偽善者のコラール *

 

さとう三千魚

 
 

昼には
自転車で

河口まで走って行った

海には
風が吹いていた

女は
午後に

エアロビに出掛けていった

GDPの
2%を

軍事費に充てなければならないのか
防衛費に充てなければならないのか

アンケートによると
国民の60%が賛成していると昼のTVニュースはいう

自転車で
河口まで走って行った

女は
午後に

エアロビに出掛けていった

海には
風が吹いていた

 
 

* 高橋悠治のCD「サティ・ピアノ曲集 02 諧謔の時代」”右や左でみたこと(メガネなしでも)” より 

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

music is

 

工藤冬里

 
 

F F7 Bb Bbm F C F/Bb F/C

F F6 Bb Bbm6 F Dm C/G C
音楽はいつも向こう側を流れている

F Fb6 Bb Bbm6 F C F/Bb F/C
音楽は川ではなく川の向こう側を逆流している

F F7 Bb Bbm F C F/Bb F/C
川に釣り糸を垂れても音楽は作れない

F F6 Bb Bbm6 F Dm C/G C
作りに行く音楽は川で海の魚を釣り海で死んだ川魚を掬うようなものだ

F F7 Bb Bbm F C F/Bb F/C
音楽はいつもその外側を流れている

https://torikudo.bandcamp.com/track/music-is-20221210-syuyukan

https://youtu.be/eC9dxqkdBRU

 

 

 

#poetry #rock musician

公園プレデビュー

 

辻 和人

 
 

陽光が風のように
さあっと吹いてくるって思った
ゴールデンウィークの中日
行楽地なんてとても行けないけど
「子供たち連れて公園行こっか」とミヤミヤが提案
公園プレデビューだ
公園っていうのは近所にある団地内の公園
徒歩でほんの4、5分ってところ
ぼくはこかずとん、ミヤミヤはコミヤミヤ
抱っこ紐つけて
外に出た
あったかい
4月はどうかすると寒い日もあるけど
5月になると急にポカポカするんだね
よいっっしょよいっっしょ
一歩一歩慎重に
団地に渡る歩道橋では小学生みたいに
右見て左見てまた右見て
一歩一歩、2人に何かあるといけないから
団地内の小道をよいっっしょよいっっしょ歩いて
広いところに出た
公園だぁ
鉄棒で女の子が逆上がりの練習してて
くるっ、成功、やった
ちっちゃい男の子が滑り台を
滑り滑り降り降り、お母さんがズボンの埃をパンパン払ってやる
平和な風景だなぁ
抱っこ紐の中のこかずとんは
まだ視力弱くてこの風景把握できない、んだけど
さぁっと
陽光が
風のように吹いてきた
首、上に伸ばした
鼻、ひくっとさせた
感じた、感じ取ったぞ
陽光を風のように感じたこかずとん、それにぼく・かずとん
何だかこの光景の中に
溶け入ってしまいそうだ
今頭上で爆弾が炸裂したとしても
溶け入ってしまって
気づかないだろう
足元の石畳に染みみたいな跡が残るかな
木陰に入ってミヤミヤと写真を撮り合った
コミヤミヤ、口パクパクさせてる
こかずとんもだ
ああ、もうすぐミルクの時間だもんな
それじゃこの辺りで引き返すとしますか
公園プレデビュー無事終了
陽光が吹いてくる
さぁっと

 

 

 

象の風景 ***

 

無一物野郎の詩、乃至 無詩! 30     chihiro 様へ

さとう三千魚

 
 

象は

歩いた
だろう

堺から
長崎の

西坂の丘まで
歩いただろう

そこには
二十六聖人が

並んで
浮かんでいる

象は

酔って
照れ隠しに

笑っただろう
白い歯で笑った

帰ろう

野良猫のいる
西坂に帰ろう

百合の花の薫る

長崎の
西坂に帰ろう

 

 

***memo.
2022年12月7日(火)、自宅にて、
「 無一物野郎の詩、乃至 無詩!」として作った30個めの詩です。
お名前とタイトル、好きな花の名前を伺い、その場で詩を体現しプリント、押印し、お送りしました。

タイトル ”象の風景”
好きな花 ”カサブランカ”

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

しらす ***

 

無一物野郎の詩、乃至 無詩! 29     tokio 様へ

さとう三千魚

 
 

もう
昨日か

冬の
曇った

港町を

ふたり
歩いた

冬桜が
咲いていた

家並みの
細い道の

向こうの

海が
光っていた

しらす舟は
網を曳いていた

舟は

しらすを
掬う

ひびわれ
しわぶいた

ものたちを掬う
海の底から掬う

 

 

***memo.

2022年11月28日(月)、自宅にて、
「 無一物野郎の詩、乃至 無詩!」として作った29個めの詩です。

お名前とタイトル、好きな花の名前を伺い、その場で詩を体現しプリント、押印し郵送、詩の画像をメールでお送りしました。

タイトル ”しらす”
好きな花 ”冬桜”

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

朝に

 

無一物野郎の詩、乃至 無詩! 28     michiuo へ

さとう三千魚

 
 

夜中
目覚めた

女と
モコを

起こさないよう
階段を降りる

湯を沸かし
珈琲を

淹れる

紙を
ひらいて

平らに
ひらいて

花を
待つ

待っている

 

 

memo.

2022年11月26日(土)、しずおか一箱古本市での水曜文庫で行ったひとりイベント、
「 無一物野郎の詩、乃至 無詩!」第七回で作った28個めの詩です。

自分のために詩を書きました。

タイトル ”朝に”
花の名前 ”無花果(イチジク)”

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

どこどこたまたま

 

駿河昌樹

 
 

地球上のどこかに
たまたま
生まれ落ちたからといって
そこの土地の人間だ
どこどこ人だ
どこどこ国ばんざい
どこどこ国を守るのだ
どこどこ国を拡大するのだ
とか
なんとか
大声でわめいたり
刃物をふりまわしたり
銃弾を放ったり
大砲だのミサイルだのぶっ放したり

そういうことに
まったく乗る気になれない
たまたま人が
ぼく

たまたまだって
ついてる

どこどこ人の
たまたま
なんて
どこどこ?
ってな
もんだよ