晴れていた

 

さとう三千魚

 
 

義母の
月命日で

今朝は

晴れていた

朝早く
車で

女と墓参にいった

墓前に

花を活け
線香を添える

ほのかに紫の香りがたちあがる

墓の写真をスマホで撮り
女は

いくえちゃんに
送る

マレーシアにいるいとこの
いくえちゃんに

写真
送る

帰りは
川沿いを歩いて帰った

ひとり
川沿いを

帰ってきた

女は仕事に行った

今朝
西の山を見なかった

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

エメラルド

 

原田淳子

 
 

 

四月は風ばかり吹いて、エメラルド

猫よ、
きみの眼の色の季節
ギリシャの海
波の結晶

猫よ、
きみはわたしのこどもでもなく
わたしの友人でもなく
恋人でもない

夢のおわりの朝
緑の眼でわたしを目撃する

幾億幾千もの虐殺を逃れて
きみの生はこの部屋に転がる
きみの緑がわたしの眼を舐める

家族/共同体/国家を逃れて
嘶き、共闘しよう

剥奪されない、生でいよう
緑の獣でいよう

四月の風が緑を噴きあげる

狂わされた季節に花たちが咲き急ぐ
白、黄、青、、
待って、と、つぶやく
まだ靴を履いていない
駆けあがる呼吸に
わたしの空洞のオルガンが軋む
和音未満の点線

貧しきものにも等しく時間は降る
愛と似て
時間は歪められない

緑の氾濫に、いのち萌ゆ