stanza

 

工藤冬里

 
 

一つの詩を書くのに二年はかかり、長編小説一つ分くらいのエネルギーが要る
問題はそのためにもう千年生きてしまっているということだ
サックスで命を削るというのは嘘で、増やしているだけだ。
死んだのは単にクスリを飲み過ぎたからだ。
一日を一秒にすればきみも長く生きられるよ
二〇一九の電話帳で
行政機関や会社、商店を 探して、
手紙を書く、
あなた方はいつか私を憎み、
殺すだろうと
一つの手紙を書くのに時間はかからない
時計の時間と同じ長さの時間がかかるだけだ
二〇一九の電話帳で
行政機関や会社、商店を 探して、
手紙を書く、
あなた方はいつか私を憎み、
殺すだろうと

 

 

 

#poetry #rock musician

depict

 

工藤冬里

 
 

作りに行くかたちの場と時間の中に自分では操作できない要素が入っている時、やっと支払いは賭けや投げ銭によって完了する。例えば死にかけている時の所有物の分配や、死んだ後の埋葬の仕方などである。そこには自分より大きな胴元が動いていなければならない。
自分で処理できない護美芥はない。ゴミ・カス・クズの整理がアルシーヴであるとしたら、アルシーヴじたいに支払い能力はない。アルシーヴはロック史でなければならない。Yo soy とYo estoyの違いのように、焼成される私には二つの動詞が纏わり付く。それがdepictされなければならないのだ。
災厄は未だ限定的である。大火事はここからは見えないが宇宙からは見える。その赤の画竜点睛で時間と場への投げ銭は完了する。
死を飲む、或いは死を飲み込む者のように酒場の代金を払いなさい。

 

 

 

#poetry #rock musician

refuse collector

 

工藤冬里

 
 

自由とは捨てること
不自由とは収集すること
排泄物であるかのように捨てることが必要
夏とは捨てるものをゴミのように憎むこと
冬とは収集してしまったことをクズのように憎むこと
refuse collectorが五味カス葛うどんを食べている
愛されるべきだったものは死後数週間放置されている
札が見つかることもある
断捨離とは捨てられないこと
貧乏性とは捨てられたいこと
to know himとは彼のゴミ屋敷の入り口に立つこと
自由な秋の強さとは強力粉と薄力粉を共に踏み付けて五味カス葛うどんにすること

 

 

 

#poetry #rock musician

秋のrefuse

 

工藤冬里

 
 

自由とは選べること
不自由とは選ぶこと
正確な情報を前もって知らされた状態で選べることが必要
春とは色が変わること
秋とは見え方が変わること
同じ色が黒枠で埋葬されることが必要
強さとは侮辱を喜ぶこと
弱さを知ることは強さの入り口に立つこと
自由な秋の強さとは強みをごみにすること

 

 

 

#poetry #rock musician

おどなすてわーばみずでだんだが

 

工藤冬里

 
 

まだ生きている
病室からの顔を分けて考えることが出来なくなっている
どうぶつの言葉
おねえさんはまだ暑い
モバイル器具はアカシアで作る
箱の中には
箱の上には
年に一度の出入りに意味を持たせる
その所有そのものには意味や力はなかった
二つのものは跪いて下を向いていた
跪く者を拝むことはない
声もそのものからそのものの声が出ることのないよう
そのものからは出ず二つのものの間から出て顔の前に置かれていたが向きがないような顔の前に置かれていた
一羽一羽
一話一話
助けて
犬みたいなにおい
一緒にコツウォルズに行った
五羽目はただです
帆を畳んで
膜が取り除かれたので
津軽弁で叫び
最後の痛みは酸味が勝った
支払いは完了した
領収が裂け箱が見えた

 

 

 

#poetry #rock musician

入院した日本語

 

工藤冬里

 
 

顳顬から眼底にかけて疼き
薄らと吐き気を伴う
青寄りのピンクを引っ掻いて地が見えるのがアートっぽいがそれどころではない
白を巻いたきみは白本語を話さない
ただ家を燃やしたいだけだ
白の家を燃やす
束の間の無痛の他は
ただ白を燃やしたいだけだ
ただ日を燃やす
無痛分娩した憎しみを育て上げ
大学に送り出す
箱はピグメントの黒
扁桃腺に舌の先を当て
熱燗で作るカップ麺
きみは擂り下ろされて
白本語を話さない
エイの言葉を話す
エイはひらひら話す
「ああすがすがしい
戦争前夜の黒い溝の上澄みのような気分だ」
太い道が出来ちゃってるけどほっといたら治るんじゃないの
通行止めにするには警備員雇わないと
バイパスは作れない
先に新道作ってから後で旧道作るようなものだから
役者の自殺が多いのはそういうことか
重層的非決定へ、などと言えていた余生も過ぎ
日本語は多重を生きられなくなってきたのだ

 

 

 

#poetry #rock musician

to Jesus

 

工藤冬里

 
 

言葉は作れないのでフォントを作った
歳を取るのは今だけの特権なので
はみ出た絵画を白髪染めにしてみた
自分を捨てるのが好きなので
額縁は犬にやった
池のほとりで眠くなり
水草の上を歩くのを忘れた
小さい花が付いていた
Jesus
顎でブリーフな遺言を認め
病室で天敵にマウントを取った
昼食は酸い太陽だった
梅干しの核子のように捨てた種の中で
白いカップルが抱き合っていた
もう少し
死んでいようか
びっくりして飛び出した
賢い兎だったが
消し忘れてはみ出した白
点滴の逆さの青空

 

 

 

#poetry #rock musician

I’m Thinking of Ending Things 2

 

工藤冬里

 
 

もう十分行くとこまで行ってると思うよ
命の価値と同じくらいに
裏返りは裏返り裏返り
時間軸なんて無いも同然
表も裏も無くなってから誕生した生権力
体はもはや日本でさえなく
脳死から心停止までの間を生きるだけ
受けるより臓器を与えるほうが幸福です
という原則で栽培される哺乳物
と鈴虫しか居ない

 

 

 

#poetry #rock musician

I’m Thinking of Ending Things

 

工藤冬里

 
 

感染は内側が滑子になって
顳顬からぐしぐしと人が死ぬ
と百舌が語り掛ける

カキエダという名前だった
尖らせた口の定着したまま老いた
鳥が無くことにさえ気付かず
山火事を避けて歩くだけ

濡れたアスファルトに五円玉が浅く水没している
さざなみが立つ
巌谷小波

死は遺伝に似ている
ピグメントでは真理は表せず
学識ではなく理性が必要で
それは逃亡するヒムラーに追いつく
と鷺がゆったりと叫びながら湖面を征く

 

 

 

#poetry #rock musician

メタフィジカル・ディスタンス

 

工藤冬里

 
 

遂に消したな
扇風機の
風は必要だが 
嘘の体

冷ましてしまうから 
その向き
は巧妙にずらして
オトシイレようとする
押入れトイレ情報
によって 二世帯

冷えすぎないようにしている

公正なアカウント
の距離
について迷った時

悪を行う群衆
についての用語
を作ることに力強い者たち

付いていかないようにする

顔を出せない
プロフィール
の死者たち
を死者として気遣うアバター

あゝ福田くんは死んだ
と言わせる

送信イツダツする前に
ヨビモノとなっている同調圧力
のアロンに吹く風の流れを思えば
貧しい人の争い
も相手によって目線が変わるので
外国人の気持ち
が分かるきみは
目を半沢直樹みたいに大きくしてはならない

アロン・アゲイン

あゝ白髪なのに十年前からまだ生きている
心を働かせて
なよなよと吹く風の中でマイケルは
モーセの体について効率的に論じ合う

貧しい人や立場の低い人や弱い人が常に重要なので
新しい眼付とマイケルの髪型で法規を読む

敵対者を手伝うこと
について考えると
賄賂を受け取る気持ち
が分かってしょうがない
菅義偉官房長官はボードレールの髪型にしないといけない

土地を休ませなければならないと思うが
野生動物の気持ち
を朝まで聞き逃す

空き地には木を植えるので
親のない子が休めるようにしたい

洞窟は掘らない
金は隠さない
黒いレクサスは買わない

心配事を話すと優しくしてもらえるので
寒気を感じる部分の賄賂をシャットアウトした

悪意の無い中傷の肩幅
話したい衝動

もしおれがちゃんとしていたら
きみに怒っただろう、

でも自分の落ち度によりおれは
今の時期の扇風機くらい無力だ

目を閉じるとフレームが見える
タレルのopen fieldのように 見慣れた四角ばかり

フレームの中では離れれば離れるほど近くなっていくように見える

不意に
死者との距離
を忘れさせるサンフランシスコの
山火事
フレームのない山火事は宇宙からも見えた
きみの削除痕はきみの外からも見えるだろうか

居なくなったきみの近さの中へ
秋の扇風機はなよなよと風を送る

 

 

 

#poetry #rock musician