鈴木志郎康
俺っち、
詩集を出すことにしたっちゃあ、
ブン、
ブン、
ワンサカサッサア。
タイトルは、
「化石詩人は御免だぜ、
でも言葉はね」
としたっちゃあ。
ブン、
ブン、
ワンサカサッサア。
そこらのおじさん、おばさん、
そこのおねえさん、おにいさん、
書肆山田さんが、
手塩にかけて、
出してくれるから、
どこぞの大きな本屋か、
アマゾンかで買って、
読んでくれっすっすっす。
ブン、
ブン、
ワンサカサッサア。
俺っち、
十六の年から
八十一のこの年まで、
六十五年間も、
詩を書いてきて、
言葉、コトバで、
足元から、
化石化してるっちゃ、
詩集を出して、
コトバを乗り越えて、
生き身になるっちゃ。
詩が印刷された紙の束、
海老塚さんの綺麗な装丁、
手にした重み、
触って、
眺めて、
血が通って来るっちゃ。
今まで書いた詩を乗り越えて、
生き身になるっちゃ。
ブン、
ブン、
沢山の人に、
読んでもらいたいっちゃ。
そんでもって、
詩の歴史に残れば、
なんて、
思ってるっちゃ。
その思いで、
血が通ってくるっちゃ。
詩の歴史を乗り越えるっちゃ。
ワンサカサッサア、
ワンサカサッサア。
まあ、
でも、わかってるっちゃ。
読んでくれる人は、
知人、友人と
ごく僅かのご贔屓さん。
そして、
やがて、
忘れて去られる。
それが、
俺っちの詩集の、
運命ざんすね。
それでいいっすっす。
また、また、
次に、
ひょこり、
ひょこり、
ってね。
ブン、
ブン、
ブン、
サッサア。