而死者活着

 

Sanmu CHEN / 陳式森

 
 

死者活着,骨頭的筆畫凝血
集中的火焰在喉嚨低沉
火錯了嗎?在持續靜默之中。
書店空餘飄搖的招牌,熄火
遺言,緩慢了口供
解下鞋帶,我的灣仔
被逼脫下內褲,鷹眼凝神肛門
六月再一次出來,
從敵人擁塞的陣營中出來
帶着一腔青草,嶙峋往年
哦,痛苦有限一如海洋
臉上的覆土已經緩緩出青草;
驚惶的掠攫者划開了我
矜貴的喉嚨

死者活着,而生者死了。

 
2023年6月10日
寫於銅鑼灣被捕之後

 

 
 

・翻訳はこちらで
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致 本來無一物野郎
本来無一物野郎に寄せて

 

Sanmu CHEN / 陳式森

 
 

雲很遠,海岸線
準備讀詩的人
站在站前的廣場,等
人群來去,而我
岩塊的流域,再來
一節。空無
物,同時打開每一
無。思緒,我響應風
流水,響應Bach
激流中的磐石。
一和所有,都先於我
而我只是復述。

 
 西貢,五月的雨中

 
    .
 

雲很遠,海岸線
 雲の遙かな、海岸線に
準備讀詩的人
 詩を読もうとしている人
站在站前的廣場,等
 駅前広場に立って、
人群來去,而我     
 人々の往来を待ち受けている、そして私は、
岩塊的流域,再來
 岩の流域から、
一節。空無
 もうちょっといってみるか。すっからかんな
物,同時打開每一
 もの、それを同時に開いていけばまたまた
無。思緒,我響應風  
 無だ。思うに、私は風と響き合い、
流水,響應Bach
 流れる水と、Bach この 
激流中的磐石。
 激流にも流されぬ巨石と響き合う。
一和所有,都先於我
 一そしてすべて、みんな私に先立つもので
而我只是復述。
 ただ私は繰り返して述べるのみだ。

 
西貢,五月的雨中
 サイクンにて、五月の雨の中で

 
 

日本語訳:ぐるーぷ・とりつ

 
 

 

 

 

四月

 

Sanmu CHEN / 陳式森

 
 

四月用翅膀的灰霧塗抹群山、海岸、我們的眼睛。

四月,古老的蜂群在荔枝樹間
鼓噪,釀造出引擎,
我們重新誦讀遺言。

四月的鞋底拍打着小人
⋯⋯疼痛
永生的碎片。

四月,被迫供的花蕾凋零
季節的臨終,而流血不凝
脈動著……

四月,呼喚我們重返戰陣!
可我們已經不再是戰士,
失去了勇氣。

四月,河流在海中漂流,
沿着星星的軌道,
四月暗青的頭顱。

四月,暴雨洗刷了滴血的聲音
我的骨頭竟如此平靜,而春筍勃起
我將是四月的污點證人。

 
二零二三年四月初 西貢

 
    .
 

四月用翅膀的灰霧塗抹群山、海岸、我們的眼睛。
 四月は翼をひろげた灰色の霧でもって、山々や海岸や我々の眼を塗りこめる。
四月,古老的蜂群在荔枝樹間
 四月、年経た蜂の群れはライチの木々の合い間に
鼓噪,釀造出引擎,
 騒がしげに、エンジンを醸しだして、
我們重新誦讀遺言。
 我々はあらためて遺言を朗誦する。
四月的鞋底拍打着小人
 四月の履き物の裏で憎い奴を叩き打ち*
⋯⋯疼痛
 ……その痛みは
永生的碎片。
 とわの命のかけら。
四月,被迫供的花蕾凋零
 四月、自白を強いられたつぼみはしおれ落ちて
季節的臨終,而流血不凝
 季節が終わりを迎えても、流れる血は固まらず
脈動著……
 脈を打ち続けている……
四月,呼喚我們重返戰陣!
 四月は、我々に呼びかける、いま一度戦さの場に戻るのだ!と
可我們已經不再是戰士,
 でも我々はもう戦士となることはないのだし、
失去了勇氣。
 勇気も消え失せた。
四月,河流在海中漂流,
 四月、川の流れは海を漂い流れ、
沿着星星的軌道,
 星の軌道に沿っていく、
四月暗青的頭顱。
 四月の青黒い頭。
四月,暴雨洗刷了滴血的聲音
 四月、激しい雨が滴る血を洗い流した音
我的骨頭竟如此平靜,而春筍勃起
 私の骨はあげくこうも穏やかなのに、春の筍は猛り立ち
我將是四月的污點證人。
 私は四月の法廷の後ろ暗い証人となるのだ。

 
二零二三年四月初 西貢
 二〇二三年四月初旬 サイクンにて

 

* 憎い奴を叩き打ち 「打小人」は、三月初めの驚(啓)蟄の後、四月にかけて、香港では銅鑼湾近辺の橋の下などで行われる呪術的な習俗。「拝神婆」と呼ばれる女たちが、顧客の憎い相手の名前を人型に書き込んだ紙を履き物で叩いて、災いを福に変えるという。

 
 

日本語訳:ぐるーぷ・とりつ

 
 

 

 

 

經書最後的一句
経典の最後の言葉

 

Sanmu CHEN / 陳式森

 
 

遙遠的海隱約祈禱,
我用神造就的耳朵
緊緊握着大水聲音,
被說出的話傾倒在廣場上。
難道! 在星辰的碎片上
還能收拾潰敗的光?
這些被救的詞語,面目荒涼。
請在途中讀出無法縮減的骨頭,
肋穹將是我的住所
一個最初的房間,
在我眼中盛放的花是簡單的。
無邊的落木蕭蕭復蕭蕭
彷彿在拯救時間的金子。
只是雙眼遺落在血的深淵
在深邃中試圖睜開!
暗黑之中,夜不再是夜。

經書裡最後一句:開始。

 
2023年3月21日 春分

 
    .
 

遙遠的海隱約祈禱,
 遙かな海にひそやかに祈りが込められ、
我用神造就的耳朵
 私は神の造った耳をもって
緊緊握着大水聲音,
 しっかりと大海の音を握りしめ、
被說出的話傾倒在廣場上。
 話された言葉は広場に注ぎこまれている。
難道! 在星辰的碎片上
 まさか!星々の破片の上に
還能收拾潰敗的光?
 まだ潰えさる光をまとめられるというのか?
這些被救的詞語,面目荒涼。
 救われた言葉たちは、荒れすさんだ相貌をしめす。
請在途中讀出無法縮減的骨頭,
 道半ばでもう縮こまりようのない骨のことを解ってほしい。
肋穹將是我的住所
 あばらのドームが私の住みかの
一個最初的房間,
 最初の一間の部屋となり、
在我眼中盛放的花是簡單的。
 私の眼中に咲く花は質素なものだ。
無邊的落木蕭蕭復蕭蕭
 果てなく拡がる木々の落葉はサラサラと音をたて続け
彷彿在拯救時間的金子。
 まるで時間を救う黄金のようだ。
只是雙眼遺落在血的深淵
 ただ、両目は血の深淵に落ちて失せたが
在深邃中試圖睜開!
 奥深いところで眼を見開こうとしているのだ!
暗黑之中,夜不再是夜。
 暗闇の中で、夜はもはや夜ではない。
經書裡最後一句:開始。
 経典の最後の言葉は:「始めよ」

 
2023年3月21日 春分
 2023年3月21日 春分

 
 

日本語訳:ぐるーぷ・とりつ

 
 

 

 

 

曙光照樣着遺忘的舊事
あけぼのの光が忘れ去った昔のことを照らしだす

 

Sanmu CHEN / 陳式森

 
 

曙光照樣着遺忘的舊事
如痴如醉如蕩漾
曾幾,我和暴雪一起打磨東京。
舊侶酒杯,我們10年前剛剛見過,
一起看過的劍已殘,茶已涼
或者,明日傍晚珍珠沉沒,
雪並沒有下過,2月11日
你只是在神保町回望;
聖尼古拉堂的鐘聲消亡
(從來不曾聽過)
之前我在此讀本雅明、佩索阿……陰沉的午後
李白時明時暗,殘雪炙烈
又冰涼又發燒
靖國的鴿子紅著眼
我只是在此笑等警察來捉
等幾分鐘就透徹的審訊
純種的白色紅了眼
還沒有櫻花,沒有開,沒有聲息
…….. 戰沒者低音。
如此的低,嗚咽默禱
從未存在者的低音
沒有虛構這一場雪
盛放的雲朵沒有授粉
曙光照耀着遺忘的舊事。

 
2023年2月10日~12日 東京航程

 
    .
 

如痴如醉如蕩漾
 気の触れたように、酔ったように、ふらつくように
曾幾,我和暴雪一起打磨東京。
 以前、私はバオシュエと一緒に東京をうろついていた。
舊侶酒杯,我們10年前剛剛見過,
 昔仲間のように杯をかわしたが、私たちは十年前には出会ったばかりだったのに、
一起看過的劍已殘,茶已涼
 一緒に見た刀剣ももう古びて、茶ももう冷めた
或者,明日傍晚珍珠沉沒,
 そして、明日の夕暮れの真珠が沈んで
雪並沒有下過,2月11日
 雪はまだ降っていない、2月11日
你只是在神保町回望;
 君は神保町でしきりに思い出にふけるのだった;
聖尼古拉堂的鐘聲消亡
 ニコライ堂の鐘の音の消え去る
(從來不曾聽過)
 (それまでも聞いたことなどなかったが)
之前我在此讀本雅明、佩索阿……陰沉的午後
 その前に私はここでベンヤミンやペソアを読んだ……陰鬱な昼下がり
李白時明時暗,殘雪炙烈
 李白は明るかったり、暗かったりしたし、残雪は苛烈に
又冰涼又發燒
 氷のように冷たかったり、また熱を発したりもした
靖國的鴿子紅著眼
 靖国の鳩は眼を紅くして、
我只是在此笑等警察來捉
 私はここで警察が捕まえに来るのをただ笑って待っていた
等幾分鐘就透徹的審訊
 数分ののちにはきっちりと尋問をうけ
純種的白色紅了眼
 純血の白は目を紅くした
還沒有櫻花,沒有開,沒有聲息
 まだ桜の花もなく、咲いてはおらず、その気配もない
…….. 戰沒者低音。
 …… 戦没者は声を潜める。
如此的低,嗚咽默禱
 こんなに低く、嗚咽する黙祷
從未存在者的低音
 いまだ存在しなかったものの潜められた声は
沒有虛構這一場雪
 この雪を作り物にはしない
盛放的雲朵沒有授粉
 盛大に拡がった雲はまだ受粉してはいない
曙光照耀着遺忘的舊事。
 あけぼのの光が忘れ去った昔のことを照らしだす。

 
2023年2月10日~12日 東京航程
 2023年2月10日~12日 東京行き

 
 

日本語訳:ぐるーぷ・とりつ

 
 

 

 

 

去年11月26日、27日 無罪之俘
去年の11月26日、27日 無実の囚われ人

 

Sanmu CHEN / 陳式森

 
 

更。寒冷的月份來臨。
在準備春節的時段審訊
山水的底層,殯葬肺腑
看骨格透明的磁場,山巒無知。
密碼中昇起燃燒的地圖;
盲目的蝙蝠掠過被遺忘的彈孔,
老虎的各種椅子、桌子,
改造我們的寬忍,
追問失憶的友朋⋯⋯訊號消失。
去年的11月,去年的白紙。
你們喊呀!沉痛的親屬們
死者冰冷的夜階磚,排列通道。
夜深了,便湧起灰……

你是水,但
你必須飲水,夜
鐵定黑,你黑如白紙!飲水
淚珠就墜毁。

你們是不曾被飲到的河水
負載着失敗,灌溉黑樂譜。
此刻街上已無人等待,
無人號喊,
而寒夜微茫,不可言傳
廣場黑著臉,找不到一點星火。
亡魂們又一次猶豫不決。

我記得你,你是飲水的水。

僅此致敬彭立發先生。記住李康夢、吳正楠、烏衣、洋流、阿墨、秦梓奕……寒夜抱薪的孩子們。

 
2023年1月11日西貢雨中

 
    .
 

更。寒冷的月份來臨。
 もっと。寒い月がやってくる。
在準備春節的時段審訊
 春節時分の取り調べに備えて
山水的底層,殯葬肺腑
 山河の深みに、胸の内を葬ってしまえば
看骨格透明的磁場,山巒無知。
 骨格を透視するX線でも、山懐には関知しえない。
密碼中昇起燃燒的地圖;
 合い言葉の中に燃える地図が舞い上り;
盲目的蝙蝠掠過被遺忘的彈孔,
 盲目のコウモリが忘れ去られた弾痕を掠め去り、
老虎的各種椅子、桌子和櫈
 虎たちの様々な椅子、机そして長椅子が
造就我們的寬忍,
 我々の忍耐を作りあげる。
追問失憶的友朋⋯⋯訊號消失。
 記憶を亡くした友に問いかけようとしても・・・消息は失せた。
去年的11月,去年的白紙。
 去年の11月、去年の白紙。
你們喊呀!沉痛的親屬們
 君たちは叫べ! 打ちひしがれた親族たちよ
死者冰冷的夜街磚,排列通道。
 死者は凍った夜の街の指道標のように、通路に並べられた。
夜深了便湧起灰……
 夜は更けて灰がまき起こる・・・

你是水,但
 君は水だ、だが
你必須飲水,夜
 君は水を飲まねばならぬ、夜は
鐵定黑,你黑如白紙!飲水
 確かに黒々として、君は白紙のように黒い! 水を飲めば
淚珠就墜毁。
 涙はこぼれ落ちる。

你們是不曾被飲到的河水
 君たちは飲まれる川の水であったことはなく
負載着失敗,灌溉著黑樂譜。
 失敗を背負って、黒い楽譜に水を撒いている。
此刻街上已無人等待,
 この刻限にはもう街角に待ち受ける者とてなく、
無人號喊,
 叫び声を上げる者はおらず、
而寒夜微茫,不可言傳
 そして夜は寒く寄る辺なく、言葉を伝えるすべもない
廣場黑著臉,找不到一點星火。
 広場はその顔を暗くして、かすかな明かりも見当たらない。
亡魂們又一次猶豫不決。
 亡霊たちはまたもや遅疑逡巡する。

我記得你,你是飲水的水。
 私は君を覚えている。君は水を飲む水だ。

僅此致敬彭立發先生。記住李康夢、吳正楠、烏衣、洋流、阿墨、秦梓奕……寒夜抱薪的孩子們。
 かくしてここに敬意を彭立発先生にささげる。李康夢、呉正楠、烏衣、洋流、阿墨、秦梓奕ら……人々のため寒夜に薪を抱いた若者たちのことを覚えておこう。

 
2023年1月11日西貢雨中
 2023年1月11日 サイクンの雨中で

 
 

日本語訳:ぐるーぷ・とりつ

 
 

 

 

 

年终总结
年の終わりの締めくくり

 

Sanmu CHEN / 陳式森

 
 

手中的命運線鬆開,
樂師鬆開了琴弦,
彷彿要撈起那些暗黑的血姓名,
讓沉默開始沉默。
這一年死期將至,一如少年。
昨日的月亮,血眼睛,全食。
且石頭正緩慢成熟,
趨向着行星,成為光束
去承認黑暗,瀕臨垂熄的手相。
哦,鹽越來越重。低音。
這一年堅硬無色,鹽艱困成巖。
鐵淚渾圓,她淚懸一線!
她沿着鐵道,沿着坍塌的長城
讀我,讀杜甫!沿着忘川之水。
沿着籟籟之聲,脆弱的秋色。
擋住去路的水馬鐵馬,
哭號南無!誦讀詩篇。
掌心的命運線填滿陡峭的雨,
垂直。直擊秋日的深處。
從大海。

 
2022年11月9日、12日
血月次日 西貢

 
    .
 

手中的命運線鬆開,
 掌の運命線が緩やかに開き、
樂師鬆開了琴弦,
 奏者は琴の弦をゆるめて、
彷彿要撈起那些暗黑的血姓名,
 まるであの黒々とした血の名前をすくい上げようとするかのように、
讓沉默開始沉默。
 沈黙を沈黙に向かわせる。
這一年死期將至,一如少年。
 この一年が臨終の時を迎えるのも間もないのだが、変わらぬ少年のようだ。
昨日的月亮,血眼睛,全食。
  昨日の月は、血の眼の、皆既食。
且石頭正緩慢成熟,
 まさに石は緩慢な成熟をとげつつあり、
趨向着行星,成為光束
 惑星に向かって、光の束となるが
去承認黑暗,瀕臨垂熄的手相。
 暗黒の行方を認める、薄れ消えかかった手相なのだ。
哦,鹽越來越重。低音。
 おお、塩はいよいよ重く。低く音を響かせる。
這一年堅硬無色,鹽艱困成巖。
 この一年のうちに堅く無色の塩は艱難のうちに岩となった。
鐵淚渾圓,她淚懸一線!
 鉄の涙はまん丸な粒となり、彼女はいまにも溢れ落ちんばかりの涙をたたえている。
她沿着鐵道,沿着坍塌的長城
 彼女は鉄道に沿い、崩れた長城に沿って、
讀我,讀杜甫!沿着忘川之水。
 私を読み、杜甫を読むのだ!忘却の川の水にそって。
沿着籟籟之聲,脆弱的秋色。
 かそけき風の音に寄りそう、はかなげな秋の色。
擋住去路的水馬鐵馬,
 行く手を遮る放水とバリケードに、
哭號南無!誦讀詩篇。
 南無と泣き叫び、詩編を朗誦する。
掌心的命運線填滿陡峭的雨,
 掌の運命線は激しく降り注ぐ雨に充填され、
垂直。直擊秋日的深處。
 垂直に。秋の日の深みを直撃して。
從大海。
 海にいたる。

 
2022年11月9日、12日
血月次日 西貢
 ブラッドムーンの翌日、サイクンにて

 
 

日本語訳:ぐるーぷ・とりつ

 
 

 

 

 

碎斧
砕けた斧

 

Sanmu CHEN / 陳式森

 
 

再一次栩栩如生,在延期歸還的霞光中,舟楫
歲月遠去。最初的聲音,向
另一個人伸出手來
緊握,如同緊握未來的石斧。
"讓該死的死去吧"
碎片,原形畢露
手中之斧已跌落昨日的屠房
血氣彌漫,恐懼的低語停止了呼吸。
我們曾經見過的世界只剩下記憶
儲藏進這疼痛的口供。
羊村的囚徒從禁錮中歸來,
輓歌,填入裂開的空缺。
倏忽的靜寂,飲了一杯,
喪失的風再一次栩栩如生。

 
2022年10月10日 西貢

 
    .
 

再一次栩栩如生,
 またふたたび溌剌と生気に満ちて、
在延期歸還的霞光中,舟楫
 引き延ばされた帰還の彩なす光のうちに、船こぐ
歲月遠去。
 歳月は遠く去っていった。
最初的聲音,向
 最初の声が、
另一個人伸出手來
 別の一人にむけられ、手を差し伸べ
緊握,如同緊握未來的石斧。
 しっかりと握りあった。まるで未来の石斧を堅く握るように。
"讓該死的死去吧"
 「死んだほうがいい奴は、死なせてやれ」
碎片,原形畢露
 砕けたかけらは、すっかり正体を現して
手中之斧已跌落昨日的屠房
 手にした斧はすでに滑り落ち昨日の屠殺場には
血氣彌漫,恐懼的低語停止了呼吸。
 血なまぐささが満ち満ち、おののく弱々しい声は、呼吸を止めた。
我們曾經見過的世界只剩下記憶
 我々がこれまで見てきた世界は記憶だけを残して、
儲藏進這疼痛的口供。
 この痛々しい供述の中にしまいこまれる。
羊村的囚徒從禁錮中歸來,
 羊の村の囚われ人は禁錮から帰還し、
輓歌,填入裂開的空缺。
 挽歌は、裂けて口を開けた隙間に埋め込まれた。
倏忽的靜寂,飲了一杯,
 突然の静寂のなかで、一杯やれば、
喪失的風再一次栩栩如生。
 失われた風にもう一度生気が漲る。

 
2022年10月10日 西貢
 2022年10月10日 西貢にて

 
 

日本語訳:ぐるーぷ・とりつ

 

 

 

 

更日子的艱難來臨

 

Sanmu CHEN / 陳式森

 
 

更日子的艱難來臨
最後的金鏃射入堡壘
無聲地跌入灰暗蜂房,失血
還沒有到散場的時候。
粵語已經知道,十一月以後
不能安心回家,孩子們
一無所有,在我抵達之後,
法庭清白無辜。
看着鹽在傷口上宰制雨水。

"你不是花,你是,花。"
 深深地,如此的深
 如雀喉,如烏雲。

 
    .
 

更日子的艱難來臨
 さらなる艱難の日々がやってくる
最後的金鏃射入堡壘
 最後の金の矢じりが砦に射ちこまれ
無聲地跌入灰暗蜂房,失血
 音もなくほの暗い蜂の巣のなかに落ち込んで、血を流すが
還沒有到散場的時候。
 まだ終幕の時は来ていない。
粵語已經知道,十一月以後
 広東の言葉ではもう分かっている、十一月から先は
不能安心回家,孩子們
 安心して家には帰れないことを、子供たちは
一無所有,在我抵達之後,
 何もかも無くして、私が到着した後に、
法庭清白無辜。
 法廷で潔白を申したてる。
看着鹽在傷口上宰制雨水。
 塩が傷口で雨水をはねのけるのを目の当たりにしながら。

"你不是花,你是,花。"
  「君は花じゃない、君は、花なんだ。」
 深深地,如此的深  
    深々と、こんなにも奥深くに
 如雀喉,如烏雲。  
    雀の喉のように、真っ黒な雲のように。

 

日本語訳:ぐるーぷ・とりつ

 
 

 

 

 

喪亂帖的筆意在空雨中顯現

 

Sanmu CHEN / 陳式森

 
 

《喪亂帖》的筆意在空雨中顯現
雨,落。 奈何!
書頁也落; 羲之頓首
花容失卻病態
舌下的罌粟彌留, 居所!
血液沖刷著熱肺
受驚的魚躍出匿名的時間
與利爪搏鬥
不眠的手機月亮一般靠近頭顱
平靜,從湮沒的海中昇起
空氣中充滿了《喪亂帖》的筆劃
奈何,雨的種籽淌過夜,葉子
深處的歷史意亂情迷,無法注釋
雨水静靜地流向天賦的溪谷
被囚的骨鎖成為輪廓。
一切來臨,一切
             來臨。

2022年8月13日香港西貢

 
    .
 

《喪亂帖》的筆意在空雨中顯現
 『喪乱帖』の趣はきまぐれな雨のなかに現れ出る
雨,落。 奈何!
 雨は、降る。 いかんせん!
書頁也落; 羲之頓首
 本のページも脱け落ちる、 羲之拝啓
花容失卻病態
 花の容色は失われていた病態を現出し
舌下的罌粟彌留, 居所!
 舌下の芥子粒は留まりつづけ、 身を何処に置く!
血液沖刷著熱肺
 血液は熱き肺より激しく押し流し
受驚的魚躍出匿名的時間
 驚いた魚は匿名の時間に躍り出し
與利爪搏鬥
 鋭い爪と闘う
不眠的手機月亮一般靠近頭顱
 眠れぬ携帯電話は月のように頭蓋に近づき
平靜,從湮沒的海中昇起
 平静は、沈み込んだ海中からわき上がり
空氣中充滿了《喪亂帖》的筆劃
 空気の中に『喪乱帖』の筆さばきが満ち溢れた
奈何,雨的種籽淌過夜,葉子
 いかんせん、雨の種は滴って夜を越え、木の葉の
深處的歷史意亂情迷,無法注釋
 奥深くひそむ歴史は思い悩ましくかき乱され、
  注釈を施すすべもない
雨水静靜地流向天賦的溪谷
 雨水は静かに天賦の谷間にむかって流れ行き
被囚的骨鎖成為輪廓。
 囚われた骨の鎖が輪郭となる。
一切來臨,一切
 すべてがやって来る、すべてが
             來臨。
                やって来る。

2022年8月13日香港西貢
 2022年8月13日香港サイクンにて

*『喪乱帖』 中国東晋の書家王羲之 (おうぎし) の書蹟。戦乱の中、先祖の墓が再度北方の異民族によって荒らされたのを悲しんだ手紙を後人が模写したもの。「羲之頓首」はその冒頭と末尾の語。

 

日本語訳:ぐるーぷ・とりつ

 
 

王羲之 喪亂帖

​釋文:
羲之頓首。 喪亂之極。 先墓再離荼毒,追惟酷甚,號慕摧絕,痛貫心肝,痛當奈何奈何。 雖即修復,未獲奔馳,哀毒益深,奈何奈何。 臨紙感哽,不知何言。 羲之頓首。