花瓶は茶封筒

 

爽生ハム

 

 

からし揚を口にする祖母の頬が赤らむ。満足そうに手をはね、昔も今も変わらない文章を投げかけてきた。愛くるしい元気かというようなこと、忘れつつあるボウリングのこと、天気のことなど、夕方がまたやってくる。暗くなるまで電気をつけないせいで苦い。夕方をドリップする度に怖くなる、祖母のミルクの時間が。
飲み込めない物を飲み込む時間。
すぐさま、水につけないと容れ物にこびりついてしまう。放置してると花を飾ってみたくもなる、こういう花瓶を捜してたんだと思う。

 

 

 

違うよサクソフォン

 

爽生ハム

 

 

すり鉢っぽい底辺には脳天気な陽気が漂っていて、そこへ向かう彼らの背中の荷物には、引っ掻き傷がついていた。彼らは、目の前の彼の傷を見て徐々に笑顔をつくり、目的をもつくる。傷は、どこかの川のようで生命力を感じさせた。彼の次にくる彼や、その数メートル後方の彼などは、涙のような水滴を浮かべて、興奮していた。たぶん痛いんだろう。私が見る限りは、痛いと名づけるのは非常に簡単だった。彼らの痛みなど、見物するには丁度いい痛みだった。私の手前で蒸発する非常に健全な痛みだった。あまりにも脳天気な陽気だから、もしかして辛いのは私の方なんじゃないかと、余裕綽綽たる名づけ親になってみたりもした。
私は通常の健康では、明くる日を見逃したりはしない。
むかしむかし、名づけられた響きを交換しあって抑揚がついた動物の完成。淋しさとうまくつきあえる巣穴も、そして底も、内在が溜まりすぎて、困り果て。常夏の短パンのように急遽、膝を潮風がノックする。ぐたぐたと恐怖心を芽生えにかかる露出とは別の魂胆の、肌の水は、人を人が汚ないと感じさせるにはじゅうぶんな汁だろうな。目の前の人が怖すぎるって確かに彼は言った。いらだちの解散のために、彼は感情を放つ、放つ、放つわ放つ。いきり勃った塔の女楽は仕切り板を溶かすほどの勢いがあり、私は彼らは硫酸を飲む人と名づけました。
だって傷が喋るんですもの。

 

 

 

大人

 

爽生ハム

 
 

これで千円か
栄養のない食材が並んだな
肌の荒れた無意味な生活
ここでしか暇をつぶせない
分母が少ないだけで幸せのふりをするし
幸せは下げれる
これで満足
勝算があるとは傲慢だわ
傲慢すぎて犯罪者になりそ
フランス人は美しい
いつ見ても
フランス人は知的に見える
わたしは日本人だった
日本の猿だった
勉強が足りないな
勉強をして
いいところに就職したい
そしていつか家族を作りたい
親を看取って
それから死のう

 

 

 

ぼ田ん

 

爽生ハム

 

 

粒よりほしいものを
以前からさがしてる
より幸せな理知とか
鯱とか
豚とか
結末だったり
靄っとしている
生き物のさきっちょ
ぼんやりと暗いとこ
この橙の稲にふれる
道が帯をしめる
単純な生活を
信じてると目がうつろ
みながうつろう
止めれないから止めときな
殺伐とした転置っぽい

結局は水分に感謝するだけかも
水滴を舐めたはずが味がしない
先端がこすれて
暗い振動をおこす

この前まで
ほしかった鳴き声や
手に入れたはずの生成りは新しくなりました
伝達したい文字があったとしても黙れよって国道に怒られます

 

 

 

網、づくも疼く

 

爽生ハム

 

 

網膜を布教してほしいから、きみを追いつめているし、こぼしてほしい形をしたんだよ。目を交換したいし、目を否定したい。夜景はコンビニ飯かもしれない。へんにあるより、へんにないものの方が落ちつく。

この形をつぶして、
摂取と、見たことのない。形の力で、うっぷん。を落とす

きみの大人びてく幼稚さでわたしごと燃やしたりする。
最近のわたし、渡来する。見たか、遊ぶ独走を、これからさらに最近のわたしを遡れるよ。

わたしのホコリも落ちてこない。わたしってきみの妄想の事だよ。奇を衒う色彩で塗られてる。わたしはコンビニエンスな距離をめざす。でも、解凍できないので、すごく昔の写真を燃やしたりする。

いま、死に後れるわたしの、情緒はなにに化けちゃうの。きみの娯楽に化けちゃう、なるほど。蓋したパックではじめようと思います。蘇生ごっこですね。
つのを撫で終えたわたしは、鯉がパクついたであろう物語を、人としての触感で妬む。この感じ心底。呆れる。恥ずかしく変容する。起毛は全てを感じてる。

ああ、きみの目だ。全く見えない代表的な目を装ってる。
真っ直ぐにつく嘘ほど醜い形はないよね。そうだ、不十分なきみの慾望は美しい、確かにきみはゆっくり歩いて思考停止するし、ノーブルに性行為もしない。
わたしはこれからさらにイメージです。遊ぶ独走にいけるよ

 

 

 

牛後

 

爽生ハム

 

 

足りてないカーテンの隙間から

…の冷気が肌をつねって、言葉を舐めろと話かけてくる。
空白のお椀が向こうにあると
気づいた。喋ることなど決まっていたりしてもいいのに。言葉をあてがうには、人は生きすぎてる。時間にルーズな、桟敷にでよう。たわんとしたカミがいてもいいのよ

病的なチックの自分を見てると
やさしくて、紛らわしい自分も
溜まっていくって。それは池の中で聞いた
だいたいみんな池の中に行くって
それも空白を埋めた人から聞いた。やさしくって
やさしくて、愛おしいお椀だとすれば足りてないのは懐かしい

懐かしいのは笑える。
憶えてないから笑える、
ここで流れてるムード歌謡がお湯を沸かすのは、
いつになるだろうか

いい曲だな。
それに、しても
通過して遺棄して。くりかえして
聴こえて、しまう
こんな夜は夜の価値を終えたってことにしよう。

 

 

 

外へと数えだす

 

爽生ハム

 

 

雨女に 赤い爪の男に

他にも手が笑う
 

男の布団がほろぼす界隈へ

肌色の毛布も白く扱われる
女か男の街角
チョコで

包む
冥王星の第二衛星
これにした
柔らかく壊れる
銀紙
板にねころぶ

大塚のアパートメントの変容
 

馬の力走を
奥から見てる
ほんとうに偏光がまぶしい

客が笑ってる
辻褄を合わせにかかる

いとも孤独な背中になっていた
止り木から羽根が生えるぞ

 

 

 

野生化した軌道の上を歩く手紙

 

爽生ハム

 
 

酔ったんでしょ電車に
鰆を通夜にだすから
笑われてたよ
まったく

笑われてたなんて
ぶっきらぼうな言葉だわ
小さな笑いを見つける方が
可笑しいよ頭のなか

電車に乗ってどこへ行こうか
海へ行こうか山へ行こうか

酔ったんでしょ電車に
じっくり触診されて
恥ずかしくなってたよね
もう興味ないから
逃げなよ
ここから

菜園と母屋
どちらに行かれるの
はやく返答して

返答として
かたづけたくないから周回する
すぐに靄へ向かうから
ほっといて だから
もう見るな

 

 

 

SF

 

爽生ハム

 

 

近所のSFに連れていかれた
爆破が流行っていて
死んでも死にきれないようだ
偽の死の体験がさかんらしく
若者はまずは一回死ぬのであった
それは叫びたい思いの抽出だった
思い浮かべたい人の抽出だった
不要なものの見極めでした
そこではロボットと踊れるらしい
ロボットは大抵
天蚕糸で引っ張られていて
みんなの妻やみんなの夫が
外出中の僕らめがけて
天蚕糸を吐いているのであった
ロボットに命令をして
まずは一回死ぬのであった
死ぬときはだいたい叫びである
だって僕らは若いから
声もかけずに死ぬこともある
僕らは不謹慎だから
みずみずしいから示される美しさ

僕らはもう若くない
今は
若い人の為に探している
もう一度近所のSFに行きたい
近所のSFを知らないか
僕らの近所はどこまでのびた
爆破を確認しに行こう
なんせ死にきれないからね
放物線が見える
あれはなんだ 星 鳥 トマト 銀貨
日用品でも命は守れる
日用品しか僕たちには必要ない
煙がでてるだけでSFだと煽るな
スモーク焚いて踊り狂い
昔のように曇ってる
美しくはないけどしょうがない

 

 

 

スピーカーホロウ

 

爽生ハム

 

 

校庭に生徒を連れてくる
他県の生徒も
チャイムを鳴らす
バットを腐らす
10日前に戻れたら
だいたいの事は連れ戻せる
屋上で手をふる少女がいた
校庭でふりかえす少年がいた
それは武器だった

拍手だと目隠しでもわかるうちは
順調に事が進んでるあかし
拍手は方向を示していた
拍手は口を塞がれていた

ぬけたって告白後
のこったって告白後
現在地を告白後
踊りもがいて告白後

校庭に生徒を連れ戻す
少し強引な教師がいた