村岡由梨

 
 

桜ほど悲しい花はない。
青く空が澄み切っているほど、余計に悲しい。
空が白い涙を、はらはらと流しているみたいだ。

自宅近くの緑道沿いの満開の桜並木を歩いていたら、
新しいランドセルを背負った小さな女の子が笑って
お母さんらしい人が写真を撮っていた。
小さなシートを敷いて、お弁当を食べている家族もいた。
私たちが私たちだった頃のことを思い出す。
生クリームがたっぷりのったプリンと、
少し焦げてしまったチュロスが入ったレジ袋を下げて、
文字通り、若さ故の根拠のない自信だけが一人歩きしていた。
もしかしたら、今からでも真っ当な人生を歩めるかもしれない、
なんて分不相応な希望も、一瞬だけ持ってしまった。
でも、もう私たちは若くない。
顔を合わせればまた深く傷つき合うだろうから、
もう二度と会わない、絶対に会わない。
そう心に決めている。

さよなら。
さよなら。
けれど私は、
幸せになっていいのかな。

 

春ほど悲しい季節はない。
そう思っていた。
多くの人たちが去っていった
そんな季節に、娘のねむは生まれた。
夜中陣痛が始まって、その明け方、ねむは
私の中にある産道を一生懸命前進して、くぐり抜けて
命がけで光の中へ産まれて来てくれた。
このドロドロで汚くて欺瞞に満ちた最悪な世界に、
どこまでも無垢で穢れのないものを
産み落としてしまったのかもしれない。
けれど、十月十日一心同体だったねむを抱いて、
自分もかつて母の子宮の中で包まれていた
羊水の匂いの記憶がよみがえり、初めて、
幸せになっても良いと許された様な気がした。

ありがとう。
ありがとう。
私が母親で、あなたは幸せですか?

 

ある薄曇りの日に、窓を開けたら
春の生ぬるい風が吹き込んできて、
窓辺にあった原稿用紙がパラパラとめくれた。
一端の詩人気取りで
自由に書きたい。
自由に書きたい。
お前にその言葉を書く覚悟はあるか。
自由に生きたい。
自由に生きたい。
お前に自由を生きぬく覚悟はあるか。

 

今日はねむの17歳の誕生日。
逆立ちして精液をひとしずく滴らして
スプーンでかき混ぜた様な青空だった。
この雲の名前はなんて言うんだろう。
おいで、外に行こう。
空を見たら、気分がスッと楽になるから。

おめでとう。
おめでとう。
希望と少しの不安を孕んだ、あなたは美しい。
4月から新しいスタートを切る、ねむ。
バースデーケーキのろうそくを、
笑いながら、フッとふき消した。

 

 

 

わたし西の山を見ている

 

さとう三千魚

 
 

西の山を見ている

今朝も
見ている

窓を開けて
小鳥に餌をやった

灰色にひろがる空の下の西の山を見ている

蝉が鳴いている
耳の中で

鳴いている

耳鳴りは
治らない

東欧の戦闘をTVニュースで見ている

第一次世界大戦と
第二次世界大戦を

生きた国の人たちが戦争をしている

シリアや
イエメンや
アフガニスタンや
ミャンマーや
香港や

ウクライナで

国の命令で
人は

人を殺している
たくさんの動物たちも殺されたろう

わたし西の山を見ている

小鳥に
餌をやった

わたしモコを抱いてソファーで眠った

モコは言った
モコは眼で言った

殺さないで

あなた
殺さないで

あなた国家から逃げて
あなたたくさんの国家から逃げて

あなた逃げて

あなた逃げて
あなた生きて

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

Le sel des larmes

 

工藤冬里

 
 

牡蠣地獄、掛軸、芍薬、門の外には犬、ブルース・ウェイン=リベラルの復讐、最後の晩餐の飛び出す絵本、阿漕なフォーク野郎、

3.22

https://www.instagram.com/p/Cblhu0nlja6/?utm_source=ig_web_button_share_sheet

ゼレンスキーが教皇に仲介を頼みたいと

3.23

Su fuerza dependerá de que mantengan la calma

3.24

ラーメンは飲み物ですという幟の泡立て系に入ったらハルコ母が鶏白湯を啜っていてハルコが東に受かったと言うので見ると大きくなったハルコも隣にいて、放課後シロノトリコに寄ったりするようになるのだろうかと思う

今思い返すとポンコピピンの安土さんの網編みと数珠繋ぎの貝とグラスファイバーの可塑的な配置は時間の縦横を月に照らし返すもので、四国において丸亀のヤン・ファーブル以来の最も美しい展示であった。
https://youtu.be/yR-8vPgqS6M

ヤンマガ連載の図書館員マンガ「税金で買った本」が延滞、弁償、司書間の反目など描いてリアル

力が来る
肩が痛くなり陰鬱になる

https://youtu.be/J6XqjCsJNTo

小倉の江上展示はレコードジャケットに半身を 背負わせたユークリッドモンドリアンブギウギ意匠でありそのあまりのクラフト黄金比に作品全体が見えなくなるほどであった

3.25

salió afuera y lloró amargamente

今回東欧のナショナリズムが共産主義インターナショナリズムを完全に超えたことで2つの逆説的グローバリズムの未来が獣達の眼前に浮上することになるがどちらに転んでも人間製の世界政府である

3.26

Mantendré mi confianza

ちょっとした後始末さえ出来ず焼け焦げた家や車が放置されているのだからAIが全員を管理するという夢想は全てを砂粒に還元してしまいたいサラ地の強迫でありそういうのは必ず潰える

心が読めないというのが唯一のコンプレックスであるわけだから携帯に心を読ませる偽旗も考えつくという

個人は雑然としていて四角に分けられた部屋に収まる和菓子のようにほとんど身動きが取れない

耳鳴りの中行軍の蟻に落日
落日を行き落日を行く
雑然として雑然として落日
落日に熔ける現実播州野

焦茶色の未整理が蹲っている
今日は外は嵐です

https://www.instagram.com/p/Cblhu0nlja6/?utm_medium=copy_link

3.27

「鴻池」という、名前は立派だが与島を過ぎて最初の、目立たぬSAである。人影も疎なレストランの、カツカレーのルゥが欧風王道で、特に目立った産物もなく「うみのおともだち」などというコーナーに縫いぐるみを置いていたりしているわだけなのが良い。

柳井町の展示は今日迄です。僕は「宴と孤心」という書の作品を出品しています。皆頑張っていましたが松宮さんの立体がバットマンの「俺がマッチ棒だ」みたいで良かったです。

And now I’m ready to close my mind
– I wanna be your dog

It won’t shine
It won’t shine for me
– The light of love

Like I see through the water That runs down my drain
– masters of war

I would hit me
– if I had a gun

when you’re near me
your love is all I need
– What do you want from me

the world is your oyster

he will have to come all the way to his end and there’s no helper for him
– the king of north

 

 

 

#poetry #rock musician

日常のさざなみは強く

 

ヒヨコブタ

 
 

わたしの日常はざわめきつつも守られているのか
どうしてふつうを生きていられるのだろうか
なぜなにどうしてが重なって
ぷつんと糸が切れるような

このような世界を想像しなかったわたしは
平和にとぼけて生きていたのだろか
世界に目を向けていればその兆候に気がついたのだろうか
そしてできたことはあったのだろうか
また今できることは何なのだろうか

ベビーカーが広場に並ぶ
なくなった子供の数だという
避難して駆け込む先は地下
それすらも守られていないばしょ
大江戸線ほど深いという
まだまだ寒いだろう
そこで夜が明けるのを待つ日々のひとのこころをわたしは知らない
知った気になることはゆるさない

かつて子どもだったわたしは
先祖の墓参りすら許されぬことを悲しんだ
その国にもその人々にも先祖がいるだろうに

せめてもの墓参り
そこで暮らした日々に思いを馳せる日
それが政治により叶わぬ年があることに
ときに苛立った

不意をつかれたような戦争だ
脅威というのは別のところにあると思っていた

なんの理由があって祖国を暮らしを生活を奪う
根こそぎ破壊しそれでも足りずに命まで奪うのだ

わたしは考えることをときにやめる
その人たちが救われる道を考えることも
疲れて横たわる
体を横たえて思考をとめる

誰もが親族を亡くしたあの戦争は
ついこの前だと大人になってから思う
こどもの頃には大昔だと思っていた
田舎町には関係ないと思っていた

それがどうだろう
ただ語られないうちに時が進んだだけだったとは
もうこどもでいられないわたしは
知ることを選び
知ることを拒絶もする

ずるいと思う大人には
わたしはなりたくないのに

桜が咲き誇る
かなしい気持ちでみている
桜を穏やかに眺めていたい
ふたつの気持ちがどこにもいかない
それらを持って今日を明日を生きるのだと

 

 

 

島影 41

 

白石ちえこ

 
 


群馬県桐生市

 

暑かった夏の日
いつまでも分かれ道を右へ、左へ、
うろうろした
団地の先に、ふと、古い消防署が現れた
見たことのない火の見櫓、監視塔
半円の通路
ファインダーを覗くと、時代も場所もわからない夢の中の風景のようであった