ヒヨコブタ
失ったと感じるのは
なぜだろうか
あまりにも安直な導きでしか
あの雪のなか
勝つことなど求めず
ただひたすら前を向きゴールにたどり着いたころの
じぶんには
ことばもなく
それでも夢みたのは
なぜだろうか
雪は見た目より冷たくもなく
そこに横たわるとあたたかく包まれて
わたしはほっとしたのだと
氷柱はすこし鉄の味がする
血に似ているんだ
氷柱を食べていた頃から
世の中はいつも不思議だらけ
失ったと感じるのは
なぜだろうか
あまりにも安直な導きでしか
あの雪のなか
勝つことなど求めず
ただひたすら前を向きゴールにたどり着いたころの
じぶんには
ことばもなく
それでも夢みたのは
なぜだろうか
雪は見た目より冷たくもなく
そこに横たわるとあたたかく包まれて
わたしはほっとしたのだと
氷柱はすこし鉄の味がする
血に似ているんだ
氷柱を食べていた頃から
世の中はいつも不思議だらけ
寒波が数十年ぶりだと
積もり始めた日の朝には儚さを思い
午後にはこれは長引くと
ラッシュのころ報道されなくなっているばしょで
何が起きているか
その感覚はあの日のおそれにも似て
数日融けぬ雪が氷となり
すれ違う幼女は
なんでずっととけないの? と母親に
わたしに子がいたらなにを言いなんと答えたらう
そのぶぶんは雪より冷たい
こころのなかで雪よりも氷よりも
けれども雪はほんとうは降るほどにあたたかなのを
わたしは知っているから
そう半分じぶんを騙すように
笑わずに
ひとを送るときに
しないと決めていることをするひとに
さよならをいう
けれども
あなたには言えないね
少しずつずれて
少しずつ噛み合わない日々
歯がゆさに落ち着かなくなるひとを
見ながら
今年見送った大切な友に
こころで話す
こころで話すのをゆるされるのは
あなたのような存在なのだろうか
エゴでしかなくとも
すがって泣きたくなるときに
離れていく目の前のひとのことを
こころで
相談しながら
おもう
いつかいくどこかで
輝くその笑顔に安らぎを
体育の女教師は
相手コートに素早くボールを落とすことを授業では禁じた
これは試合ではないのだからと
あなたとのやりとりを
わたしは楽しみにことばを放つ
でもおかしなものね
やわらかに放ったそれが
スマッシュになって
わたしのからだにつきささることの繰り返し
ノックするその扉のなかに
あなたがいても
わたしのためには開かれない
そしておそらく
苦しみ惑うときの助けの呼び方を
そっと差し入れたい
名もなきものからとしてなら
その扉の隙間くらいには
きっと、たぶん、おそらくはと
見上げるこの辺りの冬の空は
痛みもつきぬけてつつんでいくよ
我が家にやってきた時計
かっこうが鳴いて響く音を目をつむって
いい声
数の間に山のこだまを
まだ暑かった頃の寒さを
思うのは
強がりのよう
子どもの頃からの強がりは
さみしがりを隠すため
家人が入院するという
しばらくかかるという
わたしはぼんやり聞いて
受け止めないでいる
痛みも熱も
受け止めないまま冬が来るだろう
銀杏も踏みつけないようにそっとあるいて
臭いと言わないように
大事に拾うひとに笑顔をもらう秋なのだから
ずっと強がる
わたしのために野菜が刻まれる
じゅうじゅう
それらを聞きながら
スパゲティはケチャップたっぷり
ベーコンより豚バラ
粉チーズは少し控えめに
我が家のスパゲティ=ナポリタンだ
ケチャップはストックしておくのを忘れるな
1度でほぼ使いきるから
お買い得でもメーカーは守ること
父のスパゲティ
うまくいったときの70点以上くらいのときの
父の満足そうな食べる姿
わたしのための目の前のスパゲティ
写真のなか笑う幼きひと
会場に笑顔が並ぶ
すべて
年をかさねたそのひとだ
同じような日付にわたしの人生を重ねてみる
そのひとはよく笑った
笑いがそのひとの支えでもあった
わたしの故郷より
ずいぶん伝統あるまちに
そのひとは生まれたんだ
わたしより少しあとに
見送ることをいとわない
見送ることに臆しない
いつからかそう決めて
わたしの朝はきょうまたやってきた
おはよう
どこかにいってしまった
確かな存在