みわ はるか

 
 

間違えて寝室のカーテンを遮光カーテンにしなかったせいで朝が来るのが億劫である。
そうでなくても朝が苦手なのに、時間になると容赦なく照り付ける太陽が憎い。
雨より晴れが好きだけれど朝日はどうも苦手だ。
起きてすぐはなんだか不安でいっぱいで、これから始まる1日をどうしても肯定的に受け取れない。
長い間ずっとずっと悩まされてる。
小さなやかんんで沸かしたお湯をお茶っ葉を入れた小さな急須に静かにそそぐ。
1分位たったらお気に入りの湯飲みにそっと移す。
ほうじ茶の温かい香りが少しだけわたしを癒してくれる。
リモコンを操作してNHKに合わせる。
今日も司会のアナウンサーの人はきちんと身だしなみを整えテレビの中にいる。
それを確認してやっと窓の外の眩しい世界をなんとか受け入れることができる。
えいっとヨーグルトを口に押し込む。
ほんのりとブルーベリーの香りが鼻の奥の方まで漂ってくる。
バナナがあれば食べるし、なければ食べない。
そんな簡単な朝食がわたしにはちょうどいい。
新聞の第一面にさっと目を通しながら急いで歯磨きをする。
歯磨き粉はシトラスの香りのするものが好きだ。
うがいついでに洗面台でコンタクトを装着する。
最近アカウントアメーバの存在を知り前よりよく流水でレンズを洗うことにしている。
身支度を整え、ほうじ茶を入れた魔法瓶を忘れずに鞄にしまう。
何年も履いているパンプスに足をとおす。
昔は20cmとか21.5cmとか成長するごとに気にしていた足のサイズ。
ここ数年はずっとMサイズだ。
壊れないかぎり靴を代えなくなった。
扉をあける。
背広の人、ジャージの人、制服の子・・・・・。
同じような時間に動き出す周りの人に助けられてわたしもなんとか職場に向かうことができるような気がする。

みんなはどんな気持ちで朝を迎えているのだろう。
切実に知りたい梅雨前の心境。
 

 

 

theory・理論

 

Michio Sato

 
 

in the evening
watching the sea

by car
Go to the beach

I was watching the sea

The sea

Waves breaks on the beach

Many times
Many times

Waves breaks on the beach

I was watching the sea
There were people fishing on the jetty

The theory belongs to people

The sea
breaks

on the beach

Many times

 

 

*タイトルは、twitterの「楽しい英単語」さんから引用させていただきました.

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

kiss your destination

 

工藤冬里

 
 

外の叫びは横たわる葡萄玉の重なりで
その半円の輪郭の連なりは
背中を照らされたゾウムシの白
ワクチンは何色
脱退の白い褪色
WHO is Monroe
人形が人形師を操るから
二十キロの雹を落とす
白い手
外はやはり月齢一〇・四の葡萄夜だった
生まれてこないほうが良かったのにと言われて俺は走った
生まれてしまった俺が走った

 

 

 
#poetry #rock musician

52匹

 

塔島ひろみ

 
 

公園の植込み、ツゲの木の下で
大きなお腹の男の子が 木の枝先で土を掘り
ネコを探す
ドクダミの地下茎が縦横にはびこり
引っぱっても引っぱっても
ドングリと人間の手首しか出てこない
汗が滴り、男の子は乾き
出産の機会を逃したまま 老いていく
「義憤と共感」*
数年前住民有志がカンパを集め、52匹の野良猫に手術をした公園
空は鮮やかに晴れわたり プラタナスの木の上でカラスが笑う
もう必要なくなった少年の自転車にぐるぐるに絡みつき
芽を出し無数の花を咲かせた、名もない植物たちが笑う

公園に面した住宅の窓がうっすらと開き
金色の鋭い眼玉が公園を覗く
もう必要なくなった少年の皺だらけの肉体が
土を掘るのをあきらめ、ベンチに腰をおろして突き出た腹をペンペンと叩くのを
じっと見ていた
少年は もうネコを探していたことも覚えていない

 

(2020年5月某日 四つ木公園で)

 

* 2017年9月16日東京新聞

 

 

 

code・暗号 規範

 

Michio Sato

 
 

today
In the Wednesday library

I bought all seven books by Tsuji Jun

After dinner
I fell asleep

When I lie in bed
It was past 24 o’clock

I broke the code of writing one poem a day

It’s a shame

Jun Tsuji is a swan
Beautiful but dirty voice

 

 

*タイトルは、twitterの「楽しい英単語」さんから引用させていただきました.

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

I have come to die with you

 

工藤冬里

 
 

裏切りに関しては
誰かがやらなくてはならないなら自分が
というのは後付けで
勿体ないという萌芽から始まり
乗っ取られるまで膨らみ
引き金は口に入れられた浸されたものだったが
それは熟した実の肩を叩くような後押しだった
感情移入の間違いは静止した分子モデルによって生じる
意思決定と自由意志は点ではなく
T細胞受容体がMHC分子を識別しなくなる時の
動的な線のモデルとして塑像化される
暴徒に転じることに関しても
色変わりは同じ線的なモデルで理解することができる
ニコがチンギス・ハンの嫁になって
共に死ぬことになった、と夢想する時
点だった六十年代的意思は免疫の角を隠し
欠落からの線の旋律が生まれている
裏切りの発酵の膨らみではなくジャコメッティの消去から
残った線が
平等の持続化給付となるだろう

 

 

 
#poetry #rock musician

poverty・貧困

 

Michio Sato

 
 

There is a division

In this world
There is a division

Poverty, plague, fighting
There is death

Blonde man says i can’t understand you

I can’t breath
I can’t breath

Don’t kill our children

 

 

*タイトルは、twitterの「楽しい英単語」さんから引用させていただきました.

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

夏(森川義信に)

 

工藤冬里

 
 

いきなりばさばさと
折り重なって始まる
手ざわり
ジーンズからコットンまで
千分の一ミリを見分ける指先の
快楽
有名人に関心を持つと感染するので
あるべきところに置く
zoomの音声を昔のラジオぽくすると
斜面は淋しくない
だが立っているのは難しい
粗い絆創帯を押さえつけようとしても
雑草の土手に憤怒は盛り上がる
池の端は夏がせり上がってきていた
鬱を超えて 
虫達と共に
アニソンのように 
置き去りにされた 
サンドイッチのレイヤーの隙間から左右を睨めつけていた
非望の詩人はビルマで戦死した
香川の観音寺の生家にあるいしぶみの手ざわりが
きっとこの夏だ
一句
土手の百合
勾配故に根に持たず

 

 

 
#poetry #rock musician