広瀬 勉
高円寺駅での夕景です。
袖口の空洞に
殺到する
すっぽりハマる精液のことを
おばさんと一緒に見ていた
千鳥格子な頬肉の焦げを
鉄板のうえに取り分け
脂身が
ゴムのように転がるまでを
見ていた
見るのは簡単です
ゴムにハマる性器に水はなく
おばさんの故郷はもうない
西の鬼もあれば
東の鬼もあり
アルコールを摂取すれば
北と南は駅が決める
駅に鬼がやってきて
交響楽団を数ヶ月取り締まるなら
この渋谷行きのバスに乗り遅れようかなとも思う
おばさんから搾り取られた
この渋谷行き
乗り遅れないバスを選んだ
渋谷行きでよかった
逞しい昼夜の仕事を逞しい物流が運び
鳥のように移動する人を
鳥のように鳴く人を
真下から見て
糞の配給を顔面から受けた
咄嗟に毛布に包まるとスモークがかかる
付着する
股の間の性器とその裏か奥かの風景の草原や森や柵や水
地面への設置面は木々になるのか
何も知れずに裸光に飛びついた鳥の口ばし
着いたホイップクリームの残骸
過激に装飾されくすんでいる
二人の人物
おばさんと私が見た空洞が
しかるべき腕
手というより純粋な腕
長くしなる狩りの
物書きの腕
なんだ ただ その
伸びた不焼いた
ふやかしまやかしの身体の皮膚が伸びた形状
この腕のしなりのおかげで事故を免れた
隕石は小さな地球の混濁として
そこにいて
格好に濡れて〆切を迎えた
腕と脚の長さが同じくして地面につく
付着 不時着 腕が長い事が地面につく事で示された
うなばらを
みてた
朝に
青い
海原をみていた
風がふいて
水面に
波紋がひろがっていた
いくつも
波紋はひろがった
青い青い
青い青い青い
波紋はひろがった
それから
シレトコ半島の漁夫の歌を聴いた
失われた民の歌だ
昨日
荒井くんと飲んだ
浅草橋の
西口やきとんで
飲んだ
隣りの席に
アメリカからの
若い旅行者のカップルがいて
ふたりとも
可愛かったな
ゆったりと
わらっていた
うぶげが
金色だった
国家はいらないね
日本人も
アメリカ人も
中国人も
小田原を過ぎた
こだまは
いくつも林を過ぎた
今朝は
味噌汁を飲んだ
灰色の空に
灰色の雲が浮かんで
そのしたに
半島が浮かんでいるのをみた
半島は
女だった
雲の下に横たわっていた
林を過ぎるとき
近いと思った
近くに
いた
チンパンジーは見ていた
磯ヒヨドリは見ていた
メジロは見ていた
モコも見ていた
高価な時計をつけていた
高価な靴を履いていた
高価な外套を着ていた
高価な指輪をつけていた
ヒトは高価な衣装をつけていた
動物たちは裸で見ていた