素晴らしいモーツァルト

音楽の慰め 第27回

 

佐々木 眞

よくモーツァルトの音楽は天真爛漫なので、まだスレた大人になっていない純粋無垢な子供が演奏するのがいちばんよろしい、という人が昔からいますが、そうでしょうか。

私はそうは思いません。そもそもモーツァルトの音楽は天真爛漫ではないし、この節、純粋無垢な子供もあんまりいそうにないからです。

モーツァルトのピアノソナタは全部で18曲ありますが、名曲が多く、特に彼の母親が亡くなった直後にパリで作曲した第8番イ短調K.310、第3楽章でトルコ行進曲が演奏される第11番イ長調K.331などは有名で、皆さんもどこかで耳にされたことがあるのではないでしょうか。

今宵私がご紹介したいのは、両曲の中間にあって、同じ1783年に作曲された第10番ハ長調K.330のソナタです。

演奏は1956年ポーランド生まれでショパンを得意とするクリスティアン・ツィマーマンです。

彼は、我が国で東日本大震災の被災者支援コンサートを行うなど東京に家を持っているほどの親日家ですが、ここに聴くモーツァルトの素晴らしさを、何にたとえたらいいのでしょう。
その映像からも、音楽することの楽しさ、生きることのよろこびが伝わってくるではありませんか。

いつもお世話になっているYouTubeさんが、いついつまでもこの稀代の名演奏を、後世に伝えてくれることを、切に願わずにはいられません。