小池ゆりこ

 

工藤冬里

 
 

ナイルが血に変わったように
TV画面が真っ赤だ
この段階の災厄に於いては
私たちは等しくその影響を受ける
トレモロがかったWiFiの不調で途切れ
7SPOTが就中強いので駐めているが
愛がなければ悪いことを行う
ミスドはダスキンがやってる
社長が便所掃除する一燈園的筋肉を全部使っても当選の目が尽きようとしているストレスの中で愛を振り絞り引き伸ばす
普段はマンガ読んでるハル君が正しいコースを走ることですとコメントする
私たちはどんな道を走らなければなりませんかなぜですか
7SPOTが就中強いので駐める
狭められた道と真っ赤なTV画面の広い道がある
そこは広々としていて通る人が多い
走っておられます
他の人をゴールさせる
自分のやり方を捨てて共にゴールする
共にゴールして中世化する
あなたも日々葛藤している人の一人かもしれません
障害があっても走り続ける
ナイルが血に変わったように
小池ゆりこのTV画面が真っ赤だ

 

 

 

#poetry #rock musician

災厄の初期に分かりやすい文章を書くということ

 

工藤冬里

 
 

わかりやすい文章を書けない人はどこか病気で滞っている
蟹色の絶望の叫びが変調され
扇風機に向かって喉笛を掻き切ったような音がしている
烏を包むのは黄色がかった小龍包の皮で
痛みが伴っても付いて行く決意の嫁とその息子には
血の花婿を後回しにしないことが求められた
わかりやすい犬猫の文章しか書かないのは説明なしの固有名詞を使えないためだ
書けないのではなく書かないのだ
書かないのではなく書けないのだ
去年は読者に親切なロルカの血の花嫁の朗読劇をやった
血の花婿のことは
書かないのではなく書けないのだ
書けないのではなく書かないのだ
さて杖は蛇に蛇は杖に
水は乾いた地面の上で血になったので都民は信じた
立場の低い人に親切になっても負債を抱えることはない
却って貸しを作ることになる
都は負債を抱えることにはならない
雇われたアイコンを切り取ると血が出ますから
その血まみれのアイコンを血の花婿の両足に貼り付けなさい
そうすれば災厄は去ります
公の街宣ではこのように言い換えられます
有権者の皆さん、エチケットを剥がすように切り取りアマビエに貼り付ける、とイメージしてみてください
雇われたアイコンを剥がしても血が出ないのは教科書のせいでしょう
相手国だって同じように滅びるのですから国を守ってはいけません
百舌が柿の木から掃射する
空中分解する扇風機の音
アイコンを切り取らないとどんなことが起きますか
処罰されます
美しい皆さん
書くのは街宣のアイデアを提供するためです
助けがないとできないのに切り取らなかったので命を失う間違いをしました
命を失う間違い
扇風機が空中分解する音

 

 

 

#poetry #rock musician

オリンピック(いくたびも雪の深さを尋ねけり 子規)

 

工藤冬里

 
 

走ることが競争ではなく走り「きる」ことだと知っていたら強迫神経症にならずに済んでいたでしょう
「美味しゅうございました」で通じるほどに膾炙しているのは是認を得ようとする欲望への本能的な疑義が立ち昇るからでしょう
狭い道を躓かないように犇めき合ってアニメのように走った
愛に裏道はなく抜け道に義はなかった
表参道にも竹下通りにも愛はなかった
蚊はいた
水平に張り出された「く」の字を地軸の傾きで受ける美しい肘タッチの練習動画
雇われたアイコンの素材の傾向を分析してみせた展示
美味しゅうございました
走り過ぎた子規は病床からいくたびもソーシャルディスタンス街宣の深さを尋ねた
雇われた者たちのアイコンはアニメの平たさとして広がり
肘タッチの太陽高度は深さとして林立した
いくたびも尋ねた雪の深さ 哉

 

 

 

#poetry #rock musician

危険外来

 

工藤冬里

 
 

空が破けて史上最高量の情報が一気にダウンロードされたが
それに耐えることができなかった田螺がショッキングピンクになって畦に張り付いている
春の黄を芒の秋に、秋桜の橙を春に持って来て
国々の秋は存亡を偽りながら選挙を続けていく
靴の泥までチェックしても
秋津島にはショッキングピンクの頭蓋に白いマスクをした群生が蔓延る
軍政が雌蕊に施術する大陸から他感作用の強い愛の生物が入ってきて
肘タッチの礼法を小笠原流がブラッシュアップする

 

 

 

#poetry #rock musician

夜の歌に似た歌

 

工藤冬里

 
 

殺されるとは初耳です
話さなかったのは一緒にいたからです
今日、過去を明け渡したので
開戦前夜のドブの上澄みみたいに清々しい。
フルートを持って上って行く祭りの夜の歌に似た歌
あれは駆除される浣熊
雨なので車から出られません
決戦投票前にすでに世を征服しました
J-popがおれの屋根に当たる
ヘルパーは来ません

 

 

 

#poetry #rock musician

zoom会議

 

工藤冬里

 
 

国々のまだあるうちに私たちに卵子が与えられる
当然のものではない死が価値を持つ
not all deaths matter
むしけらの初物を買い取る
天井には鼬鼠
納屋には土蛙
初めてのおつかい
かれならできる
途中で雨が降っても
袋が破れても
持ち場のモチベーション
机に乗りたがる大群衆
市民となるために分断されるので
新言語を学ばなければならない
うちの八割れは味覚がないようだ
コロナかもしれない
走れヘイトマン疾風(ルビ振るならカゼ)よりも速く
カネのことを語りなさい
福岡さんは野菜食べてるんだろうか
今日は礼子は歌ってるんだろうか
今月はコニーちゃんは儲かってるんだろうか
チャバネゴキブリはいつもいた
にゃんつーは外に行けよもう
誰かと親しくなるには
時間を共にする必要があります
距離はそんなに障害ではありません
会ったことはありませんが愛しています
最近みんな背景を白にしてる

 

 

 

#poetry #rock musician

l’esquisse ⅰ

 

工藤冬里

 
 

カボチャのカボチャ色の花がばかでかい
地面にのたっと横たわっている
背骨がないわけではない
激しい雨が降ったけれども止んだ

それはファシズムではない
泣きに来ているのだヒヨドリは
背骨がないわけではない
雨が怒髪のように立っていたのだ

 

 

 

#poetry #rock musician

海辺の叙景 Ⅱ

 

工藤冬里

 
 

人が死ぬというのに明るい声で
否認段階の痛みをやり過ごすように
観光地としての死を自撮りする
ガレルめいて白化したzoomの背景画像が離れた者たちのリアルとなり
宇宙をペンキ絵のショーにしたまま
聖地巡礼は換骨堕胎され
地と海と空だけなのに墓となる
感情史に於いては
クライマックスに於ける無感情が正史となる
いかなる革命もない
刺のあるまま進み
墓を撤去する

 

 

 

#poetry #rock musician

地球の歩き方

 

工藤冬里

 
 

あなたはなにをしてきたのか、どこからきたのか

自分で穿いたズボンのバンドを締め上げ地球を巡り歩きたい所を
歩き回っていました
もっと若かった頃は
地上そのものが牢獄なのだから場所の移動など何の意味もないと考えてみたりしてましたが

歩き回れなくなって愈々、
玉虫厨子とかを除けば、
見た、行った、が何の足しにもならなかったと身に染みました
ああそれでも
今よりもっと若くて元気だった頃は歩き回っていました
見た気になった仮想の平等主義を批判しながら
絵葉書にさえ納まりました
それが年​を​取る​と
自分でズボンも穿けず
はい万歳してー、
と言われて伸ばす手からすっぽり
拘束衣を​被せられ
徒刑場に​連れ​て​いかれます
それが申し込んだツアーの結末
となりました

 

 

 

#poetry #rock musician