廃坑にて、あるいは石灰の海に浮く盞

 

工藤冬里

 
 

監督本人にサメ映画フォーマットを喜んでもらえてたいへんにうれしい。自分の背を撮るというのはGOZOシネや大木作品とは明らかに違う方法論なのだ。
iPhone2台、というのがあたらしいピンポン時代のはじまりだ。

蛍絶え重曹的な塊が苦い蒸しパンみたいな胴体
先端の結果として花。
水面の結果に溺れて入日

「超然」のキーワードの中に何人かの魚を飼って
絲山さんの作品は全て「作家の超然」という一冊の本の中の劇なのだなと分かる。A!boutサーフィンみたいなものだ。
バルザック的な春樹越えをみんな期待してる。
「エスケイプ」で絲山さんはロバートクインが好きと分かってなかなかうれしい
ただセクト話は想像だろうな
スマホ時代にそんな挫折は、無い。

最期の蛍を見届けたearly birdsが喋っている
磁器をシュレッダーのような機械にかけると濁酒になる夢は石灰化の反映でしょう
私とは裂け目であるので裂け目が何か言ってるぞと言われます

愛の不死薬、、、
子供らの隠れんぼに利用されているので図書館車は次のステーションに出発できない
房藤空木

バーホーヴェンのベネデッタ風に言わせれば
「お前たちは私の愛を裏切った。この町にも黒死病が這入りお前たち全ては腐って果てるだろう。文体も、食物も、橋も、夢も!
夜中も蛙ばかりが喧しい
酷使した部分に石灰が溜まる
厄介なライムスター
薬物をやっていたのだ、と考えると大抵の行動は説明がつく
蛙の水田にヒロポン国家の花火が落ちる
その疲れの隙間に
石灰が溜まるのだ
土壌をアルカリに変えようとする努力は悉く腐る
CO2の白濁を私たちは飲む
ところが生前の意に反して糖尿の骨は茶色い
ということは白黒の撮影は無意味だったと
衝上断層は色付きでなければならぬ
全ては腐るだろう、夢も橋も、〆真イワシも
スズキも
サゴシも
イサキも
ニブ鯛も
コショウ鯛も
岬アジも
ヒラメも
ホウボウも
狂ったペンギンは南極点を目指す
矯正は効かない
飛行物体の中の温度は調整されている
今は真冬だからただ暗闇を見る
石灰大陸を
茶色い骨が進む
糖尿のペンギンが机の端まで行って
落ちる
ネジは右回りだ
白濁に草が混じる
ニセのナマな考古学のように
眼を閉じると文字は白抜き
墓石の文字を削り取り
削り取られた粉の灰色
重曹を飲む十三小町
不覚到君家
そこにiPhone画面が内部から光る
光るiPhoneに最期の迷い蛍
さよなら方々のホーボー
あまつかぜ雲のかよひじ吹き閉ぢよをとめの姿しばしとどめむ
白濁に茶色が混じって飴を煮る
古来の色のnouveau
高円寺は円盤とかUFO clubとかおかしくないですか
君は去った
ここで「君は去った」と独白する別キャラを立てなきゃいけない
それをペンギンのように歩かせる
歩き出す
地の端から落ちる
落ちるとは上昇すること
覚えず君の家には至らない
帰っても蛙が啼いている
ミカドの口で啼くのか
ミカドっていま浩宮だろ?
啼くわけないじゃん
ビオラ弾くだけだよ
眼を閉じた闇の中でもデザインのキズは白い
グラデーションが押し寄せる
あ、それが銀河か
句点はいつも黒い、、、
句の切れは黒くないといけない、、、
、、、
それにつけても(おやつはカール)で進んでゆく
ガール

肉桂色の店
の羅列
金芝河の南(ナム)の羅列
ラッパのようだ
タマスダレの口
あ、蛙が止んでearly birdが鳴き始めた
新聞配達の楠本君のバイクの音もした

脱ぎ捨てるのは愛ではなくそれまでの人格である
所有物を破壊されて丸裸になり揺るぎない愛を着る
愛し続ける着た切り雀は戦時下投獄されている
仕合わせそうだな、お前
その道をひたすら歩み、恐れる
心を尽くし、見ているかいないかに関わらず分別ゴミの名前を頼りに
厳しすぎると思うか
トラブルを防ぐにはその方法がベストである
ねねえ聞いてよ
したいことをしたい
取り決めとしてのふたりは土に刺さった人の離せぬハサミである
畠世界に落下するハサミが後を立たない
あかいビーツのことばかり踏ませぬ言葉狩り
嘘温泉で寛ぐ誠実な人に誠実である
揺るぎないゆらぎのない団栗よりは柔らかい
仕合わせと喜びは違うが与えること自体のフラットは与えられている
りく、という名の海の盞
our bestとはpersonal bestである
よく頑張りました
Iタラントたらんと欲す、では足らんと
今日が人生で一番若いのだから石灰化するアーカイブを吸い出せ
躊躇わず管理人として使い合ってください
じゃ全ての店子はゴミ出し管理人
マンション・ガールズ
活かすのは死んだ花
殺すのは超えてはならない検死時のgift
全ての街宣車を鉄屑にする能力は与えられているが
言い訳しないことの方がいまは大事だ
比較三原則が爆発するpersonalな幸福
に降伏

蛍、君のことは覚えているよ
来年は、無い

 

 

 

#poetry #rock musician

「夢は第二の人生である」或いは「夢は五臓六腑の疲れである」第98回

 

佐々木 眞

 
 

 
 

西暦2022年蝶人酔生夢死幾百夜

西暦2022年弥生蝶人酔生夢死幾百夜

 

ローマの山奥から切り出した大理石に身を包み、長期休暇を取っていた鉄人28号は、飛び立ち、遠路はるばる激戦続くウクライナの先にあるモスククワのクレムリン宮殿でふんぞりかえる怪人プーチンを目指した。3/1

コバヤシ散髪屋の鏡に映っているその顔は、おらっちに非常によく似ていたが、コバヤシさんは、もうとっくの昔にあの世に行ってしまっているおらっちの髪を、懸命に刈りこんでいるのだった。3/2

新幹線の中で、自閉症を持つ母親がいたが、自閉症を持つ母親が育てた子供だから、きっといい子にちがいないと、おらっちは思ったずら。3/3

そのお見合い会社には、元スッチーとか美人の気象予報士などがいっぱいいたけれど、なんせ高嶺の花なので、誰もおいそれとは近づけず、実のところ一番人気は、総務のお茶出しの女の子だった。3/4

地球環境の悪化で、我々が火星に大移動してから数世紀経ったが、そこも居住に堪えられなくなってきたので、今度は、金星に移住する計画が進められているよーだ。3/5

ともかく、これまで死ぬほど長い旅をしてきたので、もはや、いつどこで死んでも構わない、という、悟りのような、諦めの心境に、おらっち到達していたのだった。3/6

最新ナガタ式パターンに拠る秋冬物婦人服のシルエットは、案に相違して非常に評判が悪く、東西営業部からの受注がまったく入らなかったのよ。3/7

1年に3回だけ打ち出の小槌を使って、自分が思う通りの情況に造り直すことが出来るので、本来なら家族の安寧と福祉のために揮うべきものを、3回まとめてプーチンの頭上に振り下ろしたのだが、奴さん、微動だにしなかったずら。3/8

専制君主の圧制に堪りかねて、山奥の地下の洞穴に逃げこんでいる最低人からも税金を取り立てるのが、おらっちの仕事だったが、内心の苦悩を、誰も知ってはくれなかったよ。3/9

息子が「アプリって知ってる?」と聞くので、「サプリの親戚だろう」と答えたら、呆れたボーイズの顔になったので、もしかしておらっちは、間違え小路でさ迷っている老人なのではないか、という気がしてきたずら。3/10

パイロットのおらっちは、羽田発関空行きのヒコーキを、途中の富士山上空でクルリと一回転させたために、地上勤務に降格されたが、その後乗客たちから、大勢の支援者が現れたので、また元の勤務に返り咲いて、毎日クルリ、クルリをやっているのさ。3/11

NYの一流商社には、エリート組と非エリート組があって、前者が退社するのを待って、後者が退けるんだが、おらっちは、いつも後者の先頭を切って退社して、我が家で楽しく団欒していた。3/12

ウクライナの国旗は、青黄の補色の2色からなっていて、青が青空、黄色が麦を象徴していると聞いていたんだがあ、青ではなくて紫がかった蒼でないと正しい補色にならないので、その間隙をプーチンに衝かれたのだろう。3/13

「怪人プーチンのような人物は、悪魔があっという間に悪しき心を植え付けてしまった所産だから、人間にはどうしようもない。ある日ある時、気まぐれな神様が、その悪心を取り除いて呉れる瞬間が訪れるまではね」と、か弱い天使が言うた。3/14

独逸からやって来たある女性と、何回か話しているうちに、そのモリジアニ風の、ちょっと歪な青白い目に、だんだん魅入られてきて、いつしか、忘れがたい人になってしまって、いるのだった。3/15

殆ど暗闇に近いその試写室の入口の廊下に置かれた長いソファーには、かなり大勢の人々が身じろぎひとつしないで座っていたが、その横顔をちらちら盗み見しているうちに、彼らは物故した著名な映画関係者であることが分かってきた。3/16

いくら勘定しても、採算なんか絶対に取れないと決まっているのに、なぜかおらっちは、その乾物屋を出店してしまったのよ。3/17

チーム最高経営会議の議長を務めていたおらっちは、連敗に意気消沈する選手たちを激励しようと、みずからバットを振るって三塁打を放ったが、後続の誰も、おらっちを本塁に迎え入れることは出来なかった。3/18

沢山の馬が馬小屋に繋がれているが、みな立ったままなので、「君たち、立ったままだと疲れるだろう。誰も見ていないから、座りなさい。その方が楽だろう」と言うたのだが、どいつも座ろうとはしなかった。3/19

戦争が終わって、また平和が蘇って来たが、世界観光業で首位を争う2社の競争は、ますます激しくなるばかりだった。3/20

心臓発作でベッドに寝ているタダさんを見舞ったら、「僕は昔から右翼と左翼の両方から付け狙われていたから、いまここで心臓麻痺で死んでも、全然苦にならないよ」と明るく語るのだった。3/21

おらっち、鎌倉時代の鎌倉にいるのだが、零落した御家人の家来たちが、由比ヶ浜の海岸で蓆を敷いて、下人たちが主宰する博打に参加して、たちまちすってんてんになっていく哀れなさまを見物しているところ。3/22

おらっち、「この巨大な鋼鉄マスクをしていれば、コロナどころか、ミサイルだって怖くない」と、思うようになっていたのよ。3/23

私はバーンスタインだが、カーネギーホールでブラームスの第1ピアノ協奏曲をやった時、生意気なグールドが、「うんと遅いテンポでお願いします」というたので、仕方なく聴衆への注釈つきで劇伴したんだが、演奏しているうちに、「なんだ、このテンポでいいじゃないか」と思えてきたのよ。3/24

わいらあ、ウクライナのキエフを脱出して、ポーランドを目指して歩いていたら、耳に繋いだラジオから「本日の鎌倉のコロナ感染者は20名です」という放送が聞こえてきたずら。3/25

イマナカさんが、長らく会社に勤めて地味なリーマン生活を続けながら、出版社を経営し、いろんな趣味の本を世に送って来たとは、夢にも思わなかったので、今夜の夢に、それが出てきたことは、ちょっとした驚きでした。3/26

内戦が激化して、都心部であんのんと暮せなくなった民草らは、爆撃を受けて半ば廃墟と化したこの工業地帯にやってきて、警察の手入れに警戒しながら、思い思いの個室にぐったりと身を委ね、暗欝な気分になると、真ん中の寄り合い所に集まって、平時の折りの四方山話に耽るのだった。3/26

何事も中途半端にしかやってこなかったおらっちなので、いざ戦になると、構えはしたものの、敵兵が突撃してくると、手に持った刀などは明後日の方角に放り投げて、すたこらささと逃げ出したずら。3/27

ヘリから降りたったマリウポリは美しく清潔な街だった。30度の二股に別れた無人の大通りは、白い舗道に紅殻色で統一されたまるで泰西名画のような調和と静謐な美で飾られ、さながら地上の楽園のように思われた。3/28

3人でマリウポリに1泊して翌朝、外に出ようとしたおらっちは、先に大通りに出た同僚の2人が、ロシア人の銃撃で斃れたのをみて、慌てて地下室へ逆戻りした。3/29

おらっちのゼミの最優等生のA子がおらっちの最終授業の後でやって来て、「せんせい、あたしようやく卒業できたから、今度は就職しようと思うんだけど、どこかいい会社をご存知ですか?」と言うので、びっくらこいたよ。

黒鍵を苦手とするそのピアニストは、その苦手を克服するために、あえて演奏会プログラムの冒頭を、ショパンの「黒鍵のエチュード」、アンコールを、「黒猫のタンゴ」にしていた。3/31

 
 

西暦2022年卯月蝶人酔生夢死幾百夜

 

巨大なシンクタンクでは、独創的なクリエーターが自由奔放なアイデアをあたりに撒き散らしていたが、それらをちゃんとビジネスに結びつける仕事は、おらっちにしかできなかったのよ。4/1

「社長繁盛記」の撮影現場に行ったら、予期に反して、役者も、監督も、端倪すべからざる人物ばかりだったので、驚いたずら。4/2

さる有力人物の葬儀に赴いたら、いきなり親族席に案内され、司会者がお城の二の丸とかレナウンの女子寮がとか、気になる挨拶をしているので、「これはどなたの葬式ですか?」と訊ねたら、変な顔をされた。4/3

ヨコタカで3枚の黒のジーンズを買うたのだが、社員寮には白のジーンズしか残っていないので、もしかするとヨコタカでは、黒を2枚、白を1枚買うておったのかもしれないずら。4/4

美学校の隣にある詩学校を窓から覗いてみたら、おらっちの幼年時代の詩「てらこの下駄」を生真面目に朗読していたので、「おいおい、そんな下らない詩を取り上げたら、頭がおかしくなるぞ」と、警告したのよ。4/5

戦場を激しく飛び交う広報部長のヘリに、必死で追いつこうとする広報次長ノエリだったが、地上の兵士が発射した、最新型のミサイルで、両機ともあっさり撃墜されてしまった。4/6

おらっちが社員寮でパンツを紛失したことが、寮長の掲示で全員に知れ渡ったのだが、パンツには、大いなる沁みが付着しているので、おらっちは、そいつが永久に出てこないことを必死で祈った。4/7

社の編集局長の平出が、「シニア向け新文化雑誌の編集長に、ベテランの山田を起用するつもりだが、どうだね?」とおらっちに訊ねたので、「あんな男に何か出来る。他にも人材がいるでしょう」と返答したのだが、案に相違して山田がベストセラーを連発したので、おらっち恥ずかしくなって退社したずら。4/8

身ひとつで悪人どもの巣窟に飛び込んで、海千山千の彼奴等の間を巧みに泳ぎ回る彼を見ていると、おらっちもぐあんばらなくッちゃ、という気持ちになっていくのだった。4/9

久し振りに、郷里の実家に帰って寛いでいると、離れで、きょうだい2人が、ひそひそ話をしているので、耳を澄ませて聞いていると、どうやら、おらっちの噂話をしているようだ。4/10

電通のヨシタケさん似のリーダーが、世間には、「モノを売るビジネス」と、「コトを売るビジネス」に加えて「シアワセを売るという第3のビジネス」があるのです。と言うたので、思わずおらっちは、「おいらは街のシアワセ売りよ」てふ唄を歌ったのよ。4/11

おらっちはずっと家にいて仕事をしていたのだが、いつの間にかケータイが無くなっているので、家じゅう捜索したのだが、やっぱり出てこないので、「きっとあいつは、我が家が嫌になって家出をしたんだろう」と、思ったのだった。4/12

「全日本富士山登山会」が、今年も全国から登山者を募集したのだが、コロナの大流行が仇となって、結局企画自体がポシャッてしまった、と、これはサイトウ会長のお話でした。4/13

当地でも内戦が勃発し、13番線が大混雑なので、急遽14番線からの発着に切り替えることになったので、我々駅員はその準備に大童だった。4/14

おらっちは、ミラノ行きのヒコーキのドアが閉まるのを、片足を入れて引きとめていた。というのも、これに乗り遅れると、今日中にベルギーに入れなくなるからだった。4/15

いよいよ戦争も酣になって来たせいか、タワマン毎に、外装を、自分たちが応援する国の国旗の色に塗り替えて、おのおの政治的なメッセージを発信するようになったみたい。4/16

聖徳太子が7人と話をしていたので、傍で聞いていたが、7人と一度に話をするのではなく、1人ずつの話を、極超高速ミサイルのような猛烈な勢いで片づけていくのだった。4/17

北方領土出身アーチストの彼女の今回の個展のテーマは「色丹島」で、真夏の草原に咲く橙色の、名も知れぬ花々の絵の、105通りのヴァリエーションが展示されていた。4/18

全米1のスケールを誇るニッポン村には、もはや本国では見られなくなった古式豊かな神社仏閣や木造住宅が、整然と立ち並んでいるので、世界中、とりわけ日本からの観光客が、群れをなして押しかけるのだった。4/19

NY帰りのチンケなねえちゃんが、こましゃくれた発言をするので、ぶっとばしてやったずら。4/20

余は、一介の観光客として訪れたその町で、日一日と、単なる路傍の生活者、へと変身していった。これすなわち、乞食になったのであーる。4/21

元のキャンパスがあった交差点に、30年ぶりに同級生が自転車に乗って集まり、再会をともに喜びあったのだが、なんと10人のうち2組の4人が、カップルになっていたので、いささか驚いたずら。4/22

ある学生が企画した「売春買春ツアー」がヒットしているようだ。これはやりたい人、やられたい人、そのどちらでもない人、の3つのグループに属しつつ、いいろいろ楽しんだり、楽しまなかったりする、2泊3日のパックらしい。4/23

見わたす限り地平線の彼方まで広がる草原に、たった一人煙草を吸うているオッサンがおるので、その顔をよーく眺めたら、なんと、カモカのおっちゃんだった。4/24

いよいよ町に敵の武装赤色電車が乗り込んできたのだが、たった2両編成で、誰も乗っていないので、どうしたらよいか、みんな戸惑っている。4/25

六本木の日本フォノグラムで開かれているバザール会場に入ると、ジェームズ・レヴァインのミュンヘン、ボストン時代の録音も含めた膨大な全演奏記録のCDとDVD全集が2万円で販売されていたのだが、1万円しか持ち合せが無く、泣く泣く諦めた。4/26

始発駅から1万5千円を使って特等席に乗ると、隣の座席に、見事な栗が鈴なりの栗の木の枝が置いてあったので、その実を食べながら、おらっちは家に帰ったのよ。4/27

まだ<キャシャレル>というブランドは存続しているんだが、「これまでに企画製造した製品は、ぜんぶ販売し終っているのだ」と、イデっちが言うんだが、それってホントだろうか?4/28

案の定、辞世の句を詠むことになってしまったが、余りにも急すぎるので「どの道も ローマヘ通じる この道を行く」しか頭に浮かばない。季語がないのが気になって仕方が無いが、どうやら時間切れのようだ。4/29

1の兵が最強の兵かと思っていたら、案に相違して鎧袖一触で敵に惨敗してしまった。2の兵、3の兵と次々に敗れ去ってしまったのだが、最後に登場した10の兵が意外にしぶとく、大逆転で敵の侵攻を止めて押し返した。4/30

雨が降ると、おらっちは、いつも大学病院の精神科の地下壕に、自転車を隠しておくように、なっていたのよ。4/30

 
 

西暦2022年皐月蝶人酔生夢死幾百夜

 

いつの間にか我が国も、ロシア並みの専制国家に成り下がっていたので、全国民がどんな書類にでも、「プーチン」とサインするようになってしまった。5/1

「瀕死の詩人たちには、半地下の4畳半に入ってもらうことにする」と、政府が決めたそうだ。5/1

朝から晩まで別の噺をしようと思っていたのだが、ストックがすぐに尽きてしまったので、おなじ噺をちょっとだけ変えて、延々と語る羽目に陥ったが、考えてみれば、これは落語とおんなじだな、と気づいたので、一安心したずら。5/2

モンゴル語学校で最優秀のA君は、確かに語学の天才だったが、余り人望はなく、人々は、成績はナンバー2だが、人間味のあるのB君になついたのよ。5/3

千の天使がバスケットボールをしているので、さっきから呆然と見惚れているのだが、これってもしかすると、中原中也の詩の中の世界ではなかろうか?5/4

暫く前から英国オックスフォード大学に留学していたA君だったが、試験の時にカンニングしたのがばれて、退学処分を受けたのだが、それが本国に伝わらないよう、なんとか内緒にしてくれと頼んで、ようやっと認められたようだ。5/5

朝会社に行くため、かみさんと並んでバスで座っていたら、元パリコレモデルの長身の女が2人の間に割りこんできたので、仕方なく席を立って座らせてやったのだが、朝飯を喰っていなかったので、バス停の前にある一膳飯屋に入って朝定食を頼んだら肉じゃがだったので、それを喰い終わったが、飯もみそ汁も出てこないので、文句を言うたりしている間に、バスは出ていったずら。5/6

「ほなら、これはどうですか?」と言いながら、フルカワが持ち出した不動産は、たった5万円の日比谷公園位の広さの象の親子付きの庭付き10LDK平屋住宅だったが、あいにくケニアの物件だったので、涙を呑んで見送ったのよ。5/7

「諸君、テッテ的に語り合おうじゃないか!」と松田世紀夫クンが言うたが、またか、という顔をしただけで、誰も返事をしなかった。5//8

「月見町で恒例の詩吟会をやるから、一度顔を出しなさい」と言われたのだが、断った。それは第1に、おらっちは詩人ではなく、ただの人だから。第2に、そのテーマが「見渡す限りの春の夜」という奇妙な題名だったからだ。5/9

散歩していたら、俄か雨が降ってきたので、雨宿りしようと思って、急いで分厚い本の中に飛び込んだら、やたら余白が多くて文字数が少ない詩集だったので、だいぶ雨に濡れてしまったのよ。5/10

もののはずみで、人を殺めてしまったおらっちだったが、なんとか無罪放免してもらおうと、家族は町内の人々に嘆願の奉加帳を回覧したそうだが、なんとなんと末の妹が署名していないことが判明したので、おらっちは衝撃を受けた。5/11

パターソンの町をぶらついていたおらっちだったが、「そうだ、今宵のライブに出演する会場の下見をしておこう」と向かったがまだ準備ができていなかったので、さらにあちこちほっつき歩いているうちに小便をしたくなったが、トイレが無いのでさらにさ迷っているうちに迷子になってしまった。5/12

ひともうらやむほどの功なり名を遂げたセイさんが、糟糠の細君と莫大な資産を弊履のように投げ捨てて、無名の乙女と山谷の木賃宿に潜入したとの報に接した時、余は、干天の慈雨を浴びた如き一服の清涼感を覚えたのであった。5/13

「夕方になったら帰ってきてね」と彼女は言うたのだが、いくら街で暇つぶしをしてもカンカン照りで夕暮れにならないので、仕方なくおらっちが家に戻ると、1羽の鶴が機を織っていた。5/14

2022年5月15日、一介のリーマンのおらっちは、往来で1匹のウスバカゲロウを呑みこんでしまったのよ。5/15

おらっちは高嶺の花の彼女を攻略するために、彼女の親友のスタイリストのイヌバシリ嬢を籠絡して、彼女の愛犬のブルドッグが♀なので、それとつがわせる♂を持ちこんで、お見合いさせる機会に、彼女とお近づきになろうと計画したのよ。5/16

おらっち超満員のバスに飛び乗ったんだが、外に押し出されてしまい、かろうじて手すりに捉まったままバスに引きずられるようにして、次のバス停まで走っていったのだが、死ぬかと思ったずら。5/16

本日は午前中に2本の発表を聞かされるのだが、それが嫌で日本橋方面をぶらついているうちに昼になったのでウナギのまむしを喰うたら少し元気になった。午後からはおらっちの発表だから急いで戻ると、おまんた学会は案の定大騒ぎになっていた。5/17

明治時代に来日した御雇外国人の建築家のなかでも、その男はユニークで、建造物の周りを、白い鳥で装飾するという、不思議な白鳥様式を、得意にしていた。5/18

この国に留学生としてやって来て、この牧師館の厄介になっていたおらっちだが、もうひとりの同胞が時々台所から食料を盗んでいることを知って、激しく憎んだ。5/19

「東京大阪名古屋福岡のマンションを比べると、名古屋のそれがいちばん隣の部屋との壁が薄い」という人物がいたが、おらっちは生まれてこのかた、マンションなんかに住んだこともないので、嘘かほんとかてんで分からんずら。5/20

奈翁の末裔だというので、いくたびも彼の容貌やら身体的特徴を精査してみたのだが、結局、その片鱗さえも確認することが出来なかったずら。5/21

その草っぱらで野球をやる時にどうするかと言うと、おもむろに地下からベースが浮上してきて塁を構成し、試合が終わると、元のように沈んでいくのだった。5/22

リーマン時代の会社の仲間から誘われて、場末の居酒屋にやってきたおらっちだったが、大嫌いな煙草の煙がモウモウと漂う汚らわしさに辟易して、すたこらさっさと逃げ出したのよ。5/23

ふと眼を上げるとそこにはヒラツカ氏がいて、「君に初めて会ったのは、確か2008年の4月だったな」と言うたので、ああそうだったのか、でも良く覚えている人だな、とその時思ったのだった。5/24

私の部下たちは、私が指導者としては無能で失格であることを知っていたので、毎朝会社の始業時間の前に運動場を全力で走って気合いを入れていることを知って、もうしわけない思いでいっぱいだった。5/25

米中露朝などの先制攻撃ロボ開発競争にあって、今年の世界ロボット大会の話題をさらったのは、専守防衛機能に特化された我が国の最新型のヒューマンロボコップだった。5/26

久し振りに夜の繁華街に出たら、ホテルでなんたら記念の祝賀会をやっていたので、なんなく紛れ込んで、たらふく飲んだり、ごちそうを頂戴したりしてしまった。5/27

突如ロシアとの戦争が始まったので、環境問題NPOから指名された私は、戦艦に乗って北方領土の自然環境についての、命知らずのリサーチをすることになった。5/28

悪魔島のまわりの海の中には、数多くの潮流が川のように流れているので、その水流の動向を熟知していないと、一人前の漁師にはなれなかった。5/29

あれほど清潔だった工場なのに、稼働して半年も経たないうちに、トイレから流れ出た小便やウンコが、フロア全体に垂れ流しになって、二目と見られぬ醜く臭い光景と化していた。5/30

生まれて初めて仲人を頼まれた私は、山の上ホテルに双方の家族を招いて、会食することにした。定時に全員が集まったので、私は立ち上がって、彼らを紹介しようとしたのだが、なんということか、いくら頭をひねっても、彼らの名前が出てこないので、弁慶のように立ち往生してしまった。5/31

 

 

 

ちょう

 

道 ケージ

 
 

ちょうよ
ちょうよ
お前は伸びて
花盛りだ
 
薄紫に透けて
湿潤の奥に
とべよ
 
ちょうよ
ちょうよ
幼虫は憩室
でお休み

回盲の絨毛にくるまれ
上行、横行し、下行し結腸する

息するみたいに通り行く
息するみたいに嘘をつく

半月襞を経て無名講
背中を撫でてくれるだけ
それだけで

S字の断腸
「捩れてますよ!」
ドルミカム一本! 夢見いや
お願いミダゾラム! 諸星を呼べ

丁丁丁丁 丁丁丁
縄張りを意識する者が
勤めている

人参のようなもの二本
陶器の水に浮かぶ
どん、ツー、鈍、痛、鈍痛

肛門の先に広がる世界
えいん部まであとわずか
そこを曲がれば
死にたいの空が待つ
 
黒揚羽の羽はね
十二本目の指だよ
誰も読まない本を繰るためにね
目覚めてよ