原田淳子
あなたは戻らない風
還らない雨
一度きりの季節
くぐもった灰色のコートを引き摺り
歩くたびに夜の幕を引いてく
瞬きのあいだに夜は重ねられ
あなたの不在を押しあげる
12月の赤い眼
全能の神の化身が髪を震わせて月を追う
燃える血のα
あなたの心臓
わたしは幹にしがみつき、
枯葉に擬態して生を凌ぐ
氷の朝
蹄で霜柱を踏む
軋む音
土の嘶き
12月
大団円の音楽が始まる
朝焼けと黄昏のスライドショー
最終の黄金の陽までつづく
凍りかけてなお
まだしがみついている
まだ死んではいない
赤橙の光だけがみえる