原田淳子
光の遺伝子
光のこども
象られたかたちは、ことばだった
印された譜は、手紙だった
滴の葉は船
林檎いろの黄昏の朝に
頚椎が囁く
はじめての生まれたての世界
窓が震え、電報を打つ
風
風
風
金木犀に溺れて
23時の浴槽
戸袋のスズメ蜂の巣が転がる
蜂が囁く
雨は、あなたの手紙ですか
わたしたちに、滅びろと?
雨
雨
雨
雨
秒針は荊に絡めとられた
洪水の波がとどかぬ線を
あなたが引く
わたしは石を置く
かたちが溶けたら
ふたつの陣営は踊り、
光のビブラート
蜂たちの
羽根はまだ生まれていない