植木が教えてくれる

 

正山千夏

 
 

部屋の植木に話しかける
明日お水忘れていたら教えてね
私といえば忘れたいことを
追いやるのに必死だから
機械的なマントラを唱える
後頭部の脳を使う

けれどちっぽけな火事でも
煙がもくもくと立ち昇る
燃え広がらないうちに
私は許したいと願う

その一方
過去に私があなたに
つけてしまった火はもう
消し止めてくれたでしょうか
私はいつか
許されるのでしょうか

それとも
あなたの後頭部の脳は
とてもすっきりとしているか
もっと素敵な人生の瞬間瞬間でいっぱいで
火事どころか私の存在まるごと
忘れられてしまうのでしょうか

まあ、どちらにしても
いいのかも
また出会えばいいのだから
明日私はきっと
植木の水は忘れない
植木が教えてくれるから