また旅だより 19

 

尾仲浩二

 
 

ほんとうならこの便りはニューヨークから送るはずだった。
だけれどコロナ騒動の煽りで東京で暗室に入っている。
まだこんな事が起るなんて誰も思ってもいなかった昨年10月の中国の写真をプリントしている。
この写真を中国の人たちに見せる日が早く来るといい。

2019年3月14日 東京中野にて 

 

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写真展情報
1月18日より4月5日まで
奈良市写真美術館にて個展「Faraway Boat」
http://www.irietaikichi.jp/

 

 

 

 

また旅だより 18

 

尾仲浩二

 
 

年が明けて韓国へ行ったり、いくつかの写真展が始まったり、還暦になったりと慌ただしかったが、2月に入って久しぶりにのんびり。
仕事で誰かと会う約束も遠くへ行く予定もない。
昼に近所の八百屋を覗いたり、まだ明るいうちに銭湯に行ったり、ファミレスで午後からワインを飲んでみたり、猫を撫でながら配信で古い映画を観たり。
なにもしていないように見えるかもしれないけれど、ちゃんと写真集の発送したり、なにやら考えたりもしているし、たまにはこんな時間が大切なのだ、などと誰に言い訳をしているのか。確定申告もやったし。 

2020年2月14日 東京中野にて

 

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写真展情報
1月18日より4月5日まで
奈良市写真美術館にて個展「Faraway Boat」
http://www.irietaikichi.jp/

 

 

 

 

また旅だより 17

 

尾仲浩二

 
 

昨年末より始まった写真展で話をするために再び釜山へ。
打ち上げで古くから詩人が集まるという古くちいさな酒場へ。
オンドルの小上がりで、自家製マッコリと肉や牡蠣のチヂミ。
これがめっぽう旨く、ついつい杯がすすんでしまう。
他の席から独特の節回しの唄が聴こえてきた。
訊けばその人は歌い手だそうで、道理で上手なはずだ。
その人たちが帰った後でこちらの席でも唄が始まった。
したたか酔った僕も「釜山港へ帰れ」をいいかげんな歌詞で。
気分がよかったのだから仕方ない。

2020年1月11日 韓国釜山にて

 

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写真展情報
1月18日より4月5日まで
奈良市写真美術館にて個展「Faraway Boat」
http://www.irietaikichi.jp/

 

 

 

 

また旅だより 16

 

尾仲浩二

 
 

釜山での写真展の休みに巨済という港町へ行った。コジェと発音する。
シーズンがはじまった牡蠣を焼酎と共にたっぷり楽しみ、腹ごなしの散歩。
港に面した公園には豊臣秀吉軍を迎え撃つ英雄たちの像があった。
韓国の友人と並んでその像を眺め、お互いに苦笑いをしていた。

2019年12月9日 韓国巨済にて

 

 

 

 

また旅だより 15

 

尾仲浩二

 
 

パリでの用事が済んで次にケルンに行くまでの4日間シェルブールに来ている。パリの友人がこの街の寂れ具合がお似合いだと勧めてくれたのだ。

生憎とあの有名な映画は観たことはないのだけれど、駅に着き港を歩き出した途端あのメロディーが頭の中で流れてくるのだから仕方ない。

誰も知った人がいない街や港を用事もなくただ歩きまわり、夕方に凍えてホテルに戻りワインを飲んではすぐに寝てしまう、誰とも話さない数日。ケルンではまた沢山の人達が待っている。

2019年11月13日 フランス、シェルブールにて。

 

 

 

 

また旅だより 14

 

尾仲浩二

 
 

韓国ポハンへ写真フェスティバルで行ってきた。
台風が朝鮮半島に上陸する数時間前に着陸。大荒れの済州島のニュースを観ながら眠る。
翌朝、台風は日本海へ去り爽やかな秋晴れ、ポハンは製鉄所と魚市場の街。
フェスティバルの会場は70年代に建てられた古いホテルで、自分の写真に囲まれて眠る三日間。
もちろん展示の合間の散歩とメッチュ(ビール)も楽しんだ。
それにしても今年は台風多いな。

2019年10月6日 韓国浦項にて

 

 

 

 

また旅だより 13

 

尾仲浩二

 
 

明日で期限が切れる青春18きっぷをもらってしまった。
やらなければいけない事はあれこれあるのだが、とにかくどこかへ行かなければならない。
台風一過でこの夏の最高気温が予想されているなか、中央線を乗継いで塩山へ。
ブドウ畑が広がる盆地は暑い、すぐにグレーのTシャツがマダラに染まる。
人影のない商店街を抜けると寂れたちいさな温泉街があった。
入湯料400円と東京の銭湯よりも安い。
片道2時間半掛かったけれど電車賃はタダだし、なんだか少し得した気分だ。

2019年9月10日 山梨県塩山にて

 

 

 

 

また旅だより 12

 

尾仲浩二

 
 

島根県の江津に泊まった。ごうつと読む。
七月の終わりから約二週間のひとり旅。
この日は夏休みはじめての土曜日で、観光地はどこも宿代が高かった。
仕方なくこのちいさな町のビジネスホテルに泊まったのだ。
どうやら東京からの移動時間距離がいちばん遠い町らしい。
そこは気になったけれど、なにしろ強烈な暑さだった。
なので陽が落ちる頃に宿の回りを散歩しただけで、翌朝はすぐに駅へ向かった。
でもそんなついでに泊まった町が妙に記憶に残ったりする。

2019年8月3日 島根県江津にて

 

 

 

 

また旅だより 11

 

尾仲浩二

 
 

且つて阿佐ヶ谷で古いアパートを借り写真ギャラリーをやっていた。
5年前に大家さんが亡くなり取壊しのために立ち退いたのだった。
人づてに、まだ街道のアパートが残っているよと聞いてはいた。
でも朽ち果てた姿や、更地になっているのは見たくはなかった。
その日は天気も気分も良く散歩のつもりがついつい遠くまで、そして街道はまだあった。
それほどひどくもなっていない、今にも誰かが出てきそう。
ありがとうと言って階段は登らずに駅に向かった。

2019年6月13日 東京 南阿佐ヶ谷にて

 

 

 

 

また旅だより 10

 

尾仲浩二

 
 

写真展で韓国に行ってきた。
市場を歩くのは楽しい。
ヨーロッパや東南アジアの市場も楽しいけれど
日本とほんの少し違うこの国の市場を
子供の頃に戻ったような眼で歩いた。

2019年6月7日 韓国 蔚山にて

 

 

尾仲浩二 個展
「Sleeping cat」
6月23日まで
神保町 スーパーラボ東京

 
尾仲浩二 出展グループ展

『韓国ウルサンスナップ展』
6月22.23.29.30日
中野 ギャラリー街道

「平成・東京・スナップLOVE」
6月21日~7月10日
六本木 FUJI FILM SQUARE