光の疵 White

 

芦田みゆき

 
 

ある朝
粉雪のように
白がはじまった
あちこちに降り積もっては消え
ひと粒が膨らんだりつぶれたり
よく見ると
あたしのカラダはまだらで
目をつむってもあけても
まったく同じ白が広がっているのだった
さぁ、出かけるよ
どこにでもついてくるがいい
晴れた日の白というのも
おつなものじゃないか

 

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良い子は眠れない

 

佐々木 眞

 
 

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怪しい男が、可愛い女の子と一緒に教室に入ってきた。
鈍く光るナイフを突き付けられて蒼ざめているのは、
なんと私の昔の恋人ヨイコではないか。

私は、いきなりヨイコの腕を摑んで、教室の外へ飛び出した。
すると男も、あわてて私らの後を追ってくる。
私らは、キャンパスの坂道を転がるように駈け下りて全速力で走ったが、男に追い付かれそうになってしまった。

あわや、というその瞬間、ヨイコは、持っていたバッグの中からおそ松君を取り出し、その場に抛り投げると、男は夢中になっておそ松君を追いかけ、やっと追い付くと自分のバッグに収めた。

その隙に、私らは全速力で逃げ出したが、しばらくすると、またしてもその男に追い付かれそうになった。

あわや、というその瞬間、ヨイコは、持っていたバッグの中から一松君を取り出し、その場に抛り投げると、男は夢中になって一松君を追いかけ、やっと追い付くと自分のバッグに収めた。

その隙に、私らは全速力で逃げ出したが、しばらくすると、またしてもその男に追い付かれそうになった。

あわや、というその瞬間、ヨイコは、持っていたバッグの中からカラ松君を取り出し、その場に抛り投げると、男は夢中になってカラ松君を追いかけ、やっと追い付くと自分のバッグに収めた。

その隙に、私らは全速力で逃げ出したが、しばらくすると、またしてもその男に追い付かれそうになった。

あわや、というその瞬間、ヨイコは、持っていたバッグの中からチョロ松君を取り出し、その場に抛り投げると、男は夢中になってチョロ松君を追いかけ、やっと追い付くと自分のバッグに収めた。

その隙に、私らは全速力で逃げ出したが、しばらくすると、またしてもその男に追い付かれそうになった。

あわや、というその瞬間、ヨイコは、持っていたバッグの中からトド松君を取り出し、その場に抛り投げると、男は夢中になってトド松君を追いかけ、やっと追い付くと自分のバッグに収めた。

その隙に、私らは全速力で逃げ出したが、しばらくすると、またしてもその男に追い付かれそうになった。

あわや、というその瞬間、ヨイコは、持っていたバッグの中から十四松君を取り出し、その場に抛り投げると、男は夢中になって十四松君を追いかけ、やっと追い付くと自分のバッグに収めた。

その隙に、私らは全速力で逃げ出したが、しばらくすると、またしてもその男に追い付かれそうになった。

あわや、というその瞬間、ヨイコは着ていたジャケットを脱ぎ捨て、その場に抛り投げると、男は夢中になってそれを拾い、自分の身につけた。

その隙に、私らは全速力で逃げ出したが、しばらくすると、またしてもその男に追い付かれそうになった。

あわや、というその瞬間、ヨイコ子は着ていたセーターを脱ぎ捨て、その場に抛り投げると、男は夢中になってそれを拾い、自分の身につけた。

その隙に、私らは全速力で逃げ出したが、しばらくすると、またしてもその男に追い付かれそうになった。

あわや、というその瞬間、ヨイコ子は着ていた天使のブラを脱ぎ捨て、その場に抛り投げると、男は夢中になってそれを拾い、自分の身につけた。

その隙に、私らは全速力で逃げ出したが、しばらくすると、またしてもその男に追い付かれそうになった。

あわや、というその瞬間、ヨイコ子は着ていたスカートを脱ぎ捨て、その場に抛り投げると、男は夢中になってそれを拾い、自分の身につけた。

その隙に私らは全速力で逃げ出したが、しばらくすると、またしてもその男に追い付かれそうになった。

あわや、というその瞬間、ヨイコ子は身につけていた黒いパンティーを脱ぎ捨て、その場に抛り投げると、男が夢中になってそれを拾おうとしたので、私は思わずヨイコの手をふり離し、それを拾って素早く自分の身につけたのだった。

 

 

 

小舟

 

Hitoha Nao

 
 

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なにも変わることがなかった日にも

風がやって来て
さざ波と
ちいさな光が
水面で遊んだ

雲がでて
光は翳り
それから また

風が来た

すこしだけ
わたしは揺れて

なにも変わらないと思った

空空空0子供らの声がする
空空空0すぐそばで
空空空0石投げをしているらしい

さざ波が
わたしを揺らした
光は

水面から
わたしの中に
風を運んだ

すこしだけ
わたしは揺れて
それから

ロープを切った