覚醒しては眠る果実という種子

 

神坏弥生

 
 

夏の日の午後

突然、読んだ詩歌によって

垂直に伸びた日を臨む

向日葵になって

もう沈んでしまう

下弦の月が、朧に浮かぶ

ぽっかり空いた穴の中の

拙い原語の夢の続きを、追おうと

暗がりに暗転するのを繰り返し追いかける

きっと知っているんだわ

と、この夢の倫理性を求めてみても

繰り返し、繰り返し、

繰り返すことによって

忘却の彼方へとなだれの様に流れ

意識は薄れてゆく

白百合が奔放に、

まだたった今咲いたばかりの未熟な

雄しべを伸ばし、外では陽炎が立ち上る間

あなたを待つ

あなたを迎え入れようとするとき

寡黙なあなたを微細に感じて

暗闇の中、闇に慣れた眼が

室内に、眼を開き沈黙する

窓辺に差し込む光の陰影の中

私の指が、彼を求めては、背に縋りつく

時に、長い爪によって、傷つけ嫉妬を刻もうと

いつかなくなってしまう私たちの隠し部屋は

いずれ、互いの罪による檻に変わりゆくかもしれない

あなたが誘惑という、罠を仕掛ける間

街の一切の雑音は止んで

私達が唇を押し当てて、時間がとどまっている(?)

選ばれた互いの危ういバランスと要素の各々が

私達が哀しく、喜び、確かめ合うのを

人肌に暖かい抱擁や口づけを要素として

束ねられる

たとえ果実という種が実っても実らなくても

暗がりの内密から外へと向かって

満悦が広がってゆく

悦楽の果実はやがて豊満に熟し

鳥たちが、果実を食べ、種子は落ちて

私達が産んだ密やかな種子は暗闇の可視光線の中

目覚め、また再び沈黙する