広瀬 勉
#photograph #photographer #concrete block wall
氷と氷が触れ合うと
木枝が波をうつ
空と地面が触れ合うとき
人はそれを雨と呼んだ
ただひたすらに降り注ぐ透明は
一つの線となり
一枚の五線譜のように
丸みを帯びた淡いピンクは
音符になって流れていく
交わり離れて この一瞬をよろこぶように
遠くの傘は風に形をうつして
いつか羽化するのだろうか
青にピンクが重なる昨日は
今日を知っているのだろうか
いつもの景色は記憶を好んだ
雨音が記憶の ため息 にかわるとき
その透明は 寂しさを纏わせる
誰にも気づかれない色
そっとそばに寄り添う色
手に触れる散りゆく花びら
記憶の片鱗を呼び起こし
やさしい もの を
あたらしい旋律を
繋がれた色玉の反射は
今も続いている
今も
知らぬ間にできた歪みの記憶すら
愛せるように
そう口ずさみながら
かろやかに風は吹いていた
体調よくないターンに陥る
とにかく寝すぎていて起きていない
ここまでは久しぶりかな
外の風があたたかいのかもわからぬ日々
時折少しだけ歩く
問題の根っこを知っている
と思いこんでいたのだけれど
だとしたら生きるしかないんだ
ここでこの世よさらば!
なんてまったくの論外
わたしはこの生にしがみついて生きるのだと決めたのだ
けれども年齢的に若過ぎもせず、熟成もされていないちゅうぶらりんのわたしは
何を見、何を書けば生きていけるのだろう
何もかもを見て、何もかもを書き出したいのに
今はその時ではないということか
私のあとに何が残るのだろうな
誰の記憶にもあまり深く刺さらぬ存在でいたいような
けれどもことばだけは誰かのこころに
ずんとくるいっしゅんくらい、あったらいいのに
高望み高望みと、通院帰りをとぼとぼ歩く
キガキ
ガキガキ
ガキ
じゃない
よ
ころっ寝返りいつでもできるようになったコミヤミヤとこかずとん
夜中見守り用ベッドから見る2人の姿が
顔マットに向けてグーグー
うつ伏せまずい、窒息しちゃう
胸と足の下に腕を入れてコミヤミヤ持ち上げる
熟睡中のコミヤミヤ空中で回転させマットに下して仰向けに
すやすや、これで安心
と思いきや
寝返ってころっ
うつ伏せに戻る
するとさっき仰向けに直したこかずとんも
ころっ寝返って
うつ伏せうつ伏せ
顔は横向きになってるからとりあえず呼吸は大丈夫か
せめて顔を少し上向きに角度つけとくか
やわぁーらかな頭2つ動かして
はい、ひとまずこれで様子見
仰向けに直しても直しても
コミヤミヤがころっ
こかずとんがころっ
気道が塞がれて
息が苦しくならないか
まさか死んじゃうんじゃないか
かずとんパパはとっても心配
ころっといっちゃったらどうしよう
キガキ
ガキガキ
ガキ
じゃない
顔が下を向いてると落ち着くね
マットが頬っぺたにくっついてるのって落ち着くね
すーはー、すーはー
ほらね
吐いた息が逃げないで
すぐ傍にあるよ
あったかくて安心できるね
湿っぽくて安心できるね
薄暗くって安心できるね
すーはーすーはー規則正しい2つの寝息
うつ伏せ横向きの顔眺めて
かずとんパパもごろっ見守りベッドに仰向けになる
コミヤミヤ開いた両手の先をちょこちょこさせてたな
こかずとん首をゆっくりふりふりさせてたな
これも息してるからできること
そういやぼくも息はしてるんだった
暗い天井見上げながら
すーはー、すーはー
吐いた息は規則正しく上へと逃げては消えていく
コミヤミヤ、こかずとん
上がポカンと開いた仰向けってのも悪くないよ
ひと眠りしてから
また様子見
キガキ
ガキガキ
ガキ