He made for the door.
彼はドアの方に進んだ。 *

 

さとう三千魚

 
 

at midnight
I soak in the bath

soak in lukewarm water

Moco is
come to peep

door frosted glass
over there

at midnight
listen to Zhu Xiao Mei’s fugue

There is a ghost

She threw everything away and lived

It
must be so

He made for the door *

 

 

深夜に
風呂に浸かる

ぬるい湯に浸かる

モコが
覗きにくる

ドアのすりガラスの
向こうに

いる

深夜に
シュ・シャオメイのフーガを聴く

そこには幽霊がいる

彼女はすべてを捨てて生きた

のに
違いない

彼はドアの方に進んだ *

 

 

*twitterの「楽しい例文」さんから引用させていただきました.

 

 

 

MOYASHITA PORK。

 

工藤冬里

 
 

卵とキャラメル
ニワトリ
が出会って、
プリン
フリン
腐乱
が生まれた。
出会い
アイディア
イコン遺恨とイデア(ハーバート・リード)
って、


排除
排卵。
組み合わせ
ホーム列組み合わせ
って、未来
未練
かも。
公園
円光
縁故
の下に、ハイブランド
灰フレンド。
ハイブランド
灰フレンド
の横に、飲み屋横丁
蚤や!コチョコチョ。
ホテル
掘る手間
も珈琲屋
肥やし

レコードショップ
冷凍死体
もギャラリー
下痢コレラ
も、
混ざってくっついたら
どうなるんだろう。
ごちゃっと自由
蛆に、
ここは公園
御縁
豪炎
のASHITA
ATASHI。
その全部があたらしくなった
灰になった、
MIYASHITA PARK
MOYASHITA PORK。
さあ開業
蟯虫
回虫、
開園
快便
下位胃炎
です。
ニンゲン
非ニンゲン
田七ニンジン
ニゲンロンカフェ
も風
武漢変異風邪
も花
真田虫
も鳥
鳥インフル
も、
どうぞいらしてください。

 

 

 

#poetry #rock musician

焼きおにぎり

 

みわ はるか

 
 

ピッと赤く光るボタンを押すとガランガランと派手な音をたてて自分が選んだものが落ちてきた。
透明の蓋のようなものを手が挟まれないようにゆっくりと持ち上げ手を突っ込んでそれを取り出した。
生温かいぬくもりが感じられた。
写真で見るよりも小ぶりだけれどそれは紛れもなく醤油味が絶妙に効いた焼きおにぎりだった。

地元の最寄り駅に久しぶりに来てみたら、学生時代よく見かけた愛想は全くないがいつも大きな声であいさつをしてくれたおばちゃんがいなかった。
小腹がすいたときに食べたくなるようなチョコレートやスナック菓子、朝刊、雑誌、たばこ、ペットボトルのジュースや缶コーヒー。
そういった売り物が所狭しと並んでいた売店がなくなっていた。
小さな、だけどちょっとワクワクするようなその空間はたった1人で切り盛りしていたおばちゃんとともに消えていた。
代わりにやや大きめな自販機がどーんと設置されている。
その中の1つに焼きおにぎりが商品としてあったのだ。
おばちゃんは違う駅に飛ばされてしまったのかなと少し寂しくなった。
ただ、これも田舎のぽつんとした駅には必然な結果なのかもしれない。
時代は無情にも変わっていく。
でもどうしてだろう、たこ焼き、ポテト、お好み焼き・・・・・たくさん種類がある中で迷うことなく焼きおにぎりを選んだ。
ぼんやりと少しずつわたしは焼きおにぎりとの出合いを思い出し始めていた。

小学生低学年のとき仲のいい友達がいた。
よく土日には彼女の家に行ってお昼ご飯を忘れる程ゲームに熱中していた。
母親には宿題をしてくると言って逃げるようにいつも家を出発していた。
おそらく今も母はちゃんと勉強していたんだと思っていると思う。
ある時いつものように彼女の家に行くと、夕方から病院に行く用事があると言われた。
なんでも同居しているおじいさんの体調が悪くなり入院したという。
病院という所にほとんど縁のなかったわたしは同行させてもらうことにした。
夕方の病院というのはとうに外来診療が終わっているせいか薄暗くしんと静まり返っていた。
スタッフの数もうんと少ない。
院内も迷路のようで迷ってしまいそうだ。
その時ひときわこうこうと光を放っている一画があった。
3台程の自販機がみんなきちんと前を向くように並んでいる。
周りが暗いが故にとてもまぶしく感じた。
奥の2台は道端でもよく見るジュースやコーヒーが売られているものだった。
手前のそれは当時わたしにとっては初めて見る自販機だった。
前述の大人になって見たものとほぼ同じでたこ焼き、ポテト、お好み焼き・・・・・、そして焼きおにぎり。
どの写真もみんな美味しそうに見えた。
友達のお母さんはニコニコしながら慣れた手つきで500円玉をそれに投入した。
その時買ってくれたのが焼きおにぎりだったのだ。
友達と2人でわくわくしながら箱を破り醤油がかかってほんのり香ばしい焼きおにぎりにかぶりついた。
お腹がへっていたのもあってペロリとたいらげた。
2人とも口の周りに醤油をつけてもぐもぐさせながら顔を見合わせて微笑んだ。
友達の二カッと笑った時の歯と歯の間には茶色の米粒がいくつもついていた。
長椅子に2人並んで足をプラプラさせながら焼きおにぎりをほおばっていたあの時、わたしたちの間には幸せな時間が流れていた。
またそれ以上に自販機で食べ物が買えるということが当時のわたしたちには衝撃的な事実だった。
大人になって思うと、自販機に備えられているからある程度防腐剤が入っているだろうし写真ほど立派なものは残念ながらでてこない。
値段も普通に買ったり作ったりすることを思うと決して安くはない。
だけどあの時あの場所で光り輝いていた自販機にわたしたちは吸い込まれていくような気分だった。
堂々と立っているにも関わらず森の中で秘密基地を見つけたような気持ちになった。

残念ながらその友達とは高校から別の道を歩むことになり今ではすっかり疎遠になってしまった。
実家にいるというのは風の便りで知っているが今どんな風に生活を送っているのかは全く知らない。
ただあの時あの瞬間に2人で味わった驚きと幸福はこれからも消えることはないんだと思っている。

 

 

 

わが五輪

 

薦田愛

 
 

ふた月に近い雨季
ツユとよぶ
季節はやっと明けたが
少し前この年の
Olympicにちなむ祝日
だのに
とどまれ いや
家に居や なんて嫌や
Olympic yearの祝日なのに

閉じることのできない
ear
耳に逆らう
新・体育の日というらしい
その日
嫌や 家に居や
って
誰が言うてや

ひひん
ひひんと
ひひんと鳴かない
牝馬かポニー
大人用三輪自転車ポニーに乗る
練習が
雨がつづいて
ひかる坂道 路面が
乾かないので
サドルの跨る
時間がなかった

夏至の坂を越えれば夕暮れは
みるみる早まる
ポニー
大人用三輪自転車の
ペダルを踏むステップへと
進まなくてはならない

「ペダルをつけてもらってきたよ
停めたままで漕いでみようか」
とユウキ
エアロバイクだったら
よく漕いでたよ
家に置いてたこともあったからね
だから
ただ漕ぐだけなら慣れてる
ぐいぐいぐるんぐるん
ほらね
「じゃあ今度の週末に公園、行ってみようか
あそこなら足もとが土だし」
え、公園って
去年、花火をしに行ったあそこかな
うちの前を右へ右へ坂をのぼって
歩くと五分くらいの
「自転車ならあっという間だよ」
うんうん
昼間は子どもやお年寄りでいっぱいじゃないかな
いやだ、はずかしい
次の週末
行ってみると公園は
ボールを蹴る子どもが駆けまわっていて
ああ無理だね

銀輪二輪すすっと走るバランスに自信がないので三輪
でももしやの補助輪
買った
「補助輪つければとにかく乗れるから
慣れたら外せばいいんだし」
とユウキ
子どもみたいではずかしいけど
おお
三輪ポニーに補助輪足すと
ほら
なんと五輪
わが五輪
「え、自転車じゃなくて三輪に?
つけてもいいけど
曲がれないかもしれないよ」
そうかな
どうしてかな
というより
あるかな大人のにつけられる補助輪
もしやと
さがす
さがしあてて取り寄せた

さあてとユウキ
つけてみようとしたら
変速ギアを外さなきゃならないから
「手に負えないや
自転車屋さんに行こう」
三輪に補助輪
わが五輪は
曲がれないかもしれない
「自転車につけたほうがいいかもしれないから
両方持っていこう」
という次第でふたり
自転車を押してユウキ
ポニーを押して私
駅前のサイクルショップへは
ブレーキの調整ペダルのつけ外しとユウキが
すでに三輪ポニーで度たびお願していて
顔なじみじゃないかな
日曜の午後の店先は
手入れ待ちの自転車でいっぱい
これもCOVID-19の影響だったりして
一時間くらいかかります
わかりましたと
図書館喫茶店スーパー経由で迎えに行く
ああついてるポニーに補助輪
わが五輪
私のポニーを支える小さな真顔がふたつ
「動くかな、乗ってみて」
よいしょっと跨ったら
そうでなくても安定の前二輪に後ろ三輪
わが五輪は
左右の安定といったらなかなかだけれど
あれれ
ペダルがちっとも踏み下ろせないや
エアロバイクとはぜんぜん違う
脚力不足かな
なにしろリアル自転車漕いだことないから
「重いのかもしれないね
曲がれるかな、やってみて」
ええっと、曲が、まがってみるね
店先の歩道
ええいっ、と左へカーブを試みようとするけれど
重くてなのか弱くてなのか
ちいっとも
「ああ、やっぱり
こっちにつけ直してもらおう
すみません」
と店のひとに向き直り
三輪ポニーから二輪につけ直してもらう
もう一度跨ってみる
軽い
かるいけれどやっぱり
ペダルを踏み下ろせない
わが五輪、は
ならず
なれど
わが四輪は
そしてポニーは
照りのこる日差しのなか
ふたり
ポニーを押す私と
補助輪つき自転車を押すユウキ
この補助輪つき自転車
経由ポニー
四輪三輪
「そうだねそうやって
ふつうの自転車にも乗れるようになるよ」
どうかな
乗れるかな
ぐんぐんペダルを踏み下ろし
ユウキの
ニンタイが尽きないうちにね

 
 

*近代オリンピック史上初めてのエンキだという。東京大会が翌年同日時へ変更された。COVID‐19と呼ばれるウイルスがはびこり被害が広がるのを阻むため、ヒトとヒトを距てよ、むやみに出歩くな、家にとどまれ、と各国で公けに叫ばれた。満員電車の通勤を避け、自転車を使うひとも増えたと言われる。そのような年であった2020年、記す。

 

 

 

Dense Foliage

 

工藤冬里

 
 

影のスキルアップ
のキャンペーン
で喜びに溢れ質問すれ
ば興味を抱かせること
ができる 誰の子ですか 
ご存知ですか 
ウィルスに晒され
ている交遊
が熱意に沸騰する 
頭で準備して心
にダウンロードする舌
を混ぜ合わせる
天体測量の器械
を儀と言い
牛のフライ
を犠と言う
それに対して
議は速弾き出来る総理の刑法上の罪
を減じる特典 
見えない担当者
を悲しませる
建物ジュース
で方向を定め直す 
潮溜りの淵 化学物質 
希望を奪い 目的がない
と覆い隠している
メモとタグで二足歩行トランス
のバスタブを深くする
とできるようになる
Dense Foliage
は周りに目を向ける助け
になります
白黒の夜空の天井 
百倍返しだ

 

 

 

#poetry #rock musician

She was close upon seventy.
彼女はほとんど70歳近かった。 *

 

さとう三千魚

 
 

I like women

Is it because I am a man?

do not know
Is it because I was born of a woman?

Smile of woman

Breast of woman

Tummy of a woman

Buttocks of woman

Everyone likes

A woman is always a woman

She was close upon seventy *

 

 

おんなの人が好きだ

わたし
おとこだからだろうか

わからない

わたしがおんなのひとから産まれてきたからなのか

おんなのひとの笑顔

おんなのひとの
おっぱい

おんなのひとの
おなか

おんなのひとの
おしり

みんな好きだ

おんなのひとはずっとおんなのひとだ

彼女はほとんど70歳近かった *

 

 

*twitterの「楽しい例文」さんから引用させていただきました.

 

 

 

屋上

 

塔島ひろみ

 
 

下水処理場の屋上に
咳が出始めた父親を押しこめる
すぐ迎えに来るからと、尻を、思い切り押して走って帰る

夏雲の下 老いた男女がボールを夢中で追いかけていた
フットサルコートになっている屋上の公園は 周囲を有刺鉄線で囲われている
元気な爺が追いつき、思うさま蹴上げると
ボールは天井の針金に突き刺さった 
その裂け口から見せしめのようにポタリ、ポタリと、黒いモノが滴り落ちる
ボールを失い、老人たちは汗を拭き拭き見晴らしの良い一画に集まる
眼下には濁った、あまり美しくない川が静かに流れていた
ここから人が飛び降りられるわけがないのに
屋上に鉄条網をめぐらす意味

奴らは俺たちが鳥だと知ってるんだよ
カラスのように口をとがらせて 一人が笑った
紫色の花弁を揺らして ムクゲが笑った
羽を震わして セミが笑った
カラカラ カラカラ
笑い声が立ち籠める

俺たちが自由だと 知ってるんだよ

仰向けに寝そべると鉄網越しに
ギラギラと美しい青い空と雲があった 一雨来そうだ

早く迎えに来ないかな

鳥が呟く

 
数日後。
防護服に身を包んで屋上を訪れた保健所員が
ブルーシートをめくってビックリした。

全部、もぬけのカラになっている!

 

(7月某日 小菅西公園で)

 

 

 

やいま

 

正山千夏

 
 

南へ南へと飛んでいく
焼けつく光がひたいを焦がし
福木の木蔭でひと休み

島唄をうたってよ
焼けた肌黒い瞳の彼に導かれ
どこまでも碧い海にもぐれば

青や水色、むらさき色
色とりどりの珊瑚と
それに群がる熱帯魚

一緒に泳いでいたら憶いだした
夕焼け、泡盛、月夜の踊り
遠い昔の先祖の祈り

見上げれば空一面に散らばった星々
耳を澄ましていつまでも聞いていた夜
嗚呼、こんなに遠くまで来てしまったよ