ピコ・大東洋ミランドラ
東京五輪が開幕した。絶句した。呆れた。物が言えない。
ここのところ絶句している。
ほとんど、
絶句している。
あきれて物も言えない。
夕方に、
モコと散歩して近所の黒白のノラに会う。
挨拶する。
工場の倉庫のパレットの上で、
鬱陶しそうにノラはこちらを見ている。
この暑いのに暑苦しいおじさんと家犬のチビが来たわいと思っているのだろう。
この男には夕方に犬と散歩して黒白のノラと会うのがほとんど唯一の楽しみになってしまった。
地上では東京五輪がお祭り騒ぎのようだ。
TVのチャンネルを変えてもどこもオリンピックの映像が流れている。
ニュースもこの前まではコロナ映像が多かったがいまはオリンピックが主役になってしまった。
真剣な選手の皆さんに申し訳ないですが、
オリンピックをこれほどくだらないと思ったことはなかった。
オリンピックのプレゼンテーションの際にこの国の首相がマリオになった時もくだらないと思ったが、
今回の開会式の映像も途中でTVの電源を切った。
これがクールジャパンなのか。
呆れる。
物が言えない。
東日本大震災からの復興を世界に示すというビジョンは、
コロナに打ち勝つというビジョンに取り替えられたのだったか。
日本の被災地の人々の本当の姿が発信されているわけでもないし被災地の復興の現在が発信されているわけでもない。
日本はウイルスに打ち勝ってもいない。
嘘だった。
愚劣だった。
腐った意味を盛りだくさんに盛っていた。
女性蔑視発言でオリンピック組織委員会の会長を辞任した森元総理大臣を「名誉最高顧問」にするということが、
組織委員会と政府の間で水面下に進んでいるのだという。
日本はもう終わっているのだろうか?
日本の子どもたちはこの腐った政治家や大人たちをどのように見るだろうか?
体操の内村航選手が鉄棒から落下する映像とその後のインタビューの映像を朝のTVニュースで見た。
美しかった。
自分に失望しながらこの世界の地上に佇っているひとりの男がそこにいた。
そこに小さな光が見えた。
今日も、
夕方には犬のモコと散歩した。
近所の黒白のノラとあった。
ノラはこちらを鬱陶しそうに睨んだがわたし笑ってノラに挨拶した。
呆れてものも言えないが言わないわけにはいかない。
作画解説 さとう三千魚