広瀬 勉
東京・杉並堀ノ内界隈。
朝から晩まで風が吹き
ムクロジの葉っぱが落ちる
実も落ちる
太郎には太郎柿、次郎には次郎柿、
宮部みゆきの太郎次郎柿
ゲゲゲの鬼太郎には輝太郎たもれ
紫式部には西村早生柿、清少納言には高瀬柿
和泉式部には越前柿
熟熟熟柿は柿右衛門にたもれ
早秋柿、新秋柿、愛秋豊
伊豆柿、陽豊柿、天王柿
ムクドリ、ヒヨドリ、木守柿
平核無柿、蓮台寺柿
鳥も喰えない祇園坊
老い先短い鴉には老鴉柿たもれ
見よ大木家の塀の上
棘で固めた柊の
白い小さな花馨る
源義経には甲州百目柿、武蔵坊弁慶には大富士柿
佐々木小次郎には夕紅柿、
宮本武蔵には葉隠柿たもれ
紀の川柿、刀根早生柿、西条柿
富士柿、鶴の子柿、四ツ溝柿
トンビは瞑想に耽ってる
芭蕉には富有柿、蕪村には愛宕柿
正岡子規には御所柿、
山頭火には市田柿
漱石には太秋柿、森鴎外には横野柿
三島由紀夫には花御所柿
ドナルド・キーンにはシャロンフルーツ
庄内、八珍、おけさ、まっくろ黒柿
とっておきの渋渋渋柿三百個
超腹黒い安倍蚤糞へたもれ
朝から晩まで風が吹き
ムクロジの葉っぱが落ちる
実も落ちる
今朝も
見た
今朝も
きみを
新丸子の駅に向かうとき
いつも
見て
いたんだ
緑のフェンスに
凭れて
きみは
顔を空に向けていた
ランタナ
ピンクの花
まんなかに
黄色と白の花弁を集めて
そこにいた
そこにいない