広瀬 勉
#photograph #photographer #concrete block wall
草が昨日、獣の背のように揺れ
撫でてみようとすると
風は揺れ、揺れもどり
緑の皮膚になる
翡翠竜の背中が
ああだった
羊歯の汁をしきりに啜っていた
水面へと続く草陰に何匹も潜む
草波の揺れ具合が違うからわかる
数えきれない程の数だ
あまりに遠いと近くに感じる
身近というのではない親しみ
抱え込まず
風が通る
風が揺らす
曼珠沙華の咲いた辺りに
今日は忘れ草が
一斉に赤橙している
まさかそんなことはあるまい
全ての彼岸は同一である
全ての過去は現在である