機序

 

工藤冬里

 
 

機序の見えるグラサンで裏返ったカブトエビを見る久し振りの白人映画
今から止めなければ真珠は買えない
求めて見つけるか偶然に見つけるかは関係ない
緑蒼いキャベツの海の町は破壊されました
夫はとうに亡くなりましたいい人でした
いくらか自由に暮らせましたがシオンとは機序であり地球上にはない
高所作業にヘルメットが必要なので希望を与えましたが何をしてしまったかではなく今何をしているかです
bouleとか主体の詩を止めなければならない時がやって参りました

 

 

 

#poetry #rock musician

いない、猫 **

 

さとう三千魚

 
 

猫がいる

いない
猫がいる

三毛猫の鼻のあたまの黒い
いない猫が

いる

子どもをたくさん産んだ
子どもたちはもらわれていった

冬の初めにいなくなり
隣家の納屋の藁の中に見つかった

いない
猫がいる

河口にいる
たくさんいる

河口に
いない猫と子猫と鴉がいる

 

・・・

 

** この詩は、
2025年7月25日 金曜日に、書肆「猫に縁側」にて開催された「やさしい詩のつどい」第19回で、参加された皆さんと一緒にさとうが即興で書いた詩に加筆した詩です。

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

世界の果てと崖

 

辻 和人

 
 

こかずとんは知ることとなった
世界には果てというものがあることを

ずりずり
ずり
ハイ
回る
まだ体を腕で持ち上げられてない
腕ずりずり
足ずりずり
ハイハイまでいかないけど
オムツ入れの箱を壁に見立てての不断のトレーニングが実を結び
コミヤミヤもこかずとんも
ずりハイずりハイずりハイ回り
お昼寝マットを横断横断
広い、広いなあ
今までこんなに広いトコに寝てたのか
泣き声あげてかずとんパパが抱き上げてくれるまで
ずっと天井だけ見て寝てたのか
頭ぐっと持ち上げれば
見よ
眼下には白いふかふかが広がってる

やる気十分のコミヤミヤ
生まれたてのイモムシみたいに元気いっぱい
ずりハイずりハイずりハイ回る
ふかふかにめり込みつつ手足動かせば
おおっ、体が前に進んでく
今まで体と言えば
ぺたっとマットに張りついてるようなもんだった
体が体じゃないみたい
ふっくら顔にっこにこイモムシのコミヤミヤ
ずりずり
ずり
ハイ

ここで悲劇が勃発
コミヤミヤに刺激されたこかずとん
負けじとずりハイずりハイずりハイ回って
白いふかふかかき分けて
進んで進んで進んだ先
突如落っこちた!
たかーい崖から
あらあら、こかずとん
お昼寝マットの外へはみ出てしまったんだ
お昼寝マットの厚さは4センチに満たない
それでもこかずとんにとっては
たかーい崖と同じ
どうやったって這い上がれない
ッギュイエーン、ギュヨェーン
大変大変、すぐ抱き起して
よしよし

広い広いと思っていた世界には
たかーいたかーい崖があった
そこが世界の果てだったー
腕の中で
ようやく涙が収まったこかずとんは
そんな風に感じているだろうね
でもね、こかずとん
お昼寝マットの外にも
世界は果てしなく広がってるんだよ
いつかはわかっても
今は絶対わからない真実
こかずとんが噛みしめている崖の高さを
抱っこしながらかずとんパパも
一緒に噛みしめてあげるよ

 

 

 

何かの間違い

 

道 ケージ

 

何かの間違いだろう
オレの骨壷を母が抱いて
こんなんなっちゃってと涙ぐんでいる
それを見ているオレも泣けてくるが

元気そうな母を見て一安心する
箱の中の確かなカサカサ音

母はまあしょうないたいと呟いて
掃き掃除

どうも生きている心地なく
母に聞いてみたいけど
すでに姿なく

しょうなく箱に戻る
どう言えばいいのか

座間でFENを聴く
うまく聞き取れないことをいいことに
虐殺を命じている

喜んで応じるから
体をなんとかしてほしい

 
 
 
※ フランス語にしてみた
 

Une erreur, sûrement

Michi Cage

Ce doit être une erreur.
Ma mère serre mon urne funéraire dans ses bras
en murmurant, les larmes aux yeux :
« Mon fils est devenu comme ça, finalement. »

Moi aussi, je pleure en la regardant,
mais je me rassure
de la voir en bonne santé.

Un son sec et certain
vient de la boîte.

Ma mère soupire :
« Bah, on n’y peut rien. C’est la vie. »,
et balaie le sol.

Je ne me sens pas vraiment vivant.
J’aimerais lui demander,
mais elle n’est déjà plus là.

À contre cœur, je retourne dans la boîte.
Je ne sais comment le dire.
À Zama, j’écoute FEN.
Je fais semblant de ne pas comprendre,
quelqu’un y ordonne un massacre.

Je réponds avec joie,
alors, s’il vous plaît —
rendez-moi mon corps.

 

 

 

モネの池

 

さとう三千魚

 
 

連休の
最後の

日の
朝の

女と
睡蓮を見にいく

女は
お茶と珈琲を

クーラーバッグに入れた
西方150kmにある美術館の睡蓮を見にいく

クルマでいく

時の過ぎ去ることの先に
画家は描いた

睡蓮は

空の
青空の

水面に揺れていた

睡蓮は揺れていた
波紋は揺れていた

白い髭づらの太った大男がそこにいた
池の柳の睡蓮の波紋の太鼓橋の空の青空の水面の

揺れていた

緑につつまれた池が青黒く振動していた
大男の筆が激しく振動して静止していた

夕方に
帰ってきた

浜辺にいた
浜辺に波が打ち寄せていた

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

麦芽党

 

工藤冬里

 
 

キツネを見たらTally ho! と言おうと思っていたが今日狩られているのは私達なので私は駆除されることにした駆除されたのだ

軽トラでぎょうせん飴を売りにきていたので買ったむかしは朝鮮雨と言っているのだと思って

Where to vote every defilement of flesh and spirit

 

 

 

#poetry #rock musician

世の石

 

廿楽順治

 
 

しかし
つまずいてしまう

そのひとのなかに夜があるからだ

石をどけなさい
くらたさん
いいかげんにして
でてきなさい

(もう四日もたっていますので)
顔の布を
ほどいてやりなさいというと
ついにでた

しかし
祭りの日に
またつまずいてしまう

この世にはあまねく
石が
顔のようにころがっているからだ

 

 

 

「夢は第2の人世である」第109回

 

佐々木 眞

 
 

 

2025年3月

夫に愛想を尽かされて家出したあたしは、どういう訳でソーユ~ことになったかを冷静に振り返るために、映画とも、小説とも、エッセイとも、夢ともつかぬ代物を、でっちあげてみましたがあ。3/1

阿呆莫迦課長の家にある再生装置では、おらっちの頭にある古典音楽がちゃんと鳴らないので、いくら誘われても二度と行くことはなかったよ。3/2

タカハシの源ちゃんが、さる貧乏作家のある作品を激賞してやまないのに、その貧乏作家がたいして喜んでいるようにも見えないので、なんというアホタレかと俺は思った。3/3

妻君が、茶碗を持ったまま「お茶入れて」というたのに、おらっちは、メールを入れて仕舞った。3/4

ひよどり公園に行くたびに、ひよどりではなくて、ピカソの描いた平和の鳩が一斉に舞い上がるのだった。3/5

セカイのオザワが、事あるごとに「カラヤン先生からオペラを習った」と叫ぶので、「モザールの「コジ・ファン・トゥッテ」はベーム先生に習わないといかんかったのよ」と何度いうてもわからんようやった。3/6

アオキさんとトクコマエダ女史が寂しい野道を歩いているので、「どしたの?」と訊ねると、「2人で今後の身の振り方を考えてるの」という返事だった。3/7

世界料理合戦は3名の決戦となったが、「料理のキモは、オカズにあらず、ご飯なり」と唱えるだけでなく、それを見事に実践しているのぶいっちゃんに決定した。3/8

造られるべきその造形物を幻視した時、もうこれで全ては出来たも同然だと考えていたのだが、いざ実際に創作にかかってみると、細部の具体性に欠けていることが分かったので、もう一度無理やりに想像してみるほかはなかった。3/9

総務のサワダは、洗面所の水道の蛇口を高めに設定したために、女子は届かず、男子も辛うじて用を足せるくらいだったので、上司から「もとっと低くしろ」と命じられたが、「男子の猫背を直そうと思って」と頑なに抗弁するのだった。3/10

いつもおらっちは大量のギリシア文学関連の資料を買い込むのだが、さすがに最近は会社で払ってくれなくなったずら。3/11

これは確か昔戸川純がどこかでやったはずだ、という曖昧で奇妙な理由で、自分が提案したその新人歌手の出産ライブは、ついに実現しなかった。3/12

総務のノグチさんとかヒグチさんとかがやって来て、「一緒に社員食堂へ行こう」と誘われたが、その気になれず町中華へ行ったら、厨房にある肉が旨そうなので「あれを喰わせろ」と頼んだら見積書を持ってきて、そこに一金19万円也とあったので驚いて逃げ出した。3/13

自分は、ひさかたぶりにぐっすり眠っていたのだが、目覚めてみると、顔ぜんたいが飴のようにとろけだして、まるで、オバケのようになっていた。3/14

時計をみると12時を回っている。おそくなってしまった。こんなところにいてはいけない。早く家に帰ろう。立ち上がる時に靴が脱げたので、お気に入りのマーティンを探したが見つからない。ああ、早く家に帰らなくちゃ。仕方なく裸足で歩き出した。3/15

おや、この横長のビルはいったい何だろう? 歓声を上げる人々の向こうには巨大な寿司桶のような家族風呂があって、中にはトシコちゃんに似た少女も入っている。横長ビルを過ぎると家族揃って焚火をしている家族もあったが、あんなところで野宿でもするのかしら。早く家に帰ろう。3/16

おらっちがヤクザになったのは自由にピストルを使うためだったが、オヤブンはそんなことはさせてくれない。それにコブン同士お互いにカンシ体制にあるので、自由どころの騒ぎではない。それでも一通りピストルを撃つ共同訓練だけはやってくれたので、おらっちは実弾を撃ち込むシャンスを窺っていた。3/17

おらっちの会社がどんどん左前になっていくので、心配になった社長は、日本会議や右翼やヤクザや体育会系の学生を大勢雇って、バランスを取ろうとしたらしいが、結局それが仇となって、倒産してしまったずら。3/18

「ボナールの「裸女」が一番良かった」と。いくぶん恥ずかしそうに告白したシオミ先生に、まったく同感だったにもかかわらず、無言でソッポを向いた中三のオレだった。3/19

気が付くと歓喜仏の一人になってしまったので、やむを得ず私は、相方をぐっと抱きしめたのだった。3/20

あの3.11の折、かのムク犬は救助犬として大活躍したのだが、色々な人を助けているときに様々な知識を吸い取り、AIの力も借りて、晴れて立派な人間犬になったのだった。3/21

そこは朝から晩まで日が差さぬ木賃宿で、毎朝婆さんが不味い味噌汁を飲ませていたが、大方の住人は裏金党の岩盤支持者ばっかりだったので、おらっちはすたこらさっさとトンズラしたのよ。3/22

戦争やら飢饉やら、陸地での暮らしが嫌になった人たちは、示し合わせて海底で生活するようになりました、とさ。3/23

告白タイムになると、彼女は「彼の寝相の悪さと激しい歯ぎしりで毎晩一睡もできない」と言い出したので、かれらは直ちに離婚することになっちまった。3/24

彼は毎朝おらっちのところへやって来て、「このヤマザキパンとニッポンハムをお前にやるから、その代わりにお前んちのうまいパンに上等のハムをはさんだやつを呉れ」というのだが、毎朝鄭重に断ったのよ。3/25

「大なんたら展」をみにいったのだが、その前に「小なんたら展」でみた作品の印象とごっちゃになってしまい、結局は、混雑錯綜した記憶しか残らなかった。3/26

仏専連、2連協、4連協の最後のOB会が開かれ、スロープ下の部室でお互いの近況などを報告し合っているところに死んだフランケンシュタインなどの角丸が角材を手に殴り込んできたので、やむを得ず全員をブローニング銃で撃ち殺してやった。3/27

戦時下のライブ放送局が好評なので関西にも支局を設立しようとスタッフが派遣されたのだが、生憎そいつが敵のスパイだったので沙汰止みになってしまった。3/28

ハスイケ君の誘いで北海道にやって来たら海も空も大地も村も町もなにもかもが広大で、浩然の気を養うことができたが、誰にも出会うことができなかったのは残念だった。3/29

大阪でもフィガロを公演しようということになって、梅田で降りたが生憎維新と山口組が武装闘争を始めていたために物情騒然としてオペラどころではないうえに、公演当日のお昼に他の歌劇団がなんとフィガロをやると分かったのでわいらあ困り果てた。3/30

ベビー子供服の企画構想会にオブザーバーとして参加しているのだが、あと数年も経てば、この会社も倒産し、この部門も全員がリスストラされると、なんでオレだけが知っているんだ、と訝しく思いながら参観していた。3/31

 

2025年4月

今回の展示会のテーマが「森の中で」だというので、おらっちは、AI4Dを駆使して、会場全館を鬱蒼とした霧深い森に仕立ててしまったら、行方不明になる入場者が続出して会長からクレームが来たのだが、これ幸いと深い森の中に逃げ込んだのよ。4/1

もうすぐ川崎駅というところで電車がいきなり停止してから逆走を始めたので驚愕する。このままだと後続の電車と激突するに違いない。間もなく関東大震災がこの身に襲い掛かるようなものだ。はてさてどうしたものか。4/2

真っ暗な暗闇の中で、人々は広大な原野を流れる人工の川にフリチンで入り、自由に泳いだり踊ったりしていると、上流から時々奇妙なものが流れてくるのだった。4/3

草っぱらの上には、管月流の日本画の不可思議な作品が整然と並べられ、遠くには全裸で走っていく2人の影ぼうしが見えた。4/4

古いズボンのポケットの中から、「すぐに停戦せよ」と書かれた上官の命令書が出てきたが、敵味方が入り乱れてドンパチやっている最中に、はてさてどうしたものか。4/5

あたしは同志のテト写しをしようと、ベートーヴェンを唄ったのに、あの男たちは、あたしを「Aと結婚させろ」と叫ぶので、バーカ、バーカというてやったのよ。4/6

元は黒人だったのに、罪を犯したために顔を白く塗られて白人社会に追放されたあたしだったが、そのどちらにも馴染めなかったのよ。4/7

ケーハク女のホラン千秋が「ほらみんな、ここでコーヒーでも飲んでゆっくりしようよ」とイスラエル人社長のスターバックスのコーヒーを勝手に注文してしまったので、我々は維新肝いりの大阪万博をまたしても見物する苦しみに耐えなければならなかった。4/8

巴里にアトリエを持ち巴里風景をパステル画で書き捲り、毎年日本で開催される個展をみた彼女は、是非とも作家に会いたいと私にせがんだのだが、哀しいかな彼は去年88歳で命終していた。4/9

それなら死者が眠る墓場でもいいから彼に会わせろと彼女が喚くので、仕方なく五反田の追悼会場に入ったら、香典狙いの怪しいやつらがべろべろに酔っぱらって受付に並んでいるので、「しばらく待とう」というたのよ。4/10

雨宮さんは「もしもその時が来たなら、私もササキさんのように妻子を捨ててでもそれに参加すると思います」というたので、おらっちは愛する妻子の前でそんな過激な発言をしてもいいのかよお」と鼻白んだが、雨宮さんの勇気と根性に激しく打たれてもいた。4/11

おらっちはいつのまにか90歳になってしまったが、卒寿以来この日まで、毎日毎日死ぬ死ぬと怖がっていた自分が莫迦らしく思えて仕方なかった。4/12

東洋岩屋行きの切符を買ったが、いつまで待っても電車が来ないので越中島まで歩いてそこから改めて電車に乗ろうと思って10分ほど歩いたが、迷いに迷ってどうにか越中島に着いたのは7時過ぎだった。4/13

構内には誰一人いない駅の窓口で「東洋岩屋行き1枚」というたが、今の時間帯は途中駅までしか行かないというので仕方なくそれを買うことにして500円玉を出すとお釣りに10円玉をいっぱい呉れたのだが、そいつを受け取り損ねて辺り一面10円玉だらけになってしまった。4/14

ようやくプラットホームに上がったが、時刻表示板もないし、そもそも線路が一つしかない。これでは上下行きの電車が衝突するんじゃないかと心配するうちにようやく電車がやって来たのだが、これが蒸気機関車1台だけだったので驚いた。4/15

なぜだかリーマン時代の宣伝部にいて広告コピーを作っている。品質も値段も第一級のスールのキャチを考えろと言われたが、最高という言葉を使いたくないので「責任ある立場の人の期待に応える充実の1着」としたら営業からクレームがきた。4/16

私たち4名は名前を呼ばれると円周を一回移動するパフォーマンスを終えてから十二所神社で4つの段ボールを一つの家と見做し、その中で1週間暮らすという新しいパフォーマンスと取り組んだのよ。4/17

その翌日トランプ政権が自由左翼革命的右翼という理由で逮捕監禁されていた囚人たちを全員解放したので、おらっちもようやく日の目を見れたわけじゃった。4/18

ちょん切られた2頭の豚の頭が激しく噛みあい、同じく頭だけになった2頭の犬が激しく噛みあいながら痙攣している。4/19

いつも夢に出てくる処をうろついていると「とりや」に来てしまった。ヨシダの奴が何度も「2人でも1人前」とつぶやくので、オカミに悪いから「とりや」を出てまたしてもその辺をうろついているうちにヨシダの姿が見えなくなてしまった。4/20

馴染みの古本屋に入ると大正時代の哲学者の翻訳シリーズ本が気になって気になって仕方がない。買うべきか否かと大いに迷っているとこの本を若い男女のカップルが狙っているような気がしはじまた。2人とも私が嫌いではないタイプだ。4/21

ヘタウマを狙って街角で踊り始めた人たちが、何十年経ってもヘタウマにたどり着けないのでへとへとになって、それでもほかにすることもないので、街角で踊り続けている。4/22

わが合唱団の全国公演が迫ったので最終リハーサルをやっているのだが、どうしてもモザールのレクイエムの転調が出来ないので、そこだけは飛ばしてなんとかやりおおせたのよ。4/23

ポールヴァレリー街キャトルビスにある元の娼館に住んでいた料理人が、彼が一番得意にしていた料理のレシピを送ってくれたので、私は直ちにそれを再現したものを見せるために渡仏したのだった。4/24

一世を風靡した全共闘運動が陰りを帯び、壊滅しようとした時期に、それでもなお初心を貫こうとする学友諸君が離島に渡り、土俗の民草と試行錯誤を続けたのだが、所詮は所業無常にして平家の残党のごとくその地の土となりにけり。4/25

世界の終わりを唄うマタイ受難曲が終わったが、おらっちはまだ生きているようだ。そのに後の世界はどうなるのか。すると目には「ノスタルジア」の水が流れる森に佇む人々の姿が浮かび、あれからずとっと世界は終わったままだと分かった。4/26

「全員死に方用意!」の号令が出たので、全員は戦死を覚悟していたが、わたしらの乗り組んだ船はいたいどこへ行くのか誰も教えて呉れないので、不安で仕方がない。4/27

某大家の最新超大作の試写会に出かけ、シリーズ第1作をみたのだが、それ以降の招待状が来ないので会場へ行って掛け合ったのだが、入れてくれない。仕方なく帰宅してテレビをつけると、なんと教育テレビで当該の作品を上映しているので驚いた。4/28

いつの間にか我が国をはじめコスタリカ、スイスなどが中心となった憲法第9条&永世中立国連合が立ち上がり、世界的な新潮流を形成するような展開になったので驚いた。4/29

第3次世界大戦が勃発するや急いでNYのサミットビルに駆け付けると、既に早耳カラヤンが張り付いていたので、仕方なくハワイの宇宙天文台に行って、その頂上から様々なニュースを発信したのよ。4/30

 

2025年5月

その昔の新橋踊りは、4つの流派が順番に出演することになっていたので、超一流の名手の踊りを見物する機会が殆ど無かったが、最近は芸者の数もどんどん減って来たので、4流派全員が総出演するようになってきた。5/1

ヒロセさんと一緒に地下街を歩いていると後ろからカミヨのツウちゃんもついてくるようだが、ヒロセさんはいつの間にかいなくなロり、目の前のバーのような部屋の前に立つと、扉が燃えるような深紅色に輝いているのだった。5/2

何杯も何杯もお代わりをする世界丼という腰折れ川柳を詠んだら、隣のジョージが頭から真っ逆さまに滑川に落っこちそうになったので、とっさに彼の両足を掴んで引っ張り上げ、事なきを得たのよ。5/3

宣伝マンのおらっちは神社に寝泊まりしているちうのに、営業の奴らはちゃんとしたビジネスホテルに泊まってその差を見せつけられている。5/4

世界各国からの貴賓総勢350名を巨大な宮殿外交船「まぼろし丸」に招待して、下にも置かぬ鄭重なもてなしをせよと命じてあったのに、爬虫類脳しか持ち合わせのない阿呆莫迦トランプ船長はなーんもやるべき仕事をしていないのだった。5/5

上官から叩き込まれたとおりに息を潜めて敵に近づき、そ奴のそっ首を鋭利な匕首でぐさりと刺そうとしたら、なんと敵は無抵抗の美女と気づいたので、おらっちははたと動きを止めた。妄りに人を殺してはならない!5/6

かくて私の最後の著作は、ブルックナーの交響曲10番の最終楽章の14通りの演奏例を詳細に論じたものになった。5/7

キャロル・ロンバード博士の秘密のネットワークではその中間地点にヌエのような権門を設営していたが、その詳細は誰にも分からなかった。5/8

初めは長距離砲を使っていたのだが、敵が肉迫してきたので近距離砲に切り替えたが、間もなく長銃の先端に鋭い刃物を取り付けて血沸き肉躍る剣劇戦に備えた。5/9

俺たちのアイドルだった桃尻娘が被弾してしまうと残る戦闘員は我らが真田十勇士だけになってしまったので、潔くこの塹壕で玉砕する覚悟を決めたのよ。5/10

万博は開場したものの結局1/3のブースが未完成だったので、カジノを含めて急遽中止し、IR敷地と合わせて世界最大の難民センターへとお色直しをしたので、俄然注目を集めることになった。5/11

電通の営業マンのS君が、「ふぁっちょんのお仕事をするにしてはダサすぎますね」と笑いながらいうたので、図星を言い当てられて思わずかっとなったおらっちは、傍にあったシンガーミシンを投げつけたらで大慌てで逃げていった。5/12

1時間おきに客に何らかのサービスを提供せよと労務規約に記されているので、バナナを尻の穴に入れたり、象とファックしたりいろいろバカげたパフォーマンスをし続けたのだが、肝心の客に受けないのでとうとう馘首されちまったよ。5/13

働きだした娘が「お母さん、今日は、きよらかにおころう」といいながら、お昼のランチに向かっていったが「きよらか」の意味が、さっぱり分からない。5/14

地下室に障害科学部と障碍者化学部という表示を掲げた2つの部屋があったが、どの部屋も使われた形跡はなかたずら。5/15

どの部屋も空いていないので仕方なく廊下に大きなテーブルを持ち出して会議を開いたが、なぜだか2人のルンペンが陣取っていたので、とても話しづらかった。5/16

西部開拓史上の些細な出来事だったので、それが故意だったのか、それとも事故だったのかはいざ知らず、私を含めた関係者たちは、その無名の町の、その無名の通りで、全員無名のまま亡くなった。5/17

明日はいよいよ余の最後の日となるだろうと思ったので、今のうちに辞世の句か歌を詠もうとしたのだが、575の5すら出てこないので焦りに焦る。俳句も短歌もすべてこの日のために学んできたというのに、いったいどうしたことだろう。5/18

若手カメラマンが仙花紙で白黒写真集を出したので、これ幸いとトイレットペーパー代わりに使っているのよ。5/19

敵と対峙している塹壕戦の合間に昆虫採集をすると「西部戦線異状なし」のように生命の期間があるので、もっぱら腰折れ俳句をひねることにしている。5/20

こんどこそ妊娠させてやろうとぐあんばったら、彼女のお腹ではなく、わいらあの腹の中に赤ん坊が出来たので、広い世間にはこんなこともあるのかと、驚きいった次第だ。5/21

その謎のブツを風呂の中に入れると、なぜか元気が出たので、その話をカフェの女給にすると「是非あたいもお風呂で元気になりたい」とすり寄ってきたが、どうせろくなことにならないのでしっかり固辞したのよ。5/22

この糞忙しいのにスポーツ事務局のシミズ嬢がやって来て、まるで盛りのついたアヒルのようにガアガア鳴き喚くので「うるせえ、黙れ!」と一喝してやったが、まだガアガアア騒いでる。5/23

そんなに多忙なくせに彼は九州の片田舎にある少年野球チームの監督をかって出て月に2度くらいやって来て、お土産に名物のコッペパンを全員に御馳走するので、コッペ監督さんと呼ばれていた。5/24

サーカスの興行中に大地震が起こったので、団長以下の全員が近くのラブホを借り上げて毎晩酒池肉林のありさまとなりにけり。5/25

宇宙から地球への帰還に失敗した我々日の丸号の乗組員3名は、人跡未踏の寂しい空間の中で、徐々に死に絶えるまでの歳月を、いたずらに責任をお互いになすりつけることで消化するしかなかった。5/26

我々村民の愚かさに徹底的に付け入り、その悪い女は甘い汁を吸い放題に吸って都会に脱出していったのよ。5/27

人事のウチダの「浪曲子守歌」が余りにも酷い出来だったので、全社員が手拍子を打って彼の上司のナカザワ課長の「おまんた音頭」を催促したのよ。5/28

こないだドイツ軍と戦って負け、また戦ったが負けてしまい、つくづくもう負け戦は嫌だと思ったずら。5/29

戦国時代最後の梟雄と謳われた吾輩は、この世の名残に愛妃と目玉焼きを食してから辞世の句を遺して自裁したのよ。5/30

若い時は夜布団に腹這いになって、さあこれから魔法の絨毯に乗って世界中の国々を歴訪するんだと思っていたが、年を取るとそんな元気がなくなり、うつ伏せになったまま、「いま洪水が来る。世界よ滅びよ、わしは知らん」と呟きながらネンネグーするのだった。5/31

 

2025年6月

さる画廊のオーナーに託していた作品がなくなったので、どうしてくれると迫ったら、これで勘弁してくれと何枚かの紙幣を差し出したのでその場は仕方なく矛を収めたんだが、後になって彼奴はこっそりあの傑作を倉庫の奥深くに秘蔵しているのではないかという疑いが沸き起こって来た。6/1

その日の機動隊導入で、私はバリケードから排除され、最後の戦いの記念写真には若き日のわが雄姿はなかった。6/2

半年前の「空飛ぶカボチャ展」では無数の野菜たちが、「空飛ぶゾウさん」展では動物たちがいっぱい空を飛ぶ絵がたくさん展示され、記念品のイラストシャツもそれこそ飛ぶように売れたので、貧乏な絵描きは泣いて喜んだのよ。6/3

田舎娘がデザインしたとんでもなくダサイ服が今年のふぁっちょん大賞を受賞したので超おどろく。もうろくしたおらっちにはもうふぁっちょんのことなどじぇんじぇんわからなくなったずら。6/4

敵が送って寄越した異形の図形夢と異様な音楽夢を解析すると、彼奴等の軍事探索の水準が手に取るように分かった。6/5

おらっちはイマイさんの勧めで南極探検隊を辞めて世界中のシロナガスクジラの研究チームの端くれに加えて貰ったんだ。6/6

新米を呼び戻そうとすると古米が、古米を呼び戻そうとすると古古米が、古古米を呼び戻そうとすると古古古米が、古古古米を呼び戻そうとすると、雄鶏と牝鶏が出てきて、コケコッコーと啼き叫ぶのだった。6/7

大阪ミナミの類人猿パークで、無数の類人猿たちが境界の鉄条網に絡みついて上空を凝視していたが、これは時折ある落雷で鉄条網が焼き切れて、脱走できるのを待っているらしい。6/8

敵を攻撃する場合は、幅広い空間を対象にするとAI装備無人機によるミサイル攻撃が無に帰することが多いので、極力ピンポイントをターゲットにしなければならない。6/9

演奏基盤がしばらく前に崩壊したウィーン・フィルだったが、今は亡きクナパーツブッシュを黄泉の国から呼び寄せたら、往年の音楽力をなんとか取り戻したそうだ。6/10

「新式の仏蘭西パンを喰うてみる」に続けて、「せっちゃんを2人捨てれば夜になる」、と詠んでみたが、これはいったい何なのだ?6/11

もうだいぶん遅くなったので、急いで首都圏に帰ろうとして小高劇場のどこかにあるはずのクロークを探そうとしたが見つからないので、その隣のバロー劇場のクロークを探しているが、まだ見つからないのだ。6/12

「箆棒、延べ棒、怒りん坊、ゲバ棒、つっかえ棒、香林坊」と呪文を唱えながら、死地に乗り入る我々は、待つ構えている7機に突っ込んでいった。6/13

国内亡命者たちを海外に脱出させる秘密の抜け穴はこの国の随所にあって、東西南北のどの国にも通じているようだ。6/14

ここはたぶん北海道の真ん中附近だと思うが、人っ子一人居ない広大な平野に立っているとだんだん孤独と不安が押し寄せ、どうしてこんな処にいるんだろうと後悔の念も湧いてくる。6/15

3人のミリタントが出合い頭に一人1千発、合計3千発のミサイルを撃ち込んだのでそれはそれは大事だった。6/16

敵勢に追いつめられた吾輩は、幸い土手に手頃な穴が開いていたので、急遽五体投地してそこに潜り込んで事なきを得たんよ。6/17

劇団の持主たちは戦争の間じっとその空き家で様々な労苦を耐え忍んで、とうとう終戦の良き日を迎えることができたのだった。6/18

いっぺんに夏がやって来て無暗に暑苦しいので、そこを流れている滑川に座り込んで4人でマージャンをしていたら、急に水かさが増して牌が流されてしまったよ。6/19

F市のオケメンバーのおらっちは、全員にコンサートチケット販売キャンペーンを指示。各自が持参した楽器で戸別訪問しチケット売込みせよと命じた結果、いつもの3倍の売り上げを達成したのよ。6/20

批評家が推薦しているA女の作品はB女よりは芸術的に優れているが大衆性に欠けるので、おらっちはなんとか双方の融和が図れないかと暗中模索して、AB両嬢にジャンケンポン3番勝負を申し入れたが、今日に至るも返事がない。6/21

自転車に乗って帰宅しようとしたが、あっという間に海水が押し寄せ、帰り道が水浸しになってしまったので、途方に暮れた。関東大震災の再来だ!6/22

占領軍からオートバイ8台を即納品せよと厳命が下る。これで都合30台だがまだ未払いだ。つくづく戦争は負けるもんじゃないと思う。6/23

以前この部屋に来た時には清潔そのものだった2部屋が見るも無残に汚れているので、おらっち課長はんに4名の助っ人を頼んでてって的に大掃除したのよ。6/24

史上空前の支持率低迷にあえぐ政府からどういう風の吹き回しか「今週の黄金ブローチ賞」当選の通知が舞い込んだので、はてさてどうしたものかと片腹痛いおらっちなのだった。6/25

突如リストラされて路頭に迷っている身なのに、それをしてか知らずかデンツウのフルカワちゃんは、「競合プレゼンじゃなく随意契約にしてもらいなさいよ」とトホホのアドバイスをするのだった。6/26

長くライターの仕事をしていたが、そのブルータスとJAⅬのPR誌を足して2で割ったそのユニークな媒体のギャラが異常に高いので、ちょっと調べてみるとオーナーが中国人の大富豪なのだった。6/27

ボンクラ市長の息子が「春になれチョウチョウ大作戦」と称して家ごとに5千円バラまいたので警察に捕まって物笑いの種になったげな。6/28

絶海の孤島にやって来たので、深い森の中で朝から晩までテープを回しっぱなしにしてみたら、不思議な鳥たちの異様な鳴き声のがいっぱい録音されていた。6/29

調子に乗った時のコウ君は、相手の肩に自分の肩を触れ合わせて、驚いたことに軽くステップを踏むこともあった。6/30

 

 

 

下午4點45分的訃訊
肱骨斷裂的寂靜。

 

Sanmu CHEN / 陳式森

 
 

蔚藍的內部酷熱,慢慢地
下午4點45分的訃訊
肱骨斷裂的寂靜。

       五月二十五日,只是六月之前的一個星期天。
       下午Arai 在淺草的蕎麥屋食魚飲酒,没點蕎麥麵。
       晚上Michio給義母和MOKO供上一枝折耳根的花。慢慢地
       東京灣的濤聲抹去了蠣鷸的鳴叫⋯⋯
       慢慢地,原業平的蠣鷸。

       為什麼浜辺沉沒的龍骨呼喊着無名者的名字?
       為什麼血的鐐銬鎖住了斑駁的噩夢?
       為什麼詩句還在等待傳譯而骨頭還未瘉合?

疼痛的電話瘀血,此刻
額外的躊躇,變暗
詩篇過去,一個苦澀的承諾
留下鬼魂;慢之又慢
溪中的石塊月色著低聲的反光
禱詞流淌咬住舌頭。
我知;倒伐了大樹梯子未及天風
靜靜地領受了骨骼脆烈的聲響
一縷煙。請回來
我們再一次東十条春宵酒藏
那光景,櫻未開呀冷雨飄
鎖骨的小神祗笑一笑。
曝光的底片盡顯粵語
將"遺忘的夜晚"趔趄成日語。
慢慢的淚水,那是去年的6月4日
蠣鷸兄!請收下我一枚肱骨片,
且再慢慢地飲一盃兩盃。

2020年5月應日本詩人さとう三千魚的約請,每月在浜風文庫刊載我的詩作一篇。至今約有五十餘篇,都立大學中國文學教授木之內 誠先生翻譯了其中二十多篇。昨日午後荒井告知木之內先生已於5月25日病逝。戚戚若空,詩只半揆。夜夢與先生飲。席間我贈肱骨碎片一枚予先生,一時恍惚。夢醒後整理詩稿悼念先生。

2025年7月16日~17日

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