いのり

 

渡辺 洋

 

 

あきらめるちからがない
ほろびていくちからがたりない

アバンギャルドの空をのぼりつめて
きみのこころの地面にふれたい

神様のようにあぐらをかいて
言葉で解決しようとしてきたことを
ぬぎすてたい

生きることに襟をつかまれて
いたわる手にささえられながら
あの人たちの目がまぶしさにつぶれてしまう
歌をこの世界に書きつけていこう

冷戦日和の坂道を
しあわせな少年がのぼってくる
しばった本をぶらさげて
古本屋を回って喫茶店まで

暑さにあえぐパヴェーゼの葡萄畑
兵士が乾き求める岩塩の苦さ
あたらしい音楽や映画の話の向こうに
自分を燃やす生活がほしい

イタリアか自衛隊か