長田典子
つよい北風がふいて
ドアは
たすけてたすけてたすけて
と言いながら
閉まった
たすけ
てた
すけて
たすけくん
出た ドアから
すけて
とうめいにんげん
出た
ドアは閉じて開いた
はろはろはろはろはろー
と言いながら
たすけくん
ドアを
ぱたりぱたりぱたりした
音だけがした
たすけくん
だれも気がつかない
たすけくん
てけすたてけすたてけすたこらさっさ
丸テーブルの上にあったお土産のずんだもち
たべた
たすけくん
ずんだもちたべた
ずんだもちのすけになった
もちもちねばねばざらざらする
ぱたりぱたりする
つよいつよい山形だだちゃ豆の
山形ずんだもちのすけになった
つよい風がふいて
山形ずんだもちのすけさん
ドアをぱたりぱたりぱたりして
はろはろはろはろーって
ドアを開けて
てけすたてけすたこらさっさ
丸テーブルに向かって歩いていった
だだちゃ豆色の燕尾服きた紳士の
山形ずんだもちのすけさん
ふかくゆっくり椅子に座った
きょうは
なんの日?
知らない
でも
とってもよいことが起きる日さ
山形ずんだもちのすけ男爵は
てけすたてけすたこら
さっさっさ
あご髭をすぅっとなでたんだぁ