Winter and summer come to all; this with its flowers and that with its snow.
冬と夏はすべての者にやってくる。後者は花を携えて前者は雪を携えて。 *

 

さとう三千魚

 
 

the third wave
is it coming

at midnight
looking at the statue of the Eleven-faced Kannon Bodhisattva in Enku

Enku Buddha puts his hands in front of his chest
standing

he closes his eyes
depressed

he has five Kannon Bodhisattva on his head

not the eleven-faced
six-faced

Kannon Bodhisattva
standing

it would have been the mountains that Enku was looking up at

Mt. Norikura, Mt. Hotaka, Mt. Kasagatake, Mt. Yake, Mt. Shakujo, Mt. Sugoroku

wood grain is flowing vertically on his face

make the top glow white in winter
melt snow and make flowers bloom in spring

Winter and summer come to all; this with its flowers and that with its snow *

 
 

第三波が
きているのだろうか

深夜に
円空の

十一面観音菩薩立像を見てる

胸の前に手を合わせて
佇っている

目を瞑り
うつむいている

頭には五つの観音菩薩を乗せている

十一面ではなく
六面の

観音菩薩が

佇っている

それは円空が見上げていた
山々だったろう

乗鞍岳 穂高岳 笠ヶ岳 焼岳 錫杖岳 双六岳の山々だったろう

お顔には木目が縦に流れている

冬には頂きを白く光らせて
春には雪を溶かし花々を咲かせる

冬と夏はすべての者にやってくる。後者は花を携えて、前者は雪を携えて *

 

 

* twitterの「楽しい例文」さんから引用させていただきました.

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

あきれて物も言えない 18

 

ピコ・大東洋ミランドラ

 
 


作画 ピコ・大東洋ミランドラ画伯

 
 

明け方に、「飛騨の円空」というカタログを見ている。

 

2013年に上野の東京国立博物館で開催された展覧会、
「飛騨の円空 千光寺とその周辺の足跡」特別展のカタログだ。

2013年、
まだ寒い1月だったか2月だったか、
たしか仕事を休んで見にいったのだったか。

東日本大震災から2年が過ぎようとしている頃だった。

円空は長鉈(ながなた)一本で木っ端に仏像を彫ったのだという。
飛騨高山だけでなく、東北や北海道までも歩いて行き、仏法を説き、仏像を彫ったのだという。
全国各地で生涯、12万体もの仏像を彫ったのだという。

オン バサラ タラマ キリク
オン バサラ タラマ キリク
オン バサラ タラマ キリク

円空は真言を唱えながら長鉈を振るったのだという。 *

両面宿儺坐像
金剛力士仁王立像、
菩薩、
観音、
釈迦如来、
弁財天、
不動明王、烏天狗、
柿本人麿、

それぞれの像がどれもぼんやりと微笑んでいて、やさしい。
しかも、微笑んでいるだけで、語ろうとはしていないようだ。

百姓や町人や山人、漁夫、流浪の人たち、
それら地上の人たちの幸を祈っているのだろう。

当時でも、絵描や歌人、音楽家は、支配階級の庇護のもと生きていたのだろうが、
円空や円空仏はどうだっただろうか?
百姓や町人、山人、漁夫、流浪の人たちなど底辺の人たちに円空は大切にされたのではないだろうかと、
その木像のお顔を見ていると思える。

円空仏の(十一面観音菩薩立像など)お顔や体の全面に木の木目が縦に現れてあり、そこには地平に対する垂直の願いであるようにも思えてくる。
金剛力士仁王立像吽形は、円空が生きた立木に梯子を掛けて彫ったものとされ、木の枝の付け根が虚(うろ)となっていて、
その虚が背中側になっていて、凄まじい生の現れと思えてくる。

円空の釈迦如来も阿弥陀如来も薬師如来も、みんな目を瞑っている。
半眼と言うのだろうか。
十一面観音菩薩立像は少女のようだ。
胸元で手を合わせて目を瞑り木目のなかで祈っている。

他者の幸を祈るカタチなのだろうと思える。

今朝の朝刊を見ると、
コロナウィルスが再び猛威を振るっているという。
第三波なのか。
冬を迎えて、欧州やアメリカ、日本でも、感染者が増え、重症患者の増加に伴い医療現場が逼迫しつつあるのだという。
東日本大震災の時もそうだったが、
コロナの現在も円空仏たちは目を瞑り祈っているだろうと思えてくる。

コロナでわかったことがある。

コロナの分断と移動の禁止でわかったことがある。
ヒトは他のヒトと肌を触れて生きてきたということだ。
ヒトは他のヒトと肌を触れて、息を交換し、体液と血を交換し、生き延びてきたのだったろう。
それらの交換がコロナウィルスの侵攻で禁止されてしまった。
ヒトは、詩や音楽や舞踏やアートは、やがてそこ、交換の場所に帰っていくだろう。

木目のなかに静まり、目を瞑り、円空の木っ端の仏像とともにわたしたちはこの世の疫病の退散を願わずにいられない。

地平には、まだたくさんの生きたヒトたちが残されている。

呆れてものが言えません。
ほとんど言葉がありません。

 

*「飛騨の円空 千光寺とその周辺の足跡」特別展カタログ掲載 千光寺住職 大下大圓氏のテキスト「祈念 〜木っ端に込めた鎮魂と救済〜」を参照しました。

 
 

作画解説 さとう三千魚

 

 

 

塩釉の砥部

 

工藤冬里

 
 

 

父の遺品まで全部焼いてしまった後しょうがなく炭を買い足しに行った帰りマスクせずにローソンに入ってカツ丼みたいなやつと和歌山ラーメンというのを買って車で食べた
恭子さんが聞いたら卒倒しそうな最低の土方の食事である
温度が上がらないので他のことはどうでもよかった
軈て煙突がぬけて白い火が吹き上がった

 

 

 

#poetry #rock musician

遠心

 

原田淳子

 
 

 

春からの夜の散歩は続いていて
砂の城を歩く
塩の滑り台
眠りかけた蔦に足を絡める
ここから先はゆけなくて.

果実の囁き、香りがつま先で回転する
動けぬのなら遠近もない
ただ深さだけだ
力は何処へゆくの.

重ねられてゆく葉の深さが
永遠を指している

鉛の闇は絶対零度
小学校の休み時間、
教室で削っていた鉛筆芯の温度
屑籠は夜のようにあたたかった

深みのなかで
望みを濾過して
熱を発する

遠心の火

百年の炎立つ

 

 

 

I was hard up for something to say.
私は言うことがなくて困った。 *

 

さとう三千魚

 
 

it’s morning

night
becomes morning

becomes morning

outside the window
the west mountain

floating in the light blue sky

the sparrows
are singing

awake in the middle of the night

I wrote about the Buddha statue in Enku in a letter

letter
send to you

the west mountain is floating in the blue sky

I was hard up for something to say *

 
 

朝になった

夜は
朝になる

朝に
なる

窓の外の
西の山

薄い青空に浮かんでいる

雀たち
鳴いている

夜中に
目覚めて

円空の仏像のことを手紙に書いた

手紙を
きみに送る

青空に西の山が浮かんでいる

私は言うことがなくて困った *

 

 

* twitterの「楽しい例文」さんから引用させていただきました.

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

熱力学の第二法則

 

工藤冬里

 
 

二番町の焼けたくるきちのことを書こうと思ったけれども
まだ騙す人が沢山立っている戦後で
柳の下にずらりと並んだ屋台の
砂糖でくっきりさせた敗戦の甘味が
棚引いて
棚引いて
無いはずの時間が
曖昧な近い過去の
熱量の落差ゆえの現在となって
かめそばの上で削節が踊る
抗争の北京町
組員皆殺しの夢を見ながら
湯割りで調節する熱量

 

 

 

#poetry #rock musician

Turn off the radio.
ラジオを消しなさい。 *

 

さとう三千魚

 
 

everyone
left

became a white bone

grandmother too

father too
mother too

brother-in-law too
brother too

Nakamura-san too
Watanabe-san also

that
girl too

everyone
everyone

left

I’m carrying a wide sky now
I’m holding a wide sea now

blue rock thrush
looking for

now

Turn off the radio *

 
 

みんな
去っていった

白い骨になった

祖母も

父も
母も

義兄も
兄も

ナカムラさんも
ワタナベさんも

あの
女のこも

みんな
みんな

去っていった

いまはひろい空を背負っている
いまはひろい海を抱いている

磯ヒヨドリ
探している

いまは

ラジオを消しなさい *

 

 

* twitterの「楽しい例文」さんから引用させていただきました.

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

intervened

 

工藤冬里

 
 

新しいローソンがトラックを五台停めて浮かび上がっている
ラジオからは魔王が流れています
攻撃にさらされている
シューベルトのように

わたしは失敗している
動画をスローのスクリューにすると
勝手に明かりが点い たりする

やばい
やばい
やばい

父が音を立てて見回る
ランドリーはばかでかい

顔を
消去してゆく
センターラインを超え
身動きを取れなくしてゆく
目玉
携帯がびーびー震える

僕はあの温泉が嫌いだ
菌がいっぱいで

ファーター!
ファーター!
魔王が見える!

それはおまえに隙があるからだよ
たかのこの湯はちんころの湯だよ
黄信号が点滅する吹雪の道で
音を立てて見回る

くめの湯に向かうよ
BOSSの自販機があるから
地球だと分かるよ

 

 

 

#poetry #rock musician