辻 和人
ひょろっ覗く
ひょろっ隠れる
今日は保育園見学の日
ぼくもミヤミヤもいずれ職場復帰するからね
今日見学に来た保育園はふるーいビルの1階
端が綻びたエプロンぱんぱん叩きながら
「暑いところ足をお運び下さりありがとうございます。園長のNです。
園内を歩きながら案内致しますのでご質問があればいつでもどうぞ」
ごましお髪揺らしのっしのっし歩き出す
その時だ
「こんにちは」
声、立っていた
ひょろっ4歳くらいの男の子
抱っこ紐の中で眠ってるコミヤミヤとこかずとん凝視して
ひょろっ姿消す
お客さんに挨拶できるなんてすごいね
「ここが1歳児クラスです。今はブロックで遊んでいます」
大きなバケツに入った色とりどりのブロック
細っこい手てんでに握って
てんでな物体作り上げる
細っこいガニマタ足てんでに動きてんでに新しいブロック取りに行く
へぇー1歳児ってこんなに歩けるんだ
ミヤミヤと感心しながら見ていたら
ひょろっ影が
さっきの男の子だ
窓ガラスからひょろっ覗いて
ひょろっ行っちゃった
「ここは2歳児クラスです。今塗り絵やってます」
しぃん
どの子もすっごい集中力
チューリップさん、メロンさん、トラさん
みるみる紙の上で舌を出す
「すごい、はみ出さずに塗れるんですね」とミヤミヤ
「2歳になるとびっくりする程器用になりますよ。
急にイヤイヤスイッチ入ってクレヨン投げちゃう子もいますけどね。
こちらの小部屋はトイレトレーニングに使います」
ちょこんと白い幼児便座微笑んだ
保育園ってこんなこともしてくれるのか
その時、ドアの隙間から
ひょろっ
そしてタタタッと走っていった
「園庭に出てみましょうか。丁度3歳児クラスが水遊びをやっています」
ひろーい園庭におーきいゴム製プール置かれて
水しぶき、水しぶき
手、足、頭、お尻、弾ける
細っこい手キラキラ掬いあげて
細っこい足パシャパシャ逃げる
甲高い声、声、入り乱れる
「泳ぐってとこまでいきませんが水遊びはみんな大好きですよ」
周りで4人の先生見張ってる
そこに裸足の男の子駆けてきて園長先生の背中にドン
「もう、この子いつも元気良すぎてね、ほら、お行儀良くしなさい」
頭軽く小突いて放す
あら、滑り台の脇にひょろっ
見慣れてしまった影
「ここで給食を作っています。
ウチは外注しないで自分のところで安全な食材を吟味しています。
水曜日は麺類の日で園児たちはみんな楽しみにしています」
忙しそうに野菜刻んでる白衣のお姉さん
あれはこれから茹でるうどんかな
「外から安全確認できるようにガラス窓をもうけてるんですよ」
大鍋ぐつぐつおいしそう
ホワイトボードにチェック入れて段取り確認か
さて、そろそろくるかな
くるかな、くるかな
きたっ
ひょろっ柱の陰だ
涎垂らしたコミヤミヤとこかずとんじっと眺めて
ひょろっ消えた
「丁寧なご案内ありがとうございました。
おかげで園の様子がよくわかりました」
頭を下げるミヤミヤとぼく
「ざっとした説明ですみません。後でご質問がありましたらお電話下さい」
ようやく半目を開けたコミヤミヤとこかずとん
2つの抱っこ紐の中でふわぁ2つのあくび
おうち帰ったらオムツ替えてミルクにしようね
スリッパから靴に履き替えて園を出ようとしたら
「さようなら」
ひょろっ声がする
ぼくたちの先回りをして
玄関の壁に背を凭れかけて座ってる
赤ちゃん、いる
ちっちゃいなあ
かわいいなあ
見たい、覗きたい
もう年長さんだもんね
赤ちゃんだった時代は遥か昔
もう赤ちゃんではない自分にとって
赤ちゃんは興味津々
かわいがるべき対象だ
ウチの子たちに興味を持ってくれてありがとう
建物も設備も古いけど良い保育園だったな
ひょろっ