工藤冬里
きみの夫は
だめだったのだ
そのまま押し上げられた高みには
きみの夫が単独でとどまることができるほどのデポジットがなかった
きみの夫は下層であった
死にたいなあ
どうしたら死にたいだろうか【文字起こしママ】
悪の中に階層をもとめ
しんみりと浸っているきみの夫は
太陽もアレゴリーにすぎなかったことを知り
桟敷の筵に坐る
活字になりたがる宮殿は
大気圏外から見える平屋で
門に錠前はない
浩宮はタメどころではなく年下で
立ち直るのは難しい
刷り間違えたラベルの
SP盤は回り
きみの夫は山を穿って住みたい
定期券の薄さで
巨大な壺が燃えている
酢watersでは
Aの台形の中を
字たちが這い登ってゆく
睫毛たちは縦横の線を作り出しながら屡叩かせる
きみの夫はもうすぐいなくなる
門の外から覗く参賀の
百合のラッパの技術が
捌く群青
暗い廊下を渡り
最初に露天にやって来たのは
ゲイのカップルだった
二番目に入って来たのは
三人の孫と祖父だった
暗いホテルの
しょうたいに応じる
時間給でしかない正体
暗い切り通しを超え
町に還れば
植えた植えないで
恥は巡り
ぎしぎしとした暗さの中で
酢watersは飲まれ
それでもあたふたしないきみの夫は
最初の合意に拠るねたみさえ理解する
死も墓も投げ込まれる池は何も出さない
粟色したjedismはとうに褪せ
きみの夫にはフォースがない