扉を開き、その世界にいること

 

ヒヨコブタ

 
 

静かな世界をもっている

どれほど周囲がけたたましくとも
静かな世界のなかに他者をいれぬこと
そのときだけ
ほんのいっしゅんだけは

いつからかざわついたこころからもはなれて
その世界にいるとき
自由であるのかわからずとも
ひとときの、ほんのひとときの

悪意に満ちている、と誰かがいう世界があるのか
善意だけを信じようと必死なのか

わたしはどちらにもなることはできないだろう
どちらもあり続けてきただろう

現実世界から去っていくことに加担するのは
なぜなのだろう
加担したひとほどそのじじつからは目を背けるのは
誰も去る必要はないのだ
去らせることに加担してはならぬのだと
自らには
自らにだけは

ことばが通じあわぬときの苦しみも
気持ちがかよいあわぬときのかなしみも
溢れすぎるとき
わたしはこの世界からいっしゅん離れる
現実からいっしゅん

痛みがあることを嗤わないで生きていきたい
そんな世界だけではないと
ひたすらここまで

小さな猫たちの
温もりだけではないことの現実と
わたしの現実世界との重なるぶぶん
そうではないぶぶん

もう少しだけ
静かな世界にいる