もり
ゴマに含まれる
栄養成分セサミンが
いかにすごいのかを
くり返す
深夜のテレビ通販番組を
生気のない目で見ていた
ご老人が すてきな笑顔で
階段をすたすたと のぼっていく映像と
きらびやかなゴマのズームが エンドレス
「古代エジプト商人は
その健康パワーを信じ
ゴマ一粒と牛一頭を
交換したともいわれる・・・」
空
空
空
・
・・
・・・やばいだろ。
天国の古代エジプト商人をおもった
彼の目に 今、現代の
ゴマを取り巻く状況は
いったいどのように映るのか
週末 駅前のバーミヤンで
家族連れが デザートに注文する
「ゴマ団子」
ぺちゃくちゃ むしゃむしゃ
皿 および テーブル および 床に
ぼろぼろ ぼろぼろ ぼろぼろ こぼれる
幾粒もの空空空ゴマ
水に流され
布巾で拭かれ
箒で掃かれる
幾粒もの空空空ゴマ
つまりは
空空空空空空空空空空空空空空空空空空0牛、
目を覆いたくなるのではないか
天国でばかにされては
いないだろうか
だって たった一粒のために
牛を売っぱらった 彼は
腹を空かせて 死んだのかもしれない
「セサミンを摂取した人間は必ず死ぬ
間違いない
いつかは必ず死ぬ」
手元に 図書館で借りた
最果タヒさんの
『死んでしまう系のぼくらに』
という詩集がある
この世の生きとし生けるものすべては
「ぼくら」という3文字のなかで
肩を寄せあって暮らすのであるが
もし、
天国にも窓があるのであれば
その窓は
マジックミラーのようなもので
あって
ほしい
と願う