Pity is akin to love.
同情は恋愛に似ている。

 

さとう三千魚

 
 

Last night

Moco is
barking in bed

I was awakened many times by Moco

hugging and down the stairs

Moco

crouched in the garden
and peeed

next
Moco

drank water

I gave up
lie down on the sofa in the living room with Moco

Maybe Moco was hot

on the sofa
lying down

I was waiting for the morning

Moco fell asleep immediately

Pity is akin to love *

 

 

昨日の夜

モコは
ベッドで吠えた

モコに
何度か起こされた

抱いて階段を下ろすと

モコは

庭に
しゃがんでおしっこをした

次に
モコは水を飲んだ

わたしは諦めて
居間のソファーにモコと横になった

たぶんモコは暑かったのだろう

ソファーに
横になって

朝になるのを待っていた

モコはすぐに眠ってしまった

同情は恋愛に似ている *

 

 

*twitterの「楽しい例文」さんから引用させていただきました.

 

 

 

仮名かな手本芸獣ケミカル

 

工藤冬里

 
 

貧困が問題ではなく
名前各部の熱にバラつきがあり
パーマ屋には行く
歳取ったって別にいい
いつも明後日の予定を考えなさい
自分が死んだ後に起きたことを学びなさい
芸術肉体労働者は体と心を使い
芸術職人は頭と心を使い
芸獣はクスリを使う
明後日
多くのスキルはなくなります
四十日面会できなかった間にすっかり弱って
心手術してないのにイタイイタイ聞くのが辛い
ユーラシア南東のビンロウジの吐き跡が
ペンシルベニアドイツ語圏メノナイトに

かなかなをうちに一瞬寄らせる名が関係している

 

 

 

#poetry #rock musician

草叢

 

松田朋春

 
 

自分の周りでも抗体検査で陽性になった人がいて
隣り合わせで暮らしている実感がある
私の検査結果はおそらく明日か明後日には届く
自分が陽性であれば家族も全員陽性であるはずだ
疫病のひろがりというよりは
無症状のひろがり
なにもないひとが
なにもないものを
気付かぬうちに手渡すという
シンプルなルールに
働かざるもの食うべからずは
太刀打ちできない
倒産や廃業の知らせが
毎日届くようになってきた
揺るぎない感染のあゆみよ
いよいよちぐはぐな社会のふるまいよ
何かがはじまる前の静けさに草叢が匂っている
明日など来なくていいのではないか

 

 

 

 

小関千恵

 
 

握られた手を解くことができずに
もう片方の手で
体の中から桃を取り出し
大切に見せることができたら分かってもらえるものだろうかと思ったけれど、それは
桃のこれからの繊細さを訴えるよりも
既に産毛の生えた柔らかい皮膚は腐敗直前まで焼かれていて
濃度の高い愛しみ (かなしみ)が滴り落ちていたので
もうただ誰にも触れさせられないものになっていたのかもしれない

彼はその桃を
窓辺で乾かし続けている

桃を取り出した体は宙に溶けやすく
少しづつ
沈黙の音の中で
嵩張った祈りたちには砕けゆくままに 踊った
闇のドットを掻き混ぜながら
落ちても浮いても
ここがどこまでも空であることに
気づいていった

ずっと純粋だった
呼吸をし、
手足を動かし、
体温があり、
すぐになにかでいっぱいになった

届かないものに憧れて
水を飲んだ

戻るように、生まれていった

体の中で
また新しい実が実りはじめていた

風が吹き 窓辺の桃を撫でてゆく
あの桃のことは 宇宙に任せておけばいい