名前をあたえている
名前のないものに名前をあたえ
ユージさんはピアノを弾いている
名前のないものは他者を求めている
今朝
浜辺で波紋をみていた
波紋はひろがっていった
波紋はひろがっていった
いくつもいくつもひろがっていつた
名前をあたえている
名前のないものに名前をあたえ
ユージさんはピアノを弾いている
名前のないものは他者を求めている
今朝
浜辺で波紋をみていた
波紋はひろがっていった
波紋はひろがっていった
いくつもいくつもひろがっていつた
今夜、車のラジオでデュファイのミサ曲を聴いた。
わたしは仕事の関係上、週の大半を茨城の土浦で暮らしている。
ミサは「キリエ」から「アニュス・デイ」に移っている。
わたしは毎日れんこん畑の中の道を走る。
道のあちこちに小ぶりの魚のようなものが横たわっている。
雨に煙ってひろがる関東平野に、
デュファイのミサは、もともと彼が若いときに書いた祝婚歌「
何日かして、あの白い腹を見せて横たわっているのは、
しかし、
甘ったるい詩を書いてんじゃないよ
深夜
荒井くんが電話でいった
荒井くんには甘かったのだろう
叙情に過ぎるということか
情が残っていたのか
自我の匂いが残っていたのか
今日
浜辺をつよい風がふいていた
荒れた波の下にテトラポットが青くみえた
そのヒトは
透明なすがたをしていた
そのヒトは
みるひとだった
そのヒトは語ろうとしなかった
ただ
みてしまったんだ
と思った
空襲のことも
死者のことも
みてしまったんだと思った
せかいは垂直にたっています
せかいは垂直にたっています
昨日
雪は降らなかった
鵜の木という駅で降りて
蓮の花という店で鯨をみた
鯨は透明で
ところどころ銀色に光っていた
鯨は捉まえることはできないだろう
ましてひかりは
ひかりは壊れるので触ってはいけません
ひかりは壊れるので触ってはいけません
公園から
突堤と海と空をみていた
突堤の向こうに
海と空がひろがっていた
水平にひろがっていた
遠い光景だった
原初的な光景だった
わたしは理解した
純粋身体は垂直なのだ
わたしには
ドンブリほどの愛もない
だから純粋身体は垂直にたっている
灰色の空はひろがり
昨日は出かけなかった
プールもいかなかった
冷蔵庫の
誕生祝いのケーキを食べなかった
のか
どうなのか
午後に海辺をモコと散歩して
そのあとに散髪した
すこし風があった
この世界はあまり意味がないと言わなかった
ピンクの蕾をひらいて
その花は咲いた
花芯はきいろく
まわりに白い花弁をあつめていた
ピンク色の可愛い花がひらくのを
みていた
なまえは忘れた
なまえは忘れてしまった
忘れてしまったのに俤はのこっている
ピンク色の花が咲いていた
今日は
海洋深層水のプールで平泳ぎをした
背泳ぎもすこしした
サウナのなかでは無言の汗をながした
プールの窓から
焼津の青空をみた
青空には巨大な鳥のかたちの雲が浮かんでいた
わたしにはどんぶりほどの愛もなかった
海水が濃くて沈まなかった
日野の駅でみました
たしかに日野の駅できみをみたと思いました
コトバはありませんでした
きみにはコトバはありませんでした
白いものとして
きみは降りてきました
きみはコトバではなく
白いものとして降りてきました
日野の駅でみました
いつまでもみていました