怖れ

 

工藤冬里

 
 

絶望するしかないわけではありません
埃のように私は舞う
食事と睡眠どっちが怖いか分かりません
エルピスというのかギリシャ語で希望
なんていうんだろう絶望は
疎開先では飢えが怖い
入って来ないように灯りを消そう
書く欄がありません
ソーランを養う
山鳩は歌う
力強い羽音に狂う
今日はトンボたちだけが酔う
一緒に住むことを快く思う
って言ってるだけじゃだめなんだって
空の青に剣
飲み物としての眠気も怖い
決意ができていない
早く起きろよ

 

 

 

#poetry #rock musician

迷い出た羊のバラード

 

工藤冬里

 
 

ababbcbC
ababbcbC
ababbcbC
bcbC

解像度という飲み物
居酒屋のような明かり
垂れ下がる洗濯物
柿の実は太り
髪もくるり
やましさの故に
飲めないくすり
二つの夕方の間に

愛されてはぐれ者
雲塊に阻まれる祈り
彷徨うのは標野
以前の死者との隔たり
わたしを自分で屠り
食用のために
自分で調理
二つの夕方の間に

モオブからモノ
日本と同じみどり
納屋から斧
作業の滞り
思いは偏り
試練を蝶結びに
アクアパッツァにはアサリ
二つの夕方の間に

道は先細り
羊は南(エル・スール/ネゲブ)に
食べるなら微塵切り
二つの夕方の間に

 

 

 

#poetry #rock musician

すすり泣く曇り空のバラード

 

工藤冬里

 
 

ababbcbC
ababbcbC
ababbcbC
bcbC

暑いが曇っている
夏も終わりだ
事物は震えている
きっと冷房のせいだ
木々の緑は殆ど黒だ
花もなく
道といえば獣道だけだ
曇り空の下ですすり泣く

うす青い峰々が白濁している
病院から見える景色はみな同じだ
車は車道を走る
薬もあの時と一緒だ
死ぬ元気が出るほど元気だ
今は夏だけが往く
夏だけが終わりだ
曇り空の下ですすり泣く

来ないまま死ぬと思っている
のはだめだ
生きているうちに来る
と思っているのもだめだ
いつ来てもいいと思っていなければだめだ
病気も死もなく
トラウマを思い出すこともなくなるのだ
曇り空の下ですすり泣く

いつ来てもいいように待っていなければだめだ
恐れもなく
思い出すこともなくなるのだ
曇り空の下ですすり泣く

 

 

 

#poetry #rock musician

さらぬ別れ

 

工藤冬里

 
 

むかし、男ありけり。よしがありやられこし野菜を誰にも知らせで一人食ひ、滑らかなる黒の石の板を夜の奥にずらししゆく心地して、人に、

ひとり泣きしほたれネカフェに無農薬野菜を食ひしためしやあらむ

 
昔男が居た。事情があって送られてきた野菜を誰にも知らせずに一人で食べ、滑らかな黒の石の板を夜の奥にスライドしていく心地がして、人に、

泣きながら野菜を食べたことがあるだろうか

 

 

 

#poetry #rock musician

あるインタヴュー

 

工藤冬里

 
 

社会と資本のことだ、と彼は添えた
薹の立った雀斑だらけの
雲雀の巣だ
閉鎖病棟で
居場所とか自由とか
酒で胃に流し込み
サンバのステップがアヒルのよう
一人でやってけるし
マクドナルドのMが見える
最近のエンジンはボタンを押すとかかるとか
局部麻酔でいいんですか
枝を手で掴み
落ち葉を半分踏む
子供
産まれたての
戦争と日常を交互に映すなら
子供の写真が沢山出てくる
引っ張りあう娼婦と母
ベラルーシの必然は
弁別される
男同士で何を話す
それに懸ける歳月を
夏なのにこの寒さ
苦しそう
ただ歩いて
ピアノが鳴ってるだけだ
海はいつも芝浦の白
と思ったら大間違いだ
爺さん
寒そうな火
いつも洗い物をしながら
目が半分くらいある
白く汚いドアから出て
土を掘る
木々とはその陰
なぜだかわからないが
息子やニコや
黒いコートが
蹴り上げる松毬
シトロエンは卵を運ぶ
愛は逆さに
電話にトイレ
巻き毛の彫刻
呼ばれる父
父は呼ばれ
蹲る
間の抜けたヒキガエル
運命は失われる
その山は見たことがある
絵師は描いた
目の色のちがうばけものの顔
白光と禿げ上がった薄倖は似てる
ドナルド・トランプが共産主義を嫌いなのは知ってる
どうぶつの学生さん
関係ない話は関係あるということ
子よ 何を食べる
シャツの襟は誰が洗う
誰にも持病はある
そして話し始める
近づいて、話し始める

 

 

 

#poetry #rock musician

死体の無い死

 

工藤冬里

 
 

まだ世界があり稲は髪の毛のように伸びている
預言とは妄想を塞いでいくことだ
徒刑まであと何歩
全ては変わらないし変えてはいけないことを知るべきだ
ところが
死体の無い死は妄想を塞がずに却って
what is truth
と独語する冷笑的な世を 呼び寄せる
呼び寄せられた世に草生す
生きることしか考えない本能が
真夏の
放水路の脇の
水の流入した畑の
ミントの群生の傍に腹を浸し
生命力の減衰のみを待つ
呼び寄せられた世に草生すまでが妄想の永遠だ
死体の無い死に呼び寄せられたTLが草生す
最期まで生きることしか考えなかったが
最期まで自分のためには生きなかった
きみは冷たい水の流入したミントの傍に腹を浸す
戦後何十年経っても発見されない水漬く屍のように

 

 

 

#poetry #rock musician

猫が生きて死ぬくらいの期間

 

工藤冬里

 
 

https://youtu.be/A0d979c-6Xo

 

猫が生きて死ぬくらいの期間
執行猶予が続いた
いろんな永遠があった
ラカンは結局全部間違ってるんじゃないか
十分に猫だったし十分に似非エッセー人間だった
もう水分の注射も無理で看取ってやってくださいと言われた
一人で死ねる草叢があって幸せだ
帰ってこないので心の中で生き始めていた
心の中で生き始めるとまだ生きているものを殺すことになる
その短い期間が永遠のように感じられる
だから/それでも
瓢箪で人の命の大切さを教えられなければならなかった

 

 

 

#poetry #rock musician

浚渫船

 

工藤冬里

 
 

おれと同じくらいの白髪だオールバックの白黒は善玉か悪玉か分からないが実を避けているグループがあるなら美を生み出す派手な衣装で着飾っている全て壊され更地にされ戸惑うが全ての紙もティッシュになったのには気付かない金属は原材料の形に戻され石油製品は石油に戻され解かれた繊維は糸巻きに巻き戻された巨大な板状の船が洋上のデブリスを回収して元素に仕分けていく吉本的なものがなぞるだけの籾殻殺されたとしても触れることができないセミでrocket rocket USA名前行列が通り過ぎる冷たい粘土の層が夏の終わりまで続いている虫喰いの東方美人刺蛾の柿の葉を鋏で切るとどうなる✖︎8モーゼズの前をThe Rock, perfect is his activityと言って通り過ぎる楔のwedgeから考えだけでなく欲求や感情がぶつかるように仕向けられるきみがやめるならやめるforever and ever

 

 

 

#poetry #rock musician

方法と結果

 

工藤冬里

 
 

事故に遭ったと言うので急いで出かけて行ったが
事故に遭ったと言うので急いで出かけて行ったが
視程は昨日と同じ
うつくしいメロデー
分厚い本を借りて
光は粒だと
一点の曇りなく
そういえば、で終わる
その怪獣みたいな音はなに
長い慰めのノイズ
楽しいんだろ?
だったらもっと口を開けろよ
毛虫にもいろんな顔がある
辺境を拡大できます
何の嬉しさもない
虫が鳴いているな
アケルダマ
フグの背と腹
変身する勢いを保つ

 

 

 

 

 

注釈
アケルダマのダマはアダムのアーダマーだから土,アケルは血、吊った枝が折れて岩に落ちて裂けた

 

 

 

#poetry #rock musician