨大な鞴が突きだされ、そこから、猛烈な炎が噴き出したので、猫も杓子も、おらっちも、算を乱して逃げ出したのよ。12/12

最後の決戦が迫って来たので、義勇兵のおらっちは、アラブの名前のアブ・ハッサンをやめ、本名である、アブタハチロウの名を鉢巻きに墨で書いて、額にきりりと締めた。12/13

いよいよ敵の総攻撃が始まる。戦死してしまってからでは遅すぎるので、今のうちに我が宗派のための献金をしてもらおう、と献金袋を廻したが、誰も一文も入れなかった。12/14

おらっち、あらゆる人と組織を裏切り、裏切り、げんざいの地位を、やっとこさっとこ手に入れたもんやから、何があっても、絶対に譲り渡す訳にはいかへんのよ。12/15

その美術学校の入学試験は、千人に一人という狭き門なのに、志望者が殺到し、受験手続の書類を取るだけでも大変で、早朝から夕方まで並ばないと入手できず、5日間連続の入試では、超難問が目白押しに出題されるので、3日目で諦める連中も多かった。12/16

沖縄の著名なガビ詩人の意味不明の最新作について、仲間内で語り合っていたのだが、客人客説で結論が出ないまま散会してから、上野駅ホームで開催された、「夜を楽しく」というパジャナマーテイに出てから、寂れた一軒家で、セイサンたちと、ガビ詩を朗読したのよ。12/17

久しぶりにマージャンをやったのだが、ふとスーアンコーをやってみようと思いたち、牌を3個づつ集めはじめたのだが、オーラスでドラだったパイパンを引き当て、ぬあんと、半世紀ぶりの役満が、完成したのだった。12/18

急に眼が見えなくなったので、大小の只木をこさんの月見との云々 12/19

人口100名の小さな村には、経済の99%を支配して独裁制を強いている僭王ノアがいて、村人たちは、彼の顔色をうかがいながら、帝国の臣民のやうに隷属していた。12/20

前回の詩形の時は、私も、彼らと同じ殺人を犯したから、同罪だ。「一緒に処刑してくれ!」と叫ぶ連中が居て、その願いどおりに処刑されたのだが、今回は、そういう申し出は無かった。12/21

駐モスクワウクライナ大使館大使夫人リュドミラは、ロシアが、同じ名前の偽物を、あちこちで使い回しはじめたので、頭に来て、夫と共にキーウへ引き上げたとさ。12/22

さっき、ふと頭のどこかに浮かんだ不思議な1行、それは、それだけが後世に残る記念碑的な1行のような気がしたおらっちは、それを生かした、イカス詩を作りたいと思って、寝る間も惜しんで、次の1行への移行を試みるのだが、さっぱり上手くいかず、結局チョコレートの広告になってしもうたのよ。12/23

おらっちが、コペンハーゲンでで買い付けた、ダリの1点物の最高級スピーカーを譲って欲しいと、いうので、ミラノからやって来たムーティに会ったら、これがとんだ偽物だったので、本物なら譲ってやろう、と思っていたおらっちも、がっくりだった。12/24

早くヴィクター陣営に移動しようと思ってはいるのだが、ソニー陣営から離れられないのは、何故だろう?12/25

おらっちが、山から戻ってきて、布団を干していたカト君を、ワッと驚かせると、カト君は、腰を抜かしてしまったずら。12/26

2人には、それぞれ1人ずつ子供がいるのだが、子供たちは、自分の親がどっちなのか、てんで知らずにいるようだ。12/27

祖父の小太郎のために、必死で山つつじの木を切り取って、斜面を這いあがったのだが、握りしめていたはずのそれは、途中で失われていたのだ。12/28

王選手が4連続ホーマーをかっ飛ばした日に、父と私は水道橋駅ではぐれてしまって、とうとう見ることができなかった。一生悔やまれてならない悔恨の夜じゃった。12/29

映画「在りし日の歌」は、毎年8月15日に会うことにしていた、高校の野球監督のトミタ先生の思い出から始まって、主人公のシャコンが死んでいく太平洋の真ん中で、即興のア・カペラで、地球との決別の歌をうたうラストシーンで終わる。12/30

おらっちは、うんと早起きして、キーウへ荷物を運ばなければならないのだが、これから寝るのが面倒くさいので、いざとなれば、立ったまま眠ればいいと思い決めて、出発することにした。12/31