子宮更年期の憂い

 

正山千夏

 
 

あいつが来ない
今までずっと来ていたやつが
時々来なくなり
やがてはまったく来なくなる
悲しくはないけれど
どこか少し怖いような
夜の砂漠を月夜に彷徨うような
月の砂漠のラクダたちは
それでも歩いてゆくのです

運ばれていく私の子宮は
しずかに閉じていくのか
なにを失いなにを得るのか
いやあらかじめ決められたことなのか
ホルモンだかフェロモンだか
自律神経失調症コンチクショー
微細な物質クスリくれ命の母
実家の母 父の母
それなり歳を取りました

日々の波乗りは緩慢に
けれどカラダは効率よく
駆使していたいsurf of life
我慢がつらい思考まとまらない
急げないのは走れないから
訳なんかないもう野望もない
希望も絶望もそこそこに
ブルースをうたう女たちが
それでも歩いてゆくのです

 

 

 

冬空のもとで

 

ヒヨコブタ

 
 

ひとつき前はいまを想像できずにおり
ひとつき後をいま考えるのはよそうと

色がついて見えるような景色の日はさいわいだけれど
そんな日々ばかりでもないことにうつむくこともないのかもしれなくて
わたしはもうずいぶんと永く生かされている気がするのだ
あるはずもなかった日々が穏やかでなくとも
悲しみすぎることもないのではないか
悲しみとさみしさはいつでもこちらを向いて待っているから
わたしはふふと笑い飛ばすんだ
そうできぬときには横たわるけれど

流行り病が収まらぬなかのあらゆる不穏は
じぶんのなかで増幅させることをやめる
さんざん繰り返してもう厭きたじゃないかとふふと笑うんだ

このあたりの冬の空は青く覚えている冬の淀みがときどき懐かしい
雪も氷もどんなだったろう
暖かさのなかにいるときにだけ
ほんとうに思い出せばいいほど芯から冷える冬に