羅宇屋

 

廿楽順治

 
 

象が
うずくまっていた

(じぶんの現象に夜通し泣けますか
 ってんだ)

羅宇屋の
汚れた指さきが

べったりと
わたしの夢の先端へ伸びてきた

どれどれ直してあげましょう
と声がやってくる

この場所では
あなたは もう「わたし」ではないのだから
というように

象はさらに
象のなかへうずくまる
(影はそれなのに少しもへらない)

ですが
その夜のくせはきっと直せますぜ

羅宇屋が
象の影とならんで

 

 

 

sweet here after

 

原田淳子

 
 

 

まだ知らない
遠い窓をあける

報いを求める哀しみから焦点をずらす
ぼやけた未来を波に浮かべる

嘘ではない
複数の真実が芽吹く

枝分かれの時間

あの空に響く真実だけを選ぶ

ミモザの漣

哀しみだけが陽に反射する

死を風に溶かすと光がみえた
あなたをとうりすぎる風になり、笑う

光の速さで
分裂しながら生まれくる

貝は溶けるという
わたしの骨とおなじように

描かれた花だけが残る
花のうえをあなたの風がとおりすぎてゆく

去りなさいと風がいう

苦さの極みのあとに
sweet here after

土はあたたかく
無はやわらかい

窓は開け放たれたまま