たいい りょう
暗闇の中
石だたみ
光を発する
雨があがった
その後の出来事
幽玄と神秘
ひとつひとつ
異なる顔
みんなひとつに
合わさる
暗闇の中
石だたみ
声を発する
暗闇の中
石だたみ
光を発する
雨があがった
その後の出来事
幽玄と神秘
ひとつひとつ
異なる顔
みんなひとつに
合わさる
暗闇の中
石だたみ
声を発する
寄せては
返す
さざ波
たとえ
ゆるやかな
震えで
あっても
大いなる
一なるもの
であること
すべては
一者に
通じていよう
また
小さな波が
打ち寄せた
小さな貝殻を
連れてきた
さざ波
それは
生命の源なんだ
妖精が透けて見えた
空気が踊る
風に舞う
一枚一枚と
剥がれ落ちる
ティッシュペーパー
毎日毎日
少しずつ
減ってゆく
ゴミは増えるけど
夢は膨らむ
最後の一枚
そこに ひとつの
言の葉を乗せて
私は 生きているのか
私は 死んでいるのか
生者と死者が
入り交じる世界
夢なのか
現なのか
私は黄泉の世界を
さ迷った
そこには
父がいた
母がいた
私の意識は
朦朧とした
私は死を覚えた
私は死に憧れた
長い長い時間をかけて
生の世界に立ち返った
生と死
二つの世界
それは同じ時空間にあった
二階建ての家
一階はブティック
二階は寝室
あの子が
また私の前に現れた
元気に飛び跳ねる
女の子
まるでバレリーナ
「ここはね 悠希お兄ちゃんと
恋人が寝る場所なんだよ」
と私に快活に話した
私は寝ていた
肩を叩かれた
肩を叩いたのは
あの子
それとも
昨日の妖精
「私には娘がいた」
とそう叫んで
私は目を覚ました
明日は 来るのか
今日は いなくなったか
昨日は まだいるか
記憶は はるか地中の彼方に
埋もれた
深く深く
どこまでもどこまでも遠く
記憶は私を未来へと
連れ去った
真っ白なキャンバスは
無限の色彩がうごめいている
何も覚えてはいない
すべて身体に刻まれている
その刻印は 明日に向かって
地平線を滑り出した
明日は 来たのか
昨日は 来るのか
そこは
かつての
私の記憶
生命の持続が
記憶に刻み込まれた
脳を超越し
身体を離脱し
記憶は浅い眠りに
浸り続けた
モノクロの記憶は
過去から現在を経て
未来へと続く架橋
浅い眠り
身体のこわばりは
私の記憶を抑制した
あの子は
夢の中にいた
美しい容姿のまま
涼しげな眼差し
そっと笑顔で
語りかけた
「お父さん」と
私は沈黙のまま
微笑み返した
あの子は
生きていた
私の中に
生きていた
これからも
生き続ける
穏やかな微笑みを
私にくれながら
月はそこにあるか
月は見えるか
心の映ずるままに
月はある
闇夜のうちに
月は満ち
しずかに欠けてゆく
人の生も
これに同じ
静寂(しじま)を経て
情念を帯び
たおやかな流れへと赴く
月はそこにあるか
月は見えるか
深い闇の中を
あてもなく
さ迷い続ける
目を開けることも
かなわない
光と闇とが交錯する
その場所に
精霊は降り立った
どこまでもどこまでも
深い闇の中へ
さ迷い続ける
光は遠く
闇は近い
深海の奥底へ
この身を委ねた時
永い眠りから
覚めた