いつまでも

 

佐々木 眞

 
 

ヨハン・シュトラウスⅡ世の「無窮動」op257を振り続けながら、
あの懐かしい指揮者、カール・べーム翁は「いつまでも」というた。

京都府綾部市西本町25番地の履物店に「品良くて、値が安うて、履きやすい、買うならことと、下駄は“てらこ”」と書かれた看板があったので、同級生のコガネ君とフマ君が「まだ売ってますか?」と尋ねたら、コタロウさんと、シズコさんと、セイザブロウさんと、アイコさんと、マコっちゃんと、ゼンちゃんと、ミワちゃんが、口を揃えて「いつまでも」というた。

夕方、鎌倉市十二所の光触寺の山門に愛らしいコダヌキが目を光らせていたので、「お前さん、いつまでそんなとこで油を売っているんだね」と尋ねると、「いつまでも」というた。

「さて問題です。我が家の太陽は誰でしょうか?」と尋ねたら、コウ君が「お母さんですお」というので、「では、ここでもう一つ問題です。太陽はいつまで輝くでしょうか?」と尋ねたら、「いつまでも」と答えた。

緒方貞子さん、中村哲さん、今井和也さん、柴田駿さん、巽光良さん………
今年も忘れがたい多くの人々がちょっと遠い所へ行ってしまった。

でも青空の彼方に思いを馳せるとき、彼らはまっすぐ地上に降りてきて、ただちに私らの胸によみがえる。

ああ天上にいます父よ、母よ、ムクよ、大勢の親戚、友人、知己たちよ!
できることなら、この不毛の荒地で懸命にもがき続ける私たちを、どうか温かく見守っていてください。

いつまでも。