あぶない

 

道 ケージ

 
 

あぶなくってしょうがない
ご飯にネジを入れ
何に味をしめたか

カミソリが
ガリリと噛む
鮮血の赤飯
ぬるぬる丼

流石に死ぬぞ
「風呂場にあったから入れといた」
安全剃刀

お次に薬莢のふりかけ
「鉄分、体にいいよ」
どこで拾った
「富士演習」

おかず作れなくなり
久しいが
掃除が極端になる

一部を磨き大部を残す
ピカピカ光り
カビガビで真っ黒

衣替えも大変
あれもこれも捨てられ
本当の全とっかえだ

そんなにもあなたは
捨てたかった

カーテンが裂け
切り刻まれた隙間から
富士が白い

私は穴を掘って
そこに寝るわけだが

ウサギがカリカリ
でもその首ちょんぎって
何かにつけようとしている
可愛いからだ

歯軋りの街にダンプが
ウィドマンシュテッテン構造を
載せて月に引っ越す

少しの揺れで悲鳴をあげ
ドタバタ走って
本の山を崩す

鍛冶屋には無理だ
掃除屋も
何でも屋も無理だ

ダル絡みと言われ
脳汁を出す

どうも変だ
食卓に
洗濯物が並ぶ
山となったパンツやらシャツの間で
ヌードルすする
徹子の部屋を見ている

 

 

 

社会的微笑の誕生

 

辻 和人

 
 

社会が誕生した
正真正銘
社会って奴
目覚めたばかりのコミヤミヤの頬っぺたの上
おはよって
両手で頭グリグリしたら
ふへはっ
こ、これは
社会的微笑って奴
乳児が人の顔認めてはっきり笑うって奴
新生児微笑って奴とは違うって奴
コミヤミヤ、ぼくの顔見て目細めて
静かに口の両端を逆への字に引き上げた
ぼくがパパだなんてわからない
誰だかわかんないけど顔がある
顔があるなら
誰かいる
誰かいるなら自分もいる
それで
逆への字
頬っぺたやわっと盛り上がり
顔に顔で返した
社会だ
コミヤミヤの柔らかな皮膚の上
社会が誕生したんだ
これから顔、次々現れるぞ
顔が顔を連れてくるぞ
よし、頭もう一度グリグリするか
グーリグリグリ
ふへはっ
ふへはっ
やった
正真正銘、社会って奴

 

 

 

Contessa, perdono!

 

佐々木 眞

 
 

ある日、料理をしないし、できもしない男が、
目に美々しい春のヤサイを、買い散らかした。

ミズナ、シュンギク、ホウレンソウ
カブラ、ジャガイモ、泥付き長ネギ

すると、男の妻は珍しく激して、かくの給うた。
「不要な食材は、ほとんど暴力である。」

なるへそ。いらんヤサイは、暴力なんだ。
こいつァ春から、目覚まし草。

Contessa, perdono!
許してたもれ。我が家の伯爵夫人。